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英語名:POU transcription factors
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''慶應義塾大学 医学部''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年3月23日 原稿完成日:2012年11月14日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/okanolab 岡野 栄之](慶應義塾大学 医学部)<br>           
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<br>ホメオドメインタンパク質スーパーファミリーのうち、POUドメインと呼ばれる、線虫からヒトに至るまで動物界で進化上高度に保存されたDNA結合モチーフを持った転写因子ファミリータンパク質の総称。POUは、いずれも1988年にその遺伝子クローニングが発表された最初のファミリーメンバーである、哺乳類の<u>P</u>it-1、<u>O</u>ct1および<u>O</u>ct-2と線虫の<u>u</u>nc86遺伝子産物の頭文字を取って命名された<ref><pubmed>    3215510</pubmed></ref>。  
英語名:POU transcription factors
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POUドメインは、保存されていない15-56アミノ酸からなるリンカー配列によって2つのサブドメインに分かれており、N末側の75アミノ酸からなるドメインはPOU特異的ドメイン(POU<sub>S</sub>: POU specific domain)、C末側の60アミノ酸からなるドメインは、ホメオドメインタンパク質スーパーファミリーに共通したDNA結合部位であるホメオドメインと相同性が高く、POUホメオドメイン(POU<sub>H</sub>: POU homeodomain)と名付けられている<ref name="b"><pubmed>7622033</pubmed></ref>。両方のサブドメイン共DNA結合モチーフの一種であるhelix-turn-helix構造をとり、オクタマー配列と呼ばれるDNA配列ATGCAAATに特異的に結合する<ref name="b" />。また、親和性は低いが、それぞれのドメイン単独でDNAに結合することが可能であり、POU<sub>S</sub>は5’側のATGC、POU<sub>H</sub>は3’側のA/Tリッチな配列を認識する<ref><pubmed>8156594</pubmed></ref>。さらに、POUドメインは標的遺伝子の転写調節において結合配列上でのホモ二量体やあるいは他ファミリーメンバーとのヘテロ二量体形成や共役する他因子との結合に必要とされる場合がある<ref><pubmed>9105675</pubmed></ref><ref name="e"><pubmed>11183772</pubmed></ref>。リンカー配列は、2つのドメインの局所的濃度を高め二量体形成やDNA結合能を高めるだけでなく、その長さの違いが両ドメインの相対的な空間配置の自由度の違いを生出し、実際の認識配列の多様性を決定しているようである<ref name="e" /><ref><pubmed>12213595</pubmed></ref>。
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ファミリーメンバー
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POU転写因子は、それぞれのPOUドメインにおけるアミノ酸配列の相同性に基づいてⅠ~Ⅵの6つのクラスに分類される。例として以下にヒトの遺伝子ホモログを列記する。
== 構造==
 POUドメインは、保存されていない15-56アミノ酸からなるリンカー配列によって2つのサブドメインに分かれており、N末端側の75アミノ酸からなるドメインはPOU特異的ドメイン(POU<sub>S</sub>: POU specific domain)、C末端側の60アミノ酸からなるドメインは、ホメオドメインタンパク質ファミリーに共通した[[wikipedia:ja:DNA|DNA]]結合部位であるホメオドメインと相同性が高く、POUホメオドメイン(POU<sub>H</sub>: POU homeodomain)と名付けられている<ref name="b"><pubmed>7622033</pubmed></ref>。両者のサブドメインは、DNA結合モチーフの一種である[[wikipedia:ja:ヘリックスターンヘリックス|helix-turn-helix]]構造をとり、オクタマー配列と呼ばれるDNA配列ATGCAAATに特異的に結合する<ref name="b" />。また、親和性は低いが、それぞれのドメイン単独でDNAに結合することが可能であり、POU<sub>S</sub>は5’側のATGC、POU<sub>H</sub>は3’側のA/Tリッチな配列を認識する<ref><pubmed>8156594</pubmed></ref>。さらに、POUドメインは標的遺伝子の[[wikipedia:ja:転写調節|転写調節]]において、結合配列上でのホモ二量体やあるいは他ファミリーメンバーとのヘテロ二量体形成や、共役する他因子との結合にも必要とされる場合がある<ref><pubmed>9105675</pubmed></ref><ref name="e"><pubmed>11183772</pubmed></ref>。リンカー配列は、2つのドメインの局所的濃度を高め二量体形成やDNA結合能を高めるだけでなく、その長さの違いが両ドメインの相対的な空間配置の自由度の違いを生出し、実際の認識配列の多様性を決定しているとの報告がある<ref name="e" /><ref><pubmed>12213595</pubmed></ref>。なお、転写制御ドメインは、ファミリーメンバーによってPOUドメイン外のN末端側かC末端側、あるいはその両方に存在している<ref name="g"><pubmed>11159814</pubmed></ref>。


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== ファミリーメンバー==


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 POU転写因子は、それぞれのPOUドメインにおけるアミノ酸配列の相同性に基づいてⅠ~Ⅵの6つのクラスに分類される。例として以下にヒトの遺伝子ホモログを列記する。


機能
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== 機能  ==


POU転写因子ファミリーの様々なメンバーの生物学的機能は多岐にわたるが、その多くが個体発生における細胞増殖・分化・移動・生存等や神経内分泌を含めた内分泌系において、そこで必要とされる機能遺伝子の発現制御を行っている<ref><pubmed>9171367</pubmed></ref><ref name="h"><pubmed>11159814</pubmed></ref>。なお、標的遺伝子の発現制御においては、共役因子の違いや発現制御領域の構造によって転写活性化因子としても抑制因子としても働きうる<ref name="h" />。<br><br>
 POU転写因子ファミリーの様々なメンバーの生物学的機能は多岐にわたるが、その多くが[[wikipedia:ja:個体発生|個体発生]]における[[細胞増殖]]・[[細胞分化|分化]]・移動・生存等や[[神経内分泌]]を含めた[[内分泌]]系において、そこで必要とされる機能遺伝子の発現制御を行っている<ref name="g" /><ref><pubmed>9171367</pubmed></ref>。なお、標的遺伝子の発現制御においては、共役因子の違いや発現制御領域の構造によって転写活性化因子としても抑制因子としても働きうる<ref name="g" />。


参考文献<br>
==関連項目==
*[[転写因子]]


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== 参考文献==


<references />
<references />

2020年7月2日 (木) 00:41時点における最新版

島崎 琢也
慶應義塾大学 医学部
DOI:10.14931/bsd.836 原稿受付日:2012年3月23日 原稿完成日:2012年11月14日
担当編集委員:岡野 栄之(慶應義塾大学 医学部)

英語名:POU transcription factors

 ホメオドメインタンパク質ファミリーのうち、POUドメインと呼ばれる、線虫からヒトに至るまで動物界で進化上高度に保存されたDNA結合ドメインを持った転写因子ファミリーの総称。POUは、いずれも1988年にその遺伝子クローニングが発表された最初のファミリーメンバーである、哺乳類のPit1Oct1およびOct2と線虫のUnc86遺伝子産物の頭文字を取って命名された[1]

Pouドメインの立体構造
1hf0.pdb
Oct-1二量体とDNAの結合。 1HF0​、文献[2]による。
Identifiers
Symbol Pou
Pfam PF00157
InterPro IPR000327
PROSITE PDOC00035
SCOP 1oct
SUPERFAMILY 1oct

構造

 POUドメインは、保存されていない15-56アミノ酸からなるリンカー配列によって2つのサブドメインに分かれており、N末端側の75アミノ酸からなるドメインはPOU特異的ドメイン(POUS: POU specific domain)、C末端側の60アミノ酸からなるドメインは、ホメオドメインタンパク質ファミリーに共通したDNA結合部位であるホメオドメインと相同性が高く、POUホメオドメイン(POUH: POU homeodomain)と名付けられている[3]。両者のサブドメインは、DNA結合モチーフの一種であるhelix-turn-helix構造をとり、オクタマー配列と呼ばれるDNA配列ATGCAAATに特異的に結合する[3]。また、親和性は低いが、それぞれのドメイン単独でDNAに結合することが可能であり、POUSは5’側のATGC、POUHは3’側のA/Tリッチな配列を認識する[4]。さらに、POUドメインは標的遺伝子の転写調節において、結合配列上でのホモ二量体やあるいは他ファミリーメンバーとのヘテロ二量体形成や、共役する他因子との結合にも必要とされる場合がある[5][6]。リンカー配列は、2つのドメインの局所的濃度を高め二量体形成やDNA結合能を高めるだけでなく、その長さの違いが両ドメインの相対的な空間配置の自由度の違いを生出し、実際の認識配列の多様性を決定しているとの報告がある[6][7]。なお、転写制御ドメインは、ファミリーメンバーによってPOUドメイン外のN末端側かC末端側、あるいはその両方に存在している[8]

ファミリーメンバー

 POU転写因子は、それぞれのPOUドメインにおけるアミノ酸配列の相同性に基づいてⅠ~Ⅵの6つのクラスに分類される。例として以下にヒトの遺伝子ホモログを列記する。

Class
I POU1F1
II POU2F1; POU2F2; POU2F3
III POU3F1; POU3F2; POU3F3; POU3F4
IV POU4F1; POU4F2; POU4F3
V POU5F1; POU5F1P1; POU5F1P3; POU5F1P4; POU5F2
VI POU6F2

機能

 POU転写因子ファミリーの様々なメンバーの生物学的機能は多岐にわたるが、その多くが個体発生における細胞増殖分化・移動・生存等や神経内分泌を含めた内分泌系において、そこで必要とされる機能遺伝子の発現制御を行っている[8][9]。なお、標的遺伝子の発現制御においては、共役因子の違いや発現制御領域の構造によって転写活性化因子としても抑制因子としても働きうる[8]

関連項目

参考文献

  1. Herr, W., Sturm, R.A., Clerc, R.G., Corcoran, L.M., Baltimore, D., Sharp, P.A., ..., & Ruvkun, G. (1988).
    The POU domain: a large conserved region in the mammalian pit-1, oct-1, oct-2, and Caenorhabditis elegans unc-86 gene products. Genes & development, 2(12A), 1513-6. [PubMed:3215510] [WorldCat] [DOI]
  2. Reményi, A., Tomilin, A., Pohl, E., Lins, K., Philippsen, A., Reinbold, R., ..., & Wilmanns, M. (2001).
    Differential dimer activities of the transcription factor Oct-1 by DNA-induced interface swapping. Molecular cell, 8(3), 569-80. [PubMed:11583619] [WorldCat] [DOI]
  3. 3.0 3.1 Herr, W., & Cleary, M.A. (1995).
    The POU domain: versatility in transcriptional regulation by a flexible two-in-one DNA-binding domain. Genes & development, 9(14), 1679-93. [PubMed:7622033] [WorldCat] [DOI]
  4. Klemm, J.D., Rould, M.A., Aurora, R., Herr, W., & Pabo, C.O. (1994).
    Crystal structure of the Oct-1 POU domain bound to an octamer site: DNA recognition with tethered DNA-binding modules. Cell, 77(1), 21-32. [PubMed:8156594] [WorldCat] [DOI]
  5. Malik, K.F., Jaffe, H., Brady, J., & Young, W.S. (1997).
    The class III POU factor Brn-4 interacts with other class III POU factors and the heterogeneous nuclear ribonucleoprotein U. Brain research. Molecular brain research, 45(1), 99-107. [PubMed:9105675] [WorldCat] [DOI]
  6. 6.0 6.1 Phillips, K., & Luisi, B. (2000).
    The virtuoso of versatility: POU proteins that flex to fit. Journal of molecular biology, 302(5), 1023-39. [PubMed:11183772] [WorldCat] [DOI]
  7. Reményi, A., Tomilin, A., Schöler, H.R., & Wilmanns, M. (2002).
    Differential activity by DNA-induced quarternary structures of POU transcription factors. Biochemical pharmacology, 64(5-6), 979-84. [PubMed:12213595] [WorldCat] [DOI]
  8. 8.0 8.1 8.2 Andersen, B., & Rosenfeld, M.G. (2001).
    POU domain factors in the neuroendocrine system: lessons from developmental biology provide insights into human disease. Endocrine reviews, 22(1), 2-35. [PubMed:11159814] [WorldCat] [DOI]
  9. Ryan, A.K., & Rosenfeld, M.G. (1997).
    POU domain family values: flexibility, partnerships, and developmental codes. Genes & development, 11(10), 1207-25. [PubMed:9171367] [WorldCat] [DOI]