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''東京工業大学''<br> | |||
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年6月15日 原稿完成日:2013年8月28日<br> | |||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | |||
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{{drugbox | verifiedrevid = 464189734 | {{drugbox | verifiedrevid = 464189734 | ||
| IUPAC_name = ''(R)''-4-(1-hydroxy-<br />2-(methylamino)ethyl)benzene-1,2-diol | | IUPAC_name = ''(R)''-4-(1-hydroxy-<br />2-(methylamino)ethyl)benzene-1,2-diol | ||
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同義語:エピネフリン | 同義語:エピネフリン | ||
{{box|text= | |||
アドレナリンはモノアミンの一種、またカテコールアミンの一種である。生体内において、神経伝達物質またはホルモンとして働く。生体内ではチロシンから合成される。受容体はアドレナリン受容体と呼ばれるファミリーであり、Gタンパク質共役7回膜貫通型である。中枢神経系では、後脳延髄にアドレナリン作動性神経細胞が存在し、そこから視床下部などへ上行性投射、および脊髄へ下行性投射を形成している。 | |||
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== 発見と用語 == | == 発見と用語 == | ||
1893年、[[ | 1893年、[[w:George Oliver (physician)|George Oliver]](イギリス)は[[副腎]](Adrenal gland)に[[薬理学]]的に劇的な効果を持つ物質が含まれることを発見した<ref name="ref1">'''G Oliver, EA Schäfer''' <br> On the physiological action of extract of the suprarenal capsules <br>''J. Physiol. Lond.'':1894;16;i-iv</ref>。1897年、[[w:John Jacob Abel|John Abel]](アメリカ)は[[副腎]]から粗抽出物を調製、これを[[エピネフリン]]と呼んだが<ref name="ref2">''' JJ Abel''' <br> On epinephrin, the active constituent of the suprarenal capsule and its compounds <br>'' Proc. Am. Phys. Soc.'': 1898; 34; 35</ref>、これには生理活性がなかった<ref name="ref3"><pubmed> 10678871</pubmed></ref>。その後、1901年、[[wj:高峰譲吉|高峰譲吉]]と上中啓三は副腎から[[生理活性物質]]を精製した<ref name="ref4">''' J Takamine '''<br> The isolation of the active principle of the suprarenal gland <br>''J. Physiol. Lond.'':1901;27;30P-39P </ref>。これをParke, Davis & CoはAdrenalineという名前で販売した<ref name="ref3" />。 | ||
現在、アドレナリンとエピネフリンという呼称については、国により使用頻度が異なる。歴史的にはアドレナリンの方が正しい呼称と考えられ、欧州ではアドレナリンの方が一般的である。しかし、米国の、特に医学分野では、John Abelの影響の名残でエピネフリンの方が一般的である。日本では2006年の第十五改正日本薬局方よりアドレナリンが一般名称となった。 | 現在、アドレナリンとエピネフリンという呼称については、国により使用頻度が異なる。歴史的にはアドレナリンの方が正しい呼称と考えられ、欧州ではアドレナリンの方が一般的である。しかし、米国の、特に医学分野では、John Abelの影響の名残でエピネフリンの方が一般的である。日本では2006年の第十五改正日本薬局方よりアドレナリンが一般名称となった。 | ||
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== 構造 == | == 構造 == | ||
[[カテコール]]基と[[ | [[カテコール]]基と[[wj:二級アミノ基|二級アミノ基]]をもつ、[[カテコールアミン]][[神経伝達物質]]の一種。また、[[ドーパミン]]、[[セロトニン]]、[[ヒスタミン]]などとともに[[モノアミン系]]神経伝達物質のグループを形成する。 | ||
== 合成 == | == 合成 == | ||
[[Image:2AD fig2.jpg|thumb|250px|''' | [[Image:2AD fig2.jpg|thumb|250px|'''図1. アドレナリン生合成経路''']] | ||
脳の一部の神経細胞、および[[副腎髄質]]中にある[[クロム親和性細胞]]において合成される(図2) | 脳の一部の神経細胞、および[[副腎髄質]]中にある[[クロム親和性細胞]]において合成される(図2)。[[wj:生合成|生合成]]に関わる[[wj:酵素|酵素]]は以下の通り。 <br> | ||
*'''[[チロシン水酸化酵素]] (tyrosine hydroxylase, TH):'''EC 1.14.16. | *'''[[チロシン水酸化酵素]] (tyrosine hydroxylase, TH):'''EC 1.14.16.2。[[チロシン]]より[[L-DOPA]] (L-3,4-dihydroxyphenylalanine)を合成する<ref name="ref5"><pubmed> 14216443 </pubmed></ref> <ref name="ref6"><pubmed> 15569247 </pubmed></ref> <ref name="ref7"><pubmed> 21176768 </pubmed></ref>。反応には、[[テトラヒドロビオプテリン]] (tetrahydrobiopterin), O<sub>2</sub>, Fe<sup>2+</sup>が必要。カテコールアミン合成において、[[wj:律速段階|律速段階]]の酵素であると考えられている。その活性制御は、主にタンパク質の量と、[[リン酸化]]による。全てのカテコールアミン産生細胞に存在する。[[wj:補因子|補因子]]であるテトラヒドロビオプテリンはGTPより合成される。律速酵素は[[GTPシクロヒドラーゼI]] (GTP cyclohydrolase I)である<ref name="ref8"><pubmed> 10727395 </pubmed></ref>。<br> | ||
*'''[[芳香族アミノ酸脱炭酸酵素]] (aromatic L-amino acid decarboxylase, AADC)''':EC 4.1.1.28。L-DOPAよりドーパミンを合成する。他に、この酵素は[[5-ヒドロキシトリプトファン]] (5-hydroxytryptophan)からセロトニン(5-hydroxytryptamine, 5-HT)を合成する反応も触媒する。[[ | *'''[[芳香族アミノ酸脱炭酸酵素]] (aromatic L-amino acid decarboxylase, AADC)''':EC 4.1.1.28。L-DOPAよりドーパミンを合成する。他に、この酵素は[[5-ヒドロキシトリプトファン]] (5-hydroxytryptophan)からセロトニン(5-hydroxytryptamine, 5-HT)を合成する反応も触媒する。[[wj:ピリドキサールリン酸|ピリドキサールリン酸]] (pyridoxal phosphate)が必要。全てのカテコールアミン産生細胞に存在する<ref name="ref9"><pubmed> 8897471</pubmed></ref>。<br> | ||
*'''[[ドーパミンβ水酸化酵素]] (dopamine β-hydroxylase, DBH)''':EC 1.14.2.1。ドーパミンよりノルアドレナリンを合成する。[[ | *'''[[ドーパミンβ水酸化酵素]] (dopamine β-hydroxylase, DBH)''':EC 1.14.2.1。ドーパミンよりノルアドレナリンを合成する。[[wj:アスコルビン酸|アスコルビン酸]]、O<sub>2</sub>、Cu<sup>2+</sup>が必要。ノルアドレナリン、アドレナリン産生細胞の[[シナプス小胞]]の中に存在し、シナプス小胞に取り込まれたドーパミンをノルアドレナリンに変換する<ref name="ref10"><pubmed> 6998654 </pubmed></ref>。 | ||
*'''[[フェニルエタノールアミン-N-メチル基転移酵素]] (phenylethanolamine N-methyltransferase, PNMT):'''EC 2.1.1.28。ノルアドレナリンのアミノ基にメチル基を付加し、アドレナリンを生合成する。メチル基のドナーとして[[ | *'''[[フェニルエタノールアミン-N-メチル基転移酵素|フェニルエタノールアミン-''N''-メチル基転移酵素]] (phenylethanolamine ''N''-methyltransferase, PNMT):'''EC 2.1.1.28。ノルアドレナリンのアミノ基にメチル基を付加し、アドレナリンを生合成する。メチル基のドナーとして[[wj:S-アデノシルメチオニン|S-アデノシルメチオニン]] (S-adenosylmethione)が必要。[[wj:ヒト|ヒト]]では一つの遺伝子があり、[[wj:転写|転写]]産物は副腎髄質に多く、[[wj:心臓|心臓]]、および[[脳幹]]にも存在する<ref name="ref11"><pubmed> 12438093 </pubmed></ref>。PNMTは[[wj:細胞質|細胞質]]に局在するが、[[シナプス顆粒]]内にもあるとの説もある<ref name="ref12"><pubmed> 4615087</pubmed></ref>。そのため、アドレナリンの生合成が、細胞質で起きるのか、ノルアドレナリンが合成された顆粒内で起きるのかについては、まだはっきりと分かっていない。 | ||
== 放出、再取り込み == | == 放出、再取り込み == | ||
アドレナリンの前駆体であるドーパミンは[[小胞型モノアミントランスポーター]] | アドレナリンの前駆体であるドーパミンは[[小胞型モノアミントランスポーター]]([[vesicular monoamine transporter]]、[[vMAT]])により[[シナプス小胞]]内に輸送される。[[vMAT1]]は主に副腎の[[クロム親和性細胞]]、[[vMAT2]]は神経細胞で発現している。vMATはH<sup>+</sup>との[[交換輸送]]によりモノアミンを[[小胞]]内に蓄積させる<ref name="ref13"><pubmed> 11099462 </pubmed></ref>。 アドレナリンの放出は他の神経伝達物質と同様に、神経活動依存的、[[カルシウム]]依存的なシナプス小胞の[[エキソサイトーシス]]による。 | ||
アドレナリンの再取り込みの機構はまだよく理解されていない。アドレナリン特異的なトランスポーターは、[[wj:ほ乳類|ほ乳類]]では報告されていない。 | |||
== 代謝分解 == | == 代謝分解 == | ||
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アドレナリンの代謝分解には次の二つの酵素が重要である。 | アドレナリンの代謝分解には次の二つの酵素が重要である。 | ||
*'''[[モノアミン酸化酵素]] | *'''[[モノアミン酸化酵素]]([[monoamine oxidase]], [[MAO]])''':MAOはモノアミンのアミノ基を[[wj:アルデヒド|アルデヒド]]基に酸化する。MAOは[[ミトコンドリア]]外膜に局在して存在し、細胞内のアドレナリン(再取込みされたものを含む)の分解に関与する。ただしMAOに比べてvMAT2の方がアドレナリンに対する親和性がずっと高いため、シナプス小胞への取り込みの方がMAOによる分解よりも優先されると考えられる<ref name="ref14"><pubmed> 16552415</pubmed></ref>。MAOには[[MAO-A]]と[[MAO-B]]があり、二つの別の遺伝子によりコードされている。MAO-AとMAO-Bはモノアミン作動性神経細胞および[[グリア細胞]]に発現しているが、発現量は細胞の種類により異なり、また動物種によっても違いが見られる<ref name="ref14" />。 | ||
*'''[[カテコール-O-メチル基転移酵素|カテコール-''O''-メチル基転移酵素]] | *'''[[カテコール-O-メチル基転移酵素|カテコール-''O''-メチル基転移酵素]]([[catechol-O-methyltransferase|catechol-''O''-methyltransferase]], [[COMT]])''':これはカテコール基の[[wj:メタ|メタ]]位[[wj:水酸基|水酸基]]に[[wj:メチル基|メチル基]]を転移させる。[[wj:腎臓|腎臓]]や[[wj:肝臓|肝臓]]に豊富だが、カテコールアミン作動性神経細胞の投射先においても発現している。細胞外で働くと考えられている<ref name="ref21846718"><pubmed> 21846718 </pubmed></ref>。 | ||
脳においてアドレナリンの多くは、[[ノルアドレナリン]]と同様、MAO、[[アルデヒド還元酵素]]、およびCOMTにより[[w:3-Methoxy-4-hydroxyphenylglycol|3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニルグリコール]] (3-methoxy-4-hydroxyphenylglycol, MHPG)へ代謝され、さらに[[w:Vanillylmandelic acid|3-メトキシ-4-ヒドロキシマンデル酸]] (3-methoxy-4-hydroxymandelic acid) (または[[w:Vanillylmandelic acid|バニリルマンデル酸]], vanillylmandelic acid, VMA)となって尿中に排出される<ref name="ref15">'''D E Golan, A H Tashjian Jr, E J Armstrong, A W Armstrong'''<br> Principles of Pharmacology, Second Edition<br>''Wolters Kluwer Health (Philadelphia)'':2002</ref>。MHPGの硫酸化物も尿中に排出される<ref name="ref15" />。 | |||
== 主たる投射系と機能 == | == 主たる投射系と機能 == | ||
===中枢神経系=== | |||
[[中枢神経系]]におけるアドレナリン作動性の神経細胞は、主に次の三つの部位にある。 | |||
[[Image:2AD fig3.jpg|thumb|250px|'''図2 アドレナリン投射経路'''<br>C1-3: アドレナリン作動性神経細胞核C1-3、CTX: [[大脳皮質]]、H: [[視床下部]]、HF: [[海馬]]、LC: [[青斑核]]、OB: [[嗅球]]]] | |||
*C1:延髄の腹外側にありノルアドレナリン作動性神経細胞核A1に近接する。尾側の細胞群は、視床下部に上行性投射をし、循環器系や内分泌系の調節を行う。吻側の細胞群は、[[脊髄]]に下行性投射をし、[[交感神経]]の[[節前線維]]を形成する<ref name=ref18><pubmed> 19342614 </pubmed></ref><ref name=ref19>'''E R Kandel, J H Schwartz, T M Jessell'''<br> Principles of Neural Science, Fourth Edition<br>''Mc Graw Hill (New York)'':2000</ref>。 | |||
*C2:延髄の背側にありノルアドレナリン作動性神経細胞核A2と一部重なる。C1、C2共に[[視床下部室傍核]]に上行性投射をし、[[wj:循環器|循環器]]系や[[wj:内分泌|内分泌]]系の調節を行う<ref name=ref19 />。 | |||
*C3:延髄の吻側正中線近傍に位置し、視床下部、[[青斑核]]などに上行性投射、脊髄に下降性投射を行う<ref name=ref18 /><ref name=ref19 /><ref name=ref20><pubmed> 22237784 </pubmed></ref>。 | |||
===末梢神経系=== | |||
末梢神経系の[[節後神経]]細胞は、ノルアドレナリンと共にアドレナリン作動性でもある。脊髄中の[[節前神経細胞]]より[[アセチルコリン]]性の入力を受け、ノルアドレナリン性の出力を[[wj:内臓|内臓]]器官に与える。その結果、[[wj:血管|血管]]の収縮、[[wj:血圧|血圧]]の上昇、[[wj:心拍数|心拍数]]の増加、などを引き起こす。 | |||
== 受容体 == | == 受容体 == | ||
アドレナリンはノルアドレナリンと共にアドレナリン受容体(adrenergic receptorまたはadrenoceptor)に結合し活性化する。αおよびβのサブファミリーからなる。より細かくは、α<sub>1A</sub>-α<sub>1D</sub>、α<sub>2A</sub>-α<sub>2C</sub>、β<sub>1-</sub>β<sub>3</sub>、から構成されている。いずれも三量体[[ | アドレナリンはノルアドレナリンと共にアドレナリン受容体(adrenergic receptorまたはadrenoceptor)に結合し活性化する。αおよびβのサブファミリーからなる。より細かくは、α<sub>1A</sub>-α<sub>1D</sub>、α<sub>2A</sub>-α<sub>2C</sub>、β<sub>1-</sub>β<sub>3</sub>、から構成されている。いずれも三量体[[Gタンパク質共役型受容体]]である。α<sub>1</sub>はG<sub>q</sub>、α<sub>2</sub>はG<sub>i</sub>、β<sub>1</sub>-β<sub>3</sub>はG<sub>s</sub>と共役している。 | ||
[[末梢神経系]]において、アドレナリンは、低濃度ではβ<sub>1</sub>およびβ<sub>2</sub>アドレナリン受容体に作用し、高濃度ではα<sub>1</sub>を介した作用が主となる。(ノルアドレナリンはα<sub>1</sub>およびβ<sub>1</sub>アドレナリン受容体のアゴニストとして作用する。) | |||
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! 主な作用 | ! 主な作用 | ||
! 細胞内シグナル | ! 細胞内シグナル | ||
! style="white-space:nowrap" | [[ | ! style="white-space:nowrap" | [[w:Adrenergic agonist|アゴニスト]] | ||
! style="white-space:nowrap" | [[ | ! style="white-space:nowrap" | [[w:Adrenergic antagonist|アンタゴニスト]] | ||
|- | |- | ||
| style="white-space:nowrap" | [[ | | style="white-space:nowrap" | [[w:Α1 adrenergic receptor|α<sub>1</sub>]]:<br>[[w:Alpha-1A adrenergic receptor|A]], [[w:Alpha-1B adrenergic receptor|B]], [[w:Alpha-1D adrenergic receptor|D]]<sup>†</sup> | ||
| style="white-space:nowrap" | [[ノルアドレナリン]] > [[アドレナリン]] >> [[イソプレナリン]] | | style="white-space:nowrap" | [[ノルアドレナリン]] > [[アドレナリン]] >> [[イソプレナリン]] | ||
| [[ | | [[wj:平滑筋|平滑筋]]収縮 | ||
| [[Gq alpha subunit|G<sub>q</sub>]]: [[ホスホリパーゼC]] (PLC) 活性化により[[イノシトール3リン酸]]と[[ジアシルグリセロール]]、細胞内[[カルシウム]]の上昇 | | [[Gq alpha subunit|G<sub>q</sub>]]: [[ホスホリパーゼC]] (PLC) 活性化により[[イノシトール3リン酸]]と[[ジアシルグリセロール]]、細胞内[[カルシウム]]の上昇 | ||
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*[[アルフゾシン]] | *[[アルフゾシン]] | ||
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*[[フェントラミン]] | *[[フェントラミン]] | ||
*[[プラゾシン]] | *[[プラゾシン]] | ||
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| [[Α2 adrenergic receptor|α<sub>2</sub>]]:<br>[[Alpha-2A adrenergic receptor|A]], [[Alpha-2B adrenergic receptor|B]], [[Alpha-2C adrenergic receptor|C]] | | [[Α2 adrenergic receptor|α<sub>2</sub>]]:<br>[[Alpha-2A adrenergic receptor|A]], [[Alpha-2B adrenergic receptor|B]], [[Alpha-2C adrenergic receptor|C]] | ||
| [[アドレナリン]] ≥ [[ノルアドレナリン]] >> [[イソプレナリン]] | | [[アドレナリン]] ≥ [[ノルアドレナリン]] >> [[イソプレナリン]] | ||
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| [[Gi alpha subunit|G<sub>i</sub>]]: [[アデニル酸シクラーゼ]]抑制, [[サイクリックAMP|cAMP]]減少 | | [[Gi alpha subunit|G<sub>i</sub>]]: [[アデニル酸シクラーゼ]]抑制, [[サイクリックAMP|cAMP]]減少 | ||
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*[[サルブタモール]] | *[[サルブタモール]] | ||
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| [[Beta-3 adrenergic receptor|β<sub>3</sub>]] | | [[Beta-3 adrenergic receptor|β<sub>3</sub>]] | ||
| [[イソプレナリン]] = [[ノルアドレナリン]] > [[アドレナリン]] | | [[イソプレナリン]] = [[ノルアドレナリン]] > [[アドレナリン]] | ||
| [[ | | [[wj:脂肪|脂肪]]代謝亢進、[[wj:膀胱|膀胱]]排尿筋弛緩 | ||
| [[Gs alpha subunit|G<sub>s</sub>]]: [[アデニル酸シクラーゼ]]活性化、[[サイクリックAMP|cAMP]]上昇 | | [[Gs alpha subunit|G<sub>s</sub>]]: [[アデニル酸シクラーゼ]]活性化、[[サイクリックAMP|cAMP]]上昇 | ||
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'''表 アドレナリン性受容体''' Wikipedia項目[[ | '''表 アドレナリン性受容体''' Wikipedia項目[[w:Adrenergic Receptor|Adrenergic Receptor]]から翻訳、修正の上転載。 <sup>†</sup>α<sub>1C</sub>受容体と呼ばれる物は、存在しない。 | ||
== 関連項目 == | == 関連項目 == | ||
*[[モノアミン]] | *[[モノアミン]] | ||
*[[カテコールアミン]] | *[[カテコールアミン]] | ||
*[[ノルアドレナリン]] | *[[ノルアドレナリン]] | ||
*[[副腎髄質]] | *[[副腎髄質]] | ||
*[[交感神経]] | *[[交感神経]] | ||
== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
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<references /> | |||
2022年12月1日 (木) 08:16時点における最新版
徳岡 宏文、一瀬 宏
東京工業大学
DOI:10.14931/bsd.1885 原稿受付日:2012年6月15日 原稿完成日:2013年8月28日
担当編集委員:林 康紀(独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)
Systematic (IUPAC) name | |
---|---|
(R)-4-(1-hydroxy- 2-(methylamino)ethyl)benzene-1,2-diol | |
Clinical data | |
AHFS/Drugs.com | monograph |
MedlinePlus | a603002 |
Pregnancy cat. | A (AU) C (US) |
Legal status | Prescription Only (S4) (AU) POM (UK) ℞-only (US) |
Routes | IV, IM, endotracheal, IC |
Pharmacokinetic data | |
Bioavailability | Nil (oral) |
Metabolism | adrenergic synapse (MAO and COMT) |
Half-life | 2 minutes |
Excretion | Urine |
Identifiers | |
CAS number | 51-43-4 |
ATC code | A01AD01 B02BC09 (WHO) C01CA24 (WHO) R01AA14 (WHO) R03AA01 (WHO) S01EA01 (WHO) |
PubChem | CID 5816 |
IUPHAR ligand | 509 |
DrugBank | DB00668 |
ChemSpider | 5611 |
UNII | YKH834O4BH |
KEGG | D00095 |
ChEBI | CHEBI:28918 |
ChEMBL | CHEMBL679 |
Chemical data | |
Formula | C9H13NO3 |
Mol. mass | 183.204 g/mol |
SMILES | eMolecules & PubChem |
| |
(what is this?) (verify) |
英:adrenaline, epinephrine 独:Adrenalin, Epinephrin 仏:adrénaline, épinéphrine 略称:Ad, EP
同義語:エピネフリン
アドレナリンはモノアミンの一種、またカテコールアミンの一種である。生体内において、神経伝達物質またはホルモンとして働く。生体内ではチロシンから合成される。受容体はアドレナリン受容体と呼ばれるファミリーであり、Gタンパク質共役7回膜貫通型である。中枢神経系では、後脳延髄にアドレナリン作動性神経細胞が存在し、そこから視床下部などへ上行性投射、および脊髄へ下行性投射を形成している。
発見と用語
1893年、George Oliver(イギリス)は副腎(Adrenal gland)に薬理学的に劇的な効果を持つ物質が含まれることを発見した[1]。1897年、John Abel(アメリカ)は副腎から粗抽出物を調製、これをエピネフリンと呼んだが[2]、これには生理活性がなかった[3]。その後、1901年、高峰譲吉と上中啓三は副腎から生理活性物質を精製した[4]。これをParke, Davis & CoはAdrenalineという名前で販売した[3]。
現在、アドレナリンとエピネフリンという呼称については、国により使用頻度が異なる。歴史的にはアドレナリンの方が正しい呼称と考えられ、欧州ではアドレナリンの方が一般的である。しかし、米国の、特に医学分野では、John Abelの影響の名残でエピネフリンの方が一般的である。日本では2006年の第十五改正日本薬局方よりアドレナリンが一般名称となった。
構造
カテコール基と二級アミノ基をもつ、カテコールアミン神経伝達物質の一種。また、ドーパミン、セロトニン、ヒスタミンなどとともにモノアミン系神経伝達物質のグループを形成する。
合成
脳の一部の神経細胞、および副腎髄質中にあるクロム親和性細胞において合成される(図2)。生合成に関わる酵素は以下の通り。
- チロシン水酸化酵素 (tyrosine hydroxylase, TH):EC 1.14.16.2。チロシンよりL-DOPA (L-3,4-dihydroxyphenylalanine)を合成する[5] [6] [7]。反応には、テトラヒドロビオプテリン (tetrahydrobiopterin), O2, Fe2+が必要。カテコールアミン合成において、律速段階の酵素であると考えられている。その活性制御は、主にタンパク質の量と、リン酸化による。全てのカテコールアミン産生細胞に存在する。補因子であるテトラヒドロビオプテリンはGTPより合成される。律速酵素はGTPシクロヒドラーゼI (GTP cyclohydrolase I)である[8]。
- 芳香族アミノ酸脱炭酸酵素 (aromatic L-amino acid decarboxylase, AADC):EC 4.1.1.28。L-DOPAよりドーパミンを合成する。他に、この酵素は5-ヒドロキシトリプトファン (5-hydroxytryptophan)からセロトニン(5-hydroxytryptamine, 5-HT)を合成する反応も触媒する。ピリドキサールリン酸 (pyridoxal phosphate)が必要。全てのカテコールアミン産生細胞に存在する[9]。
- ドーパミンβ水酸化酵素 (dopamine β-hydroxylase, DBH):EC 1.14.2.1。ドーパミンよりノルアドレナリンを合成する。アスコルビン酸、O2、Cu2+が必要。ノルアドレナリン、アドレナリン産生細胞のシナプス小胞の中に存在し、シナプス小胞に取り込まれたドーパミンをノルアドレナリンに変換する[10]。
- フェニルエタノールアミン-N-メチル基転移酵素 (phenylethanolamine N-methyltransferase, PNMT):EC 2.1.1.28。ノルアドレナリンのアミノ基にメチル基を付加し、アドレナリンを生合成する。メチル基のドナーとしてS-アデノシルメチオニン (S-adenosylmethione)が必要。ヒトでは一つの遺伝子があり、転写産物は副腎髄質に多く、心臓、および脳幹にも存在する[11]。PNMTは細胞質に局在するが、シナプス顆粒内にもあるとの説もある[12]。そのため、アドレナリンの生合成が、細胞質で起きるのか、ノルアドレナリンが合成された顆粒内で起きるのかについては、まだはっきりと分かっていない。
放出、再取り込み
アドレナリンの前駆体であるドーパミンは小胞型モノアミントランスポーター(vesicular monoamine transporter、vMAT)によりシナプス小胞内に輸送される。vMAT1は主に副腎のクロム親和性細胞、vMAT2は神経細胞で発現している。vMATはH+との交換輸送によりモノアミンを小胞内に蓄積させる[13]。 アドレナリンの放出は他の神経伝達物質と同様に、神経活動依存的、カルシウム依存的なシナプス小胞のエキソサイトーシスによる。
アドレナリンの再取り込みの機構はまだよく理解されていない。アドレナリン特異的なトランスポーターは、ほ乳類では報告されていない。
代謝分解
アドレナリンの代謝分解には次の二つの酵素が重要である。
- モノアミン酸化酵素(monoamine oxidase, MAO):MAOはモノアミンのアミノ基をアルデヒド基に酸化する。MAOはミトコンドリア外膜に局在して存在し、細胞内のアドレナリン(再取込みされたものを含む)の分解に関与する。ただしMAOに比べてvMAT2の方がアドレナリンに対する親和性がずっと高いため、シナプス小胞への取り込みの方がMAOによる分解よりも優先されると考えられる[14]。MAOにはMAO-AとMAO-Bがあり、二つの別の遺伝子によりコードされている。MAO-AとMAO-Bはモノアミン作動性神経細胞およびグリア細胞に発現しているが、発現量は細胞の種類により異なり、また動物種によっても違いが見られる[14]。
- カテコール-O-メチル基転移酵素(catechol-O-methyltransferase, COMT):これはカテコール基のメタ位水酸基にメチル基を転移させる。腎臓や肝臓に豊富だが、カテコールアミン作動性神経細胞の投射先においても発現している。細胞外で働くと考えられている[15]。
脳においてアドレナリンの多くは、ノルアドレナリンと同様、MAO、アルデヒド還元酵素、およびCOMTにより3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニルグリコール (3-methoxy-4-hydroxyphenylglycol, MHPG)へ代謝され、さらに3-メトキシ-4-ヒドロキシマンデル酸 (3-methoxy-4-hydroxymandelic acid) (またはバニリルマンデル酸, vanillylmandelic acid, VMA)となって尿中に排出される[16]。MHPGの硫酸化物も尿中に排出される[16]。
主たる投射系と機能
中枢神経系
中枢神経系におけるアドレナリン作動性の神経細胞は、主に次の三つの部位にある。
- C1:延髄の腹外側にありノルアドレナリン作動性神経細胞核A1に近接する。尾側の細胞群は、視床下部に上行性投射をし、循環器系や内分泌系の調節を行う。吻側の細胞群は、脊髄に下行性投射をし、交感神経の節前線維を形成する[17][18]。
- C2:延髄の背側にありノルアドレナリン作動性神経細胞核A2と一部重なる。C1、C2共に視床下部室傍核に上行性投射をし、循環器系や内分泌系の調節を行う[18]。
- C3:延髄の吻側正中線近傍に位置し、視床下部、青斑核などに上行性投射、脊髄に下降性投射を行う[17][18][19]。
末梢神経系
末梢神経系の節後神経細胞は、ノルアドレナリンと共にアドレナリン作動性でもある。脊髄中の節前神経細胞よりアセチルコリン性の入力を受け、ノルアドレナリン性の出力を内臓器官に与える。その結果、血管の収縮、血圧の上昇、心拍数の増加、などを引き起こす。
受容体
アドレナリンはノルアドレナリンと共にアドレナリン受容体(adrenergic receptorまたはadrenoceptor)に結合し活性化する。αおよびβのサブファミリーからなる。より細かくは、α1A-α1D、α2A-α2C、β1-β3、から構成されている。いずれも三量体Gタンパク質共役型受容体である。α1はGq、α2はGi、β1-β3はGsと共役している。
末梢神経系において、アドレナリンは、低濃度ではβ1およびβ2アドレナリン受容体に作用し、高濃度ではα1を介した作用が主となる。(ノルアドレナリンはα1およびβ1アドレナリン受容体のアゴニストとして作用する。)
受容体 | アゴニスト選択性 | 主な作用 | 細胞内シグナル | アゴニスト | アンタゴニスト |
---|---|---|---|---|---|
α1: A, B, D† |
ノルアドレナリン > アドレナリン >> イソプレナリン | 平滑筋収縮 | Gq: ホスホリパーゼC (PLC) 活性化によりイノシトール3リン酸とジアシルグリセロール、細胞内カルシウムの上昇 |
(α1アゴニスト) |
|
α2: A, B, C |
アドレナリン ≥ ノルアドレナリン >> イソプレナリン | 自己受容体活性化による神経伝達物質放出減少 心筋弛緩、血小板活性化 |
Gi: アデニル酸シクラーゼ抑制, cAMP減少 |
(α2アゴニスト) |
|
β1 | イソプレナリン > アドレナリン = ノルアドレナリン | 心筋収縮 | Gs: アデニル酸シクラーゼ活性化、cAMP上昇 |
(β1アゴニスト) |
|
β2 | イソプレナリン > アドレナリン >> ノルアドレナリン | 平滑筋弛緩 | Gs: アデニル酸シクラーゼ活性化、cAMP上昇 (Giと共役することもある) |
(β2アゴニスト) |
|
β3 | イソプレナリン = ノルアドレナリン > アドレナリン | 脂肪代謝亢進、膀胱排尿筋弛緩 | Gs: アデニル酸シクラーゼ活性化、cAMP上昇 |
表 アドレナリン性受容体 Wikipedia項目Adrenergic Receptorから翻訳、修正の上転載。 †α1C受容体と呼ばれる物は、存在しない。
関連項目
参考文献
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