「機能局在」の版間の差分
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ヒトを含む[[霊長類]]の大脳皮質における機能局在として最も明らかになっているのは、[[後頭葉]]の[[一次視覚野]]をはじめとして、後頭葉のみならず[[側頭葉]]や[[頭頂葉]]に数多くの[[視覚]]領域が存在することであり、それぞれの視覚野には形態や色情報の処理から物体認知、また視覚空間の位置や運動情報の処理など独自の機能を有していることである。さらに、ヒトでは左右半球間に機能差があることが知られている。そのうち最も有名なのは、大多数のヒトでは左半球に[[言語野]]が存在することである。左[[中大脳動脈]]の血管障害によって[[前頭前野]]が傷害されることで発語傷害(運動性失語)が生じることを[[wikipedia:ja:フランス|フランス]]の神経学者の[[wikipedia:ja:ピエール・ポール・ブローカ|ブローカ]]が報告し、この領域が[[ブローカの運動言語]]中枢と呼ばれている。[[言語中枢]]を含め<ref name=ref6><pubmed> 12165479 </pubmed></ref>、ヒト脳の多彩な機能局在が近年の[[機能的MRI]]によるイメージングなどによって報告されている<ref name=ref6 />。 | |||
これらの機能局在は第一義的にはそれぞれの領野の他の脳部位との結合の違いにより生まれると考えられるが、機能の違いによりそれぞれ独特の細胞の性質や局所回路の性質が生じている可能性もある。 | |||
== 関連項目== | == 関連項目== | ||
*[[大脳皮質]] | *[[大脳皮質]] | ||
*[[ブロードマンの脳地図]] | *[[ブロードマンの脳地図]] | ||
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== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
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2015年6月28日 (日) 08:50時点における最新版
蔵田 潔
弘前大学 大学院医学研究科 統合機能生理学講座
DOI:10.14931/bsd.966 原稿受付日:2012年12月6日 原稿完成日:2015年6月28日
担当編集委員:田中 啓治(独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)
英語名:Functional localization 独:funktionelle Lokalisierung 仏:localisation fonctionnelle
中枢神経系の各部位が様々な領域に細分類され、それぞれ異なる働きを担っていることをいう。例えば大脳皮質は、細胞構築の差により52領域に細分類され、それぞれが異なった機能を担っている。
脳は共通素子である神経細胞で構成される神経回路によって機能を発揮しているが、特に大脳皮質では細胞構築の違いにより区別される多くの領域から構成され、それぞれの領域には固有の機能が局在していることが知られている。機能局在は大脳皮質に限らず、脳の基本構成原理であると考えられる。例えば、脊髄においても、分節ごとに頚髄では手の、また腰髄では足の体性感覚および運動機能を有するという機能の体部位局在を有している。このような機能局在は中枢神経の全領域にわたって存在しているが、機能分化が著しいのは大脳皮質である。
霊長類ではより高等になるほど新皮質の発達が著明であり、新皮質が大脳皮質の大半を占めているが、新皮質内では機能局在の多様な分化が進んでいる。新皮質は基本的に6層の細胞構築からなっているが、層構造は領域ごとに少しずつ異なっている。細胞構築分類と呼ばれる大脳新皮質の分類は19世紀の初頭以来、多くの研究者によって行われてきている。ヒト脳の細胞構築分類の中で最も有名なのはブロードマン(Brodmann)の分類であり、今日に至るまで広く用いられている文献[1]。ブロードマン分類によればヒト大脳皮質は52の領域に分類されている。その後の電気刺激や傷害実験に始まる様々な研究により、ブロードマン分類による個々の領域が機能的に特異性を有していることが確認されている。同様の細胞構築分類はサルの脳でも使われているが、ブロードマン分類以外にいくつかの細胞構築分類があることに加え、シトクローム酸化酵素などの標識物質による分類や、解剖学的な神経結合に基づく分類などが併用されている[2][3][4]。
ヒトを含む霊長類の大脳皮質における機能局在として最も明らかになっているのは、後頭葉の一次視覚野をはじめとして、後頭葉のみならず側頭葉や頭頂葉に数多くの視覚領域が存在することであり、それぞれの視覚野には形態や色情報の処理から物体認知、また視覚空間の位置や運動情報の処理など独自の機能を有していることである。さらに、ヒトでは左右半球間に機能差があることが知られている。そのうち最も有名なのは、大多数のヒトでは左半球に言語野が存在することである。左中大脳動脈の血管障害によって前頭前野が傷害されることで発語傷害(運動性失語)が生じることをフランスの神経学者のブローカが報告し、この領域がブローカの運動言語中枢と呼ばれている。言語中枢を含め[5]、ヒト脳の多彩な機能局在が近年の機能的MRIによるイメージングなどによって報告されている[5]。
これらの機能局在は第一義的にはそれぞれの領野の他の脳部位との結合の違いにより生まれると考えられるが、機能の違いによりそれぞれ独特の細胞の性質や局所回路の性質が生じている可能性もある。
関連項目
参考文献
- ↑ 1.0 1.1 Brodmann, K.
Vergleichende Lokalizationlehre der Grosshirnrinde in ihren Prinzipien dargestellt auf Grund des Zellenbaues
J.A. Barth, Leipzig.1909 - ↑ von Bonin, G., and P. Bailey
The Neocortex of Macaca Mulatta
University of Illinois Press, Urbana.1947 - ↑
Rizzolatti, G., & Luppino, G. (2001).
The cortical motor system. Neuron, 31(6), 889-901. [PubMed:11580891] [WorldCat] [DOI] - ↑
Van Essen, D.C., Anderson, C.H., & Felleman, D.J. (1992).
Information processing in the primate visual system: an integrated systems perspective. Science (New York, N.Y.), 255(5043), 419-23. [PubMed:1734518] [WorldCat] [DOI] - ↑ 5.0 5.1
Hashimoto, R., & Sakai, K.L. (2002).
Specialization in the left prefrontal cortex for sentence comprehension. Neuron, 35(3), 589-97. [PubMed:12165479] [WorldCat] [DOI]