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|+表.神経ペプチド一覧 [http://www.neuropeptides.nl/ Neuropeptide Database]より<ref name=ref3 /><ref name=ref5 /> | |+表.神経ペプチド一覧 [http://www.neuropeptides.nl/ Neuropeptide Database]より<ref name=ref3 /><ref name=ref5 /> | ||
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2025年10月6日 (月) 13:21時点における最新版
加藤 昌克
東京医療学院大学
DOI: 10.14931/bsd.807 原稿受付日:2012年3月16日 原稿完成日:2015年11月24日
担当編集委員:河西 春郎(東京大学 大学院医学系研究科)
英:neuropeptide 独:Neuropeptide 仏:neuropeptide
発見の歴史と日本人の貢献
ロジェ・ギルマン(R. Guillemin)とアンドルー・ウィクター・シャリー(A. V. Schally)が、「脳のペプチドホルモン産生に関する発見」で、1977年にノーベル賞を受けている。彼らは何万もの豚の脳から生理活性を指標にペプチドを単離した。その研究において有村章(A. Arimura)、松尾壽之(H. Matsuo)らが重要な役割を演じている。また、「ペプチドホルモンの放射性同位元素標識免疫検定法(radioimmunoassay, RIA)の開発」でロサリン・ヤロー(R. S. Yalow)が同時受賞している。これらの発見と技術開発はペプチドの研究、特に内分泌学に革命的な変化をもたらした。その後、脳や腸管から多くのペプチドが単離され、C末端のアミド化された構造が多くのペプチドに共通することが明らかになった。V. Muttと立元一彦(K. Tatemoto)はその構造に着目し単離する化学的方法を開発した [1]。この方法によりニューロペプチドY(neuropeptide Y; NPY)やガラニン(galanin)などの多くのペプチドが発見された。名称も生理活性ではなく構造から付けられた。例えば、NPYはチロシン(Y)残基を多く含むことによる。また、galaninはグリシン(G)で始まり、アラニンで終わる構造である。近年に至って寒川賢治(K. Kangawa)らがグレリン(ghrelin)を発見している[2]。このような歴史を経て現在までに、90の遺伝子が明らかになり、約100の神経ペプチドが知られるようになった[3][4](表)。
生理作用
神経ペプチドは中枢のみならず末梢神経系にも存在し、細胞間の信号伝達分子として働いている。内分泌機能、生殖や摂食の調節、学習や記憶、痛覚に関与する。たとえば、視床下部ニューロンの多くは神経ペプチドを含有する。オキシトシン(oxytocin, OT)ニューロンとバゾプレシン(vasopressin, VP)ニューロンは視床下部室傍核と視索上核に細胞体をもち、下垂体後葉に投射して後葉ホルモン(OT, VP)を分泌する。VPは抗利尿ホルモン(antidiuretic hormone, ADH)とも呼ばれる。また下垂体前葉を支配するのは正中隆起に軸索を投射する向下垂体ニューロンである。ドーパミンニューロン以外はペプチド含有ニューロンである。それらは、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH、LHRH)、ソマトスタチン(somatostatin)を分泌する。生殖には、GnRH、キスペプチン(kisspeptin)、エンケファリン(enkephalin)などが関与する。摂食の調節にはオレキシン(orexin), agouti-related peptide (AgRP), NPY, プロオピオメラノコルチン (proopiomelanocortin, POMC), コカイン・アンフェタミン調節転写産物 (cocaine and amphetamine regulated transcript, CART), グレリン(ghrelin), メラニン濃縮ホルモン (melanin concentrating hormone, MCH)などのペプチドが関与する。また、学習・記憶に関わる神経ペプチドには、ソマトスタチン、バゾプレシン、ACTH、CRH、α-メラノサイト刺激ホルモン (α-melanocyte stimulating hormone, α-MSH)などが知られている。痛覚に関与するのは、サブスタンスP (substance P)、ニューロキニンA (neurokinin A)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド (CGRP) およびβ-エンドルフィン(β-endorphin)などである。
生合成と作用機構
神経ペプチドは遺伝子にコードされており、転写・翻訳およびプロセッシングによって合成される。合成された神経ペプチドは、シナプス小胞(synaptic vesicle、直径, 50-100 nm)ではなく、分泌小胞(secretory vesicle、直径, 100 nm以上)に貯蔵され開口放出される。放出は軸索末端からだけではなく、細胞体と樹状突起でもおこるが、シナプス部位で放出されるものは少ない。放出されたペプチドは比較的高濃度で細胞間隙に存在する。例えば、視床下部視索上核(supraoptic nucleus, SON)におけるオキシトシンの細胞外濃度は5-20 nMである。しかも半減期が約20分と長い。これは、グルタミン酸における取り込みやアセチルコリンの分解のような不活化機構が存在しないからである。そのために分泌部位から遠く離れたところにまで作用を及ぼすことになる[5]。後葉ホルモンと向下垂体ホルモンは軸索末端から放出されるが、そこにはシナプス構造はなく血管周囲に直接放出され血流で標的部位まで運ばれる。このように神経細胞の性質と内分泌細胞の性質を兼ね備えていることからこれらのニューロンは神経内分泌細胞(neuroendocrine cell)と呼ばれる。また、このような分泌様式を神経分泌(neurosecretion)という。
神経ペプチドの受容体はほとんどが、Gタンパク質共役型でありイオンチャネル型のものはない。したがって、細胞内シグナル伝達系を介して作用する。代表的なものはGsとGiを介するcAMP合成の促進と抑制、GiあるいはGoのGβγによるGIRKチャネル(G-protein-coupled inwardly rectifying potassium channels, Kir3)の活性化、およびGq/11を介するイノシトール-3-リン酸(IP3)とジアシルグリセルール(DAG)の産生である。なお、酵素共役型受容体(グアニル酸シクラーゼ、チロシンキナーゼ)も一部のペプチドでは知られている。
J Peter H Burbachの了承のもとに編集部にて翻訳、改変。
外部リンク
参考文献
- ↑
Tatemoto, K., Carlquist, M., & Mutt, V. (1982).
Neuropeptide Y--a novel brain peptide with structural similarities to peptide YY and pancreatic polypeptide. Nature, 296(5858), 659-60. [PubMed:6896083] [WorldCat] [DOI] - ↑
Kojima, M., Hosoda, H., Date, Y., Nakazato, M., Matsuo, H., & Kangawa, K. (1999).
Ghrelin is a growth-hormone-releasing acylated peptide from stomach. Nature, 402(6762), 656-60. [PubMed:10604470] [WorldCat] [DOI] - ↑ 3.0 3.1 Neuropeptide Database
- ↑ 4.0 4.1
Burbach, J.P. (2010).
Neuropeptides from concept to online database www.neuropeptides.nl. European journal of pharmacology, 626(1), 27-48. [PubMed:19837055] [WorldCat] [DOI] - ↑
Ludwig, M., & Leng, G. (2006).
Dendritic peptide release and peptide-dependent behaviours. Nature reviews. Neuroscience, 7(2), 126-36. [PubMed:16429122] [WorldCat] [DOI]