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山ノ井 | <div align="right"> | ||
<font size="+1">山ノ井 俊宏</font><br> | |||
''大阪大学大学院 連合小児発達学研究科 分子生物遺伝学研究領域''<br> | |||
<font size="+1">[https://researchmap.jp/takeshiyoshimura 吉村 武]</font><br> | |||
''鳥取大学 医学部保健学科 検査技術科学専攻 生体制御学講座''<br> | |||
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2026年6月30日 原稿完成日:2026年8月17日<br> | |||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/read0192882 古屋敷 智之](東京科学大学大学院 医歯学総合研究科 薬理学分野)<br> | |||
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英:spectrin<br> | |||
別名:α-フォドリン(α-fodrin)、β-フォドリン(β-fodrin) | |||
{{box|text= スペクトリンはさまざまな組織で発現する細胞骨格タンパク質である。脳では、スペクトリンは神経細胞における情報出力のトリガーである軸索起始部の主要な構成要素であり、イオンチャネルなどを軸索起始部に集積させる足場タンパク質ankyrin(アンキリン)とともに骨格構造を形成する。スペクトリンの遺伝子変異は血液疾患や精神・神経疾患、神経発達症に関与する。}} | |||
== スペクトリンとは == | |||
[[ファイル:Yamanoi Spectrin Figure1.jpg|サムネイル|'''図1. 赤血球のスペクトリン膜骨格'''<br>[[赤血球]]の[[溶血]]過程と、赤血球[[膜骨格]]を形成する分子群を示す。α-スペクトリンとβ-スペクトリンからなるスペクトリン複合体は、赤血球膜直下で[[アクチン]]などの分子と結合し、網目状の膜骨格構造を形成する。]] | |||
赤血球は、[[血管]]内を循環する過程で繰り返し変形し、さまざまな[[機械的ストレス]]を受ける。また、[[神経細胞]]から伸びる長い突起である[[軸索]]も、張力やねじれなどの機械的ストレスにさらされる。スペクトリンは、[[細胞膜]]直下の裏打ち構造である膜骨格を構成する主要な[[タンパク質]]の一つであり、このような機械的ストレスのもとで細胞の形態や機能を維持するうえで重要な役割を果たす<ref name=Liu2019><pubmed>31191255</pubmed></ref><ref name=Lorenzo2023><pubmed>36697767</pubmed></ref>。 | |||
1968年、溶血によって細胞内成分を失った赤血球([[赤血球ゴースト]])からタンパク質が同定され、幽霊(specter)にちなんでスペクトリンと名付けられた<ref name=Marchesi1968><pubmed>5634911</pubmed></ref>('''図1''')。1979年には、スペクトリンと結合して赤血球の膜裏打ち骨格(膜骨格)を形成するタンパク質が発見され、[[アンキリン]](ankyrin)と名付けられた<ref name=Bennett1979><pubmed>372182</pubmed></ref>。1981年には、非赤血球系の[[培養細胞]]にもスペクトリン様タンパク質が存在することが報告された<ref name=Goodman1981><pubmed>6950399</pubmed></ref>。さらに1982年には、赤血球スペクトリンと[[免疫反応性]]を示す分子が脳内で発見され、[[神経系]]にもスペクトリンが存在することが示された<ref name=Bennett1982><pubmed>6129664</pubmed></ref>。これらの発見を契機として、神経系におけるスペクトリンの分布や機能に関する研究が進められるようになった。 | |||
なお、αII/βII-スペクトリンは従来それぞれα-/β-フォドリンとも呼ばれた。 | |||
== サブユニット == | |||
スペクトリンには、α[[サブユニット]]であるα-スペクトリンと、βサブユニットであるβ-スペクトリンがある。ヒトを含む[[哺乳類]]では、2種類のα-スペクトリン(約280 kDa)と5種類のβ-スペクトリン(約250–290 kDa)が発現している。なお、βV-スペクトリンは他のβ-スペクトリンと比較して著しく大きく、[[分子量]]は約417 kDaである('''表1''')。ヒトでは、SPTA1およびSPTAN1[[遺伝子]]がそれぞれαI-スペクトリンおよびαII-スペクトリンを、SPTB、SPTBN1、SPTBN2、SPTBN4、SPTBN5遺伝子がそれぞれβI-スペクトリン、βII-スペクトリン、βIII-スペクトリン、βIV-スペクトリン、βV-スペクトリンをコードする。 | |||
スペクトリンには多くの[[スプライシングバリアント]]が存在する。[[神経発達]]の初期には、長いβIV-スペクトリン(Σ1)の発現が優勢であるが、発達に伴って、アクチン結合領域を持たない短いβIV-スペクトリン(Σ6)の発現が大きく増加する<ref name=Yoshimura2017><pubmed>28123356</pubmed></ref>。しかし、個々のスプライシングバリアントの機能については、いまだ不明な点が多い。 | |||
== | [[線虫]]や[[ショウジョウバエ]]ではスペクトリンの種類は哺乳類より少なく、α-スペクトリン、β-G-スペクトリン、β-H-スペクトリンが存在する。これらは、それぞれ哺乳類のαII-スペクトリン、βII-スペクトリン、βV-スペクトリンに類似する<ref name=Dubreuil1998><pubmed>9872052</pubmed></ref><ref name=Zhang2013b><pubmed>24302288</pubmed></ref>。 | ||
{| class="wikitable" | |||
|+表1. スペクトリンの主な発現・局在部位と関連疾患 | |||
! 遺伝子名 | |||
! タンパク質名 | |||
! 主な発現・局在部位 | |||
! 関連疾患 | |||
! 引用文献 | |||
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| ''SPTA1'' | |||
| αI-スペクトリン | |||
| 哺乳類の赤血球 | |||
| [[遺伝性球状赤血球症]] | |||
| <ref name=Salomao2006><pubmed>16407147</pubmed></ref><ref name=He2018><pubmed>29402830</pubmed></ref> | |||
|- | |||
| ''SPTAN1'' | |||
| αII-スペクトリン(α-フォドリン) | |||
| [[脳]]を含む多くの組織 | |||
| [[West症候群]]、[[発達性てんかん性脳症]]、一部では[[小脳性運動失調]]や[[痙性対麻痺]] | |||
| <ref name=Ackermann2019><pubmed>31186638</pubmed></ref><ref name=Huang2018><pubmed>29749636</pubmed></ref><ref name=VandeVondel2022><pubmed>35150594</pubmed></ref> | |||
|- | |||
| ''SPTB'' | |||
| βI-スペクトリン | |||
| 赤血球、[[骨格筋]]、[[心筋]]<br>神経細胞では[[樹状突起]]および[[シナプス後肥厚]] | |||
| 遺伝性球状赤血球症 | |||
| <ref name=Lorenzo2023><pubmed>36697767</pubmed></ref><ref name=He2018><pubmed>29402830</pubmed></ref><ref name=Bennett2001><pubmed>11427698</pubmed></ref><ref name=Baines2005><pubmed>15970557</pubmed></ref> | |||
|- | |||
| ''SPTBN1'' | |||
| βII-スペクトリン(β-フォドリン) | |||
| 発生期の骨格筋<br>神経細胞では軸索 | |||
| [[自閉スペクトラム症]]、[[注意欠如・多動症]](ADHD)、[[発達遅滞]]、[[知的発達症]]、[[てんかん]] | |||
| <ref name=Liu2019><pubmed>31191255</pubmed></ref><ref name=Lorenzo2023><pubmed>36697767</pubmed></ref><ref name=Zhou1998><pubmed>9436990</pubmed></ref> | |||
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| ''SPTBN2'' | |||
| βIII-スペクトリン | |||
| 主に脳。他に[[膵臓]]、[[腎臓]]、生殖器系組織、[[皮膚]]<br>[[小脳]][[プルキンエ細胞]]では[[細胞体]]、樹状突起、[[樹状突起スパイン]] | |||
| [[脊髄小脳失調症]] | |||
| <ref name=Lorenzo2023><pubmed>36697767</pubmed></ref><ref name=Perkins2010><pubmed>20371805</pubmed></ref><ref name=Gao2011><pubmed>22090485</pubmed></ref><ref name=Ikeda2006><pubmed>16429157</pubmed></ref> | |||
|- | |||
| ''SPTBN4'' | |||
| βIV-スペクトリン | |||
| 転写産物:脳および[[膵島]]<br>タンパク質:神経細胞の[[軸索起始部]]、[[ランヴィエ絞輪]] | |||
| 知的発達症、[[先天性筋緊張低下]]、[[運動神経]]の軸索障害 | |||
| <ref name=Berghs2000><pubmed>11086001</pubmed></ref><ref name=Wang2018><pubmed>29861105</pubmed></ref> | |||
|- | |||
| ''SPTBN5'' | |||
| βV-スペクトリン | |||
| 小脳、[[脊髄]]、[[心臓]]、[[胃]]、[[光受容細胞]] | |||
| 知的発達症、発達遅滞、[[てんかん発作]]を特徴とする症候群 | |||
| <ref name=Stabach2000><pubmed>10764729</pubmed></ref><ref name=Khan2022><pubmed>35782384</pubmed></ref><ref name=Papal2013><pubmed>23704327</pubmed></ref> | |||
|} | |||
== 発現 == | |||
αI-スペクトリンは、哺乳類の赤血球に発現する<ref name=Salomao2006><pubmed>16407147</pubmed></ref>。一方、非赤血球型のαII-スペクトリンは、脳を含む多くの組織に広く発現する<ref name=Ackermann2019><pubmed>31186638</pubmed></ref>。 | |||
βI-スペクトリンは赤血球、骨格筋、心筋などに発現し、神経細胞では樹状突起およびシナプス後肥厚に局在する<ref name=Lorenzo2023><pubmed>36697767</pubmed></ref><ref name=Bennett2001><pubmed>11427698</pubmed></ref><ref name=Baines2005><pubmed>15970557</pubmed></ref>。βII-スペクトリンは発生期の骨格筋に発現し、神経細胞では軸索に広く分布する<ref name=Liu2019><pubmed>31191255</pubmed></ref><ref name=Zhou1998><pubmed>9436990</pubmed></ref>。βIII-スペクトリンは主に脳で高発現するが、膵臓、腎臓、生殖器系組織、皮膚などでも発現が認められる<ref name=Lorenzo2023><pubmed>36697767</pubmed></ref>。小脳プルキンエ細胞では、βIII-スペクトリンは細胞体および樹状突起に分布し、樹状突起スパインにも局在する<ref name=Perkins2010><pubmed>20371805</pubmed></ref><ref name=Gao2011><pubmed>22090485</pubmed></ref>。βIV-スペクトリンの[[転写]]産物は脳および膵島で認められ、そのタンパク質は神経細胞の軸索起始部およびランヴィエ絞輪に集積する<ref name=Berghs2000><pubmed>11086001</pubmed></ref>。巨大なβV-スペクトリンは、小脳、脊髄、心臓、胃、光受容細胞などで発現する<ref name=Stabach2000><pubmed>10764729</pubmed></ref><ref name=Papal2013><pubmed>23704327</pubmed></ref>。 | |||
[[ファイル:Yamanoi Spectrin Figure2.jpg|サムネイル|'''図2. 軸索起始部におけるスペクトリン膜骨格と関連分子群'''<br>軸索起始部では、アンキリン-Gが[[イオンチャネル]](Nav1やKCNQ2/3)や[[細胞接着分子]](NF186やNrCAM)などと結合し、これらを軸索起始部に集積させる。αII-スペクトリンとβIV-スペクトリンからなるスペクトリン四量体は[[アクチンリング]]を連結し、アンキリン-GはβIV-スペクトリンとの結合を介して、軸索起始部における周期的な膜骨格構造の形成に寄与する。]] | |||
== 構造 == | == 構造 == | ||
α-スペクトリンおよびβ-スペクトリンはいずれも、弾性に富むスペクトリンリピートと呼ばれる特徴的な[[繰り返し配列]]を有する<ref name=Speicher1983><pubmed>6654896</pubmed></ref><ref name=Speicher1984><pubmed>6472478</pubmed></ref>。 | |||
α-スペクトリンは[[N末端]]側から、四量体化モチーフ、21個のスペクトリンリピート、[[SH3ドメイン|SH3(Src homology 3)ドメイン]]、[[カルモジュリン]]結合ドメイン(αII-スペクトリンのみ)、[[EF-hand]]ドメインを有する<ref name=Liu2019><pubmed>31191255</pubmed></ref>。 | |||
== | β-スペクトリンはN末端側から、2個のアクチン結合[[カルポニン相同ドメイン|CH(calponin homology)ドメイン]]、17個のスペクトリンリピート(βV-スペクトリンでは30個)、[[PHドメイン|PH(pleckstrin homology)ドメイン]]を有する<ref name=Liu2019><pubmed>31191255</pubmed></ref>。βV-スペクトリンでは、推定されるアンキリン結合領域の配列が十分に保存されていない<ref name=Stabach2000><pubmed>10764729</pubmed></ref>。このため、他のβ-スペクトリンとは異なる様式で骨格構造を形成すると考えられている。 | ||
スペクトリンは、2つのαサブユニットと2つのβサブユニットからなる[[ヘテロ四量体]]を形成する<ref name=Morrow1981><pubmed>7204503</pubmed></ref><ref name=Bignone2003><pubmed>12820899</pubmed></ref>('''図2''')。 | |||
== 機能 == | |||
=== 樹状突起スパイン === | |||
βI-スペクトリンは、樹状突起スパインの形態および機能の調節に関与する<ref name=Lorenzo2023><pubmed>36697767</pubmed></ref>。βIII-スペクトリンも樹状突起スパインの基部およびネックに局在し、スパインネックのくびれ構造の形成や[[シナプス]]活動の調節に関与する<ref name=Efimova2017><pubmed>28576936</pubmed></ref>。 | |||
== | === 軸索 === | ||
軸索では、スペクトリン四量体の両端が環状に配置されたアクチン(アクチンリング)と結合し、隣接するアクチンリング同士を連結することで、細胞膜直下に膜骨格を形成する。このスペクトリン-アクチン骨格は約190 nm間隔で周期的に配列し、[[膜関連周期骨格]](membrane-associated periodic skeleton; MPS)を形成する<ref name=Xu2013><pubmed>23239625</pubmed></ref><ref name=Goy2026><pubmed>42228557</pubmed></ref>。MPSは軸索全体に共通してみられる基本構造であるが、スペクトリンの[[アイソフォーム]]やアンキリンとの組み合わせは軸索内の領域によって異なり、それぞれ異なる機能を担う<ref name=Goy2026><pubmed>42228557</pubmed></ref>。 | |||
軸索遠位部では、αII-スペクトリンとβII-スペクトリンがヘテロ四量体を形成し、アンキリン-Bとともに膜関連周期骨格を構築する<ref name=Yoshimura2021></ref>。 | |||
軸索起始部(axon initial segment; AIS)の形成初期には、アンキリン-B/αII-スペクトリン/βII-スペクトリンからなる骨格が軸索遠位側から形成され、近位側に形成されるアンキリン-G/αII-スペクトリン/βIV-スペクトリン骨格との境界を規定する<ref name=Liu2019><pubmed>31191255</pubmed></ref>。軸索起始部では、αII-スペクトリンとβIV-スペクトリンがヘテロ四量体を形成し、アンキリン-GがβIV-スペクトリンと結合することで、特徴的な膜骨格が構築される<ref name=Yoshimura2021>'''吉村武 (2021)'''<br>神経細胞の軸索起始部に特有な細胞骨格構造とその破綻. 生化学 93:517–520. [[doi:10.14952/SEIKAGAKU.2021.930517|DOI]]</ref><ref name=Yang2007><pubmed>17283186</pubmed></ref><ref name=Huang2017><pubmed>29038240</pubmed></ref>。アンキリン-Gは、[[電位依存性ナトリウムチャネル]](Nav1群)、[[KCNQチャネル|KCNQ2/3チャネル]]、細胞接着分子NF186およびNrCAMなどをこの膜骨格に係留し、これらの分子を軸索起始部に高密度に集積させる<ref name=Pan2006><pubmed>16525039</pubmed></ref><ref name=Jenkins2025><pubmed>39480263</pubmed></ref>。このような分子配置は、軸索起始部における[[活動電位]]発生の基盤となる<ref name=Kole2008><pubmed>18204443</pubmed></ref>。さらに、軸索起始部は[[膜タンパク質]]や細胞内[[小胞]]の移動を制限する[[拡散障壁]]としても機能し、細胞体・樹状突起区画と軸索区画を隔てることで、[[神経極性|神経細胞の極性]]維持に寄与する<ref name=Liu2019><pubmed>31191255</pubmed></ref>。 | |||
[[髄鞘]]間に位置するランヴィエ絞輪にも、αII-スペクトリン、βIV-スペクトリン、アンキリン-Gからなる膜骨格が形成される<ref name=Liu2019><pubmed>31191255</pubmed></ref><ref name=Komada2002><pubmed>11807096</pubmed></ref>。この骨格は電位依存性ナトリウムチャネルをランヴィエ絞輪に高密度に集積させ、[[跳躍伝導]]を可能にする<ref name=Lorenzo2023><pubmed>36697767</pubmed></ref><ref name=Komada2002><pubmed>11807096</pubmed></ref>。一方、ランヴィエ絞輪に隣接する[[パラノード]]では、軸索側のCaspr-[[コンタクチン]]複合体と髄鞘側の[[ニューロファシン]]-155との相互作用によって[[パラノーダルジャンクション]]が形成される<ref name=Charles2002><pubmed>11839274</pubmed></ref><ref name=Sherman2005><pubmed>16337912</pubmed></ref>。この領域では、αII-スペクトリン/βII-スペクトリン骨格が膜タンパク質の[[側方拡散]]を制限する拡散障壁として機能し、軸索膜ドメインの維持に重要な役割を果たす<ref name=Ogawa2006><pubmed>16687515</pubmed></ref><ref name=Zhang2013a><pubmed>24217619</pubmed></ref>。 | |||
== 疾患との関わり == | == 疾患との関わり == | ||
スペクトリンは細胞膜直下の膜骨格を構成し、膜タンパク質の局在や細胞構造の維持に重要な役割を果たす。このため、スペクトリンをコードする遺伝子の[[病的バリアント]]は、赤血球疾患やさまざまな[[神経疾患]]の原因となる。 | |||
SPTA1(αI-スペクトリン)およびSPTB(βI-スペクトリン)の病的バリアントは、遺伝性球状赤血球症の発症に関与する<ref name=He2018><pubmed>29402830</pubmed></ref>。SPTAN1(αII-スペクトリン)の病的バリアントは、乳児期に発症する[[難治性てんかん]]であるWest症候群や発達性てんかん性脳症に加え、一部では小脳性運動失調や痙性対麻痺との関連が報告されている<ref name=Huang2018><pubmed>29749636</pubmed></ref><ref name=VandeVondel2022><pubmed>35150594</pubmed></ref>。SPTBN1(βII-スペクトリン)の病的バリアントは、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症(ADHD)、発達遅滞、知的発達症、てんかんなどとの関連が報告されている<ref name=Lorenzo2023><pubmed>36697767</pubmed></ref>。SPTBN2(βIII-スペクトリン)の病的バリアントは、脊髄小脳失調症との関連が報告されている<ref name=Ikeda2006><pubmed>16429157</pubmed></ref>。SPTBN4(βIV-スペクトリン)の病的バリアントは、知的発達症、先天性筋緊張低下、運動神経の軸索障害などを引き起こす<ref name=Wang2018><pubmed>29861105</pubmed></ref>。SPTBN5(βV-スペクトリン)の病的バリアントは、知的発達症、発達遅滞、てんかん発作などを特徴とする症候群を引き起こす<ref name=Khan2022><pubmed>35782384</pubmed></ref>。 | |||
自閉スペクトラム症関連行動として[[社会性行動]]の低下や[[反復行動]]の増加などを示すマウス、ならびにADHD関連行動として[[多動性]]や[[プレパルス抑制]]の低下などを示すマウスおよびラットでは、軸索起始部の長さに異常が認められる<ref name=Usui2022><pubmed>34971749</pubmed></ref><ref name=Iwahashi2023><pubmed>37770159</pubmed></ref>。これらの知見から、軸索起始部の構造変化と[[神経発達症]]との関連が示唆されている。スペクトリンを含む膜骨格の形成や維持の異常は、軸索起始部におけるイオンチャネルなどの局在や神経細胞の[[興奮性]]に影響し、神経機能の異常につながる可能性がある。 | |||
== 関連項目 == | == 関連項目 == | ||
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* [[細胞接着分子]] | * [[細胞接着分子]] | ||
* [[自閉スペクトラム症]] | * [[自閉スペクトラム症]] | ||
* [[ | * [[注意欠如・多動症]]([[ADHD]]、[[注意欠如・多動性障害]]) | ||
* [[ | * [[神経発達症]]([[発達障害]]) | ||
* [[アンキリン]] | * [[アンキリン]] | ||
== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
<references /> | <references /> | ||