「メタ認知」の版間の差分

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メタ認知は1970年代に広まった概念で、メタ認知という用語はFlavell (1976)<ref>''' J H Fravell '''<br>Metacognitive aspects of problem solving.<br>''Nature of intelligence. ''1976, 12;231-236</ref> において初めて用いられた。
メタ認知は1970年代に広まった概念で、メタ認知という用語はFlavell (1976)<ref>''' J H Fravell '''<br>Metacognitive aspects of problem solving.<br>''Nature of intelligence. ''1976, 12;231-236</ref> において初めて用いられた。


「メタ認知とは認知過程及びその関連事物(情報やデータなど)に関する自分自身の知識をさす。例えば、私がAよりもBの方が学習が困難であると気づいたとしたり、あるいはCが事実であると認める前にそれについて再確認しようと思いついたとしたら、それはメタ認知を行っているということだ。」  
''「メタ認知とは認知過程及びその関連事物(情報やデータなど)に関する自分自身の知識をさす。例えば、私がAよりもBの方が学習が困難であると気づいたとしたり、あるいはCが事実であると認める前にそれについて再確認しようと思いついたとしたら、それはメタ認知を行っているということだ。」''


自己の認知活動の[[モニタリング]]はメタ認知の根幹を成す。それは基本的な感覚応答から、行動目標を達成する上で複雑に組み合わされる脳内処理過程(高次認知機能)にまで及ぶ。モニタリングされた情報を意識的または無意識的に吟味することで、様々な認知活動の制御が可能となる。例えば、自分の能力と作業の難易度を照合し今後の行動に関して適切な判断を下すこと、行動目標に対して適切な課題を設定すること、状況に応じて適切な方略または道具を選ぶこと、モニタリングそのものを効率的に行うことなどである。これらの適応的な認知活動は、複雑な問題の解決にあたり、いつどのような知識に基づき行動するべきかを把握し実行する能力によって支えられている<ref name=ref1 /><ref>''' T O Nelson, L Narens '''<br>Metamemory: A theoretical framework and new findings.<br>''Academic Press. ''1990</ref><ref>''' J Dunlosky, M J Serra, J M C Baker '''<br>Handbook of applied cognition, Chapter6. <br>''Academic Press. ''2007</ref>。<br>
自己の認知活動のモニタリングはメタ認知の根幹を成す。それは基本的な感覚応答から、行動目標を達成する上で複雑に組み合わされる脳内処理過程(高次認知機能)にまで及ぶ。モニタリングされた情報を意識的または無意識的に吟味することで、様々な認知活動の制御が可能となる。例えば、自分の能力と作業の難易度を照合し今後の行動に関して適切な判断を下すこと、行動目標に対して適切な課題を設定すること、状況に応じて適切な方略または道具を選ぶこと、モニタリングそのものを効率的に行うことなどである。これらの適応的な認知活動は、複雑な問題の解決にあたり、いつどのような知識に基づき行動するべきかを把握し実行する能力によって支えられている<ref name=ref1 /><ref>''' T O Nelson, L Narens '''<br>Metamemory: A theoretical framework and new findings.<br>''Academic Press. ''1990</ref><ref>''' J Dunlosky, M J Serra, J M C Baker '''<br>Handbook of applied cognition, Chapter6. <br>''Academic Press. ''2007</ref>。<br>


=== '''分類'''  ===
=== '''分類'''  ===


めた認知の概念の呼び方や定義について、研究者間で必ずしも一致しているわけではないが(ref)、「認知についての知識」といった知識的側面と、「認知のプロセスや状態のモニタリングおよびコントロール」といった活動的側面とにおおきくわかれるという点では、研究者間の見解はほぼ一致しているため(ref)、以下のように分類できる。
メタ認知の概念の呼び方や定義について、研究者間で必ずしも一致しているわけではないが(ref)、「認知についての知識」といった知識的側面と、「認知のプロセスや状態のモニタリングおよびコントロール」といった活動的側面とにおおきくわかれるという点では、研究者間の見解はほぼ一致しているため(ref)、以下のように分類できる。


'''1. メタ認知的知識(metacognitive knowledge/awareness)'''<br>  
'''1. メタ認知的知識(metacognitive knowledge/awareness)'''<br>  
知識に関する知識。メタ認知的知識はさらに、人変数に関する知識、課題変数に関する知識、方略変数に関する知識に分類される。
知識に関する知識。メタ認知的知識はさらに、人変数に関する知識、課題変数に関する知識、方略変数に関する知識に分類される。<br>
人変数に関する知識は、「私は考えることは得意だがそれを表現することが苦手だ」というような、個人内での比較にもとづく認知的な傾向や特性についての知識(個人内変数に関する知識)、「AさんはBさんよりも想像力に富んでいる」といった、個人間の比較にもとづく認知的な傾向や特性についての知識(個人間変数に関する知識)、そして「」などの、人間の認知についての一般的な知識に分類できる。


:'''人変数に関する知識'''はさらに、「私は考えることは得意だがそれを表現することが苦手だ」というような、個人内での比較にもとづく認知的な傾向や特性についての知識(個人内変数に関する知識)、「AさんはBさんよりも想像力に富んでいる」といった、個人間の比較にもとづく認知的な傾向や特性についての知識(個人間変数に関する知識)、そして「注意を向けていなかったことは、あまり記憶に残らない。」などの、人間の認知についての一般的な知識(一般的な人変数に関する知識)に分類できる。<br>


'''2. メタ認知的活動(metacognitive regulation)、メタ認知的経験 (metacognitive experiences)'''<br>  
:'''課題変数に関する知識'''は、「科学論文を読んで理解するほうが、小説を読んで理解するよりも時間がかかる。」といった、課題の性質が私たちの認知活動に及ぼす影響についての知識をさす。<br>  


:'''方略変数に関する知識'''は、目的に応じた効果的な方略の使用についての知識をさす。<br> <br>


メタ認知は大きく3つに分類されている。
'''2. メタ認知的活動(metacognitive regulation)、メタ認知的経験 (metacognitive experiences)'''<br>
 
メタ認知的活動は、気づき、感覚、予想、点検、評価といったメタ認知的モニタリングや、目標設定、計画、修正といったメタ認知的コントロールからなる。メタ認知的経験は、現在進行形のメタ認知的な経験(活動)のことである。<br>  
1、メタ認知的知識 (metacognitive knowledge/awareness) は、認知に関する知識。自己だけではなく、他者の認知や記憶についての知識も含まれる(例「AさんはBさんよりも想像力に富んでいる」)。一般的にメタ記憶もこれに含まれる。
 
2、メタ認知的調整 (metacognitive regulation) は、学習の制御を補うような行動を通し、認知や学習をの経験を調整することである。
 
3、メタ認知的経験 (metacognitive experiences) は、現在進行形のメタ認知的な経験(活動)のことである。<br>  


=== '''機能'''  ===
=== '''機能'''  ===