「マイクロフィラメント」の版間の差分

編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
15行目: 15行目:
 分子量約42kDaの球状のアクチン蛋白質(球状アクチン、G-アクチン)が直鎖状に重合してプロトフィラメントとなり、2本のプロトフィラメントが右巻きのらせん状により合わさってアクチンフィラメント(線維状アクチン、F-アクチン)を構成する。アクチンフィラメントの直径は5-9nmであり、らせん構造の半周期は約37nmで、この半周期の両プロトフィラメント上に約13.5個の球状アクチンが存在する。  
 分子量約42kDaの球状のアクチン蛋白質(球状アクチン、G-アクチン)が直鎖状に重合してプロトフィラメントとなり、2本のプロトフィラメントが右巻きのらせん状により合わさってアクチンフィラメント(線維状アクチン、F-アクチン)を構成する。アクチンフィラメントの直径は5-9nmであり、らせん構造の半周期は約37nmで、この半周期の両プロトフィラメント上に約13.5個の球状アクチンが存在する。  


 アクチンフィラメントには極性がある。電子顕微鏡観察によりアクチンフィラメントに結合したミオシンがやじり様に見えるため、フィラメントの一端をbarbed end、他端をpointed endと呼ぶ。生理的な環境では、球状アクチンの重合はbarbed endで起こり脱重合はpointed endで起こるため、前者をプラス端、後者をマイナス端と呼ぶ。  
 アクチンフィラメントには極性がある。電子顕微鏡観察によりアクチンフィラメントに結合したミオシンがやじり様に見えるため、フィラメントの一端をbarbed end、他端をpointed endと呼ぶ。生理的な環境では、アクチンの重合はbarbed endで起こり脱重合はpointed endで起こるため、前者をプラス端、後者をマイナス端と呼ぶ。  


== トレッドミリング  ==
== トレッドミリング  ==


 細胞内に存在する他種多彩なアクチン結合蛋白質がアクチンフィラメントの動態を制御しているが、アクチンフィラメントに固有の特徴としてトレッドミリングが挙げられる<ref><pubmed> 18391171 </pubmed></ref>。個々のアクチン蛋白質はアデノシン三リン酸(ATP)またはアデノシン二リン酸(ADP)と結合している。アクチンフィラメントはATP加水分解活性を有するため、フィラメントを構成するアクチン蛋白質は時間とともにADP結合型となっていく。  
 細胞内に存在する多種多彩なアクチン結合蛋白質がアクチンフィラメントの動態を制御しているが、アクチンフィラメントに固有の特徴としてトレッドミリングが挙げられる<ref><pubmed> 18391171 </pubmed></ref>。個々のアクチン蛋白質はアデノシン三リン酸(ATP)またはアデノシン二リン酸(ADP)と結合している。アクチンフィラメントはATP加水分解活性を有するため、フィラメントを構成するアクチン蛋白質は時間とともにADP結合型となっていく。  


 アクチンの重合反応と脱重合反応の速度はフリーの球状アクチンの濃度に依存し、両反応速度が等しくなる時の球状アクチン濃度を臨界濃度と呼ぶ。球状アクチン濃度が臨界濃度よりも高い場合には重合が優位となり、臨界濃度よりも低い場合には脱重合が優位となる。ATP型アクチンの臨界濃度はADP型アクチンの臨界濃度よりも低く、ATP型アクチンは重合しやすくADP型アクチンは脱重合しやすい。  
 アクチンの重合反応と脱重合反応の速度はフリーの球状アクチンの濃度に依存し、両反応速度が等しくなる時の球状アクチン濃度を臨界濃度と呼ぶ。球状アクチン濃度が臨界濃度よりも高い場合には重合が優位となり、臨界濃度よりも低い場合には脱重合が優位となる。ATP型アクチンの臨界濃度はADP型アクチンの臨界濃度よりも低く、ATP型アクチンは重合しやすくADP型アクチンは脱重合しやすい。