「受容野」の版間の差分

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=== 単純型細胞の時空間受容野構造と運動方向選択性、両眼受容野構造  ===
=== 単純型細胞の時空間受容野構造と運動方向選択性、両眼受容野構造  ===
 運動方向選択性をもつ単純型細胞の時空間受容野構造は、ON領域とOFF領域が伸びる方位と直交する軸のいずれかの向きに「動く」構造をもち(図5) 。一方、このような動きがみられない受容野構造をもつ細胞も存在し、それらは運動方向選択性をもたない。運動方向選択性をもつ受容野構造は、運動方向選択性のない2つの受容野構造を線形に足し合わせることで生じることが知られている<ref name="ref16"><pubmed> 3973764 </pubmed></ref>。


 単純型細胞の大半は、物体がある向きに向かった動くときに強く反応し、それとは反対方向に動くときには反応しない運動方向選択性を示す。このような細胞の時空間受容野では、遅延時間が減少するにつれて、ON領域あるいはOFF領域の位置がその伸びる軸に直交するいずれかの向きに一定の割合でずれていく<ref name="ref5" />。このずれていく方向が細胞の好みの運動方向を表す。このような位置の変化を示さない細胞も存在し、そのような細胞は運動方向選択性を示さない。
 単純型細胞の大半は、物体がある向きに向かった動くときに強く反応し、それとは反対方向に動くときには反応しない運動方向選択性を示す。このような細胞の時空間受容野では、遅延時間が減少するにつれて、ON領域あるいはOFF領域の位置がその伸びる軸に直交するいずれかの向きに一定の割合でずれていく<ref name="ref5" />。このずれていく方向が細胞の好みの運動方向を表す。このような位置の変化を示さない細胞も存在し、そのような細胞は運動方向選択性を示さない。
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=== 複雑型細胞の受容野構造  ===
=== 複雑型細胞の受容野構造  ===


 複雑型細胞も単純型細胞と同様に、サイン波刺激にたいして、強い方位、空間周波数、運動方向の選択性をもっている。しかしながら、ON、OFF領域はオーバーラッップしておりその構造からこれらの選択性を予測することはできない。また単純型細胞と異なり位相に選択性は示さない。これらの選択性は、同じ方位や、空間周波数選択性をもち、受容野位相だけが異なる単純型細胞からの入力が収斂することでできあがっていると考えられている。これを最も単純化したモデルが図6に示すエネルギーモデル(energy model)で、このモデルでは90度位相の異なる2つの単純型細胞の出力が2乗されることで複雑型細胞の受容野構造をつくっている。2つの単純型細胞のON,OFF領域が、同じ時間受容野をもつときに、複雑型細胞の同じ特性の時間受容野をもつことになり、その運動方向選択性が説明される。時空間受容野も含めたエネルギーモデルは運動エネルギーモデル(motion energy model)と呼ばれている <ref name="ref18"><pubmed> 3973764 </pubmed></ref>。  
 複雑型細胞も単純型細胞と同様に、サイン波刺激にたいして、強い方位、空間周波数、運動方向の選択性をもっている。しかしながら、ON、OFF領域はオーバーラッップしておりその構造からこれらの選択性を予測することはできない。また単純型細胞と異なり位相に選択性は示さない。これらの選択性は、同じ方位や、空間周波数選択性をもち、受容野位相だけが異なる単純型細胞からの入力が収斂することでできあがっていると考えられている。これを最も単純化したモデルが図4に示すエネルギーモデル(energy model)で、このモデルでは90度位相の異なる2つの単純型細胞の出力が2乗されることで複雑型細胞の受容野構造をつくっている。2つの単純型細胞のON,OFF領域が、同じ時間受容野をもつときに、複雑型細胞の同じ特性の時間受容野をもつことになり、その運動方向選択性が説明される。時空間受容野も含めたエネルギーモデルは運動エネルギーモデル(motion energy model)と呼ばれている <ref name="ref18"><pubmed> 3973764 </pubmed></ref>。  


 複雑型細胞の多くはまた、刺激の位置や明暗のコントラスに影響されることのなく両眼視差を検出できることが知られている。この両眼視差検出器としての望ましい性質は、似た両眼視差にチューンした単純型細胞からの出力を集めることでできると考えられている。このような複雑型細胞のモデルは両眼視差エネルギーモデル(disparity energy model)と呼ばれている<ref name="ref19"><pubmed> 2396096 </pubmed></ref>。  
 複雑型細胞の多くはまた、刺激の位置や明暗のコントラスに影響されることのなく両眼視差を検出できることが知られている。この両眼視差検出器としての望ましい性質は、似た両眼視差にチューンした単純型細胞からの出力を集めることでできると考えられている。このような複雑型細胞のモデルは両眼視差エネルギーモデル(disparity energy model)と呼ばれている<ref name="ref19"><pubmed> 2396096 </pubmed></ref>。