「メタ認知」の版間の差分

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=== '''分類'''  ===
=== '''分類'''  ===


メタ認知の概念の呼び方や定義について、研究者間で必ずしも一致しているわけではないが<ref>'''なまえ'''<br>タイトル. <br>''出版社 ''とし</ref>、「認知についての知識」といった知識的側面と、「認知のプロセスや状態のモニタリングおよびコントロール」といった活動的側面とにおおきくわかれるという点では、研究者間の見解はほぼ一致しているため、以下のように分類できる<ref>'''市川伸一編'''<br>認知心理学4 思考 <br>''東京大学出版会 ''1996</ref>。
メタ認知の概念の呼び方や定義について、研究者間で必ずしも一致しているわけではないが<ref>'''楠見・高橋'''<br>メタ記憶.安西祐一郎ほか(編) 認知科学ハンドブック<br>''共立出版 第5編第4章 ''1992</ref>、「認知についての知識」といった知識的側面と、「認知のプロセスや状態のモニタリングおよびコントロール」といった活動的側面とにおおきくわかれるという点では、研究者間の見解はほぼ一致しているため、以下のように分類できる<ref>'''三宮真智子'''<br>認知心理学4思考,市川伸一編 第7刷第7章 <br>''東京大学出版会 ''2009</ref>。


*'''メタ認知的知識(metacognitive knowledge/awareness)'''<br>  
*'''メタ認知的知識(metacognitive knowledge/awareness)'''<br>  
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::'''課題変数に関する知識'''は、「科学論文を読んで理解するほうが、小説を読んで理解するよりも時間がかかる。」といった、課題の性質が私たちの認知活動に及ぼす影響についての知識をさす。<br>  
::'''課題変数に関する知識'''は、「科学論文を読んで理解するほうが、小説を読んで理解するよりも時間がかかる。」といった、課題の性質が私たちの認知活動に及ぼす影響についての知識をさす。<br>  


::'''方略変数に関する知識'''は、目的に応じた効果的な方略の使用についての知識をさす。<br> <br>  
::'''方略変数に関する知識'''は、目的に応じた効果的な方略の使用についての知識をさす。<br>  


*'''メタ認知的活動(metacognitive regulation)、メタ認知的経験 (metacognitive experiences)'''<br>  
*'''メタ認知的活動(metacognitive regulation)、メタ認知的経験 (metacognitive experiences)'''<br>  
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= '''各分野におけるメタ認知研究'''  =
= '''各分野におけるメタ認知研究'''  =


発達心理学、教育心理学の分野では、主に子供の課題遂行能力や学習能力の向上という視点から研究が行われてきた。[[wikipedia:ja:ピアジェ]] (Piaget) を中心とする自己制御 (self-regulation) 研究では、人間は「能動的に」調整あるいは学習すると考えられてきた<ref name=ref7>''' H Otani, Robert L Wilner JR. '''<br>Metacognition: New Issues and Approaches Guest Editor's Introduction. <br>''The Journal of General Psychology. ''2005, 132(4);329-334</ref>。また [[wikipedia:ja:レフ・ヴィゴツキー]] (Vygotsky) は、発達を言葉の発達という観点からメタ認知をみた。ヴィゴツキーの理論では、子供はまず他者に対して言葉を使う(外言)が、成長に従って自らの思考や行動を内言によって調整できることを示し、この外言から内言への移行こそが自らの思考への気づきの表れであるとした。
発達心理学、教育心理学の分野では、主に子供の課題遂行能力や学習能力の向上という視点から研究が行われてきた。[[wikipedia:ja:ピアジェ]] (Piaget) を中心とする自己制御 (self-regulation) 研究では、人間は「能動的に」調整あるいは学習すると考えられてきた<ref name=ref7>''' H Otani, Robert L Wilner JR. '''<br>Metacognition: New Issues and Approaches Guest Editor's Introduction. <br>''The Journal of General Psychology. ''2005, 132(4);329-334</ref>。また [[wikipedia:ja:レフ・ヴィゴツキー]] (Vygotsky) は、発達を言葉の発達という観点からメタ認知をみた。ヴィゴツキーの理論では、子供はまず他者に対して言葉を使う(外言)が、成長に従って自らの思考や行動を内言によって調整できることを示し、この外言から内言への移行こそが自らの思考への気づきの表れであるとした。<br>


メタ認知は自らの思考への気づきであることから、心理療法にも利用されている。[[wikipedia:ja:認知療法]]は、情緒障害を思考の障害として認識し、それを修正することにより改善をはかるものである。
メタ認知は自らの思考への気づきであることから、心理療法にも利用されている。[[wikipedia:ja:認知療法]]は、情緒障害を思考の障害として認識し、それを修正することにより改善をはかるものである。<br>


実験心理学ではモニタリング(自身の記憶に関する判断)と制御(判断を行動に結びつける)の間のメタ認知の質的な違いに注目した研究が多い。認知神経科学においてメタ認知的なモニタリングと制御は、他の皮質領野からの入力やフィードバックを受けた前頭前野における機能と考えられている。[[wikipedia:ja:人工知能]]<ref>''' M T Cox'''<br>Metacognition in computation: A selected research review.<br>''Artificial Intelligence. ''2005, 169(2);104-141</ref>や[[wikipedia:ja:モデリング]]の分野においても、メタ認知研究が行われている。<br>  
実験心理学ではモニタリング(自身の記憶に関する判断)と制御(判断を行動に結びつける)の間のメタ認知の質的な違いに注目した研究が多い。認知神経科学においてメタ認知的なモニタリングと制御は、他の皮質領野からの入力やフィードバックを受けた前頭前野における機能と考えられている。[[wikipedia:ja:人工知能]]<ref>''' M T Cox'''<br>Metacognition in computation: A selected research review.<br>''Artificial Intelligence. ''2005, 169(2);104-141</ref>や[[wikipedia:ja:モデリング]]の分野においても、メタ認知研究が行われている。<br>  
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