「下垂体」の版間の差分

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====副腎皮質刺激ホルモン====
====副腎皮質刺激ホルモン====
Adrenocorticotropic hormone, ACTH<br>
Adrenocorticotropic hormone, ACTH<br>
 ストレス刺激などにより視床下部室傍核から[[コルチコトロピン放出ホルモン]] ([[corticotropin releasing hormone]], [[CRH]])が分泌され、視床下部正中隆起から下垂体門脈に運ばれ、下垂体前葉のACTH細胞からACTHが分泌され、[[副腎皮質]]の[[束状層]]に作用して[[糖質コルチコイド]]([[17-ヒドロキシコルチコイド]];[[コルチゾール]])、[[球状層]]に作用して[[鉱質コルチコイド]]([[アルドステロン]])の産生・分泌を促進する。思春期以降は、[[網状層]]から[[アンドロゲン]] ([[dehydroepiandrosterone sulfate]], [[DHEA-S]])の産生・分泌を促進する。一方、ACTHおよびCRHはコルチゾールのネガティヴフィードバックにより抑制される。したがって、血漿ACTH測定はコルチゾールとともに[[視床下部-下垂体-副腎皮質系]]の機能および病態の診断に不可欠である。
 ストレス刺激などにより視床下部室傍核から[[コルチコトロピン放出ホルモン]] ([[corticotropin releasing hormone]], [[CRH]])が分泌され、視床下部正中隆起から下垂体門脈に運ばれ、下垂体前葉のACTH細胞からACTHが分泌され、[[副腎皮質]]の[[束状層]]に作用して[[糖質コルチコイド]]([[17-ヒドロキシコルチコイド]];[[コルチゾール]])、[[球状層]]に作用して[[鉱質コルチコイド]]([[アルドステロン]])の産生・分泌を促進する。思春期以降は、[[網状層]]から[[アンドロゲン]]の産生・分泌を促進する。一方、ACTHおよびCRHはコルチゾールのネガティヴフィードバックにより抑制される。したがって、血漿ACTH測定はコルチゾールとともに[[視床下部-下垂体-副腎皮質系]]の機能および病態の診断に不可欠である。


====甲状腺刺激ホルモン====
====甲状腺刺激ホルモン====
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 バソプレッシンはアミノ酸9つからなるニューロペプチドで、下垂体後葉の軸索末端から直接血液中に分泌され体循環に乗り、腎臓の集合管のバソプレッシン[[V2受容体]]に作用して水透過性を増加して水の再吸収を促進する。そのため尿は濃縮され、尿量は減少することからしばしば[[抗利尿ホルモン]] ([[antidiuretic hormone]], [[ADH]])と呼ばれる。また[[V1a受容体]]はバソプレッシンの血管収縮作用を仲介し、生理的条件下においては複雑に血圧の調節に関与する。さらに、下垂体前葉で発現する[[V1b受容体]]はコルチコトロピン分泌細胞からのACTH分泌を増加させる。
 バソプレッシンはアミノ酸9つからなるニューロペプチドで、下垂体後葉の軸索末端から直接血液中に分泌され体循環に乗り、腎臓の集合管のバソプレッシン[[V2受容体]]に作用して水透過性を増加して水の再吸収を促進する。そのため尿は濃縮され、尿量は減少することからしばしば[[抗利尿ホルモン]] ([[antidiuretic hormone]], [[ADH]])と呼ばれる。また[[V1a受容体]]はバソプレッシンの血管収縮作用を仲介し、生理的条件下においては複雑に血圧の調節に関与する。さらに、下垂体前葉で発現する[[V1b受容体]]はコルチコトロピン分泌細胞からのACTH分泌を増加させる。


 一方、バソプレッシンはペプチド性神経伝達物質として神経終末から放出されて[[シナプス後細胞]]に作用する分子でもある。V1a受容体やV1b受容体を介してストレス、[[情動]]行動や[[社会的行動]]<ref name=deWinter2003><pubmed>12496950</pubmed></ref><ref name=vanWest2004><pubmed>15094789</pubmed></ref> 、情報処理、[[空間学習]]<ref name=Mishima2003><pubmed>12646291</pubmed></ref> 、[[攻撃行動]]<ref name=Rigney2022><pubmed>35863332</pubmed></ref> などに関与することが報告されている。
 一方、バソプレッシンはペプチド性神経伝達物質として神経終末から放出されて[[シナプス後細胞]]に作用する分子でもある。V1a受容体やV1b受容体を介してストレス、[[情動]]行動や[[社会的行動]]<ref name=deWinter2003><pubmed>12496950</pubmed></ref><ref name=vanWest2004><pubmed>15094789</pubmed></ref> 、情報処理、[[空間学習]]<ref name=Mishima2003><pubmed>12646291</pubmed></ref>、[[攻撃行動]]<ref name=Rigney2022><pubmed>35863332</pubmed></ref> などに関与することが報告されている。


====オキシトシン====
====オキシトシン====