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==構造== <br>Roboは線虫からヒトまで保存されている分子で、脊椎動物では4つのサブファミリー (Robo1〜Robo4) が同定されている:線虫(Robo/SAX-3)、ショウジョウバエ(Robo1, Robo2, Robo3)、脊椎動物(Robo1/DUTT1, Robo2, Robo3/ Rig-1, Robo4/ Magic roundabout)。細胞接着因子の1つである免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、その構造は細胞外領域に免疫グロブリン様ドメイン(immunogloubulin-like, Ig domain) とフィブロネクチンタイプⅢドメイン(fibronectin type 3, FN3 domain) を有し、細胞内領域に保存された細胞内モチーフ(conserved cytoplasmic motif, CC)をもつ&lt;ref name=ref4 /&gt;,&nbsp;&lt;ref name=ref5&gt;&lt;pubmed&gt; 11944987 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;,&nbsp;&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 9608531&nbsp;&lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。Slit-Roboの相互作用に重要であるSlitの2番目のロイシンリッチリピート(leucine-rich repeats, LRR)とRoboのIg1ドメイン, Ig2ドメイン はRobo1からRobo3まで保存されているが&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 17848514&nbsp;&lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;、Robo4ではIg1ドメインのSlit結合部位が保存されていない&lt;ref name=ref5 /&gt;。このため、Robo4はSlitの受容体として機能しないと考えられていたが、近年、Slit2を介したRobo4によるシグナル伝達が報告されている&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 18345009&nbsp;&lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。<br>  
==構造== <br>Roboは線虫からヒトまで保存されている分子で、脊椎動物では4つのサブファミリー (Robo1〜Robo4) が同定されている:線虫(Robo/SAX-3)、ショウジョウバエ(Robo1, Robo2, Robo3)、脊椎動物(Robo1/DUTT1, Robo2, Robo3/ Rig-1, Robo4/ Magic roundabout)。細胞接着因子の1つである免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、その構造は細胞外領域に免疫グロブリン様ドメイン(immunogloubulin-like, Ig domain) とフィブロネクチンタイプⅢドメイン(fibronectin type 3, FN3 domain) を有し、細胞内領域に保存された細胞内モチーフ(conserved cytoplasmic motif, CC)をもつ&lt;ref name=ref4 /&gt;,&nbsp;&lt;ref name=ref5&gt;&lt;pubmed&gt; 11944987 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;,&nbsp;&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 9608531&nbsp;&lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。Slit-Roboの相互作用に重要であるSlitの2番目のロイシンリッチリピート(leucine-rich repeats, LRR)とRoboのIg1ドメイン, Ig2ドメイン はRobo1からRobo3まで保存されているが&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 17848514&nbsp;&lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;、Robo4ではIg1ドメインのSlit結合部位が保存されていない&lt;ref name=ref5 /&gt;。このため、Robo4はSlitの受容体として機能しないと考えられていたが、近年、Slit2を介したRobo4によるシグナル伝達が報告されている&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 18345009&nbsp;&lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。<br>  


[[Image:Yukogonda_fig_1.jpg|thumb|’’’図1 Robo受容体とリガンドのSlitの構造'''
[[Image:Yukogonda_fig_1.jpg|thumb|’’’図1 Robo受容体とリガンドのSlitの構造  
 


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==細胞内シグナル== ===1. Rhoファミリーを介したシグナル伝達===<br>ショウジョウバエではRoboのIgドメインにSlitのLRRドメインが結合すると、Rhoファミリー分子の1つであるCrossGAP (CrGAP)と相互作用することによりCrGAPを不活性化し、下流のRac1の活性化により正中線の反発性軸索誘導を生じるシグナル伝達系が知られている&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;15755809 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;(図2 1-A)。また、ヒト由来培養細胞を用いた実験では、同様にRoboのIgドメインへのSlitの結合により、Roboの細胞内領域にあるCC3モチーフとsrGAP (SLIT-ROBO Rho-GTPase-activating protein)の相互作用が促進され、その結果、内在性GTPase 活性の増加によるCdc42の不活性化経路が知られている。この経路ではCdc42不活性化により、Arp2/3複合体(アクチン関連タンパク質: actin related protein, Arp)とアクチン重合調節タンパク質であるNeuronal Wiskott-Aldrich Syndrome protein (N-WASP)の活性化がおさえられることで、アクチン重合が減少し、反発性の軸索誘導や細胞移動阻害を引き起こす&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 11672528&nbsp;&lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;(図2 1-B)。<br>  
==細胞内シグナル== ===1. Rhoファミリーを介したシグナル伝達===<br>ショウジョウバエではRoboのIgドメインにSlitのLRRドメインが結合すると、Rhoファミリー分子の1つであるCrossGAP (CrGAP)と相互作用することによりCrGAPを不活性化し、下流のRac1の活性化により正中線の反発性軸索誘導を生じるシグナル伝達系が知られている&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;15755809 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;(図2 1-A)。また、ヒト由来培養細胞を用いた実験では、同様にRoboのIgドメインへのSlitの結合により、Roboの細胞内領域にあるCC3モチーフとsrGAP (SLIT-ROBO Rho-GTPase-activating protein)の相互作用が促進され、その結果、内在性GTPase 活性の増加によるCdc42の不活性化経路が知られている。この経路ではCdc42不活性化により、Arp2/3複合体(アクチン関連タンパク質: actin related protein, Arp)とアクチン重合調節タンパク質であるNeuronal Wiskott-Aldrich Syndrome protein (N-WASP)の活性化がおさえられることで、アクチン重合が減少し、反発性の軸索誘導や細胞移動阻害を引き起こす&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 11672528&nbsp;&lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;(図2 1-B)。<br>  


[[Image:Yukogonda_fig_2-1.jpg|thumb|’’’図2-1 Rhoファミリーを介した系'''
[[Image:Yukogonda_fig_2-1.jpg|thumb|’’’図2-1 Rhoファミリーを介した系  
 


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===2. チロシンキナーゼAbelson(Abl)を介したシグナル伝達===<br>ニワトリの網膜神経細胞を用いた実験では、Roboによるβ-カテニンを介した1) カドへリン接着性の減少、2) 転写持続、を担う経路が知られている&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 12360290 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;, &lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;17618275 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。この系ではRoboへのSlitの結合により、CablesがAblに結合して、その後、Cablesはp35を介してβ-カテニンに結合していたCdk5(N-カドへリン-β-カテニン-p35-Cdk5複合体)と結合し、さらにβ-カテニンと結合する。この複合体では、Ablによるβ-カテニンのチロシンリン酸化によりβ-カテニン- N-カドへリンの親和性が低下し、N-カドへリンを介した接着性が消失する。リン酸化されたβ-カテニンは核内へと移行し、転写因子Tcf/Lefと結合することで、転写を活性化する(図2 2-A)。一方ショウジョウバエでは、Roboの細胞内領域のCC3モチーフにAblが結合することでRoboをリン酸化し、Robo下流シグナルを阻害する経路も知られている。Ablの基質であるEnaはRoboの細胞内領域のCC1,CC2に結合し、キャッピングタンパクのF-アクチンへの結合を調節することで細胞移動や反発性軸索誘導の一部を担うことが知られており、両者が相補的な役割を果たすことで反発性の軸索誘導を調節する&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;10892742 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;, &lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;12086607 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;(図2 2-B)。<br>  
===2. チロシンキナーゼAbelson(Abl)を介したシグナル伝達===<br>ニワトリの網膜神経細胞を用いた実験では、Roboによるβ-カテニンを介した1) カドへリン接着性の減少、2) 転写持続、を担う経路が知られている&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 12360290 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;, &lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;17618275 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。この系ではRoboへのSlitの結合により、CablesがAblに結合して、その後、Cablesはp35を介してβ-カテニンに結合していたCdk5(N-カドへリン-β-カテニン-p35-Cdk5複合体)と結合し、さらにβ-カテニンと結合する。この複合体では、Ablによるβ-カテニンのチロシンリン酸化によりβ-カテニン- N-カドへリンの親和性が低下し、N-カドへリンを介した接着性が消失する。リン酸化されたβ-カテニンは核内へと移行し、転写因子Tcf/Lefと結合することで、転写を活性化する(図2 2-A)。一方ショウジョウバエでは、Roboの細胞内領域のCC3モチーフにAblが結合することでRoboをリン酸化し、Robo下流シグナルを阻害する経路も知られている。Ablの基質であるEnaはRoboの細胞内領域のCC1,CC2に結合し、キャッピングタンパクのF-アクチンへの結合を調節することで細胞移動や反発性軸索誘導の一部を担うことが知られており、両者が相補的な役割を果たすことで反発性の軸索誘導を調節する&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;10892742 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;, &lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;12086607 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;(図2 2-B)。<br>  


[[Image:Yukogonda_fig_2-2.jpg|thumb|’’’図2-2 チロシンキナーゼAblを介した系'''
[[Image:Yukogonda_fig_2-2.jpg|thumb|’’’図2-2 チロシンキナーゼAblを介した系  
 


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==発現と機能== <br>===1. 軸索誘導・軸索伸長===<br>前述したように、ショウジョウバエでは Roboは交連神経細胞の軸索に発現し、midline gliaに発現するSlitとともに正中交差を調節する&lt;ref name=ref4 /&gt;, &lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 10226006&nbsp;&lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;, &lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;10102267&nbsp;&lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。その機構は、正中線を交差する前の交連神経ではCommissureless (Comm) が発現して、成長円錐へのRoboの蓄積を妨げることでRoboの機能を阻害し、Slitへの反応性を失った軸索が正中線を交差する&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;12202032 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。一方脊椎動物ではCommのホモログは同定されておらず、マウス脊髄ではRobo3のスプライスバリアントであるRobo3.1が脊髄交連軸索に発現しRobo1/Robo2の活性をおさえてSlitに対する反発性を減少させ、脊髄の正中線を交差した後にRobo3の別のスプライスバリアントであるRobo3.2と Robo1, Robo2を共発現することで反対側への投射を阻害している&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;18466743 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;, &lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;18986510 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。また、ノックアウトマウスを用いた解析から前脳においてはRobo1とRobo2が海馬交連、脳梁、視床皮質路、皮質脊髄路といった投射経路を制御することが報告されている&lt;ref&nbsp;name=ref20&gt;&lt;pubmed&gt; '''16690755 '''&lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;,&nbsp;&lt;ref name=ref21&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;'''18054781''' &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;,&nbsp;&lt;ref name=ref22&gt;&lt;pubmed&gt;'''19366869''' &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;,&nbsp;&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;17392456 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。&nbsp;特に視床皮質路では、視床神経細胞の自発活動によりRobo1が転写活性化されることで、軸索伸張の速度を制御する機構が報告されている&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 22772332&nbsp; &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。また、小脳前核神経細胞の軸索の正中線交差では、Musashi1がRNA認識モチーフを介してRobo3 mRNAに結合して、Robo3タンパク質の翻訳を促進することが示されている&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 20696379&nbsp;&lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。一方、匂い情報が約1000種類の嗅神経細胞により検出され、2次元的な神経地図として表現されている嗅球では、胎生期に嗅上皮背内側に高い濃度勾配を示すRobo2と嗅球の腹側に発現するSlit1との相互作用により、背内側の嗅神経細胞から嗅球の背側へと軸索投射し、神経地図の形成に関わっている&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 17715346&nbsp;&lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;, &lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;18417704 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;, &lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;21613506 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。これらのことから、Slit/Roboによるシグナル伝達は発生期の様々な投射経路調節に用いられ、その過程でRobo自身の発現がダイナミックに調節されることで緻密な神経回路形成を行っている。一方、Xenopusの脊髄を用いた実験では、Roboがネトリン受容体の1つであるDCCと直接結合することにより、ネトリンの誘引性軸索誘導を阻害し&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;11239147 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;、またマウスにおいてRoboとセマフォリン受容体のNrp1と相互作用して、セマフォリンシグナル伝達経路を調節することが報告されている&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;21508241 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。このことよりRoboはSlit以外の軸索ガイダンス分子や、他の受容体と相互作用することにより、反発性や誘導性の軸索誘導を阻害する作用をもつことがわかってきた。<br>  
==発現と機能== <br>===1. 軸索誘導・軸索伸長===<br>前述したように、ショウジョウバエでは Roboは交連神経細胞の軸索に発現し、midline gliaに発現するSlitとともに正中交差を調節する&lt;ref name=ref4 /&gt;, &lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 10226006&nbsp;&lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;, &lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;10102267&nbsp;&lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。その機構は、正中線を交差する前の交連神経ではCommissureless (Comm) が発現して、成長円錐へのRoboの蓄積を妨げることでRoboの機能を阻害し、Slitへの反応性を失った軸索が正中線を交差する&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;12202032 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。一方脊椎動物ではCommのホモログは同定されておらず、マウス脊髄ではRobo3のスプライスバリアントであるRobo3.1が脊髄交連軸索に発現しRobo1/Robo2の活性をおさえてSlitに対する反発性を減少させ、脊髄の正中線を交差した後にRobo3の別のスプライスバリアントであるRobo3.2と Robo1, Robo2を共発現することで反対側への投射を阻害している&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;18466743 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;, &lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;18986510 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。また、ノックアウトマウスを用いた解析から前脳においてはRobo1とRobo2が海馬交連、脳梁、視床皮質路、皮質脊髄路といった投射経路を制御することが報告されている&lt;ref&nbsp;name=ref20&gt;&lt;pubmed&gt; '''16690755 '''&lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;,&nbsp;&lt;ref name=ref21&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;'''18054781''' &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;,&nbsp;&lt;ref name=ref22&gt;&lt;pubmed&gt;'''19366869''' &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;,&nbsp;&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;17392456 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。&nbsp;特に視床皮質路では、視床神経細胞の自発活動によりRobo1が転写活性化されることで、軸索伸張の速度を制御する機構が報告されている&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 22772332&nbsp; &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。また、小脳前核神経細胞の軸索の正中線交差では、Musashi1がRNA認識モチーフを介してRobo3 mRNAに結合して、Robo3タンパク質の翻訳を促進することが示されている&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 20696379&nbsp;&lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。一方、匂い情報が約1000種類の嗅神経細胞により検出され、2次元的な神経地図として表現されている嗅球では、胎生期に嗅上皮背内側に高い濃度勾配を示すRobo2と嗅球の腹側に発現するSlit1との相互作用により、背内側の嗅神経細胞から嗅球の背側へと軸索投射し、神経地図の形成に関わっている&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 17715346&nbsp;&lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;, &lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;18417704 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;, &lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;21613506 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。これらのことから、Slit/Roboによるシグナル伝達は発生期の様々な投射経路調節に用いられ、その過程でRobo自身の発現がダイナミックに調節されることで緻密な神経回路形成を行っている。一方、Xenopusの脊髄を用いた実験では、Roboがネトリン受容体の1つであるDCCと直接結合することにより、ネトリンの誘引性軸索誘導を阻害し&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;11239147 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;、またマウスにおいてRoboとセマフォリン受容体のNrp1と相互作用して、セマフォリンシグナル伝達経路を調節することが報告されている&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt;&nbsp;21508241 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。このことよりRoboはSlit以外の軸索ガイダンス分子や、他の受容体と相互作用することにより、反発性や誘導性の軸索誘導を阻害する作用をもつことがわかってきた。<br>  
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