「MPTP」の版間の差分

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 MPTPとは、[[ドーパミン]]作動性ニューロンを変性脱落させる神経毒。実験動物に投与し、[[パーキンソン病]]モデルを作成するために用いられる。
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(執筆者:南部篤 担当編集委員:伊佐正)

2013年8月28日 (水) 16:40時点における版

南部 篤
自然科学研究機構 生理学研究所
DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2013年2月4日 原稿完成日:2013年月日
担当編集委員:伊佐 正(自然科学研究機構 生理学研究所)

MPTP
Identifiers
28289-54-5 YesY
ChEBI
ChEMBL ChEMBL24172 YesY
ChemSpider 1346 YesY
EC-number [1]
280
Jmol-3D images Image
KEGG C04599
MeSH 1-Methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine
PubChem 1388
Properties
Molar mass 173.25 g/mol
Melting point 39 °C (102 °F; 312 K)
Boiling point
slightly soluable
危険性
特記なき場合、データは常温(25 °C)・常圧(100 kPa)におけるものである。

IUPAC名:1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine

 MPTPとは、ドーパミン作動性ニューロンを変性脱落させる神経毒。実験動物に投与し、パーキンソン病モデルを作成するために用いられる。

発見の経緯

図 MPTPの代謝

 疾患モデルを作成するため、長年、パーキンソン病を発症させる神経毒の探索が続いていたが、良い候補は見つかっていなかった。しかし、以下のような皮肉な事件によりMPTPが「発見」されることになった。

 麻薬常習者の大学院生が、合成ヘロインである1-methyl-4-phenyl-propionoxy-piperidine (MPPP)を自宅の実験室で合成し、自分で注射していたところ、1976年、重篤なパーキンソン病を発症した。ある時から、合成段階でいくつかの手抜きをしたため、副生成物質が混入したためと思われる。症状は典型的なパーキンソン病で、L-ドーパが著効を示した。その後、麻薬過剰摂取で死亡したため剖検したところ、黒質細胞脱落、レビー小体陽性など病理的にもパーキンソン病であった。しかし原因物質を特定するまでには至らず、この報告は注目されなかった[1]。

 その後、1982年、北カリフォルニアで4人の若い麻薬常習者が、新しい合成ヘロインを入手し連用したところ、重度の無動を示すパーキンソン病を発症した。この合成ヘロインを分析したところMPTPが発見され、これを実験動物(サル)に投与したところ、パーキンソン病様症状を呈したため、MPTPが原因物質として確定した[2][3]。

作用機序

 MPTPが脳内に入ると、グリア細胞内でモノアミン酸化酵素B (MAO-B)によって酸化されMPP+になり、これがドーパミン作動性ニューロンに取り込まれ、ミトコンドリアの代謝を阻害するため、細胞が変性すると考えられる(図)。

意義

 このMPTPの「発見」により、ドーパミン作動性ニューロンが変性・脱落するメカニズムの解明が進んだ。また、主に霊長類にMPTPを投与しパーキンソン病モデルを作成することにより、パーキンソン病の病態の解明[4]、定位脳手術や脳深部刺激療法(DBS)などの治療法の開発[5]などにつながった。さらには、パーキンソン病の原因として、内在性・外来性のMPTP類似物質、例えば除草剤などによる原因説も復興した。

毒性

 ヒトを含む霊長類は感受性が高く、ラットは低く、マウス、ネコは、その中間の感受性を示す。MPTPが揮発性・脂溶性であることから、皮膚、呼吸器などから吸収され易く血液脳関門も通過し易い、さらに動物に投与した場合、一部、代謝されないまま排泄されるなど、取り扱いに注意を要する
[6]。

関連語

外部リンク

参考文献

  1. ↑ Davis, G.C., Williams, A.C., Markey, S.P., Ebert, M.H., Caine, E.D., Reichert, C.M., & Kopin, I.J. (1979).
    Chronic Parkinsonism secondary to intravenous injection of meperidine analogues. Psychiatry research, 1(3), 249-54. [PubMed:298352] [WorldCat] [DOI]
  2. ↑ Langston, J.W., Ballard, P., Tetrud, J.W., & Irwin, I. (1983).
    Chronic Parkinsonism in humans due to a product of meperidine-analog synthesis. Science (New York, N.Y.), 219(4587), 979-80. [PubMed:6823561] [WorldCat] [DOI]
  3. ↑ J William Langston, Jon Palfreman
    The Case of the Frozen Addicts 309 pp.
    New York, Pantheon, 1996
  4. ↑ DeLong, M.R. (1990).
    Primate models of movement disorders of basal ganglia origin. Trends in neurosciences, 13(7), 281-5. [PubMed:1695404] [WorldCat] [DOI]
  5. ↑ Bergman, H., Wichmann, T., & DeLong, M.R. (1990).
    Reversal of experimental parkinsonism by lesions of the subthalamic nucleus. Science (New York, N.Y.), 249(4975), 1436-8. [PubMed:2402638] [WorldCat] [DOI]
  6. ↑ Przedborski, S., Jackson-Lewis, V., Naini, A.B., Jakowec, M., Petzinger, G., Miller, R., & Akram, M. (2001).
    The parkinsonian toxin 1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine (MPTP): a technical review of its utility and safety. Journal of neurochemistry, 76(5), 1265-74. [PubMed:11238711] [WorldCat] [DOI]