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[[ファイル:Uchida Temperature receptor Fig1.png|サムネイル|図1. 温度受容体の構造<br>S1-6:膜貫通領域、P:ポアヘリックス、F:イオン選択フィルター]] | [[ファイル:Uchida Temperature receptor Fig1.png|サムネイル|図1. 温度受容体の構造<br>S1-6:膜貫通領域、P:ポアヘリックス、F:イオン選択フィルター]] | ||
[[ファイル:Uchida Temperature receptor Fig2.png|サムネイル|'''図2. TRPV1の構造'''<br>(Liao et al. Nature, 2013)]] | |||
[[ファイル:Uchida Temperature receptor Fig3.png|サムネイル|'''図3. TRPチャネルファミリーの活性化閾値'''<br>ヒトが感知しうる温度をほぼ網羅する]] | |||
== 温度感受性TRPチャネル == | == 温度感受性TRPチャネル == | ||
[[trp]]遺伝子は1989年に[[ショウジョウバエ]]の[[光受容応答]]変異株の原因遺伝子として発見された<ref name=Montell1989><pubmed>2516726</pubmed></ref>。TRPチャネルは7つのサブファミリー([[TRPC]] (canonical)、[[TRPV]] (vaniloid)、[[TRPM]] (melastatin)、[[TRPML]]、[[TRPN]]、[[TRPP]]、[[TRPA]] (ankyrin))に分けられ、脊椎動物では28のTRPチャネルが同定されているが、ヒトではTRPNを除く6つのサブファミリーに27のチャネルが存在する。6回膜貫通領域を有し、N末端、C末端側ともに細胞内に位置する。第5、第6膜貫通ドメインがイオンの通る穴を形成しており、短いイオン選択フィルターを有する('''図1''')。基本的に4量体で機能することが、[[低温電子顕微鏡]]([[Cryo-EM]])を用いた構造解析により明らかになっている('''図2''')<ref name=Liao2013><pubmed>24305160</pubmed></ref>。N末端領域にはTRPC、TRPV、TRPAにおいて[[アンキリン]]リピートドメイン、C末端領域にはTRPドメイン(TRPC、TRPM、TRPV)、[[コイルドコイルドメイン]](TRPM、TRPP)、[[酵素]]活性部位([[TRPM2]]:[[ADPリボースヒドロラーゼ]]、TRPM6/7:αキナーゼ)などが存在する。(TRPチャネル項目参照) | [[trp]]遺伝子は1989年に[[ショウジョウバエ]]の[[光受容応答]]変異株の原因遺伝子として発見された<ref name=Montell1989><pubmed>2516726</pubmed></ref>。TRPチャネルは7つのサブファミリー([[TRPC]] (canonical)、[[TRPV]] (vaniloid)、[[TRPM]] (melastatin)、[[TRPML]]、[[TRPN]]、[[TRPP]]、[[TRPA]] (ankyrin))に分けられ、脊椎動物では28のTRPチャネルが同定されているが、ヒトではTRPNを除く6つのサブファミリーに27のチャネルが存在する。6回膜貫通領域を有し、N末端、C末端側ともに細胞内に位置する。第5、第6膜貫通ドメインがイオンの通る穴を形成しており、短いイオン選択フィルターを有する('''図1''')。基本的に4量体で機能することが、[[低温電子顕微鏡]]([[Cryo-EM]])を用いた構造解析により明らかになっている('''図2''')<ref name=Liao2013><pubmed>24305160</pubmed></ref>。N末端領域にはTRPC、TRPV、TRPAにおいて[[アンキリン]]リピートドメイン、C末端領域にはTRPドメイン(TRPC、TRPM、TRPV)、[[コイルドコイルドメイン]](TRPM、TRPP)、[[酵素]]活性部位([[TRPM2]]:[[ADPリボースヒドロラーゼ]]、TRPM6/7:αキナーゼ)などが存在する。(TRPチャネル項目参照) | ||
1997年に、カプサイシン受容体であるTRPV1が熱刺激によって活性化することが明らかとなり、哺乳類で初めて生体温度センサー分子が発見された。これ以降、温度感受性をもつTRPチャネルが次々と同定され、これらを総称して「温度感受性TRPチャネル」と呼ぶ。全てのTRPチャネルが温度感受性を持つのではなく、現在までに11の温度感受性TRPチャネルが報告されている。温度感受性TRPチャネルはTRPV、TRPM、TRPA、TRPCサブファミリーにまたがっており、それぞれの活性化温度閾値はヒトが感知しうる温度をほぼ網羅している('''図3''')。温度によるチャネルの構造変化が[[TRPV1]]<ref name=Kwon2021><pubmed>34239123</pubmed></ref>、[[TRPV3]]<ref name=Nadezhdin2021><pubmed>34239124</pubmed></ref>、[[TRPM4]]<ref name=Hu2024><pubmed>38750366</pubmed></ref>において報告されているが十分に明らかになっておらず、今後の研究における解明が期待される。 | |||
=== TRPV1 === | === TRPV1 === | ||