「ミトコンドリア」の版間の差分
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[[膜電位]]の低下・喪失など機能低下したミトコンドリアはオートファゴソーム膜によって隔離され[[リソソーム]]によって分解される ([[マイトファジー]])。[[ショウジョウバエ]]や[[パーキンソン病]]患者の[[逆遺伝学]]的な解析から、[[Parkin]]および[[PTEN-induced putative kinase 1]] ([[Pink1]]) 遺伝子がマイトファジーにおいて中心的な役割を担うことが明らかになった。ミトコンドリアに局在するキナーゼであるPink1タンパク質は膜電位の低下等により活性化し、[[E3ユビキチンリガーゼ]]であるParkinや[[ユビキチン]]をリン酸化する。リン酸化されて活性化したParkinはミトコンドリア外膜上のタンパク質にユビキチン化修飾を施し、[[optineurin]] ([[OPTN]])、[[nuclear dot protein 52 kDa]] ([[NDP52]])、[[Tax1 binding protein 1]] ([[TAX1BP1]])などのオートファジーのアダプタータンパク質を呼び込む。Pink1タンパク質の活性化機構として、通常はミトコンドリア内膜に輸送されて切断を受け細胞質のプロテアソームによって分解されて低いレベルに保たれているが、膜電位の低下によりPink1の切断が行われず外膜に蓄積するというモデルが提唱されている<ref name=Narendra2024><pubmed>39358449</pubmed></ref>。 | |||
一方、マイトファジーレポーターである[[mito-QCマウス]]を用いた組織学的な解析から、発達期や若年齢から特にエネルギー需要の高い心臓や脳などの組織では定常的にマイトファジーが起きていることが分かってきた。興味深いことに、この生理的な条件下で起きるマイトファジーはParkinをノックアウトしたマウスの[[ドーパミン]]産生ニューロンにおいて減少しなかった<ref name=McWilliams2018><pubmed>29337137</pubmed></ref>。このことから、生理的な条件下ではPink1-Parkin非依存的なマイトファジー経路がミトコンドリアの品質管理に働く可能性が示唆されている。[[培養細胞]]等を用いた研究から[[microtubule-associated protein 1 light chain 3]] ([[LC3]])と結合しオートファゴソーム膜を誘導するレセプターがいくつか知られているが<ref name=Onishi2021><pubmed>33438778</pubmed></ref><ref name=Uoselis2023><pubmed>37708893</pubmed></ref>、ニューロンにおけるそれら因子の働きについては未だよく分かっていない。 | |||
[[ファイル:Hirabayashi mitochondria Fig3.png|サムネイル|'''図3. ニューロン軸索におけるミトコンドリアの輸送'''<br>軸索において、ミトコンドリアは微小管上をモータータンパク質により能動的に輸送される。軸索の微小管は、細胞体から軸索遠位部方向に(-)端から(+)端へ決まった配向で伸展する。細胞体から軸索遠位部への輸送 ( | [[ファイル:Hirabayashi mitochondria Fig3.png|サムネイル|'''図3. ニューロン軸索におけるミトコンドリアの輸送'''<br>軸索において、ミトコンドリアは微小管上をモータータンパク質により能動的に輸送される。軸索の微小管は、細胞体から軸索遠位部方向に(-)端から(+)端へ決まった配向で伸展する。細胞体から軸索遠位部への輸送 (anterograde transport)、軸索遠位部から細胞体への輸送 (retrograde transport) はそれぞれモータータンパク質であるキネシン、ダイニンによって担われる。Miro, TRAKタンパク質はミトコンドリア外膜に局在し、ミトコンドリアを選択的にキネシンモータータンパク質にアンカーさせる。ニューロン成熟に伴い、ミトコンドリアはシナプス前部領域近傍においてモータータンパク質から離れ、安定的に局在するようになる。]] | ||
== 輸送機構 == | == 輸送機構 == | ||