「スペクトリン」の版間の差分
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== スペクトリンとは == | == スペクトリンとは == | ||
赤血球は血管内を循環する過程で変形し、機械的ストレスを受ける。また、神経細胞においても、長い突起である軸索は張力やねじりなどの機械的ストレスにさらされる。スペクトリンは膜骨格(細胞膜直下に形成される裏打ち骨格構造)は、赤血球や軸索において機械的ストレス下での形態維持に寄与するタンパク質の一つである<ref name=Liu2019><pubmed>31191255</pubmed></ref><ref name=Lorenzo2023><pubmed>36697767</pubmed></ref>。 | |||
1968年、溶血によって細胞内成分を失った赤血球(赤血球ゴースト)から同定されたタンパク質は、幽霊(specter)にちなんでスペクトリンと名付けられた<ref name=Marchesi1968><pubmed>5634911</pubmed></ref>('''図1''')。1979年、スペクトリンと結合し、赤血球の膜裏打ち骨格(膜骨格)を形成するタンパク質が発見され、アンキリン (ankyrin)と名付けられた<ref name=Bennett1979><pubmed>372182</pubmed></ref>。1981年、非赤血球系培養細胞においてスペクトリン様タンパク質が存在することが報告された<ref name=Goodman1981><pubmed>6950399</pubmed></ref>。1982年、赤血球スペクトリンと免疫反応性を示す分子が脳内で発見され、神経系におけるスペクトリンの存在が示唆された<ref name=Bennett1982><pubmed>6129664</pubmed></ref>。これらの発見を契機に、脳におけるスペクトリンの機能が注目されるようになった。 | 1968年、溶血によって細胞内成分を失った赤血球(赤血球ゴースト)から同定されたタンパク質は、幽霊(specter)にちなんでスペクトリンと名付けられた<ref name=Marchesi1968><pubmed>5634911</pubmed></ref>('''図1''')。1979年、スペクトリンと結合し、赤血球の膜裏打ち骨格(膜骨格)を形成するタンパク質が発見され、アンキリン (ankyrin)と名付けられた<ref name=Bennett1979><pubmed>372182</pubmed></ref>。1981年、非赤血球系培養細胞においてスペクトリン様タンパク質が存在することが報告された<ref name=Goodman1981><pubmed>6950399</pubmed></ref>。1982年、赤血球スペクトリンと免疫反応性を示す分子が脳内で発見され、神経系におけるスペクトリンの存在が示唆された<ref name=Bennett1982><pubmed>6129664</pubmed></ref>。これらの発見を契機に、脳におけるスペクトリンの機能が注目されるようになった。 | ||
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線虫やショウジョウバエではスペクトリンの種類は少なく、α-スペクトリン、β-G-スペクトリン、β-H-スペクトリンがあり、それぞれ順に哺乳類のαII-スペクトリン、βII-スペクトリン、βv-スペクトリンに類似する<ref name=Dubreuil1998><pubmed>9872052</pubmed></ref><ref name=Zhang2013b><pubmed>24302288</pubmed></ref>。 | 線虫やショウジョウバエではスペクトリンの種類は少なく、α-スペクトリン、β-G-スペクトリン、β-H-スペクトリンがあり、それぞれ順に哺乳類のαII-スペクトリン、βII-スペクトリン、βv-スペクトリンに類似する<ref name=Dubreuil1998><pubmed>9872052</pubmed></ref><ref name=Zhang2013b><pubmed>24302288</pubmed></ref>。 | ||
{| class="wikitable" | {| class="wikitable" | ||
|+表1. スペクトリンの主な発現・局在部位と関連疾患 | |||
! 遺伝子名 | ! 遺伝子名 | ||
! タンパク質名 | ! タンパク質名 | ||
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2つのαサブユニットと2つのβサブユニットからなるヘテロ四量体を形成する<ref name=Morrow1981><pubmed>7204503</pubmed></ref><ref name=Bignone2003><pubmed>12820899</pubmed></ref>('''図2''')。 | 2つのαサブユニットと2つのβサブユニットからなるヘテロ四量体を形成する<ref name=Morrow1981><pubmed>7204503</pubmed></ref><ref name=Bignone2003><pubmed>12820899</pubmed></ref>('''図2''')。 | ||
==機能 | ==機能== | ||
神経細胞の軸索では、四量体の両端は環状に配置したアクチン(アクチンリング)と結合し、アクチンリング同士を連結することで、細胞膜直下に膜骨格を形成する。 | 神経細胞の軸索では、四量体の両端は環状に配置したアクチン(アクチンリング)と結合し、アクチンリング同士を連結することで、細胞膜直下に膜骨格を形成する。 | ||
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軸索起始部において、ankyrin-Gはイオンチャネル(Nav1やKCNQ2/3)や接着分子(NF186やNrCAM)などと結合し、それらを軸索起始部に集積させる。αII-スペクトリンとβIV-スペクトリンからなるスペクトリン四量体は、アクチンリングを連結し、ankyrin-GはβIV-スペクトリンとの結合を介して、軸索起始部における周期的な膜骨格構造を構築する。 | 軸索起始部において、ankyrin-Gはイオンチャネル(Nav1やKCNQ2/3)や接着分子(NF186やNrCAM)などと結合し、それらを軸索起始部に集積させる。αII-スペクトリンとβIV-スペクトリンからなるスペクトリン四量体は、アクチンリングを連結し、ankyrin-GはβIV-スペクトリンとの結合を介して、軸索起始部における周期的な膜骨格構造を構築する。 | ||