「カリウムチャネル」の版間の差分

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= 4.病気との関連 -カリウムチャネルのチャネル病-<br>  =
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心臓病、筋肉病、脳疾患、腎疾患、代謝性疾患など様々な疾患で、イオンチャネルをコードする遺伝子の異常を原因とするものが知られるようになってきた。いわゆる、チャネル病(Channelopathy)という概念が定着してきている<ref><pubmed>16554803</pubmed></ref><ref><pubmed>22290238</pubmed></ref>。代表的なものとして、先天性QT延長症候群(Long QT syndrome, LQTs)を引き起こす電位依存的カリウムチャネルのαサブユニットKv7.1(KCNQ1)の遺伝子異常が多数見つかっている(タイプ1, LQT1)。また、このチャネルのβサブユニットであるminK(KCNE1)の異常がLQT5の患者から見つかっている。LQT2の場合は、Kv11.1(HERG)遺伝子から異常が見つかっている。これらの遺伝子異常により、心筋の遅延整流性カリウム電流の遅い成分(''I''<sub>Ks</sub>)や早い成分(''I''<sub>Kr</sub>)を担うカリウムチャネルは機能欠損(loss-of-function)になり、心筋細胞を再分極させる外向き電流が減少することが、活動電位の延長やQT時間の延長の原因である。また、不整脈(QT 延長)に両側性感音性難聴を伴うJervell &amp; Lange-Nielson症候群 (JLN) の機能欠損変異もKv7.1(KCNQ1) 、minK(KCNE1)で見つかっている。不整脈、突発性の筋脱力、形態異常など全身性の症状を呈するAndersen-Tawil症候群(LQT7)の患者からはKir2.1の機能欠損変異が見つかっている。逆に、KCNQ1、hERG、Kir2.1の遺伝子の機能獲得(gain-of-function)変異がQT短縮症候群(Short QT syndrome, SQTs) 患者から見つかっている。<br>脳疾患では、神経性のM電流を欠損するKCNQ2/KCNQ3の機能欠損変異が家族性良性新生児痙攣(Benign familial neonatal epilepsy, BFNE)の原因となることが報告されている <ref><pubmed>9430594</pubmed></ref><ref><pubmed>9872318</pubmed></ref><ref><pubmed>9425900</pubmed></ref><ref><pubmed>9425895</pubmed></ref>。また、Kv1.1の機能欠損変異が発作性運動失調症(episodic ataxia, EA)を引き起こすこと知られている<ref><pubmed>7842011</pubmed></ref>。さらに、KCNQ4やKir4.1の変異が難聴に繋がることも分かっている。(KCNQ4遺伝子は常染色体優性遺伝形式を取るDFNA2の原因遺伝子として報告された)<br>腎疾患、代謝性疾患で代表的なものは、腎尿細管上皮細胞頂上膜に局在するKir1.1(ROMK1)の異常が代謝性アルカローシスや低K<sup>+</sup>血症を伴うBartter症候群(II型)を引き起こすことが分かっている。さらにKir6.2、SUR1の変異による膵臓β細胞K<sub>ATP</sub>チャネルの機能獲得変異によって新生児糖尿病(permenent neonatal diabetes)で、逆に機能欠損変異で新生児持続性高インスリン性低血糖症(Persistent hyperinsulinemic hypoglycemia of infancy, PHHI)などで見つかっている。<br>チャネル病の遺伝性を解析してみると、表現型が常染色体優性遺伝で遺伝されることが多い。カリウムチャネルはα、βサブユニットの複合体であるため、異常なサブユニットが一つでも入ることで複合体の機能が欠失するドミナントネガティブ効果でイオンチャネル機能が阻害されることがあります。一方、ハプロ不全(haplo-insufficiency)で発病する場合も多く報告されている。しかもその場合、機能欠損変異のみならず機能獲得変異によるチャネル病も報告されている。このことはイオンチャネルの機能が欠損していても過剰になっていても生体にとっては不適で、言い換えると適切な発現レベルや活性の範囲が存在することを示している。<br>遺伝子異常を原因としないものとしては、様々なストレス下でおこるイオンチャネルのリモデリングが心臓不整脈などの疾患の原因となることが知られている。  
心臓病、筋肉病、脳疾患、腎疾患、代謝性疾患など様々な疾患で、イオンチャネルをコードする遺伝子の異常を原因とするものが知られるようになってきた。いわゆる、チャネル病(Channelopathy)という概念が定着してきている<ref><pubmed>16554803</pubmed></ref><ref><pubmed>22290238</pubmed></ref>。代表的なものとして、先天性QT延長症候群(Long QT syndrome, LQTs)を引き起こす電位依存的カリウムチャネルのαサブユニットKv7.1(KCNQ1)の遺伝子異常が多数見つかっている(タイプ1, LQT1)。また、このチャネルのβサブユニットであるminK(KCNE1)の異常がLQT5の患者から見つかっている。LQT2の場合は、Kv11.1(HERG)遺伝子に異常が見つかっている。これらの遺伝子異常により、心筋の遅延整流性カリウム電流の遅い成分(''I''<sub>Ks</sub>)や早い成分(''I''<sub>Kr</sub>)を担うカリウムチャネルは機能欠損(loss-of-function)になり、それによって心筋細胞を再分極させる外向き電流が減少することが、活動電位の延長やQT時間の延長の原因である。また、不整脈(QT 延長)に両側性感音性難聴を伴うJervell &amp; Lange-Nielson症候群 (JLN) の機能欠損変異もKv7.1(KCNQ1) 、minK(KCNE1)で見つかっている。不整脈、突発性の筋脱力、形態異常など全身性の症状を呈するAndersen-Tawil症候群(LQT7)の患者からはKir2.1の機能欠損変異が見つかっている。逆に、KCNQ1、hERG、Kir2.1の遺伝子の機能獲得(gain-of-function)変異がQT短縮症候群(Short QT syndrome, SQTs) 患者から見つかっている。<br>脳疾患では、神経性のM電流を欠損するKv7.2(KCNQ2)やKv7.3(KCNQ3)の機能欠損変異が家族性良性新生児痙攣(Benign familial neonatal epilepsy, BFNE)の原因として報告されている <ref><pubmed>9430594</pubmed></ref><ref><pubmed>9872318</pubmed></ref><ref><pubmed>9425900</pubmed></ref><ref><pubmed>9425895</pubmed></ref>。また、Kv1.1の機能欠損変異が発作性運動失調症(episodic ataxia, EA)を引き起こすこと知られている<ref><pubmed>7842011</pubmed></ref>。さらに、Kv7.4(KCNQ4)やKir4.1の変異が難聴に繋がることも分かっている。(KCNQ4遺伝子は常染色体優性遺伝形式を取るDFNA2の原因遺伝子として報告された)<br>腎疾患、代謝性疾患で代表的なものは、腎尿細管上皮細胞頂上膜に局在するKir1.1(ROMK1)の異常が代謝性アルカローシスや低K<sup>+</sup>血症を伴うBartter症候群(II型)を引き起こすことが分かっている。さらにKir6.2、SUR1の変異による膵臓β細胞K<sub>ATP</sub>チャネルの機能獲得変異によって新生児糖尿病(permenent neonatal diabetes)で、逆に機能欠損変異で新生児持続性高インスリン性低血糖症(Persistent hyperinsulinemic hypoglycemia of infancy, PHHI)などで見つかっている。<br>チャネル病の遺伝性を解析してみると、表現型が常染色体優性遺伝で遺伝されることが多い。カリウムチャネルはα、βサブユニットの複合体であるため、異常なサブユニットが一つでも入ることで複合体の機能が欠失するドミナントネガティブ効果でイオンチャネル機能が阻害されることがある。一方、ハプロ不全(haplo-insufficiency)で発病する場合も多く報告されている。しかもその場合、機能欠損変異のみならず機能獲得変異によるチャネル病も報告されている。このことはイオンチャネルの機能が欠損していても過剰になっていても生体にとっては不適で、言い換えると適切な発現レベルや活性の範囲が存在することを示している。<br>遺伝子異常を原因としないものとしては、様々なストレス下でおこるイオンチャネルのリモデリングが心臓不整脈などの疾患の原因となることが知られている。  


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