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==Shankの発現== | == Shankの発現 == | ||
いずれのサブタイプも脳に広範に発現している.細胞レベルでは、シナプス後部、特にシナプス後肥厚(PSD)に多く分布している. | いずれのサブタイプも脳に広範に発現している.細胞レベルでは、シナプス後部、特にシナプス後肥厚(PSD)に多く分布している. | ||
脳以外では、Shank2は腎臓、肝臓に、Shank3は心臓、精巣にも発現している. | 脳以外では、Shank2は腎臓、肝臓に、Shank3は心臓、精巣にも発現している.<ref><pubmed>10506216</pubmed></ref> | ||
==Shankの機能== | == Shankの機能 == | ||
<br>Shankを神経細胞に過剰発現するとスパインの肥大化が起こり、特にShank結合蛋白質であるHomerとの共発現はスパインのを更なる肥大化を引き起こす.さらに、本来、スパインを持たない抑制性の小脳顆粒細胞にShankを導入すると、 | |||
<br>Shankを神経細胞に過剰発現するとスパインの肥大化が起こり、特にShank結合蛋白質であるHomerとの共発現はスパインのを更なる肥大化を引き起こす.さらに、本来、スパインを持たない抑制性の小脳顆粒細胞にShankを導入すると、 NMDA型やAMPA型のグルタミン酸受容体をもつ樹状突起棘を形成するようになる. <ref><pubmed>15814786</pubmed></ref>. | |||
Shank分子間のドメイン間相互作用によりオリゴマーを形成するShankと、両端に2つずつのリガンド結合部位をもつ逆平行4量体を形成するHomerは互いに架橋して、高次のネットワーク構造を形成することから、このShankとHomerの高次複合体がPSDの骨格となると考えられる. | Shank分子間のドメイン間相互作用によりオリゴマーを形成するShankと、両端に2つずつのリガンド結合部位をもつ逆平行4量体を形成するHomerは互いに架橋して、高次のネットワーク構造を形成することから、このShankとHomerの高次複合体がPSDの骨格となると考えられる. | ||
& | 図2 Shank PDZ ドメインによるダイマー形成とGKAPとの相互作用 <ref><pubmed>12954649</pubmed></ref> | ||
図3 Shank PDZ ドメインとbetaPIXとの相互作用 <ref><pubmed>20117114</pubmed></ref> | |||
図4 Shank SAM ドメインの結晶構造 <ref><pubmed>16439662</pubmed></ref> | |||
神経細胞に発現することで、スパイン形成を誘導し、また、スパインサイズを大きくする。結合タンパク質Homerとの共発現でこの作用はさらに顕著になる。 このようなスパイン形成における機能は、Shank自身がSAMドメインを介してポリマーを形成すること、また、Homerとの相互作用によりポリマーを形成することで、構造的な役割を担うことで説明できる。 <br>Shankの分子内・分子間相互作用<br>Shank分子内、あるいはShank分子間の相互作用としては、アンキリンリピートとSH3ドメインが相互作用する<ref><pubmed>15496675</pubmed></ref> ほか、PDZドメインはホモ二量体を<ref><pubmed>12954649</pubmed></ref>、SAMドメインは多量体を <ref><pubmed>16439662</pubmed></ref> 形成する.このPDZドメインによるホモ二量体形成には、PDZドメイン本来の蛋白質結合部位は関与しないので、二量体を形成しても、他のPDZリガンドは結合できる.一方、結晶化されたSAMドメインは一周6分子の螺旋状ポリマーを形成しており、更にこの螺旋が側面で会合して、Zn2+イオンに依存性の二次元の広がりをもつシートを形成する(図3).但し、SAMドメインの大きさはShank全長の3%にしか相当しないので、上流の長い配列も含めて大きなポリマーを形成できるかどうかは不明である. | |||
== Shankと相互作用する蛋白質 == | |||
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=== 受容体 === | |||
グルタミン酸受容体のうち、三量体型GTP結合蛋白質(G蛋白質)を介してホスホリパーゼCを活性化するmGluR1α,mGluR5のC末端と、GluRδ2のC末端付近の細胞内領域の内部配列がShankのPDZドメインに結合する. このうち、mGluR1α, mGluR5のC末端側の細胞内領域のプロリンを含む配列がShank結合蛋白質であるHomerのEVH1ドメインにも結合する .更に、ShankのPDZドメインには同じくG蛋白質共役型受容体であるソマトスタチンレセプターⅡもアゴニスト依存的に結合する.<br> | |||
G protein-coupled alpha-latrotoxin receptor CL1 <ref><pubmed>10958799</pubmed></ref> PDZ domain – C term | |||
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=== シナプス足場蛋白質 === | |||
GKAP(Guanylate kinase associated protein)[別名SAPAP(SAP-90/PSD-95 associated protein)/DAP (DLG-associated protein)]のC末端もShankのPDZドメインに結合する.DLGAP1/GKAP <ref><pubmed>10488079, <ref><pubmed>10433268 PDZ domain – C term GKAPのN末側にある14アミノ酸からなる繰り返し配列は、PSD-95、S-SCAM(synaptic scaffolding molecule)などのMAGUK(Membrane associated guanylate kinase)ファミリー蛋白質のグアニル酸キナーゼドメインに結合する.PSD-95はNMDA型グルタミン酸受容体に直接結合するほか、TARP (transmembrane AMPA receptor regulatory protein)を介してAMPA型グルタミン酸と相互作用する. | |||
Homer <ref><pubmed>10433269</pubmed></ref> Proline-rich – EVH1 | |||
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=== 低分子量GTP結合蛋白質を制御する蛋白質 === | |||
<br>GKAPのように、受容体に結合するPSD-95などのMAGUKファミリー蛋白質とShankとの橋渡しをする蛋白質には、他にIRS-p53(Insulin receptor substrate p53)がある.IRS-p53はN末側に糸状側枝のような細胞表面の突起を形成する細胞膜の内側に結合する性質を持つI-BAR (Inverted Bin-Amphiphysin-RVS)ドメイン、中央付近に低分子量GTP結合蛋白質であるCdc42に結合するCRIB(Cdc42/Rac interactive binding motif)、C末付近にSH3ドメイン、C末にPDZドメイン結合モチーフをもつ.C末がPSD-95に、SH3ドメインがShankのプロリン配列に結合することで、PSD-95とShankを架橋できる.この相互作用は、活性型のCdc42によって促進されるが、Shank1との相互作用の結果、IRS-p53による糸状側枝の形成は抑制される.<br>HomerはN端側のEVH1ドメインでShankのプロリン配列に結合する一方、C端側のコイルドコイルで逆平行四量体を形成するので、Shankを架橋してポリマーを形成することができる.実際に細胞内では、Shankは状況に応じてその結合蛋白質も含めた複雑な高次複合体を形成しているのではないかと推測される.<br>細胞骨格:アクチン結合蛋白質と相互作用することで、受容体を含むシナプス後肥厚と細胞骨格をつなぐ働きを持つ. | |||
βPIX <ref><pubmed>12626503</pubmed></ref> PDZ domain – C term | |||
=== アクチン結合蛋白質 === | |||
Abp1(Actin binding protein 1)とコートアクチンのSH3ドメインがプロリン配列に結合する.また、上記のIRS-p53も、N末側のI-BARドメインがアクチン結合活性をもつ.<br>SPAR(Spine associated Rap-GAP)はその名の通りRasファミリー低分子量GTP結合蛋白質であるRapのGTP水解を促すだけでなく、アクチン結合活性をもち、かつPSD-95のグアニル酸キナーゼドメインに結合する多機能な蛋白質である.PSD-Zip70およびProSAPip (ProSAP interacting protein)はコイルドコイルに富むSPAR結合蛋白質であるが、そのC末端がShankのPDZドメインに結合する.これもまた、PSD-95とShankをつなぐルートの一つである. この他、Shankのアンキリンリピートに結合し、多量体を形成するSharpin、ShankのPDZドメインに結合する一方、DH(Dbl homology)ドメイン、PH(pleckstrin homology)ドメインによりRac1/Cdc42を活性化、更にSH3ドメインによりRac1/Cdc42のエフェクターであるPAK (p21 activated kinase)とも結合するβPIXなどの結合蛋白質も同定されている. | |||
Cortactin <ref><pubmed>10433268</pubmed></ref> , <ref><pubmed>9742101</pubmed></ref> Proline-rich – SH3 | |||
Abp1 <ref><pubmed>15014124</pubmed></ref> Proline-rich – SH3 | |||
Spectrin-alpha <ref><pubmed>11509555</pubmed></ref> Ankyrin repeats | |||
=== その他の蛋白質 === | |||
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< | Multimerization of SAM <ref><pubmed>10433268</pubmed></ref> | ||
Sharpin <ref><pubmed>11178875</pubmed></ref> Ankyrin repeats | |||
Dynamin 2 <ref><pubmed>11583995</pubmed></ref>. | |||
Proline-rich – Proline-rich ProSAPiP1 <ref><pubmed>16522626</pubmed></ref> PDZ domain – C term | |||
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dendrite arborization and synapse maturation 1 (Dasm1) 15340156 PDZ domain – C term | |||
こうしたShank結合蛋白質の顔ぶれは、Shankがシナプス後膜近傍で、他の1,2の蛋白質を介した間接的な相互作用を含めて、神経伝達物質受容体、アクチン細胞骨格、低分子量GTP結合蛋白質と相互作用していることを示す.このことから、ShankはPSDにおけるハブとして、シナプス伝達から樹状突起棘の形態制御に至る、神経可塑性の鍵を握る分子であると考えることができる. | こうしたShank結合蛋白質の顔ぶれは、Shankがシナプス後膜近傍で、他の1,2の蛋白質を介した間接的な相互作用を含めて、神経伝達物質受容体、アクチン細胞骨格、低分子量GTP結合蛋白質と相互作用していることを示す.このことから、ShankはPSDにおけるハブとして、シナプス伝達から樹状突起棘の形態制御に至る、神経可塑性の鍵を握る分子であると考えることができる. | ||
==Shank遺伝子の異常==<br>自閉症のごく一部の患者でShank2ならびに3の変異が報告されている.また、シナプスの形成に関与し、Shankにも結合するシナプス接着分子であるニューロリギンのうちNLGN3およびNLGN4の変異も自閉症に関与することが報告されており、シナプス形成の異常が発症の原因となっていることが示唆されている.また、脆弱X症候群など、シナプスの形成不全が背景にある疾患で、自閉症の症状を伴うものもある5).<br>Shank1のノックアウトマウスでは、樹状突起棘やシナプス後肥厚がやや小さくなり、シナプス伝達効率が低下していた .また、Shankに結合するGKAPやHomerの樹状突起棘やシナプス後肥厚に対する局在が減少していた.行動面では、不安に関連した行動がよく見られ、文脈的恐怖条件付け試験の成績は良くなかった反面、海馬長期増強現象(LTP)と空間学習の成績は野生型より向上していた.こういった研究結果を解釈する際には、Shankには3つのサブタイプがあるので、単独のノックアウトや変異の場合、他のサブタイプによる補完が行われる可能性があることを念頭に置く必要がある.自閉症との関連 | ==Shank遺伝子の異常== | ||
<br>自閉症のごく一部の患者でShank2ならびに3の変異が報告されている.また、シナプスの形成に関与し、Shankにも結合するシナプス接着分子であるニューロリギンのうちNLGN3およびNLGN4の変異も自閉症に関与することが報告されており、シナプス形成の異常が発症の原因となっていることが示唆されている.また、脆弱X症候群など、シナプスの形成不全が背景にある疾患で、自閉症の症状を伴うものもある5).<br>Shank1のノックアウトマウスでは、樹状突起棘やシナプス後肥厚がやや小さくなり、シナプス伝達効率が低下していた .また、Shankに結合するGKAPやHomerの樹状突起棘やシナプス後肥厚に対する局在が減少していた.行動面では、不安に関連した行動がよく見られ、文脈的恐怖条件付け試験の成績は良くなかった反面、海馬長期増強現象(LTP)と空間学習の成績は野生型より向上していた.こういった研究結果を解釈する際には、Shankには3つのサブタイプがあるので、単独のノックアウトや変異の場合、他のサブタイプによる補完が行われる可能性があることを念頭に置く必要がある.自閉症との関連 自閉症との関連については、Shank3が最初に報告されたが、<ref><pubmed>17173049</pubmed></ref>、その後、Shank2 <ref><pubmed>20531469</pubmed></ref>, Shank1 <ref><pubmed>22503632</pubmed></ref>についても報告されている。Phelan–McDermid 症候群は染色体22q13部位の欠失によるもので、Shank3 の異常が原因の一つと考えられている。また、Shank3のノックアウトマウスは社会的相互作用の欠如や過剰な毛繕いなど自閉症様の表現型を呈する<ref><pubmed>21423165</pubmed></ref>。また、自閉症患者にみられるShank3のC末の欠失変異体は、優性にShank3のプロテアーゼ分解を促進して、シナプスの形成を阻害する<ref><pubmed>21565394</pubmed></ref>。 | |||
関連項目 (関連する項目を記入して下さい。現在のところ、脳科学辞典の項目として存在しなくても構いません。) | 関連項目 (関連する項目を記入して下さい。現在のところ、脳科学辞典の項目として存在しなくても構いません。) | ||
参考文献 (次のように入力すると自動的に参考文献リストが出来ます)<br><references /><br>(執筆者:林 真理子、担当編集委員:柚崎 通介) | 参考文献 (次のように入力すると自動的に参考文献リストが出来ます)<br><references /><br>(執筆者:林 真理子、担当編集委員:柚崎 通介) |
2012年5月26日 (土) 23:42時点における版
Shank
英:Shank (SH3 and multiple ankyrin repeat domains protein)
同義語:ProSAP (Proline-rich synapse-associated protein), CortBP (Cortactin-binding protein), Somatostatin receptor-interacting protein (SSTRIP), GKAP/SAPAP-interacting protein, SPANK, Synamon
Shankは、多くの蛋白質と相互作用する2000個以上のアミノ酸からなる巨大な足場蛋白質である.選択的スプライシングによりさまざまな遺伝子産物が得られるが、最も長いものはアンキリンリピート、SH3ドメイン、PDZドメイン、プロリンリッチ配列、SAMドメインからなる.それぞれのドメインが相互作用する蛋白質を持つので、結合蛋白質は多岐にわたる.自閉症との関連が指摘されている.
(見出しは==で囲んで下さい.)
Shankの構造
図1 Shank ドメイン構造と選択的スプライシング産物
==サブタイプとドメイン構造==
Shankには異なった遺伝子にコードされるShank1、2、3がある.Shankのドメイン構造はアミノ端から、アンキリンリピート、SH3 (Src homology 3)ドメイン、PDZ (PSD-95, Dlg, Zo-1)ドメイン、1000残基以上に及ぶプロリン、セリン、グリシンに富む配列、SAM (Sterile alpha motif)からなる(図1).選択的スプライシングにより、アンキリンリピートやSH3ドメイン、SAMドメインを欠くものもある.
サブタイプ毎の別名は、
Shank1=GKAP/SAPAP-interacting protein=SPANK-1=SSTRIP=Synamon
Shank2=CortBP1=ProSAP1=SPANK-3
Shank3=ProSAP2=SPANK-2
となる.
Shankの発現
いずれのサブタイプも脳に広範に発現している.細胞レベルでは、シナプス後部、特にシナプス後肥厚(PSD)に多く分布している.
脳以外では、Shank2は腎臓、肝臓に、Shank3は心臓、精巣にも発現している.[1]
Shankの機能
Shankを神経細胞に過剰発現するとスパインの肥大化が起こり、特にShank結合蛋白質であるHomerとの共発現はスパインのを更なる肥大化を引き起こす.さらに、本来、スパインを持たない抑制性の小脳顆粒細胞にShankを導入すると、 NMDA型やAMPA型のグルタミン酸受容体をもつ樹状突起棘を形成するようになる. [2].
Shank分子間のドメイン間相互作用によりオリゴマーを形成するShankと、両端に2つずつのリガンド結合部位をもつ逆平行4量体を形成するHomerは互いに架橋して、高次のネットワーク構造を形成することから、このShankとHomerの高次複合体がPSDの骨格となると考えられる.
図2 Shank PDZ ドメインによるダイマー形成とGKAPとの相互作用 [3]
図3 Shank PDZ ドメインとbetaPIXとの相互作用 [4] 図4 Shank SAM ドメインの結晶構造 [5]
神経細胞に発現することで、スパイン形成を誘導し、また、スパインサイズを大きくする。結合タンパク質Homerとの共発現でこの作用はさらに顕著になる。 このようなスパイン形成における機能は、Shank自身がSAMドメインを介してポリマーを形成すること、また、Homerとの相互作用によりポリマーを形成することで、構造的な役割を担うことで説明できる。
Shankの分子内・分子間相互作用
Shank分子内、あるいはShank分子間の相互作用としては、アンキリンリピートとSH3ドメインが相互作用する[6] ほか、PDZドメインはホモ二量体を[7]、SAMドメインは多量体を [8] 形成する.このPDZドメインによるホモ二量体形成には、PDZドメイン本来の蛋白質結合部位は関与しないので、二量体を形成しても、他のPDZリガンドは結合できる.一方、結晶化されたSAMドメインは一周6分子の螺旋状ポリマーを形成しており、更にこの螺旋が側面で会合して、Zn2+イオンに依存性の二次元の広がりをもつシートを形成する(図3).但し、SAMドメインの大きさはShank全長の3%にしか相当しないので、上流の長い配列も含めて大きなポリマーを形成できるかどうかは不明である.
Shankと相互作用する蛋白質
受容体
グルタミン酸受容体のうち、三量体型GTP結合蛋白質(G蛋白質)を介してホスホリパーゼCを活性化するmGluR1α,mGluR5のC末端と、GluRδ2のC末端付近の細胞内領域の内部配列がShankのPDZドメインに結合する. このうち、mGluR1α, mGluR5のC末端側の細胞内領域のプロリンを含む配列がShank結合蛋白質であるHomerのEVH1ドメインにも結合する .更に、ShankのPDZドメインには同じくG蛋白質共役型受容体であるソマトスタチンレセプターⅡもアゴニスト依存的に結合する.
G protein-coupled alpha-latrotoxin receptor CL1 [9] PDZ domain – C term
somatostatin receptor subtype 2 [10] PDZ domain – C term
Na+/H+ exchanger 3 [11] PDZ domain – C term
cystic fibrosis transmembrane conductance regulator [12] PDZ domain – C term
GluA1 [13] PDZ domain – C term
mGluR1,5 [14] PDZ domain – C term
GluR delta 2 [15] C-term-PDZ
シナプス足場蛋白質
GKAP(Guanylate kinase associated protein)[別名SAPAP(SAP-90/PSD-95 associated protein)/DAP (DLG-associated protein)]のC末端もShankのPDZドメインに結合する.DLGAP1/GKAP [16] Proline-rich – EVH1 IRSp53 [17] Proline-rich – SH3
低分子量GTP結合蛋白質を制御する蛋白質
GKAPのように、受容体に結合するPSD-95などのMAGUKファミリー蛋白質とShankとの橋渡しをする蛋白質には、他にIRS-p53(Insulin receptor substrate p53)がある.IRS-p53はN末側に糸状側枝のような細胞表面の突起を形成する細胞膜の内側に結合する性質を持つI-BAR (Inverted Bin-Amphiphysin-RVS)ドメイン、中央付近に低分子量GTP結合蛋白質であるCdc42に結合するCRIB(Cdc42/Rac interactive binding motif)、C末付近にSH3ドメイン、C末にPDZドメイン結合モチーフをもつ.C末がPSD-95に、SH3ドメインがShankのプロリン配列に結合することで、PSD-95とShankを架橋できる.この相互作用は、活性型のCdc42によって促進されるが、Shank1との相互作用の結果、IRS-p53による糸状側枝の形成は抑制される.
HomerはN端側のEVH1ドメインでShankのプロリン配列に結合する一方、C端側のコイルドコイルで逆平行四量体を形成するので、Shankを架橋してポリマーを形成することができる.実際に細胞内では、Shankは状況に応じてその結合蛋白質も含めた複雑な高次複合体を形成しているのではないかと推測される.
細胞骨格:アクチン結合蛋白質と相互作用することで、受容体を含むシナプス後肥厚と細胞骨格をつなぐ働きを持つ.
βPIX [18] PDZ domain – C term
アクチン結合蛋白質
Abp1(Actin binding protein 1)とコートアクチンのSH3ドメインがプロリン配列に結合する.また、上記のIRS-p53も、N末側のI-BARドメインがアクチン結合活性をもつ.
SPAR(Spine associated Rap-GAP)はその名の通りRasファミリー低分子量GTP結合蛋白質であるRapのGTP水解を促すだけでなく、アクチン結合活性をもち、かつPSD-95のグアニル酸キナーゼドメインに結合する多機能な蛋白質である.PSD-Zip70およびProSAPip (ProSAP interacting protein)はコイルドコイルに富むSPAR結合蛋白質であるが、そのC末端がShankのPDZドメインに結合する.これもまた、PSD-95とShankをつなぐルートの一つである. この他、Shankのアンキリンリピートに結合し、多量体を形成するSharpin、ShankのPDZドメインに結合する一方、DH(Dbl homology)ドメイン、PH(pleckstrin homology)ドメインによりRac1/Cdc42を活性化、更にSH3ドメインによりRac1/Cdc42のエフェクターであるPAK (p21 activated kinase)とも結合するβPIXなどの結合蛋白質も同定されている.
Cortactin [19] , [20] Proline-rich – SH3
Abp1 [21] Proline-rich – SH3
Spectrin-alpha [22] Ankyrin repeats
その他の蛋白質
Phospholipse beta 3 [23] PDZ domain – C term. Multimerization of SAM [24] Sharpin [25] Ankyrin repeats Dynamin 2 [26]. Proline-rich – Proline-rich ProSAPiP1 [27] PDZ domain – C term dendrite arborization and synapse maturation 1 (Dasm1) [28] PDZ domain – C term
こうしたShank結合蛋白質の顔ぶれは、Shankがシナプス後膜近傍で、他の1,2の蛋白質を介した間接的な相互作用を含めて、神経伝達物質受容体、アクチン細胞骨格、低分子量GTP結合蛋白質と相互作用していることを示す.このことから、ShankはPSDにおけるハブとして、シナプス伝達から樹状突起棘の形態制御に至る、神経可塑性の鍵を握る分子であると考えることができる.
Shank遺伝子の異常
自閉症のごく一部の患者でShank2ならびに3の変異が報告されている.また、シナプスの形成に関与し、Shankにも結合するシナプス接着分子であるニューロリギンのうちNLGN3およびNLGN4の変異も自閉症に関与することが報告されており、シナプス形成の異常が発症の原因となっていることが示唆されている.また、脆弱X症候群など、シナプスの形成不全が背景にある疾患で、自閉症の症状を伴うものもある5).
Shank1のノックアウトマウスでは、樹状突起棘やシナプス後肥厚がやや小さくなり、シナプス伝達効率が低下していた .また、Shankに結合するGKAPやHomerの樹状突起棘やシナプス後肥厚に対する局在が減少していた.行動面では、不安に関連した行動がよく見られ、文脈的恐怖条件付け試験の成績は良くなかった反面、海馬長期増強現象(LTP)と空間学習の成績は野生型より向上していた.こういった研究結果を解釈する際には、Shankには3つのサブタイプがあるので、単独のノックアウトや変異の場合、他のサブタイプによる補完が行われる可能性があることを念頭に置く必要がある.自閉症との関連 自閉症との関連については、Shank3が最初に報告されたが、[29]、その後、Shank2 [30], Shank1 [31]についても報告されている。Phelan–McDermid 症候群は染色体22q13部位の欠失によるもので、Shank3 の異常が原因の一つと考えられている。また、Shank3のノックアウトマウスは社会的相互作用の欠如や過剰な毛繕いなど自閉症様の表現型を呈する[32]。また、自閉症患者にみられるShank3のC末の欠失変異体は、優性にShank3のプロテアーゼ分解を促進して、シナプスの形成を阻害する[33]。
関連項目 (関連する項目を記入して下さい。現在のところ、脳科学辞典の項目として存在しなくても構いません。)
参考文献 (次のように入力すると自動的に参考文献リストが出来ます)
<references />
(執筆者:林 真理子、担当編集委員:柚崎 通介)
- ↑
Lim, S., Naisbitt, S., Yoon, J., Hwang, J.I., Suh, P.G., Sheng, M., & Kim, E. (1999).
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Roussignol, G., Ango, F., Romorini, S., Tu, J.C., Sala, C., Worley, P.F., ..., & Fagni, L. (2005).
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Crystal structure of the Shank PDZ-ligand complex reveals a class I PDZ interaction and a novel PDZ-PDZ dimerization. The Journal of biological chemistry, 278(48), 48099-104. [PubMed:12954649] [WorldCat] [DOI] - ↑
Im, Y.J., Kang, G.B., Lee, J.H., Park, K.R., Song, H.E., Kim, E., ..., & Eom, S.H. (2010).
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Im, Y.J., Lee, J.H., Park, S.H., Park, S.J., Rho, S.H., Kang, G.B., ..., & Eom, S.H. (2003).
Crystal structure of the Shank PDZ-ligand complex reveals a class I PDZ interaction and a novel PDZ-PDZ dimerization. The Journal of biological chemistry, 278(48), 48099-104. [PubMed:12954649] [WorldCat] [DOI] - ↑
Baron, M.K., Boeckers, T.M., Vaida, B., Faham, S., Gingery, M., Sawaya, M.R., ..., & Bowie, J.U. (2006).
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