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=== 副腎皮質ホルモン  ===
=== 副腎皮質ホルモン  ===


副腎皮質ホルモンは、[[鉱質コルチコイド]]と[[糖質コルチコイド]]の2種に大別される。鉱質コルチコイドの代表はアルドステロンであり、糖質コルチコイドは主にコルチゾールやコルチコステロンである。 
副腎皮質ホルモンは、[[鉱質コルチコイド]]と[[糖質コルチコイド]]の2種に大別される。鉱質コルチコイドの代表はアルドステロンであり、糖質コルチコイドは主にコルチゾールやコルチコステロンである。   


'''鉱質コルチコイド''':アルドステロンは副腎皮質球状帯で合成され、腎臓の集合管に作用してナトリウムイオンの再吸収とカリウムイオンの排泄を促進する。ナトリウムイオンの再吸収によって間質液の浸透圧が上昇し水の再吸収も増加するため、体液量の調節にも重要な役割を果たす。<br>
'''鉱質コルチコイド''':アルドステロンは副腎皮質球状帯で合成され、腎臓の集合管に作用してナトリウムイオンの再吸収とカリウムイオンの排泄を促進する。ナトリウムイオンの再吸収によって間質液の浸透圧が上昇し水の再吸収も増加するため、体液量の調節にも重要な役割を果たす。<br>  


'''糖質コルチコイド''':コルチゾール(コルチコステロン)は副腎皮質束状帯と網状帯にて合成され、その作用は糖代謝の調節、抗炎症作用、中枢神経系を介した情動や認知機能に対する作用、抗ストレス作用など多岐にわたる。糖代謝に関しては、糖新生を促進して血糖値を上昇させる。抗炎症作用においては3つの作用機序が考えられている。まずは、リソソーム膜の安定化によりタンパク質分解酵素の遊出を防ぐことによる炎症部位拡大の防御、次に肥満細胞によるヒスタミンの放出を防ぎ、毛細血管の透過性上昇を抑えることによる浮腫の軽減、最後にプロスタグランジンの合成を抑制することによる抗発熱・鎮痛作用である。<br>  
'''糖質コルチコイド''':コルチゾール(コルチコステロン)は副腎皮質束状帯と網状帯にて合成され、その作用は糖代謝の調節、抗炎症作用、中枢神経系を介した情動や認知機能に対する作用、抗ストレス作用など多岐にわたる。糖代謝に関しては、糖新生を促進して血糖値を上昇させる。抗炎症作用においては3つの作用機序が考えられている。まずは、リソソーム膜の安定化によりタンパク質分解酵素の遊出を防ぐことによる炎症部位拡大の防御、次に肥満細胞によるヒスタミンの放出を防ぎ、毛細血管の透過性上昇を抑えることによる浮腫の軽減、最後にプロスタグランジンの合成を抑制することによる抗発熱・鎮痛作用である。<br>  
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=== 精巣ホルモン  ===
=== 精巣ホルモン  ===


精巣のライディッヒ細胞から分泌されるアンドロゲンは男性ホルモンとも呼ばれ、雄性化作用を持つホルモンの総称である。生体内の主たるアンドロゲンはテストステロンであるが、アンドロステンジオンやジヒドロテストステロンもアンドロゲン作用を持つ。アンドロゲンは、タンパク質同化作用を持ち、また女性ホルモンであるエストロゲンの前駆体でもある。
精巣のライディッヒ細胞から分泌されるアンドロゲンは男性ホルモンとも呼ばれ、雄性化作用を持つホルモンの総称である。生体内の主たるアンドロゲンはテストステロンであるが、アンドロステンジオンやジヒドロテストステロンもアンドロゲン作用を持つ。アンドロゲンは、タンパク質同化作用を持ち、また女性ホルモンであるエストロゲンの前駆体でもある。  


アンドロゲンは、男性の二次性徴を促進するホルモンである。タンパク質同化作用による骨格筋の発達促進に加え、体毛の発育促進、頭髪の減少、皮脂腺の発達、精子形成促進、輸精管・前立腺・精嚢・カウパー腺の維持等を担う。また、交尾等の性行動もアンドロゲンによって促進される。  
アンドロゲンは、男性の二次性徴を促進するホルモンである。タンパク質同化作用による骨格筋の発達促進に加え、体毛の発育促進、頭髪の減少、皮脂腺の発達、精子形成促進、輸精管・前立腺・精嚢・カウパー腺の維持等を担う。また、交尾等の性行動もアンドロゲンによって促進される。  
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=== 卵巣ホルモン   ===
=== 卵巣ホルモン   ===


卵巣から分泌されている女性ホルモンは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)である。エストロゲンは、エストラジオール、エストロン、エストリオールの3種類が存在するが、最も活性が高いのはエストラジオールである。
卵巣から分泌されている女性ホルモンは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)である。エストロゲンは、エストラジオール、エストロン、エストリオールの3種類が存在するが、最も活性が高いのはエストラジオールである。<br>
 
 


エストロゲンとプロゲステロンは、共同して子宮に月経周期をもたらすと共に、思春期における二次性徴の発現に関与する。エストロゲンは、卵胞期の子宮内膜を増殖や卵胞の成長を促進する。妊娠中は子宮筋を肥大させ、子宮筋の興奮性を高める。思春期には乳腺の乳管の成長を促進して乳房を大きくするとともに、皮下脂肪の蓄積・生殖器の発育など、一次性徴と二次性徴を発現させて女性らしい体型にする。さらに骨端の閉鎖をおこさせ、思春期以後の身長の伸びを抑制する。また、女性の性欲を亢進させ、発情行動を引き起こす。プロゲステロンは、排卵後に形成される黄体から分泌される。妊娠中は胎盤からも分泌される。プロゲステロンの効果はエストロゲンがあらかいjめ作用している状態で発揮されることが多く、子宮では、子宮内膜を分泌期にして受精卵が着床しやすい状態にする。妊娠中は子宮筋の興奮性を抑え、妊娠を継続させるように作用する。乳房に対しては、乳腺の腺房の発達を刺激する。体温上昇作用があり、排卵後の基礎体温を上昇させる。  
エストロゲンとプロゲステロンは、共同して子宮に月経周期をもたらすと共に、思春期における二次性徴の発現に関与する。エストロゲンは、卵胞期の子宮内膜を増殖や卵胞の成長を促進する。妊娠中は子宮筋を肥大させ、子宮筋の興奮性を高める。思春期には乳腺の乳管の成長を促進して乳房を大きくするとともに、皮下脂肪の蓄積・生殖器の発育など、一次性徴と二次性徴を発現させて女性らしい体型にする。さらに骨端の閉鎖をおこさせ、思春期以後の身長の伸びを抑制する。また、女性の性欲を亢進させ、発情行動を引き起こす。プロゲステロンは、排卵後に形成される黄体から分泌される。妊娠中は胎盤からも分泌される。プロゲステロンの効果はエストロゲンがあらかいjめ作用している状態で発揮されることが多く、子宮では、子宮内膜を分泌期にして受精卵が着床しやすい状態にする。妊娠中は子宮筋の興奮性を抑え、妊娠を継続させるように作用する。乳房に対しては、乳腺の腺房の発達を刺激する。体温上昇作用があり、排卵後の基礎体温を上昇させる。  
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=== ニューロステロイド   ===
=== ニューロステロイド   ===


脳で合成されるステロイドはニューロステロイドと呼ばれる。ニューロステロイドに関する研究は、フランスの内分泌学者Baulieuが1981年にラットの脳にプレグネノロンとデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)を見出したことにより始まり、現在では、脊椎動物のほとんどが脳にてニューロステロイドを合成していることがわかっている<ref><pubmed>19505496 </pubmed></ref>。ニューロステロイドは、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトのどの細胞種でも合成されているが、発現するステロイド合成酵素の種類は細胞間で違いがあることが、大脳皮質由来の培養細胞を用いた研究により明らかとされている<ref><pubmed>10433246</pubmed></ref>。アストロサイトは最も盛んにステロイドを合成する細胞であり、P450scc, P450c17, 3βHSD, 17βHSD, P450aromを発現し、プレグネノロン、プロゲステロン、デヒドロエピアンドロステンジオン、アンドロゲン、エスロロゲンを合成している。ニューロンもほぼアストロサイトと同様の合成酵素発現を示すが、17βHSDを持たずテストステロン合成を行わない点が異なる。オリゴデンドロサイトにはP450sccと3βHSDのみの発現しか見られず、プレグネノロンとプロゲステロンを合成する。<br> また、小脳プルキンエ細胞は、P450sccや3βHSD、ステロイド硫酸基転移酵素(HST)を発現しプレグネノロン、プレグネノロン硫酸エステル、プロゲステロン、プロゲステロン代謝ステロイド(3α,5α-テトラハイドロプロゲステロン)を合成することが明らかとされている<ref><pubmed> 10771104</pubmed></ref><ref><pubmed> 10373637</pubmed></ref>。 プロゲステロンは、新生児期の小脳において合成が活発となり、プルキンエ細胞の樹状突起伸長やスパイン形成を促進する<ref><pubmed>11487645</pubmed></ref><ref><pubmed>11958856</pubmed><ref>。またプレグネノロン硫酸エステルは傍分泌により、プルキンエ細胞に投射するGABAニューロンに作用し、GABAの放出頻度を増加させることが報告されている<ref><pubmed>10373637</pubmed></ref>。  
脳で合成されるステロイドはニューロステロイドと呼ばれる。ニューロステロイドの研究は、フランスの内分泌学者Baulieuが1981年にラットの脳にプレグネノロンとデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)を見出したことより始まり、現在では、脊椎動物のほとんどが脳にてニューロステロイドを合成していることがわかっている<ref><pubmed>19505496 </pubmed></ref>。ニューロステロイドは、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトのどの細胞種でも合成されるが、発現するステロイド合成酵素の種類は細胞間で違いがあることが、大脳皮質由来の培養細胞を用いた研究により明らかとされている<ref><pubmed>10433246</pubmed></ref>。アストロサイトは最も盛んにステロイドを合成する細胞であり、P450scc, P450c17, 3βHSD, 17βHSD, P450aromを発現し、プレグネノロン、プロゲステロン、デヒドロエピアンドロステンジオン、アンドロゲン、エスロロゲンを合成している。ニューロンもほぼアストロサイトと同様の合成酵素発現を示すが、17βHSDを持たずテストステロン合成を行わない点でアストロサイトと異なる。オリゴデンドロサイトはP450sccと3βHSDを発現し、プレグネノロンとプロゲステロンを合成する。<br>&nbsp;小脳プルキンエ細胞は、P450sccや3βHSD、ステロイド硫酸基転移酵素(HST)を発現しプレグネノロン、プレグネノロン硫酸エステル、プロゲステロン、プロゲステロン代謝ステロイド(3α,5α-テトラハイドロプロゲステロン)を合成することが明らかとされている<ref><pubmed> 10771104</pubmed></ref><ref><pubmed> 10373637</pubmed></ref>。 プロゲステロンは、新生児期の小脳において合成が活発となり、プルキンエ細胞の樹状突起伸長やスパイン形成を促進する<ref><pubmed>11487645</pubmed></ref><ref><pubmed>11958856</pubmed><ref>。またプレグネノロン硫酸エステルは傍分泌により、プルキンエ細胞に投射するGABAニューロンに作用し、GABAの放出頻度を増加させることが報告されている<ref><pubmed>10373637</pubmed></ref>。  
 
 


<references />
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