「内側膝状体」の版間の差分

編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
17行目: 17行目:


===MGd===
===MGd===
 MGdの機能に関しては良く分かっていない。MGdは同側の[[dorsal cortex of IC]](DCIC),lateral cortex of IC(LCIC)からグルタミン酸ニューロン、GABAニューロンのどちらの投射も受けている<ref><pubmed> 20589100 </pubmed></ref>。MGdも視床網様核(TRN)から抑制性入力が存在する。視床からは[[suprageniculate nucleus]] (SG)、[[posterior intralaminar nucleus]] (PIN)、[[lateral region of the posterior nucleus]] (Pol)から投射を受けている。MGdは[[Belt領域]](Core領域を取り囲む領域群)の聴覚皮質III/IV層にトノトピー構造を持たずに投射している。さらに[[島皮質]]、[[扁桃体]]にも投射する(Paxinos, 2004)。MGdニューロンの周波数チューニングはMGvより2倍ほど広い。MGdは主にstellate cellから構成される。
 MGdの機能に関しては良く分かっていない。MGdは同側の[[dorsal cortex of IC]](DCIC),lateral cortex of IC(LCIC)からグルタミン酸ニューロン、GABAニューロンのどちらの投射も受けている<ref><pubmed> 20589100 </pubmed></ref>。MGdも視床網様核から抑制性入力が存在する。視床からは[[suprageniculate nucleus]] (SG)、[[posterior intralaminar nucleus]] (PIN)、[[lateral region of the posterior nucleus]] (Pol)から投射を受けている。MGdは[[Belt領域]](Core領域を取り囲む領域群)の聴覚皮質III/IV層にトノトピー構造を持たずに投射している。さらに[[島皮質]]、[[扁桃体]]にも投射する(Paxinos, 2004)。MGdニューロンの周波数チューニングはMGvより2倍ほど広い。MGdは主にstellate cellから構成される。


===MGm===
===MGm===
23行目: 23行目:


==MGの抑制性ニューロン==
==MGの抑制性ニューロン==
 MGの[[抑制性ニューロン]]の割合は種に依って大きく異なる。[[wikipedia:ja:コウモリ|コウモリ]]やラットではGABAニューロンは全体の1%程しか存在しない。よってこれらの動物では視床網様核(TRN)を介する抑制が重要となる。また下丘からMGに抑制性の投射が送られる<ref><pubmed> 8755593 </pubmed></ref>。GABAニューロンの割合が著しく少ないラットでは、下丘による抑制の割合が他の種より多いことが判っており、実に下丘ニューロンの40%もがMGに抑制性軸索を送っている。ネコや[[wikipedia:ja:サル|サル]]ではMGニューロンに占めるGABAニューロンの割合は30%に増える。GABAニューロンの割合がこれほど異なるのは、種によって大切な音の種類と複雑さが異なるためだと考えられている<ref><pubmed> 8610172 </pubmed></ref>。
 MGの[[抑制性ニューロン]]の割合は種に依って大きく異なる。[[wikipedia:ja:コウモリ|コウモリ]]やラットではGABAニューロンは全体の1%程しか存在しない。よってこれらの動物では視床網様核を介する抑制が重要となる。また下丘からMGに抑制性の投射が送られる<ref><pubmed> 8755593 </pubmed></ref>。GABAニューロンの割合が著しく少ないラットでは、下丘による抑制の割合が他の種より多いことが判っており、実に下丘ニューロンの40%もがMGに抑制性軸索を送っている。ネコや[[wikipedia:ja:サル|サル]]ではMGニューロンに占めるGABAニューロンの割合は30%に増える。GABAニューロンの割合がこれほど異なるのは、種によって大切な音の種類と複雑さが異なるためだと考えられている<ref><pubmed> 8610172 </pubmed></ref>。


==MGの機能==
==MGの機能==
 現在知られている知見を持ってMGの担う聴覚情報処理機能を断定することは非常に難しい。しかし視床の一般的な特徴を俯瞰する時、MGの機能を推測することが可能である。[[ファイル:Hiroakitsukano_Fig3.jpg|thumb|200px|'''図3 ゲート機構図''' 赤ニューロンは視床網様核の抑制性ニューロン。]]
 現在知られている知見を持ってMGの担う聴覚情報処理機能を断定することは非常に難しい。しかし視床の一般的な特徴を俯瞰する時、MGの機能を推測することが可能である。[[ファイル:Hiroakitsukano_Fig3.jpg|thumb|200px|'''図3 ゲート機構図''' 赤ニューロンは視床網様核の抑制性ニューロン。]]


 MGや聴覚野に至らずとも下丘までで基本的な聴覚情報処理はされていると考えられている(Paxinos, 2004)。一方、聴覚野は時間的な情報やハーモニーなど音の組合せ情報の処理・認知など高度な役割が与えられている<ref><pubmed> 18436653 </pubmed></ref><ref><pubmed> 16121182 </pubmed></ref>。MGはその間に位置し下丘と聴覚野を結び、聴覚野に送るべき情報を選別するゲートであると考えられる<ref><pubmed> 9464683 </pubmed></ref>(図3)。その指令塔の機能を有すると思われる視床網様核が[[腹側視床]]に存在している。視床網様核は視床を囲う様に位置する神経核で、その殆どがGABAニューロンで占められている神経核である。視床から皮質、皮質から視床に至る軸索はほぼ全て視床網様核に側枝を伸ばしている。視床網様核は聴覚野からのフィードバックを元にMGに抑制を与え、[[側方抑制]]などに貢献している(Paxinos, 2004)。さらにTRNは前頭葉からの情報を元にMGに抑制を与え、[[注意]]を向けた対象以外のことに抑制をかけるフィルター機能も有すると考えられている<ref><pubmed> 16837581 </pubmed></ref>。またTRNからMGへの抑制回路は[[視覚]]など他のモダリティによる聴覚抑制にも関与している<ref><pubmed> 22101990 </pubmed></ref>。詳しくは「[[視床ゲート機構]]」の項参照。
 MGや聴覚野に至らずとも下丘までで基本的な聴覚情報処理はされていると考えられている(Paxinos, 2004)。一方、聴覚野は時間的な情報やハーモニーなど音の組合せ情報の処理・認知など高度な役割が与えられている<ref><pubmed> 18436653 </pubmed></ref><ref><pubmed> 16121182 </pubmed></ref>。MGはその間に位置し下丘と聴覚野を結び、聴覚野に送るべき情報を選別するゲートであると考えられる<ref><pubmed> 9464683 </pubmed></ref>(図3)。その指令塔の機能を有すると思われる視床網様核が[[腹側視床]]に存在している。視床網様核は視床を囲う様に位置する神経核で、その殆どがGABAニューロンで占められている神経核である。視床から皮質、皮質から視床に至る軸索はほぼ全て視床網様核に側枝を伸ばしている。視床網様核は聴覚野からのフィードバックを元にMGに抑制を与え、[[側方抑制]]などに貢献している(Paxinos, 2004)。さらに視床網様核は前頭葉からの情報を元にMGに抑制を与え、[[注意]]を向けた対象以外のことに抑制をかけるフィルター機能も有すると考えられている<ref><pubmed> 16837581 </pubmed></ref>。また視床網様核からMGへの抑制回路は[[視覚]]など他のモダリティによる聴覚抑制にも関与している<ref><pubmed> 22101990 </pubmed></ref>。詳しくは「[[視床ゲート機構]]」の項参照。


==関連項目==
==関連項目==