「前帯状皮質」の版間の差分

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(*)一般的には前帯状皮質背側部(the dorsal anterior cingulate cortex, dACC)、あるいはRostral cingulate zone (RCZ)<ref><pubmed>8670662</pubmed></ref>と呼ばれる。
(*)一般的には前帯状皮質背側部(the dorsal anterior cingulate cortex, dACC)、あるいはRostral cingulate zone (RCZ)<ref><pubmed>8670662</pubmed></ref>と呼ばれる。


== 前帯状皮質背側部(dACC)の機能 ==
== 行動モニタリング機能 ==


 前帯状皮質背側部(dACC)すなわち中帯状皮質前方部(aMCC)は行動モニタリングに関わる<ref name="Ridder2004"><pubmed>15486290</pubmed></ref>。行動モニタリングにはコンフリクトモニタリングおよび行動成果モニタリングが含まれる。ヒトのdACCはStroop color-naming課題におけるように、2つ以上の行動を同時に惹起しうる状況(コンフリクト)において高い活動を示す<ref><pubmed>10647008</pubmed></ref>。またヒトのdACCは2つの行動から1つを選択して金銭を獲得する課題において、金銭獲得および金銭損失に関わる活動を示す<ref><pubmed>11135651</pubmed></ref>。
 前帯状皮質背側部(dACC)すなわち中帯状皮質前方部(aMCC)は行動モニタリングに関わる<ref name="Ridder2004"><pubmed>15486290</pubmed></ref>。行動モニタリングにはコンフリクトモニタリングおよび行動成果モニタリングが含まれる。ヒトのdACCはStroop color-naming課題におけるように、2つ以上の行動を同時に惹起しうる状況(コンフリクト)において高い活動を示す<ref><pubmed>10647008</pubmed></ref>。またヒトのdACCは2つの行動から1つを選択して金銭を獲得する課題において、金銭獲得および金銭損失に関わる活動を示す<ref><pubmed>11135651</pubmed></ref>。
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 サルのCMAr は運動そのものに関連する活動も示す。CMArは上肢運動の際に活動を示し、その活動は自己発動性の運動の時に、刺激誘導性の運動の時と比べ、より高い<ref><pubmed>2016637</pubmed></ref>。
 サルのCMAr は運動そのものに関連する活動も示す。CMArは上肢運動の際に活動を示し、その活動は自己発動性の運動の時に、刺激誘導性の運動の時と比べ、より高い<ref><pubmed>2016637</pubmed></ref>。


== 前帯状皮質膝前部(pACC)の機能 ==
== 社会的認知機能 ==


 ヒトの前帯状皮質膝前部(pACC)は社会的認知に関わる<ref name="Amodio2006"/>。社会的認知には自己に関する判断、ヒトに関する判断、および他者の意図・信念の想像(メンタライジング;心の理論)が含まれる。pACCは、提示された言葉が自己に当てはまるのかどうかを判断する課題において、高い活動を示す<ref><pubmed>12135971</pubmed></ref>。
 ヒトの前帯状皮質膝前部(pACC)は社会的認知に関わる<ref name="Amodio2006"/>。社会的認知には自己に関する判断、ヒトに関する判断、および他者の意図・信念の想像(メンタライジング;心の理論)が含まれる。pACCは、提示された言葉が自己に当てはまるのかどうかを判断する課題において、高い活動を示す<ref><pubmed>12135971</pubmed></ref>。
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さらにpACCは、false belief課題(メンタライジング課題)において、被験者が物語を読んだ後、登場人物の意図・信念に関する質問に答える際に、高い活動を示す<ref><pubmed>8556839</pubmed></ref>。
さらにpACCは、false belief課題(メンタライジング課題)において、被験者が物語を読んだ後、登場人物の意図・信念に関する質問に答える際に、高い活動を示す<ref><pubmed>8556839</pubmed></ref>。


== 前帯状皮質のその他の機能 ==
== 情動・痛覚その他の機能 ==


 ヒトの前帯状皮質膝下部(sACC)、pACC、およびdACCは、それぞれ異なる情動に関わる<ref name="Vogt2005"/>。悲しみ・喜びの表情を提示される課題において、sACCは悲しい表情の提示の際、pACCは喜ばしい表情の提示の際、活動を高める<ref><pubmed>7864258</pubmed></ref>。
 ヒトの前帯状皮質膝下部(sACC)、pACC、およびdACCは、それぞれ異なる情動に関わる<ref name="Vogt2005"/>。悲しみ・喜びの表情を提示される課題において、sACCは悲しい表情の提示の際、pACCは喜ばしい表情の提示の際、活動を高める<ref><pubmed>7864258</pubmed></ref>。
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== まとめ ==
== まとめ ==


 以上をまとめると、ACCは特にヒトにおいて、担う機能の違いから、行動モニタリングさらには行動調節に関わるdACC、社会的認知に関わるpACC、および情動に関わるsACCの3領域に、大きく分けることができる。
 以上をまとめると、霊長類、特にヒトにおいて、行動モニタリングと行動調節はdACCで、社会的認知はpACCで、および情動は種類に応じてACC内の異なる領域で担われている。