「光周性」の版間の差分

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===光周性の発見と生態的意義===
===光周性の発見と生態的意義===
 動物の行動や生理機能の季節変化については、[[wikipedia:ja:アリストテレス|アリストテレス]]の「[[wikipedia:ja:動物誌|動物誌]](De historia animalium)」に既に記述があるが、その制御機構は近年まで謎に包まれていた。
 動物の行動や生理機能の季節変化については、[[wikipedia:ja:アリストテレス|アリストテレス]]の「[[wikipedia:ja:動物誌 (アリストテレス)|動物誌]](De historia animalium)」に既に記述があるが、その制御機構は近年まで謎に包まれていた。


 1920年代になって、生物が日照時間(日長)の変化をカレンダーとして利用していることが、[[wikipedia:ja:植物|植物]]、[[wikipedia:ja:昆虫|昆虫]]、鳥類、哺乳類の順に相次いで明らかにされ、この現象は光周性(photoperiodism)と呼ばれるようになった。季節によって変動する環境因子には、日長の他にも[[wikipedia:ja:気温|気温]]、[[wikipedia:ja:湿度|湿度]]、[[wikipedia:ja:降水量|降水量]]などがあるが、これらは猛暑、冷夏、暖冬、空梅雨など、年によって大きくばらつく情報である。一方、[[wikipedia:ja:春分|春分]]、[[wikipedia:ja:夏至|夏至]]、[[wikipedia:ja:秋分|秋分]]、[[wikipedia:ja:冬至|冬至]]は毎年同じ時期に訪れるため、生物が日長の情報を利用しているのは合理的である。しかし[[wikipedia:ja:桜|桜]]の開花の時期が年によってばらつくように、一部の生物は温度の変化も季節の手掛かりとして利用している。この性質は温周性(thermoperiodism)と呼ばれているが、研究はほとんど進んでいない。また1年を通じて日長がほとんど変化しない[[wikipedia:ja:熱帯地域|熱帯地域]]においては、[[wikipedia:ja:雨季|雨季]]や[[wikipedia:ja:乾季|乾季]]、あるいは食糧の多寡が動物の季節適応に影響するという報告もあるが、これらについてもほとんど研究が進んでいない。
 1920年代になって、生物が日照時間(日長)の変化をカレンダーとして利用していることが、[[wikipedia:ja:植物|植物]]、[[wikipedia:ja:昆虫|昆虫]]、鳥類、哺乳類の順に相次いで明らかにされ、この現象は光周性(photoperiodism)と呼ばれるようになった。季節によって変動する環境因子には、日長の他にも[[wikipedia:ja:気温|気温]]、[[wikipedia:ja:湿度|湿度]]、[[wikipedia:ja:降水量|降水量]]などがあるが、これらは猛暑、冷夏、暖冬、空梅雨など、年によって大きくばらつく情報である。一方、[[wikipedia:ja:春分|春分]]、[[wikipedia:ja:夏至|夏至]]、[[wikipedia:ja:秋分|秋分]]、[[wikipedia:ja:冬至|冬至]]は毎年同じ時期に訪れるため、生物が日長の情報を利用しているのは合理的である。しかし[[wikipedia:ja:桜|桜]]の開花の時期が年によってばらつくように、一部の生物は温度の変化も季節の手掛かりとして利用している。この性質は温周性(thermoperiodism)と呼ばれているが、研究はほとんど進んでいない。また1年を通じて日長がほとんど変化しない[[wikipedia:ja:熱帯地域|熱帯地域]]においては、[[wikipedia:ja:雨季|雨季]]や[[wikipedia:ja:乾季|乾季]]、あるいは食糧の多寡が動物の季節適応に影響するという報告もあるが、これらについてもほとんど研究が進んでいない。