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=== PirBの発見とミエリン由来阻害因子の再検証  ===
=== PirBの発見とミエリン由来阻害因子の再検証  ===


 これらの結果から、Tessier-Lavigneのグループは、Nogo-66に別の受容体があるのではないかと考えた。Atwalらは、Nogo-66に対する受容体をスクリーニングし、NgRと共に、leukocyte immunoglobulin (Ig)-like recep- tor B2 (LILRB2)を発見した。これは、マウスのpaired immunoglobulin-like receptor B(PirB)のオルソログに当たる。これらの分子同士は、アミノ酸配列の50%しかホモロジーを持たない。また、PirBは細胞外の免疫グロブリン様ドメインが4つしかないが、LILRB2は6つである。しかし、PirBにはNogo-66のみならず、MAG,OMgpもNgRと同様に結合することが示され、PirBを介した軸索伸展阻害作用が証明された。<ref><pubmed> 18988857  </pubmed></ref><br>  
 これらの結果から、Tessier-Lavigneのグループは、Nogo-66に別の受容体があるのではないかと考えた。Atwalらは、Nogo-66に対する受容体をスクリーニングし、NgRと共に、leukocyte immunoglobulin (Ig)-like recep- tor B2 (LILRB2)を発見した。これは、マウスのpaired immunoglobulin-like receptor B(PirB)のオルソログに当たる。PirBにはNogo-66のみならず、MAG、OMgpもNgRと同様に結合することが示され、PirBとNgRの両方を阻害することにより、ミエリンや、Nogo-66の軸索伸展阻害作用のほぼ完全な消失が証明された。<ref><pubmed> 18988857  </pubmed></ref><br>  


 現在PirBの想定されるシグナル伝達機構は、SHP1/2と結合し、その脱リン酸化機構を介してTrkBのシグナルを制御するというものなど、現在報告が増えてきている。<ref><pubmed> 21881600</pubmed></ref><ref><pubmed> 21364532</pubmed></ref>ただ、このPirBのノックアウトマウスにおいても,その脊髄損傷モデル、脳挫傷モデルにおいて、その軸索の再生が促進されることはなかった<ref><pubmed> 20881122</pubmed></ref><ref><pubmed>21087927</pubmed></ref>。今後は、更なる研究成果の蓄積が必要だろうと考えられる。  
 現在PirBの想定されるシグナル伝達機構は、SHP1/2と結合し、その脱リン酸化機構を介してTrkBのシグナルを制御するというものなど、現在報告が増えてきている。<ref><pubmed> 21881600</pubmed></ref><ref><pubmed> 21364532</pubmed></ref>ただ、このPirBのノックアウトマウスにおいても,その脊髄損傷モデル、脳挫傷モデルにおいて、その軸索の再生が促進されることはなかった<ref><pubmed> 20881122</pubmed></ref><ref><pubmed>21087927</pubmed></ref>。今後は、更なる研究成果の蓄積が必要だろうと考えられる。  
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== その他の機能  ==
== その他の機能  ==


正常における機能も解析されている。その中では、
 正常における機能も解析されている。その中では、


Critical periodの形成に関わり、成体の軸索の再編成を制御し、神経ネットワークの可塑性を制御すること  
*Critical periodの形成に関わり、成体の軸索の再編成を制御し、神経ネットワークの可塑性を制御すること  
 
*胎生期神経前駆細胞の放射状移動を制御すること  
胎生期神経前駆細胞の放射状移動を制御すること  
*βセクレターゼ活性の制御によるAPPの切断を制御すること
 
βセクレターゼ活性の制御によるAPPの切断を制御すること  


が報告されている。明確な証明はないが、正常において、ミエリンや、ミエリン由来の軸索伸展阻害因子は、軸索の余計な芽生えや分枝が起こることを防ぐことにより、正常な軸索の状態を維持するのに役立っているのではないかという考えが、昔から提唱されてきたが、今のところそれを明確に証明する研究は報告されていないようである。参考文献<ref><pubmed> 21045861 </pubmed></ref><br>  
が報告されている。明確な証明はないが、正常において、ミエリンや、ミエリン由来の軸索伸展阻害因子は、軸索の余計な芽生えや分枝が起こることを防ぐことにより、正常な軸索の状態を維持するのに役立っているのではないかという考えが、昔から提唱されてきたが、今のところそれを明確に証明する研究は報告されていないようである。参考文献<ref><pubmed> 21045861 </pubmed></ref><br>