「輻輳開散運動」の版間の差分

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#視差性輻輳開散運動(disparity vergence)
#視差性輻輳開散運動(disparity vergence)
#放射状パターンで生じる輻輳開散運動(optic flow vergence)
#放射状パターンで生じる輻輳開散運動(optic flow vergence)
#(proximal vergence)(編集コメント:日本語はあるでしょうか?)
#自発性輻輳開散運動(proximal vergence)(編集コメント:日本語はあるでしょうか?)
#緊張性輻輳開散運動(tonic vergence)
#緊張性輻輳開散運動(tonic vergence)


 1)~4)は奥行き視覚の手がかりで生じるが、5)は暗闇において視覚の手がかりがないときに生じる<ref>''' Owens DA and Leibowitz HW '''<br> Perceptual and motor consequences of tonic vergence.<br>'' In Schor CM, Ciuffreda KJ, editors. Vergence Eye Movements: Basic and Clinical Aspects. Boston: Butterworths '':1983; p.25-74</ref>。
 1)~4)は奥行き視覚の手がかりで生じるが、5)は暗闇において視覚の手がかりがないときに生じる<ref>''' Owens DA and Leibowitz HW '''<br> Perceptual and motor consequences of tonic vergence.<br>'' In Schor CM, Ciuffreda KJ, editors. Vergence Eye Movements: Basic and Clinical Aspects. Boston: Butterworths '':1983; p.25-74</ref>。


 奥行きの手がかりで生じる輻輳開散運動のうち、1)を誘発するのはレンズの調節状態の変化(accommodation)であり、潜時150~200ミリ秒の比較的ゆっくりとした応答である。2)を誘発する両眼視差は、両眼の網膜像のわずかな位置のずれ(図2上、[[視差]]、[[disparity]])であり、注視点より近くにある視覚刺激は交差視差を、一方、より遠くにあるものは非交差視差を生じさせる。3)を誘発するのは、自動車などを運転しているときに経験する視野全体に広がる放射状の視覚パターン(図2下、オプティック・フロー)である。4)は遠近法を用いて描かれた絵画を見たときに一過性に生じ、誘発要因は画法によって表現された奥行き手がかりである<ref><pubmed> 3445485 </pubmed></ref><ref><pubmed> 2703318 </pubmed></ref>。5)は暗闇において誘発される、ある一定の輻輳角を維持する眼の動きである<ref><pubmed> 8265176 </pubmed></ref>。暗闇で視覚の手がかりがなくとも両眼の視軸は開散しきるのではなく、[[wikipedia:ja:外眼筋|外眼筋]]神経の一定の活動が反映されて生じていると考えられている。  
 奥行きの手がかりで生じる輻輳開散運動のうち、1)を誘発するのはレンズの調節状態の変化(accommodation)であり、潜時150~200ミリ秒の比較的ゆっくりとした応答である。2)を誘発する両眼視差は、両眼の網膜像のわずかな位置のずれ(図2上、[[視差]]、[[disparity]])であり、注視点より近くにある視覚刺激は交差視差を、一方、より遠くにあるものは非交差視差を生じさせる。3)を誘発するのは、自動車などを運転しているときに経験する視野全体に広がる放射状の視覚パターン(図2下、オプティック・フロー)である。4)は視差やレンズ調節などの手がかりなしに、意識的に生じる眼球運動である。遠近法を用いて描かれた絵画などを見たときに一過性に生じ、その誘発要因は画法によって表現された奥行き手がかりによる「より近い」・「より遠い」という印象である<ref><pubmed> 3445485 </pubmed></ref><ref><pubmed> 2703318 </pubmed></ref>。[[ステレオグラム]]を見るときに生じる眼球運動も含む。5)は暗闇において誘発される、ある一定の輻輳角を維持する眼の動きである<ref><pubmed> 8265176 </pubmed></ref>。暗闇で視覚の手がかりがなくとも両眼の視軸は開散しきるのではなく、[[wikipedia:ja:外眼筋|外眼筋]]神経の一定の活動が反映されて生じていると考えられている。  


 これまで実験的によく研究されてきたのは、両眼視差の情報だけを与えて引き起こした輻輳開散運動である。両眼視差とそれによって誘発される輻輳開散運動の関係については、RashbassとWestheimerの[[wikipedia:ja:ヒト|ヒト]]を対象とした古典的な研究がある<ref name="ref6"><pubmed> 14490420 </pubmed></ref>。この実験では、視覚刺激として小さなスポット(0.1°程度)を用い、両眼視差をステップ状に突然変化させる。両眼視差が与えられると、約160ミリ秒で輻輳開散運動が起こり、両眼視差の変化が小さい時(±1度)は、与えた視差の大きさと輻輳開散運動の速度が、線形の関係にある<ref name="ref6" />。輻輳開散運動の眼球速度は動き始めて200ミリ秒の間にピークを迎え、その後徐々に低下し、約1秒で完了する。その最高速度は与えられた視差の大きさによって異なる。また、輻輳開散運動の速度は、その方向によっても違いがあり、開散運動よりも輻輳運動の方が速い。
 これまで実験的によく研究されてきたのは、両眼視差の情報だけを与えて引き起こした輻輳開散運動である。両眼視差とそれによって誘発される輻輳開散運動の関係については、RashbassとWestheimerの[[wikipedia:ja:ヒト|ヒト]]を対象とした古典的な研究がある<ref name="ref6"><pubmed> 14490420 </pubmed></ref>。この実験では、視覚刺激として小さなスポット(0.1°程度)を用い、両眼視差をステップ状に突然変化させる。両眼視差が与えられると、約160ミリ秒で輻輳開散運動が起こり、両眼視差の変化が小さい時(±1度)は、与えた視差の大きさと輻輳開散運動の速度が、線形の関係にある<ref name="ref6" />。輻輳開散運動の眼球速度は動き始めて200ミリ秒の間にピークを迎え、その後徐々に低下し、約1秒で完了する。その最高速度は与えられた視差の大きさによって異なる。また、輻輳開散運動の速度は、その方向によっても違いがあり、開散運動よりも輻輳運動の方が速い。
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