「補足運動野」の版間の差分

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== 順序動作の制御<br>  ==
== 順序動作の制御<br>  ==


 複数の動作を正しい順序で実行すること(例、書字、タイピング等)は日常生活の中で重要な位置を占めるが、この様な運動にも補足運動野が重要な役割を演じていると考えられている。その根拠として補足運動野の損傷によって現れる運動障害の一つに、動作を順序立てて実行することが困難になる症状が挙げられる。その一方で個別の要素的運動を実行する限り目立った障害を示さない<ref><pubmed>591992</pubmed></ref>。健常者に於いても順序動作の実行に伴って補足運動野の脳血流が増加すること(Roland et al 1980)、複数の動作を個別に行うよりも一連の動作として行う時に補足運動野上から記録される運動準備電位が増強すること(Benecke et al 1985)が知られている。動物実験でも補足運動野、[[前補足運動野]]には動作の順序に選択的な活動を示すニューロンが数多く存在すること、[[GABA受容体]](GABAa)[[作動薬]]であるmuscimolをこれらの領域に注入することによって順序動作の実行が障害されるなど人間で得られた知見を支持する結果が得られている(Tanji 2001)。<br>  
 複数の動作を正しい順序で実行すること(例、書字、タイピング等)は日常生活の中で重要な位置を占めるが、この様な運動にも補足運動野が重要な役割を演じていると考えられている。その根拠として補足運動野の損傷によって現れる運動障害の一つに、動作を順序立てて実行することが困難になる症状が挙げられる。その一方で個別の要素的運動を実行する限り目立った障害を示さない<ref><pubmed>591992</pubmed></ref>。健常者に於いても順序動作の実行に伴って補足運動野の脳血流が増加すること<ref><pubmed>7351547</pubmed></ref>、複数の動作を個別に行うよりも一連の動作として行う時に補足運動野上から記録される運動準備電位が増強すること<ref><pubmed>4094721</pubmed></ref>が知られている。動物実験でも補足運動野、[[前補足運動野]]には動作の順序に選択的な活動を示すニューロンが数多く存在すること、[[GABA受容体]](GABAa)[[作動薬]]であるmuscimolをこれらの領域に注入することによって順序動作の実行が障害されるなど人間で得られた知見を支持する結果が得られている<ref><pubmed>11520914</pubmed></ref>。<br>  


== 両手の協調運動<br>  ==
== 両手の協調運動<br>  ==


 皮質脊髄路の走行や電気刺激による誘発運動、破壊症状の観察結果からは皮質運動野は主に対側の骨格筋を支配している事が覗われる。しかし補足運動野を含む高次運動野は両手の協調運動にも寄与していることが示唆されている。例えばサルにアクリル板に開けた通し穴の中のレーズンを取らせると、片手でレーズンを穴の反対側に押し出しもう一方の手で受け取ることが容易に出来る。ところが補足運動野を損傷したサルでは穴の両側から同時に両手で押し出そうとして取り出すことが出来ない。対照的に[[運動前野]]を損傷したサルではこのような両手の協調運動障害は見られない(Brinkman 1984)。こうした所見からは両手の協調動作には補足運動野の寄与が重要であることが覗われ、実際、両手協調動作に伴う神経活動が人やサルの補足運動野で報告されている。  
 皮質脊髄路の走行や電気刺激による誘発運動、破壊症状の観察結果からは皮質運動野は主に対側の骨格筋を支配している事が覗われる。しかし補足運動野を含む高次運動野は両手の協調運動にも寄与していることが示唆されている。例えばサルにアクリル板に開けた通し穴の中のレーズンを取らせると、片手でレーズンを穴の反対側に押し出しもう一方の手で受け取ることが容易に出来る。ところが補足運動野を損傷したサルでは穴の両側から同時に両手で押し出そうとして取り出すことが出来ない。対照的に[[運動前野]]を損傷したサルではこのような両手の協調運動障害は見られない<ref><pubmed>6716131</pubmed></ref>。こうした所見からは両手の協調動作には補足運動野の寄与が重要であることが覗われ、実際、両手協調動作に伴う神経活動が人やサルの補足運動野で報告されている。  


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