「オリゴデンドロサイト前駆細胞」の版間の差分
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細 (ページの作成:「英語名:Oligodendrocyte precursor cell 中枢神経系でミエリンを形成する細胞がオリゴデンドロサイトである。そのオリゴデンドロ...」) |
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=== O-2A前駆細胞 === | === O-2A前駆細胞 === | ||
ラット胎児視神経を培養すると単クローン抗体A2B5に陽性を示す細胞がみられ、この細胞は培養液に牛胎児血清を培養液に加えるとGFAP+/A2B5+アストロサイトに分化し、無血清培地で培養するとミエリン脂質であるガラクトセレブロシド(GalC)陽性オリゴデンドロサイトに分化する。A2B5抗体は、ガングリオシドやスルファチドなどの糖脂質を抗原とし、当初はニューロン特異的抗体として報告されたが、視神経にはニューロンやその前駆細胞は存在しないことから、A2B5陽性グリア前駆細胞が見いだされた。視神経細胞の培養中にはA2B5-/ GFAP+アストロサイトも存在することから、A2B5に陽性を示すアストログリアをtype2アストロサイト、A2B5陰性のものをtype1アストログリアと命名した。そして、A2B5陽性でGFAPにもGalCにも陽性を示さない段階のものを、O2A前駆細胞と呼んだ<ref name=ref1><pubmed>6304520</pubmed></ref>。培養系では、type2アストロサイトはオリゴデンドロサイトの増殖が終了した後に増殖することが一つの特徴である。しかし、生体内ではこのような増殖パターンを示すアストロサイトはみられないことから、その存在は否定的である<ref name=ref2><pubmed>2328833</pubmed></ref>。 | |||
=== O-2A前駆細胞の単離方法 === | === O-2A前駆細胞の単離方法 === | ||
O2A前駆細胞は、新生児ラットの視神経や大脳皮質をフラスコで2週間程度培養し、その後フラスコを激しく水平方面に激しく1晩shake(200rpm以上)することにより浮遊してくる。Type1アストロサイトやニューロンは、この条件では浮遊しない。この浮遊細胞を集め、ミクログリアを何もコートしていないプラスチックペトリ皿に付着させることで除いて継代培養すると、O-2A細胞が80~90%程度含まれるenriched cultureとなる。A2B5抗体を培養基質に塗布して、これに接着する細胞を集めることにより95%以上の純度でO-2A細胞を集めることができる | O2A前駆細胞は、新生児ラットの視神経や大脳皮質をフラスコで2週間程度培養し、その後フラスコを激しく水平方面に激しく1晩shake(200rpm以上)することにより浮遊してくる。Type1アストロサイトやニューロンは、この条件では浮遊しない。この浮遊細胞を集め、ミクログリアを何もコートしていないプラスチックペトリ皿に付着させることで除いて継代培養すると、O-2A細胞が80~90%程度含まれるenriched cultureとなる。A2B5抗体を培養基質に塗布して、これに接着する細胞を集めることにより95%以上の純度でO-2A細胞を集めることができる<ref name=ref3>'''Bottenstein JE and Hunter SF''' <br>''Culture method for oligodendrocyte cell line and oligodendrocyte-type2 astrocyte lineage cells.''<br>In Cell culture, Conn PM ed, pp. 56-75, Methods in Neurosciences Vol. 2, Academic Press Inc., San Diego.(1990)</ref><ref name=ref4><pubmed>12379434</pubmed></ref>。培養条件により、アストログリア、またはオリゴデンドロサイトに分化させるようコントロールできることから、細胞分化調節機構解析のモデル細胞として扱われてきた。しかし、マウス胎仔および新生仔の脳の培養細胞では、同じような手順で行ってもO-2A細胞のenriched cultureは難しい。 | ||
=== OPCとしてのO-2A前駆細胞 === | === OPCとしてのO-2A前駆細胞 === | ||
生体内でのO-2A細胞に相当する細胞については、様々な議論があったが、移植実験により一応の決着がついた。O-2A細胞を蛍光色素で標識し、新生児ラットの脳内に移植するとほとんどの細胞がオリゴデンドロサイトに分化した。このことから、O-2A細胞はアストロサイトへの分化能をもってはいるものの、生体内の環境ではオリゴデンドロサイトに分化する細胞であることから、オリゴデンドロサイト前駆細胞と見なされるようになった | 生体内でのO-2A細胞に相当する細胞については、様々な議論があったが、移植実験により一応の決着がついた。O-2A細胞を蛍光色素で標識し、新生児ラットの脳内に移植するとほとんどの細胞がオリゴデンドロサイトに分化した。このことから、O-2A細胞はアストロサイトへの分化能をもってはいるものの、生体内の環境ではオリゴデンドロサイトに分化する細胞であることから、オリゴデンドロサイト前駆細胞と見なされるようになった<ref name=ref5><pubmed>8419944</pubmed></ref>。 | ||
=== OPCの細胞系譜とPDGFα受容体(PDGFRα) === | === OPCの細胞系譜とPDGFα受容体(PDGFRα) === | ||
培養下でのO-2A細胞は、type1-astrocyteの培養上清により増殖が高まることが示され、この中に含まれるO-2A細胞に対する増殖因子が血小板由来成長因子(platelet derived growth factor; PDGF)であることが明らかにされた | 培養下でのO-2A細胞は、type1-astrocyteの培養上清により増殖が高まることが示され、この中に含まれるO-2A細胞に対する増殖因子が血小板由来成長因子(platelet derived growth factor; PDGF)であることが明らかにされた<ref name=ref6><pubmed>2834067</pubmed></ref>。そして、O-2A前駆細胞がその受容体としてαサブユニット(PDGFRα)を発現していることも明らかにされた<ref name=ref7><pubmed>2558873</pubmed></ref>。これをもとに、発生段階の神経組織内でPDGFRαを発現している細胞の探索が行われた。その結果、脊髄では、ラットでは胎齢14.5日目(E14.5)、マウスではE12.5日目、ニワトリ胚ではHHstage32(孵卵7日目)の脳室層腹側部に限局して、PDGFRα陽性細胞が出現することから、これが脊髄のオリゴデンドロサイト前駆細胞の起源であると考えられるようになった<ref name=ref8><pubmed>8330523</pubmed></ref>。その後、PDGFRα陽性細胞を単離して培養を行ったり<ref name=ref9><pubmed>9012528</pubmed></ref>、PDGF欠損マウスや過剰発現させたトランスジェニックマウスでのOPCの発生を解析したりすること<ref name=ref10><pubmed>9620692</pubmed></ref><ref name=ref11><pubmed>9876175</pubmed></ref>により、PDGFRα陽性細胞がOPCであることが明らかにされた。このような早い時期の脳室層で、特定の細胞サブセットを特異的に標識することができた最初の例であり、その後の神経管の背腹軸ドメイン形成の顕幽へと発展していくことになる<ref name=ref12><pubmed>10625331</pubmed></ref>。さらにPDGFRαを指標として、同じような発現パターンを示す分子が報告されそれらの多くがOPCのマーカーであることが明らかにされた。 | ||
=== 細胞系譜マーカーと系譜解析 === | === 細胞系譜マーカーと系譜解析 === | ||
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== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
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(執筆者: 担当編集者:) | |||