「筋強直性ジストロフィー」の版間の差分

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 その複雑さ多様さのため、筋強直性ジストロフィーの疾患としての確立はやや遅れ、1909年にドイツのSteinert<ref name=Steinert1909>'''Steinert, H. (1909).'''<br>Über das klinische und anatomische Bild des Muskelschwunds der Myotoniker. Dtsch Z Nervenheilkd 37:58-104. [https://doi.org/10.1007/BF01671719 [PDF<nowiki>]</nowiki>]</ref>[2]および英国のBatten and Gibb <ref name=Batten1909>'''Batten, F.E & Gibb, H.P. (1909).'''<br>Myotonia atrophica. Brain 32:187-205. [https://doi.org/10.1093/brain/32.2.187 PDF]</ref>[3]が別々に、まとまった記述を行ったのが最初である。欧州(特に大陸諸国)では発見者の名前をとり、Steinert病と今でも呼ばれる。なお、日本では長らく、筋緊張性ジストロフィーと呼ばれていたが、用語使用の適正化の点から現在は筋強直性ジストロフィーが正式名称となっている。
 その複雑さ多様さのため、筋強直性ジストロフィーの疾患としての確立はやや遅れ、1909年にドイツのSteinert<ref name=Steinert1909>'''Steinert, H. (1909).'''<br>Über das klinische und anatomische Bild des Muskelschwunds der Myotoniker. Dtsch Z Nervenheilkd 37:58-104. [https://doi.org/10.1007/BF01671719 [PDF<nowiki>]</nowiki>]</ref>[2]および英国のBatten and Gibb <ref name=Batten1909>'''Batten, F.E & Gibb, H.P. (1909).'''<br>Myotonia atrophica. Brain 32:187-205. [https://doi.org/10.1093/brain/32.2.187 PDF]</ref>[3]が別々に、まとまった記述を行ったのが最初である。欧州(特に大陸諸国)では発見者の名前をとり、Steinert病と今でも呼ばれる。なお、日本では長らく、筋緊張性ジストロフィーと呼ばれていたが、用語使用の適正化の点から現在は筋強直性ジストロフィーが正式名称となっている。


 DM類似の症状を呈するが、DMPK遺伝子に異常が見られない症例が1994年にRickerらにより報告され、proximal myotonic myopathy (PROMM)と名付けられた<ref name=Ricker1994><pubmed>8058147</pubmed></ref>[15]。同様の症例が報告されいくつかの名称で呼ばれていたが、DM type2(DM2)とすることが合意され、現在は1型(DM1)と2型(DM2)に分類される。た<ref name=IDMC2000><pubmed>10746587</pubmed></ref>[16]。
 1992年に、多くのリピート病とほぼ時を同じくして原因遺伝子DMPKが同定され、CTG繰り返し配列(リピート)の伸長によるリピート病であることが明らかにされた<ref name=Fu1992><pubmed>1546326</pubmed></ref><ref name=Mahadevan1992><pubmed>1546325</pubmed></ref><ref name=Brook1992><pubmed>1568252</pubmed></ref>[4][5][6]。さらにDM類似の症状を呈するが、DMPK遺伝子に異常が見られない症例が1994年にRickerらにより報告され、proximal myotonic myopathy (PROMM)と名付けられた<ref name=Ricker1994><pubmed>8058147</pubmed></ref>[15]。同様の症例が報告されいくつかの名称で呼ばれていたが、DM type2(DM2)とすることが合意され、現在は1型(DM1)と2型(DM2)に分類される<ref name=IDMC2000><pubmed>10746587</pubmed></ref>[16]。


 1992年に、多くのリピート病とほぼ時を同じくして1型の原因遺伝子が同定され、CTG繰り返し配列(リピート)の伸長によるリピート病であることが明らかにされた<ref name=Fu1992><pubmed>1546326</pubmed></ref><ref name=Mahadevan1992><pubmed>1546325</pubmed></ref><ref name=Brook1992><pubmed>1568252</pubmed></ref>[4][5][6]。リピート病のうち、ハンチントン病や多くの脊髄小脳変性症では伸長CAGは翻訳領域に存在することからポリグルタミン毒性が仮説提唱された。しかしながら、本症の繰り返し配列は非翻訳領域に存在し、その産物であるタンパクの異常をきたさないことから、セントラルドグマで説明がつかず、病態がしばらく不明であった。2001年の2型の原因遺伝子同定や<ref name=Liquori2001><pubmed>11486088</pubmed></ref>[7]、Thorntonらによるモデルマウスの作出により<ref name=Mankodi2000><pubmed>10976074</pubmed></ref>[8]、伸長した繰り返し配列を含むRNAが病態の主因であるというRNA gain of function説が提唱され<ref name=Ranum2004><pubmed>15065017</pubmed></ref>[9]、その後に同定されたC9orf72 FTD/ALSをはじめとする非翻訳領域リピート病の病態解明の先鞭をつけた<ref name=Swinnen2020><pubmed>31721251</pubmed></ref>[10]。
 リピート病のうち、ハンチントン病や多くの脊髄小脳変性症では伸長CAGは翻訳領域に存在することからポリグルタミン毒性が仮説提唱された。しかしながら、1型の繰り返し配列は非翻訳領域に存在し、その産物であるタンパクの異常をきたさないことから、セントラルドグマで説明がつかず、病態がしばらく不明であった。2001年の2型の原因遺伝子同定や<ref name=Liquori2001><pubmed>11486088</pubmed></ref>[7]、Thorntonらによるモデルマウスの作出により<ref name=Mankodi2000><pubmed>10976074</pubmed></ref>[8]、伸長した繰り返し配列を含むRNAが病態の主因であるというRNA gain of function説が提唱され<ref name=Ranum2004><pubmed>15065017</pubmed></ref>[9]、その後に同定されたC9orf72 FTD/ALSをはじめとする非翻訳領域リピート病の病態解明の先鞭をつけた<ref name=Swinnen2020><pubmed>31721251</pubmed></ref>[10]。


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! 1876  
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|| Thomsenが自身の家系に遺伝する筋強直性疾患(先天性ミオトニー)についてはじめて記述<ref name=J.1876>Thomsen J. (1876). Tonische Krämpfe in willkürlich beweglichen Muskeln in Folge von ererbter psychischer Disposition - Ataxia muscularis? Arch Psychiatr Nervenkr 6:702-18. doi:10.1007/BF02164912.
|| Thomsenが自身の家系に遺伝する筋強直性疾患(先天性ミオトニー)についてはじめて記述<ref name=J.1876>'''Thomsen J. (1876).'''<br>Tonische Krämpfe in willkürlich beweglichen Muskeln in Folge von ererbter psychischer Disposition - Ataxia muscularis? Arch Psychiatr Nervenkr 6:702-18.  
https://doi.org/10.1007/BF02164912</ref>[11]
[https://doi.org/10.1007/BF02164912 [PDF<nowiki>]</nowiki>]</ref>[11]
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! 1909
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