「脊髄小脳変性症」の版間の差分

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重症度分類:modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上が指定難病の申請基準である。
重症度分類:modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上が指定難病の申請基準である。
[[ファイル:Yokoseki spinocerebellar degeneration Fig1.png|サムネイル]]
[[ファイル:Yokoseki spinocerebellar degeneration Fig1.png|サムネイル|'''図1 特発性小脳失調症 (IDCA) の頭部MRI画像'''<br>'''(A)''' 70歳女性の正常MRI、T2強調画像水平断。<br>'''(B、C)''' 発症年齢55歳、経過16年(71歳)のIDCA症例の頭部MRI、T2協調画像。(B)T2強調画像水平断、(C) T2強調画像矢状断。SCA1、SCA3、MJD、SCA6、SCA31、DRPLAの原因遺伝子に異常は認めない。構音障害、歩行障害を認めるが、自力歩行はかろうじて可能。小脳の萎縮を認めるが、脳幹は保たれている。]]


== 分類 ==
== 分類 ==
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 遺伝性脊髄小脳変性症は、大きく顕性 (優性) 遺伝と潜性 (劣性) 遺伝の脊髄小脳変性症が存在する。現在まで遺伝子座または原因遺伝子が同定された遺伝性脊髄小脳変性症の概略を表1,2に示す。顕性 (優性) 遺伝の脊髄小脳変性症では、原因遺伝子により発症年齢が異なるが、spinocerebellar ataxia 1 (SCA1)、spinocerebellar ataxia 2 (SCA2)、Machado-Joseph disease (MJD)、spinocerebellar ataxia 6 (SCA6)、dentatorubral-pallidoluysian atrophy (DRPLA) のように遺伝子変異がC(シトシン)、A(アデニン)、G(グアニン)、3塩基の組み合わせであるCAGリピートの異常伸長により発症する疾患は、CAGリピート長が長いほど、発症年齢は若年化し、より重症化する。また親から子に異常遺伝子が伝達される際に、子どものCAGリピート長が親のリピート長より伸長することにより、子供の発症年齢の若年化、症状が重症化する表現促進現象を認める。ただし、SCA6では、表現促進現象は認められてない<ref name=Ishikawa1997><pubmed>9311738</pubmed></ref> 。潜性 (劣性) 遺伝の脊髄小脳変性症は、一般的に原因遺伝子蛋白の機能喪失 (loss of function) により発症すると考えられており、そのため若年発症の疾患が多い。
 遺伝性脊髄小脳変性症は、大きく顕性 (優性) 遺伝と潜性 (劣性) 遺伝の脊髄小脳変性症が存在する。現在まで遺伝子座または原因遺伝子が同定された遺伝性脊髄小脳変性症の概略を表1,2に示す。顕性 (優性) 遺伝の脊髄小脳変性症では、原因遺伝子により発症年齢が異なるが、spinocerebellar ataxia 1 (SCA1)、spinocerebellar ataxia 2 (SCA2)、Machado-Joseph disease (MJD)、spinocerebellar ataxia 6 (SCA6)、dentatorubral-pallidoluysian atrophy (DRPLA) のように遺伝子変異がC(シトシン)、A(アデニン)、G(グアニン)、3塩基の組み合わせであるCAGリピートの異常伸長により発症する疾患は、CAGリピート長が長いほど、発症年齢は若年化し、より重症化する。また親から子に異常遺伝子が伝達される際に、子どものCAGリピート長が親のリピート長より伸長することにより、子供の発症年齢の若年化、症状が重症化する表現促進現象を認める。ただし、SCA6では、表現促進現象は認められてない<ref name=Ishikawa1997><pubmed>9311738</pubmed></ref> 。潜性 (劣性) 遺伝の脊髄小脳変性症は、一般的に原因遺伝子蛋白の機能喪失 (loss of function) により発症すると考えられており、そのため若年発症の疾患が多い。


[[ファイル:Yokoseki spinocerebellar degeneration Fig2.png|サムネイル|赤印が、障害部位を示し、濃い印は障害の程度が強いことを示す。参考文献<ref name=Tada2015 />より改変。]]
[[ファイル:Yokoseki spinocerebellar degeneration Fig2.png|サムネイル|'''図2. 脊髄小脳変性症と変性部位'''<br>赤印が、障害部位を示し、濃い印は障害の程度が強いことを示す。参考文献<ref name=Tada2015 />より改変。]]
[[ファイル:Yokoseki spinocerebellar degeneration Fig3.png|サムネイル|破線は小脳への入力、実線は小脳からの出力を示す。]]
[[ファイル:Yokoseki spinocerebellar degeneration Fig3.png|サムネイル|'''図3. 大脳小脳の神経連絡'''<br>破線は小脳への入力、実線は小脳からの出力を示す。]]
[[ファイル:Yokoseki spinocerebellar degeneration Fig4.png|サムネイル|破線は小脳への入力、実線は小脳からの出力を示す。]]
[[ファイル:Yokoseki spinocerebellar degeneration Fig4.png|サムネイル|'''図4. 脊髄小脳の神経連絡'''<br>破線は小脳への入力、実線は小脳からの出力を示す。]]
[[ファイル:Yokoseki spinocerebellar degeneration Fig5.png|サムネイル|破線は小脳への入力、実線は小脳からの出力を示す。]]
[[ファイル:Yokoseki spinocerebellar degeneration Fig5.png|サムネイル|'''図5. 前庭小脳の神経連絡'''<br>破線は小脳への入力、実線は小脳からの出力を示す。]]


== 病態生理 ==
== 病態生理 ==