「ヒストン脱アセチル化酵素」の版間の差分

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<font size="+1">[https://researchmap.jp/shusaku 内田 周作]</font><br>
''京都大学大学院医学研究科''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2023年5月22日 原稿完成日:2023年5月31日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/wadancnp 和田 圭司](国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)<br>
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英:histone deacetylase<br>
英:histone deacetylase<br>
英略称:HDAC
英略称:HDAC
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== ヒストン脱アセチル化酵素とは ==
== ヒストン脱アセチル化酵素とは ==
 DNAはヒストンに巻き付いてヌクレオソームと呼ばれるユニットにまとめられ、さらにこのユニットを高度に折り畳むことでクロマチンを形成して細胞核にDNAを収納している。ヌクレオソームは、コアヒストンと総称される4種類のヒストン(H2A、H2B、 H3、 H4) の各2分子ずつで形成される8量体の周りに145~147 bp の二本鎖DNAが1.75 回巻き付いた構造を持っている。各々のヒストンには、安定な8量体を形成する際に重要なカルボキシル末端側の「フォールドドメイン」と、DNA が巻き付いた状態でもヌクレオソーム構造から外に突出するような状態で存在し、特定の二次構造を持たないアミノ末端側の「テールドメイン」という二つのドメインを持っている。フォールドドメインはDNA の収納に必須な構造体であるのに対し、テールドメインは細胞内で、アセチル化、メチル化、リン酸化、ユビキチン化など様々な翻訳後修飾を受けることが知られている。コアヒストンのテールドメインは、正電荷を持つアミノ酸残基に富んでおり、その中の特定の側鎖がアセチル化されると、電荷が変化することでDNA との相互作用が弱まり、ヌクレオソームの構造変化を伴って転写因子などのDNA 結合蛋白質が接近しやすくなる。逆に、HDACの作用によってヒストンが脱アセチル化されると、DNAと強く結合することでクロマチン構造がコンパクトになって標的遺伝子の発現が抑制される。
 DNAはヒストンに巻き付いてヌクレオソームと呼ばれるユニットにまとめられ、さらにこのユニットを高度に折り畳むことでクロマチンを形成して細胞核にDNAを収納している。ヌクレオソームは、コアヒストンと総称される4種類のヒストン(H2A、H2B、 H3、 H4) の各2分子ずつで形成される8量体の周りに145~147 bp の二本鎖DNAが1.75 回巻き付いた構造を持っている。各々のヒストンには、安定な8量体を形成する際に重要なカルボキシル末端側の「フォールドドメイン」と、DNA が巻き付いた状態でもヌクレオソーム構造から外に突出するような状態で存在し、特定の二次構造を持たないアミノ末端側の「テールドメイン」という二つのドメインを持っている。フォールドドメインはDNA の収納に必須な構造体であるのに対し、テールドメインは細胞内で、アセチル化、メチル化、リン酸化、ユビキチン化など様々な翻訳後修飾を受けることが知られている。コアヒストンのテールドメインは、正電荷を持つアミノ酸残基に富んでおり、その中の特定の側鎖がアセチル化されると、電荷が変化することでDNA との相互作用が弱まり、ヌクレオソームの構造変化を伴って転写因子などのDNA 結合蛋白質が接近しやすくなる。逆に、HDACの作用によってヒストンが脱アセチル化されると、DNAと強く結合することでクロマチン構造がコンパクトになって標的遺伝子の発現が抑制される。


== 分類 ==
== 分類 ==