「Dbxファミリー」の版間の差分

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 [[性行動]]、[[攻撃行動]]、捕食者からの[[逃避行動]]などの[[内因性行動]]/[[本能行動]]に関与する扁桃体内側核を解析すると、Dbx1系譜神経細胞と[[FoxP2]]陽性細胞は排他的に分布していおり、それぞれの電気生理学的性質は異なっていた。また、Dbx1系譜神経細胞の多くは[[アロマターゼ]]陽性の細胞であった。内因性行動によって活性化される神経細胞を解析すると、Dbx1系譜神経細胞とFoxP2陽性細胞は、攻撃行動では雌雄とも活性化を示すが、性行動においては活性化される細胞群に雌雄差があった<ref name=Abecassis2020><pubmed>31811030</pubmed></ref> 。
 [[性行動]]、[[攻撃行動]]、捕食者からの[[逃避行動]]などの[[内因性行動]]/[[本能行動]]に関与する扁桃体内側核を解析すると、Dbx1系譜神経細胞と[[FoxP2]]陽性細胞は排他的に分布していおり、それぞれの電気生理学的性質は異なっていた。また、Dbx1系譜神経細胞の多くは[[アロマターゼ]]陽性の細胞であった。内因性行動によって活性化される神経細胞を解析すると、Dbx1系譜神経細胞とFoxP2陽性細胞は、攻撃行動では雌雄とも活性化を示すが、性行動においては活性化される細胞群に雌雄差があった<ref name=Abecassis2020><pubmed>31811030</pubmed></ref> 。


==== 視床下部発生 ====
==== 視床下部====
 視床下部は、摂食・性行・攻撃・捕食者からの逃避行動など内因性行動や社会行動に関与し、様々な領域に投射し神経活動を調節している <ref name=Sokolowski2012><pubmed>22557946</pubmed></ref> 。Dbx1は視床下部の原基となる領域に一過的(胎生9.5-13.5日齢)に発現する。視床下部発生過程におけるDbx1の機能や神経回路形成への関与を解析するため 視床下部原基でのみDbx1を欠損するコンディショナルノックアウトマウス(Nkx2-1-Cre; Dbx1-floxedマウス, Dbx1-cKOマウス)を解析した結果、胎生期では、外側核のPmch+ 細胞、Hcrt(オレキシン)+ 細胞の減少が認められた。一方で、Nkx2-4陽性細胞やCalbindin+細胞の発現が増加していたことから、外側核のPmch+細胞の細胞運命はDbx1が欠損したことで変化したと考えられる。興味深いことに胎生期では減少が認められたHcrt+細胞は、生後の発達過程で細胞数がコントロール群と同程度に回復することから、Dbx1非依存的に陽性細胞数が決まると考えられる。
 Dbx1は視床下部の原基となる領域に一過的(胎生9.5-13.5日齢)に発現する。視床下部発生過程におけるDbx1の機能や神経回路形成への関与を解析するため 視床下部原基でのみDbx1を欠損する[[コンディショナルノックアウトマウス]](Nkx2-1-Cre; Dbx1-floxedマウス, Dbx1-cKOマウス)を解析した結果、胎生期では、外側核の[[Pmch]]+ 細胞、[[オレキシン]] ([[Hcrt]])+ 細胞の減少が認められた。一方で、[[Nkx2-4]]陽性細胞やカルビンジン+細胞の発現が増加していたことから、外側核のPmch+細胞の細胞運命はDbx1が欠損したことで変化したと考えられる。興味深いことに胎生期では減少が認められたHcrt+細胞は、生後の発達過程で細胞数がコントロール群と同程度に回復することから、Dbx1非依存的に陽性細胞数が決まると考えられる。


 成体のDbx1-cKOマウスを組織レベルで解析すると、外側核のPmch+ニューロン・Npy+ニューロンや弓状核のAgrp+ニューロンなど摂食に関係するペプチドを産生する神経細胞の減少が認められた。個体レベルの行動では、社会性行動の一種である捕食者の臭い(ラットの臭い)に対する逃避行動が低下しているだけでなく、corticosteroneの上昇が認められなかった(ストレス応答の異常)。一方、クッキー発見テストでは異常は認められなかったため、嗅覚系は正常であった。体重は雌雄とも通常食では変化しなかったが、高脂肪食、高カロリー食で体重の減少が認められた<ref name=Sokolowski2015><pubmed>25864637</pubmed></ref> 。これらの結果は、視床下部で一過的に発現するDbx1は視床下部外側核や弓状核の神経細胞分化・運命決定を制御することで、捕食者から逃避行動・ストレス応答・摂食などの内因性行動の基盤となる神経回路形成に寄与することを示唆する<ref name=Sokolowski2015><pubmed>25864637</pubmed></ref><ref name=Sokolowski2016><pubmed>27209204</pubmed></ref> 。
 成体のDbx1-cKOマウスを組織レベルで解析すると、外側核のPmch+ニューロン、[[ニューロペプチドY]] ([[Npy]])+ニューロンや弓状核の[[アグーチ関連ペプチド]] ([[Agrp]])+ニューロンなど摂食に関係するペプチドを産生する神経細胞の減少が認められた。個体レベルの行動では、社会性行動の一種である捕食者の臭い([[ラット]]の臭い)に対する逃避行動が低下しているだけでなく、[[コルチコステロン]]の上昇が認められなかった([[ストレス応答]]の異常)。一方、[[クッキー発見テスト]]では異常は認められなかったため、[[嗅覚]]系は正常であった。体重は雌雄とも通常食では変化しなかったが、高脂肪食、高カロリー食で体重の減少が認められた<ref name=Sokolowski2015><pubmed>25864637</pubmed></ref> 。これらの結果は、視床下部で一過的に発現するDbx1は視床下部外側核や弓状核の神経細胞分化・運命決定を制御することで、捕食者から逃避行動・ストレス応答・摂食などの内因性行動の基盤となる神経回路形成に寄与することを示唆する<ref name=Sokolowski2015><pubmed>25864637</pubmed></ref><ref name=Sokolowski2016><pubmed>27209204</pubmed></ref> 。


=== Dbx2 ===
=== Dbx2 ===