「言語中枢」の版間の差分

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英:Language Center <br>
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{{box|text= 言語中枢とは、言語に関与する脳の部位である。失語症や脳機能イメージング研究の発展により、ブローカ野やウェルニッケ野を含むいくつかの領域が特定の言語機能に関与することが示されている。ブローカ野は左下前頭回付近に相当し、統辞構造の階層的な処理に関わっているとされている。ウェルニッケ野は左上側頭回後部付近に相当し、音韻処理に重要な役割を持つと考えられている。ブローカ野とウェルニッケ野以外にも左角回や左縁上回など多数の領域が様々な言語要素の処理に関わる。和田試験や分離脳患者に関する研究、そして失語症研究や脳機能イメージングなどの結果から、右利きの人では主要な言語機能の多くが大脳皮質の左半球で処理されることが分かっている。一方、韻律や談話の処理などに関しては右半球の複数の領域が関わる可能性がある。}}


 言語中枢とは、言語に関与する脳の部位である。脳の各領域に機能的な違いを認める[[機能局在|脳機能局在論]]と、それを認めない等能説 (全体論) との間の論争は19世紀から続いている。言語に関与する脳領域の存在については、言語機能の自律性に関する言語学的な問題も含めて激しい議論の的となってきた。しかし、失語症や脳機能イメージング研究の発展により、後述するブローカ野やウェルニッケ野を含むいくつかの領域が特定の言語機能に関与することが示されている。
 言語中枢とは、言語に関与する脳の部位である。脳の各領域に機能的な違いを認める[[機能局在|脳機能局在論]]と、それを認めない等能説 (全体論) との間の論争は19世紀から続いている。言語に関与する脳領域の存在については、言語機能の自律性に関する言語学的な問題も含めて激しい議論の的となってきた。しかし、失語症や脳機能イメージング研究の発展により、後述するブローカ野やウェルニッケ野を含むいくつかの領域が特定の言語機能に関与することが示されている。
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== 言語機能の左右差  ==
== 言語機能の左右差  ==


 前述のポール・ブローカらによる脳損傷と言語障害に関する研究以来、言語機能の左半球優位性が提唱されてきた。言語機能の優位半球を調べる代表的なテストとして、頸動脈にアモバルビタールを注射し、一方の大脳半球を麻酔する和田試験がある。和田試験や分離脳患者に関する研究、そして失語症研究や脳機能イメージングなどから、右利きの人では主要な言語機能の多くが[[大脳皮質]]の左半球で処理されることが分かっている。右半球 (劣位半球) については、ブローカ野の相同部位を含む右半球の領域が損傷を受けると、韻律 (prosody) が障害され発話が平板になることが1970年代から示されている<ref><pubmed> 435134 </pubmed></ref>。この他にも、談話 (discourse) の処理、ユーモアや皮肉、比喩の理解などに関しては右半球の複数の領域が関わる可能性がある<ref><pubmed> 15743870 </pubmed></ref>。  
 前述のポール・ブローカなどによる脳損傷と言語障害に関する研究以来、言語機能の左半球優位性が提唱されてきた。言語機能の優位半球を調べる代表的なテストとして、頸動脈にアモバルビタールを注射し、一方の大脳半球を麻酔する和田試験がある。和田試験や分離脳患者に関する研究、そして失語症研究や脳機能イメージングなどの結果から、右利きの人では主要な言語機能の多くが[[大脳皮質]]の左半球で処理されることが分かっている。右半球 (劣位半球) については、ブローカ野の相同部位を含む右半球の領域が損傷を受けると、韻律 (prosody) が障害され発話が平板になることが1970年代から示されている<ref><pubmed> 435134 </pubmed></ref>。この他にも、談話 (discourse) の処理、ユーモアや皮肉、比喩の理解などに関しては右半球の複数の領域が関わる可能性がある<ref><pubmed> 15743870 </pubmed></ref>。  


==関連項目==
==関連項目==
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