「ソマティック・マーカー仮説」の版間の差分

編集の要約なし
17行目: 17行目:


==仮説の提案と修正の経緯==
==仮説の提案と修正の経緯==
 ソマティック・マーカー仮説は、腹内側前頭前野(ブロードマン10・11・12・25・32野など)損傷患者での意思決定の障害を説明するためにDamasioら<ref name=ref1 />により提案された。こうした患者では、知能には問題がないにもかかわらず、日常生活で適切に意思決定できない。患者では、情動喚起刺激に対する末梢の[[皮膚電気反応]]に障害が示された。こうした知見に基づき研究者は、一見情動とは関係のない意思決定においても、情動的な身体反応の信号が不可欠な役割を果たしていると提案した。
 ソマティック・マーカー仮説は、腹内側前頭前野([[ブロードマン10野|ブロードマン10]]・[[ブロードマン11野|ブロードマン11]]11・[[ブロードマン12野|ブロードマン12]]12・[[ブロードマン25野|ブロードマン25]]25・[[ブロードマン32野|ブロードマン32野]]など)損傷患者での意思決定の障害を説明するためにDamasioら<ref name=ref1 />により提案された。こうした患者では、知能には問題がないにもかかわらず、日常生活で適切に意思決定できない。患者では、情動喚起刺激に対する末梢の[[皮膚電気反応]]に障害が示された。こうした知見に基づき研究者は、一見情動とは関係のない意思決定においても、情動的な身体反応の信号が不可欠な役割を果たしていると提案した。


 Damasio (1994)<ref name=ref2 />では、仮説の拡張・精緻化が行われた。上述の身体反応が実際に喚起され脳に信号が送られる経路(身体ループ)に加え、脳内で身体反応をシミュレーションする経路(あたかも身体ループ)があると提案された。また神経基盤として、生得的あるいは条件づけで学習した情動刺激による身体反応の喚起には[[扁桃体]]が関与し、[[思考]]や[[記憶]]を介する情動的身体反応の喚起には腹内側前頭前野が関与し、身体反応の脳での処理およびあたかもループでの脳内シミュレーションには[[体性感覚野]]が関与すると提案した。
 Damasio (1994)<ref name=ref2 />では、仮説の拡張・精緻化が行われた。上述の身体反応が実際に喚起され脳に信号が送られる経路(身体ループ)に加え、脳内で身体反応をシミュレーションする経路(あたかも身体ループ)があると提案された。また神経基盤として、生得的あるいは条件づけで学習した情動刺激による身体反応の喚起には[[扁桃体]]が関与し、[[思考]]や[[記憶]]を介する情動的身体反応の喚起には腹内側前頭前野が関与し、身体反応の脳での処理およびあたかもループでの脳内シミュレーションには[[体性感覚野]]が関与すると提案した。