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== DCCとは ==
== DCCとは ==


[[image:DCC(図1).jpg|thumb|300px|'''図1. ネトリン受容体'''<br><ref name=ref7><pubmed>21558366</pubmed></ref>より引用、改変。]]
[[image:DCC(図1).jpg|thumb|300px|'''図1.ネトリン受容体'''<br><ref name=ref7><pubmed>21558366</pubmed></ref>より引用、改変。]]


 大腸癌の70%では進展に伴い18番[[染色体]]18q21の欠失が起こることから、この領域に腫瘍抑制遺伝子があると想定されていた。その候補分子として同定されたのがDCCである<ref name=ref1><pubmed></pubmed></ref>。多くの癌でDCCの発現が低下すること、DCCの欠失が患者の予後と相関すること、逆に形質転換した細胞にDCCを異所性に発現させると腫瘍原性が低下することなどの事実から、DCCが腫瘍抑制遺伝子として働く可能性があると考えられているが、因果関係を示すデータは無く、DCCが腫瘍抑制遺伝子であることは証明されていない。
 大腸癌の70%では進展に伴い18番[[染色体]]18q21の欠失が起こることから、この領域に腫瘍抑制遺伝子があると想定されていた。その候補分子として同定されたのがDCCである<ref name=ref1><pubmed>2188735</pubmed></ref>。多くの癌でDCCの発現が低下すること、DCCの欠失が患者の予後と相関すること、逆に形質転換した細胞にDCCを異所性に発現させると腫瘍原性が低下することなどの事実から、DCCが腫瘍抑制遺伝子として働く可能性があると考えられているが、因果関係を示すデータは無く、DCCが腫瘍抑制遺伝子であることは証明されていない。


 1996年、3つのグループの遺伝学的・分子細胞生物学的研究により、 [[哺乳動物]]のDCC、[[線虫]]のUNC-40、[[ショウジョウバエ]]のFrazzledがネトリン受容体であることが報告された<ref name=ref2><pubmed>8861902</pubmed></ref> <ref name=ref3><pubmed>8861903</pubmed></ref> <ref name=ref4><pubmed>8861904</pubmed></ref>。UNC-40は、線虫の体周方向の神経[[軸索]]伸張に異常を持つ変異体であり、線虫のネトリンであるUNC-6依存性に働くことからネトリンの受容体である可能性が示唆されていた<ref name=ref5><pubmed> 2310575</pubmed></ref>。特にUNC-6へ向かって伸張する軸索の走行に異常が観察されることから、遺伝学的に誘引性のネトリン受容体と考えられた。DCCは、ネトリンに誘導される脊髄交連神経細胞に発現すること、ネトリンタンパク質と高い親和性で結合すること、抗DCC抗体がネトリン依存性の軸索誘引を阻害することから、DCCがネトリンの受容体であることが明らかにされた<ref name=ref2 />。その後、DCC[[ノックアウトマウス]]において、脊髄交連神経が形成されないこと、その異常がネトリン-1ノックアウト[[マウス]]の異常と同一であることが示され、ネトリン—DCCシグナルが脊髄交連神経の形成に必要なことが証明された<ref name=ref6><pubmed>9126737</pubmed></ref>。
 1996年、3つのグループの遺伝学的・分子細胞生物学的研究により、 [[哺乳動物]]のDCC、[[線虫]]のUNC-40、[[ショウジョウバエ]]のFrazzledがネトリン受容体であることが報告された<ref name=ref2><pubmed>8861902</pubmed></ref> <ref name=ref3><pubmed>8861903</pubmed></ref> <ref name=ref4><pubmed>8861904</pubmed></ref>。UNC-40は、線虫の体周方向の神経[[軸索]]伸張に異常を持つ変異体であり、線虫のネトリンであるUNC-6依存性に働くことからネトリンの受容体である可能性が示唆されていた<ref name=ref5><pubmed> 2310575</pubmed></ref>。特にUNC-6へ向かって伸張する軸索の走行に異常が観察されることから、遺伝学的に誘引性のネトリン受容体と考えられた。DCCは、ネトリンに誘導される脊髄交連神経細胞に発現すること、ネトリンタンパク質と高い親和性で結合すること、抗DCC抗体がネトリン依存性の軸索誘引を阻害することから、DCCがネトリンの受容体であることが明らかにされた<ref name=ref2 />。その後、DCC[[ノックアウトマウス]]において、脊髄交連神経が形成されないこと、その異常がネトリン-1ノックアウト[[マウス]]の異常と同一であることが示され、ネトリン—DCCシグナルが脊髄交連神経の形成に必要なことが証明された<ref name=ref6><pubmed>9126737</pubmed></ref>。