「受容野」の版間の差分

519 バイト追加 、 2012年4月24日 (火)
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 細胞の受容野のサイズは高次の領域に向かうにつれて大きくなる。霊長類V1野で中心視野に受容野をもつ細胞の受容野は0.1~1度程度であるが、視覚経路の最終段階に位置するTE野では10度以上にもなる。ただし受容野サイズは偏心度にも依存し、中心視野では小さく、周辺視野ほど大きくなる。例えばV1野の周辺視野の受容野サイズは5度から10度程度である。またV1細胞の受容野位置は対側視野に限られるものが大部分であるが、視覚経路に沿って受容野サイズが大きくなるにつれて、同側視野も含むものが序々に増してくる。TE野では多くの細胞が同側視野を受容野に含む<ref><pubmed> 6470767 </pubmed></ref>。  
 細胞の受容野のサイズは高次の領域に向かうにつれて大きくなる。霊長類V1野で中心視野に受容野をもつ細胞の受容野は0.1~1度程度であるが、視覚経路の最終段階に位置するTE野では10度以上にもなる。ただし受容野サイズは偏心度にも依存し、中心視野では小さく、周辺視野ほど大きくなる。例えばV1野の周辺視野の受容野サイズは5度から10度程度である。またV1細胞の受容野位置は対側視野に限られるものが大部分であるが、視覚経路に沿って受容野サイズが大きくなるにつれて、同側視野も含むものが序々に増してくる。TE野では多くの細胞が同側視野を受容野に含む<ref><pubmed> 6470767 </pubmed></ref>。  
 
 空間視に関連の深い背側経路では、受容野の位置が、網膜座標以外の空間座標系に依存するような細胞が多くみられる。たとえば、V3A野やその上位にある7a野には、受容野の位置は網膜座標系で固定されているものの、頭部を基準とした座標系にも依存し、眼球が特定の方向に向くときにのみ強く活動するような細胞が存在する<ref><pubmed> 8385201 </pubmed></ref>。PO野には、網膜座標には依存せず、体にたいする位置関係で固定された受容野をもつ細胞が現れる<ref><pubmed> 8270019 </pubmed></ref>。このような身体座標系で固定された受容野は、視覚入力と体性感覚入力の両方を受けるVIP野や7b野などにもみられる。このような受容野をもつ細胞は、受容野部位への皮膚刺激とその場所へ向かってくる視覚刺激の両方に応答するような細胞が知られている<ref><pubmed> 8385201 </pubmed></ref>。背側経路の多くの細胞は両眼に受容野をもち、両眼視差に感受性をもつ。これらは物体の奥行き位置、運動や3次元形状の表現に関与していると考えられている<ref><pubmed> 8270019 </pubmed></ref><ref><pubmed> 10805708 </pubmed></ref>---。


 背側経路のV3A野やLIP野には、受容野内部での刺激応答性が視線方向によって変化する細胞が存在する。さらにPO野には受容野の位置そのものが視線に依存して変化し、受容野位置が網膜上の部位として固定されるのではなく、身体にたいする位置関係で固定された受容野をもつ細胞が現れる。さらに、運動に関連の深いMT野から入力を受けるVIP野は、体性感覚入力も受け、体の一部に受容野をもち、そこへの皮膚刺激とその場所へ向かってくる視覚刺激の両方に応答するような細胞が知られている。
 腹側経路では、高次の段階に向かうにつれて、複雑な物体特徴を適刺激とするような受容野が増してくる。V2野-&gt;V4野-&gt;TEO野-&gt;TE野と向かう腹側経路では、V2野に折れ線に反応する細胞<ref><pubmed> 15056711 </pubmed></ref> 、V4野にテクスチャー、パターン、曲率や凹凸の情報を伝える細胞<ref><pubmed> 8418487 </pubmed></ref><ref><pubmed> 10561421 </pubmed></ref>TEO野には物体の部分的特徴、TE野に至っては顔などの極めて複雑な特徴の情報を伝える細胞が存在する<ref><pubmed> 6470767 </pubmed></ref><ref><pubmed> 1448150 </pubmed></ref>。さらに、これらの細胞の多くは、受容野内部で刺激の位置、向き、あるいは形を定義する手がかり(明るさの違いや色の違いなど)を変えても特徴選択性を維持する<ref><pubmed> 8493538 </pubmed></ref><ref><pubmed> 11160508 </pubmed></ref><ref><pubmed> 8833438 </pubmed> </ref>。 腹側経路でも、大部分の細胞は両眼に受容野をもち、両眼視差に感受性をもつことから、奥行き知覚にも関与していると考えられている<ref><pubmed> 10899190 </pubmed></ref><ref><pubmed> 11929915 </pubmed></ref>。
 背側経路の多くの細胞は両眼に受容野をもち、両眼視差に感受性をもつ。これらは物体の奥行き位置、運動や3次元形状の表現に関与していると考えられている。
 
 腹側経路では、高次の段階に向かうにつれて、複雑な物体特徴を適刺激とするような受容野が増してくる。V2野-&gt;V4野-&gt;TEO野-&gt;TE野と向かう腹側経路では、V2野に折れ線に反応する細胞<ref><pubmed> 15056711 </pubmed></ref> 、V4野にテクスチャー、パターン、曲率や凹凸の情報を伝える細胞<ref><pubmed> 8418487 </pubmed></ref><ref><pubmed> 10561421 </pubmed></ref>TEO野には物体の部分的特徴、TE野に至っては顔などの極めて複雑な特徴の情報を伝える細胞が存在する<ref><pubmed> 6470767 </pubmed></ref><ref><pubmed> 1448150 </pubmed></ref>。さらに、これらの細胞の多くは、受容野内部で刺激の位置、向き、あるいは形を定義する手がかり(明るさの違いや色の違いなど)を変えても特徴選択性を維持する<ref><pubmed> 8493538 </pubmed></ref><ref><pubmed> 11160508 </pubmed></ref><ref><pubmed> 8833438 </pubmed> </ref>。 腹側経路でも、大部分の細胞は両眼に受容野をもち、両眼視差に感受性をもつことから、奥行き知覚にも関与していると考えられている。


   
   
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 1野や2野の細胞は、3a野や3b野よりも複雑な受容野特性を示すことが知られており、たとえば表皮をこする物体の動きや、物体が伸びる向きや物体表面のテクスチャーなどに選択性を示す細胞が報告されている<ref name="ref20"><pubmed> 102767 </pubmed></ref>。  
 1野や2野の細胞は、3a野や3b野よりも複雑な受容野特性を示すことが知られており、たとえば表皮をこする物体の動きや、物体が伸びる向きや物体表面のテクスチャーなどに選択性を示す細胞が報告されている<ref name="ref20"><pubmed> 102767 </pubmed></ref>。  


 頭頂葉の体性感覚皮質(5野、7野)は1次体性感覚野から入力を受け取る。この領野の細胞は1次体性感覚野よりも広い受容野をもち、また体の両側の対称な場所に受容野をもつものが多い。たとえばある細胞は両手の5本指全体に受容野をもつ<ref name="ref21"><pubmed> 8202155 </pubmed></ref>。さらに、これらの細胞は、皮膚だけでなく、いくつかの筋、腱からの入力が収斂しており、手全体や腕全体といった体の各パーツの姿勢の情報を伝達し、運動の感覚ガイダンスに関与していると考えられている。  
 頭頂葉の体性感覚皮質(5野、7a野)は1次体性感覚野から入力を受け取る。この領野の細胞は1次体性感覚野よりも広い受容野をもち、また体の両側の対称な場所に受容野をもつものが多い。たとえばある細胞は両手の5本指全体に受容野をもつ<ref name="ref21"><pubmed> 8202155 </pubmed></ref>。さらに、これらの細胞は、皮膚だけでなく、いくつかの筋、腱からの入力が収斂しており、手全体や腕全体といった体の各パーツの姿勢の情報を伝達し、運動の感覚ガイダンスに関与していると考えられている。  


== 参考文献  ==
== 参考文献  ==


  <references />
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