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Yoshimasakoyama (トーク | 投稿記録) 細編集の要約なし |
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英語名:periaqueductal gray | 英語名:periaqueductal gray | ||
[[Image:Yoshimasakoyama_Fig_1.png|thumb|right|400px|'''図 中脳周囲灰白質'''<br>図の説明]] | [[Image:Yoshimasakoyama_Fig_1.png|thumb|right|400px|'''図 中脳周囲灰白質'''<br>図の説明]] | ||
== 解剖<ref>佐野豊<br>神経科学携帯的基礎 Ⅱ脊髄・脳幹 p.763-777<br>金芳堂:1999</ref> | == 解剖<ref>佐野豊<br>神経科学携帯的基礎 Ⅱ脊髄・脳幹 p.763-777<br>金芳堂:1999</ref> == | ||
第三脳室と第四脳室を結ぶ中脳水道を取り巻く細胞集団。水道周囲灰白質ともいう。中脳周囲灰白質の正中腹側部には、吻側からDarkschewisch核、副動眼神経核、Edinger-Westphal核,、さらに動眼神経核、滑車神経核など、眼球運動や瞳孔反射に関連するニューロン群が分布している。その尾側にはセロトニン作動性ニューロンを豊富に含む背側縫線核が、腹外側部にはアセチルコリン作動性ニューロンの局在する外背側被蓋核が拡がる。 | 第三脳室と第四脳室を結ぶ中脳水道を取り巻く細胞集団。水道周囲灰白質ともいう。中脳周囲灰白質の正中腹側部には、吻側からDarkschewisch核、副動眼神経核、Edinger-Westphal核,、さらに動眼神経核、滑車神経核など、眼球運動や瞳孔反射に関連するニューロン群が分布している。その尾側にはセロトニン作動性ニューロンを豊富に含む背側縫線核が、腹外側部にはアセチルコリン作動性ニューロンの局在する外背側被蓋核が拡がる。 | ||
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PAGの痛覚抑制ニューロンは、PAG内のGABA作動性ニューロンの抑制を受けている。視床下部から投射するβエンドルフィン作動性ニューロン、PAG内のエンケファリン作動性ニューロンなどのオピエート系は、このGABA作動性ニューロンを抑制することにより痛覚抑制を引き起こす<ref name=ref1 />。エンドカンナビノイド系も、このGABA作動性ニューロンの作用(GABA放出)を抑えることにより、あるいはRVMに投射するグルタミン酸作動性ニューロンを活性化することにより痛覚抑制を引き起こす<ref><pubmed>18077685</pubmed></ref>。ニューロテンシン作動性ニューロンは、エンドカンナビノイド系を介してGABA作動性ニューロンを抑制<ref><pubmed>19359367</pubmed></ref>、あるいはRMnに投射するグルタミン酸作動性ニューロンを直接活性化する<ref><pubmed>11287471</pubmed></ref>。サブスタンスP、コレシストキニンも、ニューロテンシンと同様のメカニズムで痛覚抑制に関与する<ref><pubmed>19494144</pubmed></ref><ref><pubmed>21525858</pubmed></ref>。 | PAGの痛覚抑制ニューロンは、PAG内のGABA作動性ニューロンの抑制を受けている。視床下部から投射するβエンドルフィン作動性ニューロン、PAG内のエンケファリン作動性ニューロンなどのオピエート系は、このGABA作動性ニューロンを抑制することにより痛覚抑制を引き起こす<ref name=ref1 />。エンドカンナビノイド系も、このGABA作動性ニューロンの作用(GABA放出)を抑えることにより、あるいはRVMに投射するグルタミン酸作動性ニューロンを活性化することにより痛覚抑制を引き起こす<ref><pubmed>18077685</pubmed></ref>。ニューロテンシン作動性ニューロンは、エンドカンナビノイド系を介してGABA作動性ニューロンを抑制<ref><pubmed>19359367</pubmed></ref>、あるいはRMnに投射するグルタミン酸作動性ニューロンを直接活性化する<ref><pubmed>11287471</pubmed></ref>。サブスタンスP、コレシストキニンも、ニューロテンシンと同様のメカニズムで痛覚抑制に関与する<ref><pubmed>19494144</pubmed></ref><ref><pubmed>21525858</pubmed></ref>。 | ||
=== 情動行動 === | === 情動行動 === | ||
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1つの情動行動の発現系は、他の行動の発現系と相互抑制の関係にあり、たとえば上記のように攻撃行動と防御/威嚇反応は、PAGのレベルで拮抗関係にある。この抑制にはGABA作動性ニューロンが関与すると考えられている<ref name=ref7 />。マウスでは、PAG吻外側部へのモルフィンの投与によって、生きた昆虫への狩猟行動(hunting)が促進し、育児行動が抑制される<ref><pubmed>16510737</pubmed></ref>。コレシストキニン(CCK)は、モルフィンの作用に拮抗的に働く<ref><pubmed>17194502</pubmed></ref>。 | 1つの情動行動の発現系は、他の行動の発現系と相互抑制の関係にあり、たとえば上記のように攻撃行動と防御/威嚇反応は、PAGのレベルで拮抗関係にある。この抑制にはGABA作動性ニューロンが関与すると考えられている<ref name=ref7 />。マウスでは、PAG吻外側部へのモルフィンの投与によって、生きた昆虫への狩猟行動(hunting)が促進し、育児行動が抑制される<ref><pubmed>16510737</pubmed></ref>。コレシストキニン(CCK)は、モルフィンの作用に拮抗的に働く<ref><pubmed>17194502</pubmed></ref>。 | ||
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背側/背外側PAGは、攻撃、防御、威嚇行動などの発現に伴い、交感神経活動、血圧、心拍数の上昇を引き起こし、腹外側PAGは、すくみ反応の発現に伴い、血圧、心拍数の低下を引き起こす<ref name=ref15><pubmed>8202441</pubmed></ref>。背側/背外側PAGは、視床下部背内側核(dorsomedial hypothalamic nucleus: DMH)から交感神経性の入力を受け、この時の血圧上昇は、エンドカンナビノイド<ref><pubmed>21228344</pubmed></ref> 、アルギニンバソプレシンを介し<ref name=ref15 />、セロトニンによって抑制される<ref><pubmed>19303372</pubmed></ref>。アンギオテンシン<ref><pubmed>9200674</pubmed></ref>、エンドセリン <ref><pubmed>7898082</pubmed></ref>,ノルアドレナリン<ref><pubmed>16367785</pubmed></ref>もPAGに作用して血圧上昇を促進する。 | 背側/背外側PAGは、攻撃、防御、威嚇行動などの発現に伴い、交感神経活動、血圧、心拍数の上昇を引き起こし、腹外側PAGは、すくみ反応の発現に伴い、血圧、心拍数の低下を引き起こす<ref name=ref15><pubmed>8202441</pubmed></ref>。背側/背外側PAGは、視床下部背内側核(dorsomedial hypothalamic nucleus: DMH)から交感神経性の入力を受け、この時の血圧上昇は、エンドカンナビノイド<ref><pubmed>21228344</pubmed></ref> 、アルギニンバソプレシンを介し<ref name=ref15 />、セロトニンによって抑制される<ref><pubmed>19303372</pubmed></ref>。アンギオテンシン<ref><pubmed>9200674</pubmed></ref>、エンドセリン <ref><pubmed>7898082</pubmed></ref>,ノルアドレナリン<ref><pubmed>16367785</pubmed></ref>もPAGに作用して血圧上昇を促進する。 | ||
=== 体温調節 === | === 体温調節 === | ||
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PAGへの入力系は、主にグルタミン酸作動性であり、PAGニューロンは、この興奮性入力に加えGABA作動性の抑制を持続的に受けている<ref name=ref26 />。また、Glysine, opioidも抑制性の、アセチルコリン、ヒスタミンは促進性の修飾作用を及ぼす<ref name=ref26 />。 | PAGへの入力系は、主にグルタミン酸作動性であり、PAGニューロンは、この興奮性入力に加えGABA作動性の抑制を持続的に受けている<ref name=ref26 />。また、Glysine, opioidも抑制性の、アセチルコリン、ヒスタミンは促進性の修飾作用を及ぼす<ref name=ref26 />。 | ||
=== 性行動 === | === 性行動 === | ||
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PAGでは、さまざまなペプタイドが、ロードシスの修飾に関与している。LHRH、プロラクチン、サブスタンスPは促進的に<ref><pubmed>6339979</pubmed></ref><ref><pubmed>6828874</pubmed></ref><ref><pubmed>2441308</pubmed></ref>、CRF,βエンドルフィンは、抑制的に作用する<ref><pubmed>6209590</pubmed></ref><ref><pubmed>2860950</pubmed></ref>。 | PAGでは、さまざまなペプタイドが、ロードシスの修飾に関与している。LHRH、プロラクチン、サブスタンスPは促進的に<ref><pubmed>6339979</pubmed></ref><ref><pubmed>6828874</pubmed></ref><ref><pubmed>2441308</pubmed></ref>、CRF,βエンドルフィンは、抑制的に作用する<ref><pubmed>6209590</pubmed></ref><ref><pubmed>2860950</pubmed></ref>。 | ||
=== 排尿 === | === 排尿 === | ||
78行目: | 76行目: | ||
前頭葉や扁桃体からPAGへの入力は、排尿抑制系として作用する。このシステムは、行動発現時に排尿を抑制することにより、必要な行動をよりスムースに発現させる役割を持つ<ref><pubmed>20025036</pubmed></ref>。 | 前頭葉や扁桃体からPAGへの入力は、排尿抑制系として作用する。このシステムは、行動発現時に排尿を抑制することにより、必要な行動をよりスムースに発現させる役割を持つ<ref><pubmed>20025036</pubmed></ref>。 | ||
=== 睡眠・覚醒 === | === 睡眠・覚醒 === | ||
PAG尾側の腹外側部から、さらにその腹外側の網様体に位置する外背側被蓋核(laterodorsal tegmental nucleus; LDT)と、その外側に分布する脚橋被蓋核(pedunculopontine tegmental nucleus; PPT)のアセチルコリン作動性ニューロンの一群は、レム睡眠中に高い発火活動を維持し、レム睡眠の発現と維持に関与する。別の一群のアセチルコリン作動性ニューロンは、覚醒とレム睡眠時に活動が上昇し、覚醒とレム睡眠時の脳波の活性化に関与する。LDT腹側部のグルタミン酸作動性ニューロンも、レム睡眠の調節に関与している。背側縫線核のセロトニン作動性ニューロンは、青斑核のノルアドレナリン作動性ニューロンとともに、覚醒時に持続的発火を維持し、覚醒の維持、レム睡眠の抑制に関与する<ref><pubmed>22647467</pubmed></ref>。アセチルコリン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、ノルアドレナリン作動性ニューロンは、覚醒時には視床下部の覚醒系ニューロン(ヒスタミン作動性ニューロン、オレキシン作動性ニューロン)からの興奮性入力を受け、徐波睡眠時には視索前野の徐波睡眠促進系(GABA作動性ニューロン)からの抑制を受けている<ref><pubmed>16251950</pubmed></ref>。 | PAG尾側の腹外側部から、さらにその腹外側の網様体に位置する外背側被蓋核(laterodorsal tegmental nucleus; LDT)と、その外側に分布する脚橋被蓋核(pedunculopontine tegmental nucleus; PPT)のアセチルコリン作動性ニューロンの一群は、レム睡眠中に高い発火活動を維持し、レム睡眠の発現と維持に関与する。別の一群のアセチルコリン作動性ニューロンは、覚醒とレム睡眠時に活動が上昇し、覚醒とレム睡眠時の脳波の活性化に関与する。LDT腹側部のグルタミン酸作動性ニューロンも、レム睡眠の調節に関与している。背側縫線核のセロトニン作動性ニューロンは、青斑核のノルアドレナリン作動性ニューロンとともに、覚醒時に持続的発火を維持し、覚醒の維持、レム睡眠の抑制に関与する<ref><pubmed>22647467</pubmed></ref>。アセチルコリン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、ノルアドレナリン作動性ニューロンは、覚醒時には視床下部の覚醒系ニューロン(ヒスタミン作動性ニューロン、オレキシン作動性ニューロン)からの興奮性入力を受け、徐波睡眠時には視索前野の徐波睡眠促進系(GABA作動性ニューロン)からの抑制を受けている<ref><pubmed>16251950</pubmed></ref>。 | ||
== 関連項目 == | == 関連項目 == | ||
動眼神経核 | 動眼神経核 | ||
視床下部 | 視床下部 | ||
縫線核 | 縫線核 | ||
痛覚 | 痛覚 | ||
情動系神経回路 | 情動系神経回路 | ||
体温調節の神経回路 | 体温調節の神経回路 | ||
呼吸制御の神経回路 | 呼吸制御の神経回路 | ||
脳幹網様体賦活系 | |||
== 参考文献 == | == 参考文献 == |
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