「エンドソーム」の版間の差分

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== 種類と機能 ==
== 種類と機能 ==


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 エンドソームは形態的な特徴や機能的な特徴をもとに、初期エンドソーム・後期エンドソーム・リサイクリングエンドソームに大別される(図1)。
 エンドソームは形態的な特徴や機能的な特徴をもとに、初期エンドソーム・後期エンドソーム・リサイクリングエンドソームに大別される(図1)。

2013年4月16日 (火) 20:37時点における版

英語名:endosome 独:Endosom 仏:endosome

 エンドソームはエンドサイトーシスによって細胞内へと取り込まれた様々な物質の選別・分解・再利用などを制御するオルガネラの総称である。エンドソームは形態的な特徴や機能的な特徴をもとに、初期エンドソーム(early endosome)[1] [2]・後期エンドソーム(late endosome)[3][4]・リサイクリングエンドソーム(recycling endosome)[5] [6]に大別される。エンドソームは膜輸送の中継地点として機能することで細胞内の物質輸送を司ることから、神経機能をはじめとする様々な生命現象において重要な役割を果たしている。

種類と機能

図1(図のタイトルをここにお願い致します)
図の説明をここにお願い致します

 エンドソームは形態的な特徴や機能的な特徴をもとに、初期エンドソーム・後期エンドソーム・リサイクリングエンドソームに大別される(図1)。

初期エンドソーム

 初期エンドソームは、エンドサイトーシスされた物質を選別する場として機能するオルガネラである[1] [2]。このため、初期エンドソームは選別エンドソーム(sorting endosome)とも呼ばれている。エンドサイトーシスによって細胞内へと取り込まれた物質は、まず細胞辺縁部に存在する初期エンドソームへと輸送される。初期エンドソームを起点として、分解される物質は分解経路へと、細胞膜で再利用される物質はリサイクリング経路へと選別されていく。分解経路へと選別される物質としては受容体型チロシンキナーゼのようなシグナル伝達因子受容体が良く知られており、モノユビキチン化などが選別のシグナルとして用いられている。一方、リサイクリング経路へと選別される物質としてはインテグリンカドヘリンといった接着因子などが知られているが、選別のシグナルについては未だ良くわかっていない。また、初期エンドソームはエンドサイトーシスされた受容体を用いることでシグナル伝達の場としても機能することがあるため、シグナリングエンドソーム(signaling endosome)と呼ばれることもある[7]。初期エンドソームを識別するためのマーカータンパク質としては、Rab5や初期エンドソーム抗原-1(Early endosome antigen, EEA1)が有名である。

後期エンドソーム

 後期エンドソームは、リソソームと融合することで内容物を分解へと導くオルガネラである[3][4]。初期エンドソームにおいて分解経路へと選別された物質は、後期エンドソームを介して最終的にリソソームで分解される。ただし、後期エンドソームは初期エンドソームが成熟したオルガネラであるため、分解される物質は膜輸送によって初期エンドソームから後期エンドソームへと輸送されるわけではない。後期エンドソームは初期エンドソームから成熟するにともない、プロトンポンプの働きによって内腔のpHが低下するとともに、近傍へと移動していく。さらに、後期エンドソームではシグナル伝達因子受容体のような膜貫通型タンパク質がモノユビキチン化などによって認識され、エンドソーム膜ごと内腔へとくびり取られる。このため、後期エンドソームの内部には多数の内腔小胞が存在することになり、後期エンドソームは多胞体(MVB: multivesicular body)とも呼ばれる。後期エンドソームがリソソームと融合すると、内腔小胞ごと膜貫通型のタンパク質も分解される。

 また、後期エンドソームはゴルジ体との間で膜輸送による物質のやり取りを行っているため、後期エンドソームはリソソームで働く分解酵素をゴルジ体からリソソームへと輸送するための中継オルガネラとしても機能している[8]。後期エンドソームを識別するためのマーカータンパク質としては、Rab7やマンノース-6リン酸受容体(M6PR)が有名である。

リサイクリングエンドソーム

 リサイクリングエンドソームは、エンドサイトーシスされた物質を再び細胞膜へと戻す過程を制御するオルガネラである)[5] [6]。初期エンドソームにおいてリサイクリング経路へと選別された物質は、初期エンドソームから直接、あるいは核近傍のリサイクリングエンドソームへと輸送されたのち、細胞膜へと戻され再利用される。このエンドサイトーシスによって細胞内へと取り込んだ物質を再び細胞膜へと戻す過程はendocytic recyclingと呼ばれているため、リサイクリングエンドソームはERC(endocytic recycling compartment)とも呼ばれる。リサイクリングエンドソームは、小胞やオルガネラの輸送過程においてレールとして機能する微小管の集合地点、微小管形成中心(MTOC: microtubule-organizingcenter)を取り囲むように存在しており、COS-1 細胞などでは初期エンドソームや後期エンドソームとは空間的な配置が明らかに異なる[9]。この微小管形成中心を取り囲むようなリサイクリングエンドソームの配置は、ある方向から細胞内へと取り込んだ物質を別の異なる方向へと戻すendocytic recyclingに重要と考えられる。実際、リサイクリングエンドソームは、神経細胞のような極性を持つ細胞の極性輸送を制御するオルガネラとしても知られている。ただし、リサイクリングエンドソームを介してリサイクルされる物質の全てが極性をもってリサイクルされるわけではない。

 リサイクリングエンドソームは、後期エンドソームと同様にゴルジ体との間で膜輸送による物質のやり取りを行っていることが報告されている[10]。このため、リサイクリングエンドソームは初期エンドソームとゴルジ体を、あるいはゴルジ体と細胞膜を繋ぐ中継オルガネラとしても機能している。最近、リサイクリングエンドソームとリソソームとの間でも膜輸送よる物質のやり取りの可能性が示唆されており[11]、中継オルガネラとしてのリサイクリングエンドソームの機能は今後さらに注目されるものと考えられる。リサイクリングエンドソームを識別するためのマーカータンパク質としては、Rab11やトランスフェリン受容体(TfR)が有名である。

エンドソームを介する膜輸送と神経機能

 神経細胞の分化・生存を制御する神経成長因子(NGF: nerve growth factor)の受容体TrkAはエンドサイトーシスによって初期エンドソームへと輸送されたのち、後期エンドソームを介してリソソームへと輸送される[12](図1)。TrkAをリソソームへと輸送し分解へと導くことは、NGFによるシグナル伝達を適切なタイミングで止める上で重要と考えられている。実際、TrkA の初期エンドソームへの輸送は低分子量Gタンパク質のRab5によって制御されており、Rab5の機能が損なわれると神経細胞の分化が過度に進行することが報告されている[13]。さらに、TrkAの後期エンドソームからリソソームへの輸送はRab7によって制御されており、Rab7の機能が損なわれることによっても神経細胞の分化が過度に進行することが報告されている[14]

 一方、神経細胞の移動・形態形成を制御する細胞接着因子であるβ1-インテグリンやN-カドヘリンは、エンドサイトーシスによって初期エンドソームへと輸送されたのち、リサイクリングエンドソームを介して再び細胞膜へと輸送される[15](図1)。このβ1-インテグリンやN-カドヘリンのendocytic recyclingは、神経細胞の移動・形態形成に必要な接着部位の再編成を行う上で重要と考えられている。実際、Rab5依存的なN-カドヘリンの初期エンドソームへの輸送が損なわれると、大脳皮質の神経細胞の移動が阻害されることが報告されている[16]。また、β1-インテグリンのリサイクリングエンドソームから細胞膜への輸送は、Rab11によって制御されており、Rab11 の機能が損なわれると神経細胞の形態形成に異常が生じることも報告されている[17]。さらに、リサイクリングエンドソームを介する膜輸送は神経突起の形成・伸長過程を制御するだけでなく[18][19][20][21]、後シナプス内での神経伝達物質受容体のリサイクリングを制御することにより、長期増強現象などの記憶学習にも関与することが明らかになっている[22]

参考文献

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(執筆者:小林穂高、福田光則  担当編集委員:尾藤晴彦)