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2013年5月16日 (木) 16:03時点における版
英語名:suprachiasmatic nucleus 英略語:SCN
視交叉上核は、視交叉の直上で視床下部第三脳室底部にある一対の小さな神経核であり、哺乳類動物における睡眠と行動や内分泌等の生理的現象の概日リズムを支配する最高位中枢である。すなわち、視交叉上核は、末梢の臓器に存在する概日時計の振動や位相を調律する。このことは、生体から取り出した切片培養下の視交叉上核が、何週間も概日振動を示すこと、生体で視交叉上核を周辺の脳組織から切り離すと、視交叉上核では神経活動の概日リズムが見られるが、切り離された脳組織では観察されないこと、生体で視交叉上核を破壊すると概日リズムが失われるが、別の動物から採取した視交叉上核を移植すると概日リズムが回復すること、といった一連の実験から明らかになった。視交叉上核の個々の細胞は、概日時計の基礎となる転写-翻訳のフィードバックループを持つが、これは末梢の細胞がもつ機構と同じものである。しかし、視交叉上核には独自の細胞間コミュニケーションが高度に発達しており、これが視交叉上核が概日時計の中枢である所以とされている[1]。
細胞構造
すべての哺乳類において、視交叉上核は視交叉の後部の直上に、第三脳室を挟むように存在する一対の卵形の神経核である。ラットの視交叉上核の大きさは、吻尾方向に950 μm、幅が425 μm、背腹方向に400 μmである[2]。前方と内側は内側視索前野に、背側と後方は前視床下部野に、腹側は視交叉によって囲まれている。ラットにおいては、一側の視交叉上核に8000個の細胞が存在している[2]。視交叉上核の神経細胞は中枢神経系においてもっとも小さなものの一つであり、直径は10 μm以下で、小脳や海馬の顆粒細胞と同程度の大きさである。視交叉上核は均一な細胞集団ではなく、いくつかの異なった細胞群の集まりである。一般組織染色による細胞構築的観察により、視交叉上核は、背内側部と腹外側部の二つの部位に分かれる。背内側部は、最も細胞密度が大きい部位である。細胞は小さく、直径約7-8 μmで、楕円形の細胞が多い。腹外側部は背内側部と比較してやや疎に細胞が分布する。構成する細胞はやや大きく、直径約8-10 μmの円形の細胞が多い。この腹外側部の領域に視交叉上核へのほとんどの求心性線維が終止するのが特徴で、背内側部に入力する神経投射は少ない。上記の2部位は共に明らかに周囲の前視床下部野よりは細胞密度が大きいが、視交叉上核の背外側部は細胞密度が特に疎で、通常の染色では前視床下部野との境界がはっきりしない。
神経伝達物質の分布
上述した一般染色による細胞形態の違いはわずかであるが、視交叉上核の細胞はその産生する神経伝達物質が独特な分布を示す。これは、1970-1980年代にペプチドやアミノ酸の免疫組織化学が導入されてはじめて明らかとなった。この結果、視交叉上核は一様ではなく、各々の神経伝達物質が特徴的な神経核内局在を示す、多種類の独立した細胞群からなる構造であることが確定された。
視交叉上核を構成する神経細胞には多くの種類のペプチド産生細胞が存在する (図1)。ラットにおいて、背内側部にはアルギニンバソプレッシン (AVP) 産生細胞が、腹外側部には血管作動性腸管ポリペプチド (VIP) やガストリン放出ペプチド (GRP) 産生細胞が存在する。また、背内側部と腹外側部の間の狭い中間部には、ソマトスタチン(SST)やサブスタンスP(SP)を産生する細胞が存在する。これらのペプチド産生細胞の分布様式は、マウスやハムスターなど齧歯類のみならず、ヒトやサルといった霊長類でも基本的に同様であり、なんらかの生理的意義があると考えられている。
背内側部に密に存在するAVP細胞については、直径8-9 μmの楕円形あるいは円形のものが多い。電子顕微鏡による超微形態学的観察によると、粗面小胞体、ミトコンドリア、ゴルジ体、ニューロフィラメント等が発達している。AVP含有線維終末は視交叉上核の背内側領域に密に存在するが、腹外側部にはほとんどないのが特徴である。AVPの発現は、視交叉上核において、明暗条件下のみならず、恒常暗条件下においても、明期(主観的昼)に高く、暗期(主観的夜)に低い概日振動を示す。視交叉上核には、AVP受容体であるV1aおよびV1b受容体が発現するとされるも、遺伝的にAVPが欠損したBrattleboroラットでは行動異常は無く、V1a受容体で若干の行動周期延長が認められるのみである。このようにAVPおよびその受容体は視交叉上核内に大量に発現しているにもかかわらず、その働きが分っておらず、その役割の解明が待たれる。
VIP細胞は、視交叉上核の腹外側部において非常に密に存在する。その多くは、直径8-13 μmの小球形あるいは楕円形の細胞であり、AVP細胞と同様に細胞小器官が発達している。腹外側部のVIP細胞は背内側のAVP細胞に投射し、視交叉上核内で神経回路を形成している。この回路の伝達物質はVIP/PHIで受容体はVPAC2である。VIPあるいはVPAC2欠損マウスにおいては、視交叉上核の神経細胞間の脱同調や概日行動リズムの著明な異常が認められる[3]。同じく腹外側部に存在するGRP細胞は、その領域はかなりの部分がVIP細胞の分布と重複しているが、VIP細胞よりもさらに外側に存在する傾向がある。VIPとGRPは明暗条件下において、対称的な概日振動を示す。すなわち、VIPおよびそのmRNAは明期に低く暗期に高いのに対して、GRPとそのmRNAは、明期に高く、暗期に低い振動を示す。しかしながら、これらの振動は恒暗条件下では消失する。GRP受容体も視交叉上核に発現し、このノックアウトマウスは光に対する反応性が落ちている[4]。また、分泌タンパク質であるprokineticin 2 (PK2)およびその受容体PKR2も視交叉上核に発現する。PKR2は視交叉上核からの直接投射部位である背内側核、視床室傍核、外側中隔核で発現していることや、ラットの脳室内にPK2を活動期に投与すると行動が抑制されるため、PK2は視交叉上核からの出力を担う分子とも考えられている[5]。
SST細胞は少数で、この中間部より主に腹外側部に突起を伸ばすが、この神経線維は視交叉上核外には投射しないと考えられている。SSTおよびそのmRNAは、明暗条件下・恒暗条件下のどちらにおいても、明期に高く、暗期に低い振動を示す。視交叉上核において、SSTとSPが同一細胞で共存することが示されている。SP陽性線維に関しては網膜の神経節細胞から視交叉上核への投射線維にSPが存在するとの説がある。
GABAあるいはGABAの合成酵素であるグルタミン酸デカルボキシラーゼ (GAD) に対する免疫組織化学やin situ hybridizationにより、視交叉上核のほとんどの神経細胞はGABA作動性であることが示されている。GABA及びGAD 陽性の線維もまた、視交叉上核に豊富に存在している。二重標識in situ hybridizationを用いて、VIP、AVP、SSTの各々の神経細胞は、GABA作動性の神経細胞であることが確かめられている。
視交叉上核における時計遺伝子の時空間特異的発現プロファイル
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動画1 |
1997年に、哺乳類の概日リズム分子機構の中核をなす時計遺伝子であるClock、Per1、Per2が次々とクローニングされた。以後、世界中での精力的な研究により、数々の時計遺伝子が矢継ぎ早にクローニングされ、リズム発振の分子機構はほぼ解明された[6]。 細胞時計は、時計遺伝子の転写と翻訳を介したフィードバックループ機構によって成り立っている。まず、CLOCK とBMAL1の二量体が、Per遺伝子 (Per1、Per2) のプロモーター上のE-box配列に結合し、Perの転写を促進する。PERタンパク質が細胞質に蓄積してくると、転写抑制因子のCRYタンパク質 (CRY1、CRY2) と結合して核へ移行し、自身の転写を促進していたCLOCK/BMAL1の転写活性を抑制する。これでループが閉じ、一旦はPerの転写量が低下し、PERタンパク質が減少する。すると再びCLOCK/BMAL1によるPerの転写活性が上がる。これが細胞時計の基本となるコアループである。
Per1、Per2、Bmal1、Clockは視交叉上核のほとんどの神経細胞において強く発現している。Per1とPer2は、明期に高く、暗期に低い振動を示す。一方、Bmal1は、明期に低く暗期に高い。興味深いことに、Clockは一日のどの時点においても同程度に発現している。
このような細胞時計により、視交叉上核の細胞は分散培養系においても安定した概日振動を示すが[7]、この細胞時計の分子機構は末梢の細胞においても共通したものである。実は、視交叉上核のマスター時計としての特殊性は、先述した神経伝達物質を介した「細胞間コミュニケーション」にある。これにより、末梢組織の概日振動はin vitroの培養系ではすぐに減衰してしまうのに対し、視交叉上核では神経細胞同士がお互いに連絡しあい同期することによって、組織として非常に安定した概日振動を何週間も生み出すことができる。最も重要な時計遺伝子のひとつであるPer1遺伝子のプロモーターの下流に、ホタル発光遺伝子luciferaseをつないだレポーター遺伝子を導入したPer1-lucトランスジェニックマウスの視交叉上核切片培養系を用いたリアルタイムイメージングにより、個々の細胞におけるPer1の発現リズムを観察すると、常に、背内側部の特に第三脳室に面した領域からその振動は始まり、続いて中間部から腹外側部へと波のように広がっていく[8](動画1)。このような階層性のある時空間的制御ネットワーク機構は、蛍光共鳴エネルギー移動を利用したCaシグナルの概日リズムを検出することによっても確認されている[9]。この視交叉上核内ネットワークは概日リズムの特徴である温度補償性に寄与しているとされる[10]。また最近、この特徴的な視交叉上核内の時空間特異性の形成が、分子レベルで明らかとなった。視交叉上核全体の中でも最背内側部の細胞において、時計遺伝子は最も早く発現するが、その理由の一つに、視交叉上核に特異的に発現する、GTPase活性を制御するRGS(Regulator of G-protein signaling)であるRGS16がある。夜明け前に、最背内側部の細胞はRGS16を発現することで、ターゲットの抑制性Gタンパク質を不活性化し、細胞内のcAMPを増やし、cAMP responsive element (CRE)シグナル伝達を亢進し、時計遺伝子Per1の転写を高める。RGS16変異マウスでは、視交叉上核において先頭集団である最背内側部におけるPer1の発現が遅れるため、マウス個体の概日行動リズムの周期が長くなる[11]。
網膜から視交叉上核への神経経路
概日リズムというだけあって、内因性の生物時計の周期は完全な24時間ではない。そこで生体は、自身の時計を外界の時計(地球の自転による24時間周期のリズム)に同調させる機構を持つ。同調因子として最も重要なものは、明暗の光である。光情報は、網膜から視交叉上核に直接終末する網膜視床下部路と、網膜から外側膝状体中間小葉Intermediolateral leaflet of the lateral geniculate nucleusの細胞に一旦シナプスを形成し、その細胞が視交叉上核に間接的に投射する経路により伝えられる(図1)。
網膜での概日性光受容の最大のものであるメラノプシン細胞は、網膜神経節細胞の1-2%を占め、視交叉上核へ直接投射する[12]。この網膜視床下部路は両側に投射するが、その割合には種差がある。ラットでは、40%が同側性で60%が対側性であるが、ハムスターでは、左右ほぼ同数である。視交叉上核における神経節細胞の神経終末は、大部分が腹外側部に存在するが、これも種差が大きい。ラットでは腹外側部に限局するのに対し、マウスでは分布領域はそれより広く、中間部にも広がって、視交叉上核の2/3に分布し、ハムスターにおいては、さらに分布域が広い。興味深いことに視神経投射部位が大きいほど、光刺激による位相変動も大きい。電子顕微鏡を用いた観察により、視神経終末は視交叉上核腹外側部のVIPやGRP細胞の樹状突起や細胞体に直接シナプスを形成することがわかった。また、この投射線維において、球形のミトコンドリアが認められる。網膜視床下部路の主要な神経伝達物質はグルタミン酸である。実際、光刺激を模してAMPAやNMDAを直接視交叉上核に投与すると、概日行動リズムの位相が変動する。視交叉上核では、AMPA型受容体のGluR2とGluR4およびNMDA型受容体のNR1とNR2Cが強く発現している。また、Pituitary Adenylate Cyclase Activating Polypeptideも網膜視床下部路の神経伝達物質と考えられている。
また、網膜のメラノプシン細胞は、視交叉を超え間脳最後部の神経核である外側膝状体の中間小葉にまで線維を延ばす。この領域は、視覚を司る視神経線維が終末する背側部と、脳幹諸核からの線維が投射する腹側部の中間に存在する。この中間小葉のニューロペプチドY (NPY)含有細胞は、視交叉上核の腹外側部へ投射する。NPY細胞は小型から中型の神経細胞であり、それらは全てGABA作動性でもある 。
時計遺伝子と光同調
概日時計システムの位相は、日々、外界の24時間の明暗周期に同調していることは先に述べた。主観的夜に光刺激を行うと、マウスやラットは行動位相変動を起こすが、この際に、Per1の発現を急速に誘導した[13]。しかし、行動位相変動を示さない主観的昼においては、光刺激はPer1を全く誘導しない。主観的夜における光刺激は、MAPKやCREB経路を活性化し、Per1遺伝子のプロモーター上にあるCRE配列に作用し、Per1の転写を誘導する。また、一般に行動位相変動にはある一定以上の照射光量が必要であり、その最小値を超えると行動リズムの位相変動の程度は照射光量の対数値に比例して大きくなり、ある一定の光量以上でプラトーに達する。行動位相変動を引き起こす光照射量の最小値と最大値は、Per1の発現誘導の最小値および最大値と一致し、位相変動量と発現誘導量は極めて強い相関を示す[13]。よって、光同調機構において、Per1が重要な役割を担っていると考えられている。
アカパンカビの時計遺伝子の発現振動の位相が光刺激で12時間も一挙に変動する一方で、光刺激によるマウスの行動位相変動の最大値は3時間程度である。これは、光照射により誘導されるマウスPer1の発現が、網膜からの投射部位である腹外側部に限局しており、通常Per1が発現振動する背内側部では誘導されないためと考えられている。すなわち、視交叉上核内では、光照射でPer1が発現する部位と、発現しない部位が生じる。視交叉上核からの出力は、視交叉上核全体の時計の総計であるとすれば、哺乳類の行動リズムにおける位相変動がアカパンカビに比較して小さいことの説明が可能である。
光以外の因子による視交叉上核の調節
網膜視床下部路以外にも、視交叉上核は他の神経核から神経投射を受けるとともに、ホルモンによる液性調節も受ける。神経投射としては、先に述べた外側膝状体のNPY細胞の投射の他に、中脳正中縫線核のセロトニン細胞の投射が良く知られている。セロトニン線維は、視交叉上核腹外側部のVIP細胞の樹状突起及び細胞体にaxodendriticおよびaxosomaticにシナプス形成するとともに、網膜視床下部路にaxoaxonicなシナプス形成をする。視交叉上核には、セロトニン受容体、5HT-1a、5HT-1b、5HT-1c、5HT-2、および5HT-7受容体の発現が認められており、セロトニンが視交叉上核の神経活動を抑制すると言われている。また、微弱ではあるが、脳幹のノルアドレナリン細胞は視交叉上核の背内側部へ投射するとされる。視交叉上核において、ノルアドレナリンは明期に高く暗期に低い概日リズムを示すと報告されている。
液性因子の代表的なものに、松果体より夜間のみに分泌されるメラトニンがある。視交叉上核においては、メラトニン受容体、MT1およびMT2受容体が強く発現している。哺乳類における松果体のメラトニン産生が視交叉上核の完全な支配下にあることを考慮すると、メラトニンの視交叉上核への働きは、フィードバック機構の一つであると考えられる。
また、副腎から分泌される糖質コルチコイド(コルチゾール)は、起床時にピークとなる概日リズムを示すホルモンとしてよく知られているが、最近、糖質コルチコイドが縫線核のセロトニン合成の律速酵素であるトリプトファンヒドロキシラーゼ2(Tph2)の転写を増大させることが明らかになった。従って、糖質コルチコイドは、直接視交叉上核に働くのでは無く、縫線核を介して間接的に働くと思われる。このように、個体レベルでも何重ものフィードバックシステムを介して中枢時計は制御されている。
視交叉上核からの時間シグナルの出力
視交叉上核の時間シグナルが、どのように出力されるのかは古くより議論がなされている。Silver らは[14] 、視交叉上核を破壊し概日リズムを消失させたハムスターに、別個体の視交叉上核を、液性成分は通すが神経線維は通さない特殊な半透膜に包んで移植し、行動リズムを回復させることに成功した。この結果は、視交叉上核の液性成分にリズム惹起能力があることを証明している。視交叉上核細胞から分泌されるVIPがパラクリン制御により他の視交叉上核細胞のリズムを惹起させることが明らかにされたように[15]、ペプチドは液性の候補物質である。以前より、視交叉上核細胞から分泌されたAVPが脳脊髄液中で著明な概日リズムを形成することが知られている[16]。ペプチドに限らず、視交叉上核からの液性因子が、どのような分子メカニズムを経て、高次脳機能の日内変動を惹起するのかが注目される。
脳神経核の一つである視交叉上核は当然ながら、強い神経出力を持っている。解剖学的には、視交叉上核からの直接投射は、室傍核下部領域 (SPVZ)、視束前野 (POA)、腹内側核 (VMH)、背内側核 (DMH)、視床室傍核 (PVT)、外側中隔核 (LS) の6つの投射先が認められている。この視交叉上核からの遠心性線維のうち、SPVZへの投射が、7割以上を占める。この神経線維は視交叉上核の辺縁部から始まって背尾側へ走り、視床下部室傍核の腹側の境界部のSPVZへいたる。SPVZは、室傍核、室周囲核、視床前核、腹内側核、背内側核といった視床下部緒核、さらに、中脳中心灰白質、橋側腕核、弧束核、迷走神経背側核、延髄網様体、脊髄中間質側核など、中枢の自律神経系の核群と密接に連絡している。実際、光照射刺激は、視交叉上核を介して、生体各部位の交感神経活動を上昇させ、副交感神経活動を減弱させる[17] [18]。さらに、自律神経系の調節のみにとどまらず、光照射刺激は、視交叉上核-脊髄中間質外側核-副腎交感神経を介して、副腎のPer1の発現を誘導して、副腎皮質の糖質コルチコイドの分泌を惹起する[19]。糖質コルチコイドは、糖質コルチコイド受容体(全身のほとんど全ての臓器で発現している)に作用し、glucocorticoid responsive elementを介してPer1の転写を活性化し、臓器の時間をリセットすると想定される。概日リズム形成においても、この視交叉上核からの神経出力が副腎においてホルモン分子へと変換される機構は、時間情報を全身に伝達する経路として注目されている。
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(執筆者:山口賀章、岡村均 担当編集委員:岡本仁)