「フェロモン受容体」の版間の差分

31行目: 31行目:


==== 機能 ====
==== 機能 ====
 V1Rは低分子の揮発性フェロモンや、ステロイドなどの不揮発性フェロモンを受容する。揮発性フェロモン受容の例として、オスとメス両方のマウスの尿中に含まれる2-heptanoneはV1Rb2によって受容され、メスの発情期を延長させる<ref name=Boschat2002/>9。ステロイド受容の例として、発情期のメスマウスの尿中に含まれるエストロゲン硫化物は、V1rj2とV1rj3に受容される<ref name=Haga2014><pubmed>25073926</pubmed></ref>17。エストロゲン硫化物を塗った卵巣除去メスに対しては、オスはマウント行動を示さない。一方、非発情期のメス尿とエストロゲン硫化物を同時に塗った場合は、オスのマウントが促進される。これらのことから、オスはメス特異的なシグナルと発情状態を示すシグナルを同時に受容した場合に性行動が促進されることが示唆される<ref name=Haga2014/>17。
 V1Rは低分子の揮発性フェロモンや、ステロイドなどの[[不揮発性]]フェロモンを受容する。揮発性フェロモン受容の例として、オスとメス両方のマウスの尿中に含まれる2-heptanoneはV1Rb2によって受容され、メスの発情期を延長させる<ref name=Boschat2002/>9。ステロイド受容の例として、発情期のメスマウスの尿中に含まれる[[エストロゲン]]硫化物は、V1rj2とV1rj3に受容される<ref name=Haga2014><pubmed>25073926</pubmed></ref>17。エストロゲン硫化物を塗った卵巣除去メスに対しては、オスはマウント行動を示さない。一方、非発情期のメス尿とエストロゲン硫化物を同時に塗った場合は、オスのマウントが促進される。これらのことから、オスはメス特異的なシグナルと発情状態を示すシグナルを同時に受容した場合に性行動が促進されることが示唆される<ref name=Haga2014/>17。
 
 Puntaらは、2つのV1Rクレードを含む16種類のV1R遺伝子群を欠損させたマウスを作製したところ、このマウスでは母親の攻撃行動やオスの性行動が消失することを見出した。これらの行動を引き起こすのに必要なフェロモン受容体が、欠損した16種のV1R遺伝子群に含まれていると考えられる<ref><pubmed>12214233</pubmed></ref>18。
 Puntaらは、2つのV1Rクレードを含む16種類のV1R遺伝子群を欠損させたマウスを作製したところ、このマウスでは母親の攻撃行動やオスの性行動が消失することを見出した。これらの行動を引き起こすのに必要なフェロモン受容体が、欠損した16種のV1R遺伝子群に含まれていると考えられる<ref><pubmed>12214233</pubmed></ref>18。
 Isogaiらは、マウスにおいて、初期応答遺伝子Egr1を鋤鼻神経活動の指標とし、同種および他種生物由来の様々な刺激に対する鋤鼻神経応答プロファイルを作成した。その結果、V1Rは同種だけでなく異種生物由来のシグナル(カイロモン)も受容することが示されている<ref name=Isogai2011><pubmed>21937988</pubmed></ref>19。
 
 Isogaiらは、マウスにおいて、初期応答遺伝子Egr1を鋤鼻神経活動の指標とし、同種および他種生物由来の様々な刺激に対する鋤鼻神経応答プロファイルを作成した。その結果、V1Rは同種だけでなく異種生物由来のシグナル([[カイロモン]])も受容することが示されている<ref name=Isogai2011><pubmed>21937988</pubmed></ref>19。


=== 鋤鼻受容体 V2R ===
=== 鋤鼻受容体 V2R ===