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== 制御する分子群 == | == 制御する分子群 == | ||
[[ファイル:Kurako Fig3.jpg|サムネイル|'''図3. DSCAM1とプロトカドヘリン'''<br>(A) ショウジョウバエDSCAM1は、選択的スプライシングによって19008種類の細胞外領域バリアントが存在する。エクソン4は免疫グロブリン2(Ig2)ドメインを、エクソン6とエクソン9はそれぞれIg3とIg7をコードする。そして、エクソン4、6、9はそれぞれ12、48、33のアイソフォームがある。多くのバリアントが産生されるが、同一のアイソフォームどうしが特異的に結合する。<br>(B) | [[ファイル:Kurako Fig3.jpg|サムネイル|'''図3. DSCAM1とプロトカドヘリン'''<br>(A) ショウジョウバエDSCAM1は、選択的スプライシングによって19008種類の細胞外領域バリアントが存在する。エクソン4は免疫グロブリン2(Ig2)ドメインを、エクソン6とエクソン9はそれぞれIg3とIg7をコードする。そして、エクソン4、6、9はそれぞれ12、48、33のアイソフォームがある。多くのバリアントが産生されるが、同一のアイソフォームどうしが特異的に結合する。<br>(B) マウスプロトカドヘリン(Pcdh)は、PcdhαとPcdhβ、Pcdhγが遺伝子クラスターを形成しており、細胞外領域の異なるプロトカドヘリン分子が全部で58種類存在する。プロトカドヘリンのバリアントは異なるプロモーター選択によって産生される。]] | ||
これまでにショウジョウバエや線虫、マウスなどのモデル生物において、神経突起の自己回避を直接制御する多くの細胞表面分子が同定されている。なかでも、ショウジョウバエのDSCAM1とマウスのプロトカドヘリンは、多様な細胞外ドメインからなる多くのアイソフォームをもつ巨大ファミリー分子で、これらが神経突起表面でのアイソフォームどうしのマッチングによって “自己”あるいは“非自己”を認識し、そして、同じアイソフォームの同種親和性結合を介して自己の突起の反発を引き起こす。 | これまでにショウジョウバエや線虫、マウスなどのモデル生物において、神経突起の自己回避を直接制御する多くの細胞表面分子が同定されている。なかでも、ショウジョウバエのDSCAM1とマウスのプロトカドヘリンは、多様な細胞外ドメインからなる多くのアイソフォームをもつ巨大ファミリー分子で、これらが神経突起表面でのアイソフォームどうしのマッチングによって “自己”あるいは“非自己”を認識し、そして、同じアイソフォームの同種親和性結合を介して自己の突起の反発を引き起こす。 | ||
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同種親和性結合能をもつ進化的に保存された細胞接着因子で、細胞外領域には10個の免疫グロブリン領域と6個のフィブロネクチンリピートが存在する。選択的スプライシングによって、細胞外領域には19,008種類のバリアントが存在し、1つのDscam1遺伝子から合計で38,016種類のアイソフォームがつくられる<ref><pubmed>10892653</pubmed></ref>[5]('''図3''')。DSCAM1は同じアイソフォーム同士が細胞外領域で特異的に結合し、その結果、細胞内領域を介したシグナルにより反発作用を生じる。それぞれのニューロンはランダムにDscam1アイソフォームを発現しているが、同じ細胞由来の突起どうしでは同じアイソフォームが発現しており、それらの同種親和性結合によって反発作用が生じて神経突起の自己回避が起こる<ref><pubmed>15339666</pubmed></ref>[6]<ref><pubmed>17889655</pubmed></ref>[7]。 | 同種親和性結合能をもつ進化的に保存された細胞接着因子で、細胞外領域には10個の免疫グロブリン領域と6個のフィブロネクチンリピートが存在する。選択的スプライシングによって、細胞外領域には19,008種類のバリアントが存在し、1つのDscam1遺伝子から合計で38,016種類のアイソフォームがつくられる<ref><pubmed>10892653</pubmed></ref>[5]('''図3''')。DSCAM1は同じアイソフォーム同士が細胞外領域で特異的に結合し、その結果、細胞内領域を介したシグナルにより反発作用を生じる。それぞれのニューロンはランダムにDscam1アイソフォームを発現しているが、同じ細胞由来の突起どうしでは同じアイソフォームが発現しており、それらの同種親和性結合によって反発作用が生じて神経突起の自己回避が起こる<ref><pubmed>15339666</pubmed></ref>[6]<ref><pubmed>17889655</pubmed></ref>[7]。 | ||
ショウジョウバエ感覚ニューロンや中枢キノコ体ニューロンでDscam1を欠失させると、同じニューロン由来の神経突起の自己交錯が著しく増加する('''図2''')<ref><pubmed>15339649</pubmed></ref>[8]<ref><pubmed>17481395</pubmed></ref>[9]<ref><pubmed>17482551</pubmed></ref>[10]<ref><pubmed>17481394</pubmed></ref>[11]。ただし、神経突起の自己回避に必要なのはDSCAM1アイソフォームの多様性ではなくあくまで同一アイソフォームによる結合であり、アイソフォームの多様性は自己と非自己の識別に関わるとされている<ref><pubmed>19794492</pubmed></ref>[12]。 | |||
==== インテグリン-ラミニン ==== | ==== インテグリン-ラミニン ==== | ||
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==== Sema2b-PlexinB ==== | ==== Sema2b-PlexinB ==== | ||
上皮から分泌されるSema2bとショウジョウバエ感覚ニューロンで発現するPlexinBが結合し、このSema2B-PlexinBシグナルがリン酸化酵素Tricornered <ref><pubmed>15479641</pubmed></ref>[15]を活性化することで樹状突起の自己回避が起こる<ref name=ref26853303><pubmed>26853303</pubmed></ref> | 上皮から分泌されるSema2bとショウジョウバエ感覚ニューロンで発現するPlexinBが結合し、このSema2B-PlexinBシグナルがリン酸化酵素Tricornered <ref><pubmed>15479641</pubmed></ref>[15]を活性化することで樹状突起の自己回避が起こる<ref name=ref26853303><pubmed>26853303</pubmed></ref>[16]。さらにPlexinBはインテグリンβサブユニット<ref name=ref22243747 ></ref>[13]<ref name=ref22243748 ></ref>[14]や細胞内のtarget of rapamycin complex2<ref><pubmed> 19875983</pubmed></ref>[17]とも相互作用することで樹状突起自己回避に関わると考えられる<ref name=ref26853303></ref>[16]。 | ||
==== その他 ==== | ==== その他 ==== |