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(ページの作成:「壷井將史、杜羽丹、平林祐介 目次 1. 構造 2. 基本的な機能(TCA回路、酸化的リン酸化、脂質合成、カルシウム取り込み、アポトーシス誘導) 3. 動態 3.1 生合成 3.2 分裂・融合 3.3 分解(マイトファジー) 4. 輸送機構 5. 神経系における機能 5.1 プレシナプスのミトコンドリア 5.2 ポストシナプスのミトコンドリア 5.3 神経幹細胞(発生) 5.4 グ…」) |
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脳科学辞典 | |||
ミトコンドリア | |||
壷井將史、杜羽丹、平林祐介 | 壷井將史、杜羽丹、平林祐介 | ||
目次 | 目次 | ||
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3.3 分解 | 3.3 分解 | ||
膜電位の低下・喪失など機能低下したミトコンドリアはオートファゴソーム膜によって隔離されリソソームによって分解される (マイトファジー)。ショウジョウバエやパーキンソン病患者の逆遺伝学的な解析から、ParkinおよびPink1 (PTEN-induced putative kinase 1) 遺伝子がマイトファジーにおいて中心的な役割を担うことが明らかになった。ミトコンドリアに局在するキナーゼであるPink1タンパク質は膜電位の低下等により活性化し、E3ユビキチンリガーゼであるParkinやユビキチンをリン酸化する。リン酸化されて活性化したParkinはミトコンドリア外膜上のタンパク質にユビキチン化修飾を施し、OPTN, NDP5, TAX1BP1などのオートファジーのアダプタータンパク質を呼び込む。Pink1タンパク質の活性化機構として、通常はミトコンドリア内膜に輸送されて切断を受け細胞質のプロテアソームによって分解されて低いレベルに保たれているが、膜電位の低下によりPink1の切断が行われず外膜に蓄積するというモデルが提唱されている<ref name=Narendra2024><pubmed> | 膜電位の低下・喪失など機能低下したミトコンドリアはオートファゴソーム膜によって隔離されリソソームによって分解される (マイトファジー)。ショウジョウバエやパーキンソン病患者の逆遺伝学的な解析から、ParkinおよびPink1 (PTEN-induced putative kinase 1) 遺伝子がマイトファジーにおいて中心的な役割を担うことが明らかになった。ミトコンドリアに局在するキナーゼであるPink1タンパク質は膜電位の低下等により活性化し、E3ユビキチンリガーゼであるParkinやユビキチンをリン酸化する。リン酸化されて活性化したParkinはミトコンドリア外膜上のタンパク質にユビキチン化修飾を施し、OPTN, NDP5, TAX1BP1などのオートファジーのアダプタータンパク質を呼び込む。Pink1タンパク質の活性化機構として、通常はミトコンドリア内膜に輸送されて切断を受け細胞質のプロテアソームによって分解されて低いレベルに保たれているが、膜電位の低下によりPink1の切断が行われず外膜に蓄積するというモデルが提唱されている<ref name=Narendra2024><pubmed>39358449</pubmed></ref>28。 | ||
一方、マイトファジーレポーターであるmito-QCマウスを用いた組織学的な解析から、発達期や若年齢から特にエネルギー需要の高い心臓や脳などの組織では定常的にマイトファジーが起きていることが分かってきた。興味深いことに、この生理的な条件下で起きるマイトファジーはParkinをノックアウトしたマウスのドーパミン産生ニューロンにおいて減少しなかった<ref name=McWilliams2018><pubmed> | 一方、マイトファジーレポーターであるmito-QCマウスを用いた組織学的な解析から、発達期や若年齢から特にエネルギー需要の高い心臓や脳などの組織では定常的にマイトファジーが起きていることが分かってきた。興味深いことに、この生理的な条件下で起きるマイトファジーはParkinをノックアウトしたマウスのドーパミン産生ニューロンにおいて減少しなかった<ref name=McWilliams2018><pubmed>29337137</pubmed></ref>29。このことから、生理的な条件下ではPink1-Parkin非依存的なマイトファジー経路がミトコンドリアの品質管理に働く可能性が示唆されている。培養細胞等を用いた研究からLC3と結合しオートファゴソーム膜を誘導するレセプターがいくつか知られているが<ref name=Onishi2021><pubmed>33438778</pubmed></ref> | ||
<ref name=Uoselis2023><pubmed>37708893</pubmed></ref> | |||
30,31、ニューロンにおけるそれら因子の働きについては未だよく分かっていない。 | |||
4. 輸送機構 | 4. 輸送機構 | ||
ミトコンドリアは分裂、融合を繰り返しながら移動を繰り返し、エネルギー需要等に応じて目的の細胞区画に輸送される。特に、数十cmから1mにも及ぶ軸索では、ミトコンドリアは神経突起の発達に伴って長距離を活発に輸送される (図3)。一方で、成熟したニューロンにおいては、軸索、樹状突起双方でミトコンドリアのダイナミクスは大きく低下する<ref name=Lewis2016><pubmed> | ミトコンドリアは分裂、融合を繰り返しながら移動を繰り返し、エネルギー需要等に応じて目的の細胞区画に輸送される。特に、数十cmから1mにも及ぶ軸索では、ミトコンドリアは神経突起の発達に伴って長距離を活発に輸送される (図3)。一方で、成熟したニューロンにおいては、軸索、樹状突起双方でミトコンドリアのダイナミクスは大きく低下する<ref name=Lewis2016><pubmed>27641765</pubmed></ref><ref name=Smit-Rigter2016><pubmed>27641766</pubmed></ref>32,33。未成熟なマウス皮質由来のニューロンでは、およそ70%ものミトコンドリアが動的な挙動を示す (Motile mitochondria) のに対し、成熟したニューロンにおいてはその割合はおよそ10%程度まで低下する。成熟した海馬由来のニューロンにおいて、その移動速度はおよそ0.2-2 µm/secと計測されている<ref name=Devine2018><pubmed>29348666</pubmed></ref>34。細胞体 (Soma) からプレシナプス (順行性輸送; Anterograde transport)、またプレシナプスから細胞体への輸送 (逆行性輸送; Retrograde transport) の長距離の移動においては、他のカーゴ(オルガネラ、膜小胞)と同様にモータータンパク質であるキネシン、ダイニンタンパク質に乗り微小管上を輸送される (図3)。モータータンパク質は、ミトコンドリア以外の様々なカーゴの運搬にも用いられる共通の装置であり、ミトコンドリアを選択的に輸送するための分子装置が存在する。TRAK (Trafficking kinesin-binding proteins) タンパク質 (ショウジョウバエにおいてはMiltonとして知られる) はKIF5 (kinesin heavy chain isoform 5) 及びDyneinと相互作用し、ミトコンドリア輸送に働く<ref name=Stowers2002><pubmed>12495622</pubmed></ref><ref name=van Spronsen2013><pubmed>23395375</pubmed></ref>35,36。ミトコンドリア外膜上ミトコンドリアとモータータンパク質の繋留はmitochondrial Rho GTPases (MIROs) によって制御される<ref name=Guo2005><pubmed>16055062</pubmed></ref>37。 | ||
上述の通り、成熟したニューロンにおいてミトコンドリアは主にプレシナプス近傍において移動速度が低下し安定的に局在する。MIROタンパク質は2つのGTPaseドメインと、それらに挟まれたCa2+結合能を有する2つのEF-hand motif、C末端にミトコンドリア外膜と結合するドメインを有す。プレシナプスにおいて神経活動に依存したCa2+流入によりMIROのEF-hand motifが構造変化し、ミトコンドリアがモータータンパク質から外れることでプレシナプスに局在するというモデルが提唱されている<ref name=Wang2009><pubmed> | 上述の通り、成熟したニューロンにおいてミトコンドリアは主にプレシナプス近傍において移動速度が低下し安定的に局在する。MIROタンパク質は2つのGTPaseドメインと、それらに挟まれたCa2+結合能を有する2つのEF-hand motif、C末端にミトコンドリア外膜と結合するドメインを有す。プレシナプスにおいて神経活動に依存したCa2+流入によりMIROのEF-hand motifが構造変化し、ミトコンドリアがモータータンパク質から外れることでプレシナプスに局在するというモデルが提唱されている<ref name=Wang2009><pubmed>19135897</pubmed></ref>38。一方で、in vivoにおける二光子顕微鏡を用いた研究では自発的なCa2+ transientと樹状突起ミトコンドリアの移動性には正の相関がないという報告もあり議論が分かれている<ref name=Silva2021><pubmed>34491202</pubmed></ref>39。また、プレシナプスへミトコンドリアを繋留する因子としてSyntaphilinタンパク質が同定されており<ref name=Kang2008><pubmed>18191227</pubmed></ref> | ||
40、シグナル伝達経路として、LKB1-NUAKを介したキナーゼカスケードの必要性も示されている<ref name=Courchet2013><pubmed>23791179</pubmed></ref> | |||
41。さらに、細胞外の栄養状態に応じてミトコンドリアの動態が変化することも知られており、グルコースがミトコンドリアの移動制御に関わる可能性が示唆されている<ref name=Pekkurnaz2014><pubmed>24995978</pubmed></ref>42。TRAK1タンパク質はO‑linked N‑acetylglucosamine (O‑GlcNAc) transferase 110 kDa subunit (OGT)と複合体を組み、O‑GlcNAc修飾を受ける。細胞外のグルコース濃度の上昇によりTRAK1のO‑GlcNAc修飾量が増加しミトコンドリアの繋留が起きる。 | |||
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5.1 プレシナプスのミトコンドリア (Presynaptic mitochondria) | 5.1 プレシナプスのミトコンドリア (Presynaptic mitochondria) | ||
マウス大脳のグルタミン酸作動性ニューロンでは、軸索に存在するミトコンドリアのうち半分程度はプレシナプスに局在する。一方で全てのシナプス前終末にミトコンドリアが局在するわけではなく、およそ50%のシナプス前終末にミトコンドリアが局在している。シナプス前終末におけるミトコンドリア繋留メカニズムとして様々なシグナル経路やタンパク質が同定されているが、ミトコンドリア局在と非局在のシナプス前終末がどのようなメカニズムで作られるのかは未だ明らかでない。 | マウス大脳のグルタミン酸作動性ニューロンでは、軸索に存在するミトコンドリアのうち半分程度はプレシナプスに局在する。一方で全てのシナプス前終末にミトコンドリアが局在するわけではなく、およそ50%のシナプス前終末にミトコンドリアが局在している。シナプス前終末におけるミトコンドリア繋留メカニズムとして様々なシグナル経路やタンパク質が同定されているが、ミトコンドリア局在と非局在のシナプス前終末がどのようなメカニズムで作られるのかは未だ明らかでない。 | ||
シナプス前終末におけるミトコンドリアの役割として、神経発火と共に上昇した細胞質Ca2+の取り込みが明らかになっている<ref name=Lewis2018 /><ref name=Vaccaro2017><pubmed> | シナプス前終末におけるミトコンドリアの役割として、神経発火と共に上昇した細胞質Ca2+の取り込みが明らかになっている<ref name=Lewis2018><pubmed>30479337</pubmed></ref><ref name=Vaccaro2017><pubmed>28039205</pubmed></ref><ref name=Kwon2016><pubmed>27429220</pubmed></ref>26,43,44 (図4)。ミトコンドリアへのカルシウムイオン流入はミトコンドリアの内膜 (Inner mitochondria membrane; IMM) に局在するMCU が担うが、MCUの開口は細胞質側のCa2+濃度に依存する。軸索のミトコンドリアはMCUのアクセサリータンパク質であるMICU3を多く発現しているため、比較的低い細胞質Ca2+濃度においてもMCUが開口し、細胞質Ca2+がミトコンドリアへと取り込まれる。細胞質Ca2+が取り込まれた結果、ミトコンドリア局在シナプス前終末においてはシナプス小胞の開口放出が抑制されることが明らかになっている9。 | ||
シナプス前終末における、開口放出とそれに伴うエンドサイトーシス、シナプス小胞への神経伝達物質の再充填はATP消費が非常に大きな過程である<ref name=Rangaraju2014><pubmed> | シナプス前終末における、開口放出とそれに伴うエンドサイトーシス、シナプス小胞への神経伝達物質の再充填はATP消費が非常に大きな過程である<ref name=Rangaraju2014><pubmed>24529383</pubmed></ref>45。ミトコンドリアにおけるATP産生がこの過程に必須であると考えられて来た一方で、ミトコンドリア局在、非局在シナプス前終末の間でATP量に大きな差が見られないこと<ref name=Pathak2015><pubmed>26126824</pubmed></ref>46、マウス大脳皮質・海馬由来ニューロンの機能維持には解糖系によるATP産生が主要な役割を果たすことなどが報告されている。したがって、ミトコンドリアにおけるATP産生のシナプス前終末における開口放出への寄与については未だ議論が続いている。 | ||
5.2 ポストシナプスのミトコンドリア (Postsynaptic mitochondria) | 5.2 ポストシナプスのミトコンドリア (Postsynaptic mitochondria) | ||
樹状突起においても、ニューロンの発達に伴ってミトコンドリアの運動性が徐々に低下することが観察されている<ref name=Faits2016><pubmed> | 樹状突起においても、ニューロンの発達に伴ってミトコンドリアの運動性が徐々に低下することが観察されている<ref name=Faits2016><pubmed>26742087</pubmed></ref><ref name=Macaskill2009><pubmed>19249275</pubmed></ref>47,48。このミトコンドリア運動性の制御は樹状突起の発達に重要であると考えられ、実際に、発達期のマウス大脳皮質興奮性ニューロンにおいてミトコンドリアの運動性を人為的に変え、細胞体から近位の領域にミトコンドリアを留めると樹状突起の発達が過剰になる<ref name=Kimura2014><pubmed>24828647</pubmed></ref>49。 | ||
樹状突起のミトコンドリアは軸索ミトコンドリアと異なり神経突起の形態に添った細長い形状を示し、成熟したニューロンの樹状突起ではミトコンドリアはアクチンや微小管などの細胞骨格タンパク質にアンカーして安定的に局在する。樹状突起のミトコンドリアはスパインの構造的長期増強 (structural LTP) における新規タンパク質合成に必要なATPを供給する<ref name=Rangaraju2019><pubmed> | 樹状突起のミトコンドリアは軸索ミトコンドリアと異なり神経突起の形態に添った細長い形状を示し、成熟したニューロンの樹状突起ではミトコンドリアはアクチンや微小管などの細胞骨格タンパク質にアンカーして安定的に局在する。樹状突起のミトコンドリアはスパインの構造的長期増強 (structural LTP) における新規タンパク質合成に必要なATPを供給する<ref name=Rangaraju2019><pubmed>30612742</pubmed></ref>50 (図5)。 | ||
また、樹状突起のミトコンドリアは神経活動やLTPなどのシナプス可塑性に依存して可塑的にその形態を変化させる。薬理学的に誘導するシナプス長期増強 (chemical LTP) の誘導による細胞質Ca2+濃度の増加がDrp1によるミトコンドリア分裂およびミトコンドリア内のCa2+濃度の増加を誘導し、このミトコンドリア分裂がスパインの構造変化を伴うシナプス長期増強 (structural LTP) に必要であることが示されている<ref name=Divakaruni2018><pubmed> | また、樹状突起のミトコンドリアは神経活動やLTPなどのシナプス可塑性に依存して可塑的にその形態を変化させる。薬理学的に誘導するシナプス長期増強 (chemical LTP) の誘導による細胞質Ca2+濃度の増加がDrp1によるミトコンドリア分裂およびミトコンドリア内のCa2+濃度の増加を誘導し、このミトコンドリア分裂がスパインの構造変化を伴うシナプス長期増強 (structural LTP) に必要であることが示されている<ref name=Divakaruni2018><pubmed>30318410</pubmed></ref>51 (図5)。CA1錐体細胞では樹状突起内のapical tuftとapical oblique, basal dendriteの樹状突起内のサブコンパートメント間でミトコンドリア形態が異なっており、これは活動依存的なCa2+およびCamkk2依存的なAMPKの活性化によって制御されることが示されている<ref name=Virga2024><pubmed>38459070</pubmed></ref>52。 | ||
5.3 神経幹細胞 | 5.3 神経幹細胞 | ||
胎生期のマウス大脳皮質由来神経系前駆細胞 (Neural precursor cells, NPCs) や成体海馬神経幹細胞 (Neural stem cells, NSCs) において、ニューロン分化に伴いミトコンドリアの形態が変化することが示されている<ref name=Beckervordersandforth2017><pubmed> | 胎生期のマウス大脳皮質由来神経系前駆細胞 (Neural precursor cells, NPCs) や成体海馬神経幹細胞 (Neural stem cells, NSCs) において、ニューロン分化に伴いミトコンドリアの形態が変化することが示されている<ref name=Beckervordersandforth2017><pubmed>28111078</pubmed></ref><ref name=Khacho2016><pubmed>27237737</pubmed></ref>53,54。大脳皮質NPCsではミトコンドリアは細長いが、中間型前駆細胞 (intermediate progenitor cell; IPCs) への分化時に断片化し、その後、ニューロンへの分化に伴い再び細長くなる<ref name=Khacho2016><pubmed>27237737</pubmed></ref>54。成体海馬NSCsでは、電子顕微鏡を用いたより高解像度のミトコンドリア形態解析が行われており、NSCsでは小さなミトコンドリアが、ニューロン分化に伴い細長い形状を取るようになる<ref name=Beckervordersandforth2017><pubmed>28111078</pubmed></ref> | ||
一方、胎生期大脳皮質NPCsや成体海馬NSCsがニューロンへと分化する際、解糖系依存型からミトコンドリアの酸化的リン酸化依存型へと代謝のスイッチが起こる<ref name=Khacho2019><pubmed> | 53。このミトコンドリアの形態変化はNSCsの運命制御に重要な役割を果たすと考えられており、ミトコンドリアの形態制御に関わるOPA1の機能阻害により、胎生期大脳皮質NPCsの未分化性が失われ早熟なニューロン分化が起きる。また、成体海馬NSCsにおいても、MFN1/2の機能欠損により、NSCsの数が低下し、神経新生が低下する<ref name=Khacho2016><pubmed>27237737</pubmed></ref>54。 | ||
一方、胎生期大脳皮質NPCsや成体海馬NSCsがニューロンへと分化する際、解糖系依存型からミトコンドリアの酸化的リン酸化依存型へと代謝のスイッチが起こる<ref name=Khacho2019><pubmed>30464208</pubmed></ref>55。ミトコンドリアの酸化的リン酸化は、反応の副産物として活性酸素種ROSを産生し、実際に大脳皮質NPCsにおいて低レベルに抑えられているROSはニューロン分化に伴い増加する。ROSは転写因子の一つであるNuclear factor erythroid 2 (NRF2) の安定化を促進し、核内移行したNRF2はニューロン分化関連遺伝子の転写を活性化し、ニューロン分化を促進する<ref name=Khacho2016><pubmed>27237737</pubmed></ref>54。また、成体海馬においてmtDNAの複製、安定化に関わるタンパク質TFAMをノックアウトすると、IPCs の生存、増殖が低下し成体神経新生に異常が生じる<ref name=Beckervordersandforth2017><pubmed>28111078</pubmed></ref>53。mtDNAは酸化的リン酸化を担う呼吸鎖複合体 (の一部) をコードすることから、ミトコンドリアの酸化的リン酸化によるエネルギー産生がNSCのニューロン分化に重要な役割を担うことが示唆されている。このようなNSCsのニューロン分化に伴う代謝のスイッチはミトコンドリアの形態変化と相関して起きることから、ミトコンドリアの形態変化が、ミトコンドリアの酸化的リン酸化依存型代謝への移行を介してニューロン分化を促進する可能性が考えられる。 | |||
5.4 グリア細胞 | 5.4 グリア細胞 | ||
5.4.1 アストロサイトにおけるミトコンドリアの局在、機能 | 5.4.1 アストロサイトにおけるミトコンドリアの局在、機能 | ||
アストロサイトの分化過程では一過的なミトコンドリア生合成の上昇とそれに伴う酸化的リン酸化の上昇、解糖系の低下が起こる。これらはアストロサイト前駆細胞からアストロサイトへの分化に必要である<ref name=Zehnder2021><pubmed>33852851</pubmed></ref>21。 | アストロサイトの分化過程では一過的なミトコンドリア生合成の上昇とそれに伴う酸化的リン酸化の上昇、解糖系の低下が起こる。これらはアストロサイト前駆細胞からアストロサイトへの分化に必要である<ref name=Zehnder2021><pubmed>33852851</pubmed></ref>21。 | ||
成熟したアストロサイトは細い突起をシナプス付近に伸ばし、シナプス制御に重要な役割を果たす。これらの突起中にミトコンドリアは積極的に輸送されること、そこでATP産生やカルシウムの吸収・放出、グルタミン酸の代謝などに重要な役割を果たすことが知られている<ref name=Jackson2018><pubmed> | 成熟したアストロサイトは細い突起をシナプス付近に伸ばし、シナプス制御に重要な役割を果たす。これらの突起中にミトコンドリアは積極的に輸送されること、そこでATP産生やカルシウムの吸収・放出、グルタミン酸の代謝などに重要な役割を果たすことが知られている<ref name=Jackson2018><pubmed>29098734</pubmed></ref> | ||
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5.4.2 オリゴデンドロサイトにおけるミトコンドリアの局在、機能 | 5.4.2 オリゴデンドロサイトにおけるミトコンドリアの局在、機能 | ||
軸索をwrappingするミエリン鞘の形成、維持には脂質(コレステロール、リン脂質、糖スフィンゴ脂質)供給が必要となり、膨大なATPを要する。およそ1gのミエリンを形成するのに約3.3×10²³個のATP分子が必要であると見積もられている<ref name=Meyer2021><pubmed> | 軸索をwrappingするミエリン鞘の形成、維持には脂質(コレステロール、リン脂質、糖スフィンゴ脂質)供給が必要となり、膨大なATPを要する。およそ1gのミエリンを形成するのに約3.3×10²³個のATP分子が必要であると見積もられている<ref name=Meyer2021><pubmed>34198810</pubmed></ref>57。このミエリン産生時期に必要な膨大なATPは主にミトコンドリアの酸化的リン酸化により担われると考えられている。実際に、ミエリン発達期のオリゴデンドロサイトにおいて、呼吸鎖複合体complexⅣの構成因子であるヘムAの生合成に重要なCox10遺伝子 (heme A:farnesyltransferase gene) のノックアウトにより顕著なミエリン形成異常が起きる。一方、ミエリン形成後におけるCox10のノックアウトではミエリンや軸索機能異常は見られなかった<ref name=Funfschilling2012><pubmed>22622581</pubmed></ref>58。このことから、オリゴデンドロサイト前駆細胞 (Oligodendrocyte precursor cell; OPC) やミエリン形成を担うオリゴデンドロサイトはミトコンドリア呼吸鎖複合体によるATP産生に依存する一方で、成熟したオリゴデンドロサイトは解糖系に依存し、エネルギー代謝経路のスイッチングが起きると考えられている。このオリゴデンドロサイトの成熟におけるエネルギー代謝経路のスイッチングと一致して、オリゴデンドロサイトの成熟に伴いミトコンドリア形態や密度も変化することが知られている<ref name=Meyer2021><pubmed>34198810</pubmed></ref>57。未成熟なオリゴデンドロサイトでは長いミトコンドリアが多い一方、成熟したオリゴデンドロサイトではミトコンドリアは短い断片化した形態を示し突起部に存在する。また、長年、中枢神経系のミエリンにはミトコンドリアが存在しないと考えられてきたが、近年、ミエリンにもミトコンドリアが存在することが確認され<ref name=Rinholm2016><pubmed>26775288</pubmed></ref><ref name=Nakamura2021><pubmed>32910475</pubmed></ref><ref name=Battefeld2019><pubmed>30605675</pubmed></ref>59-61、一次突起の3分の1程度の密度ではあるが細胞質チャネルやパラノード領域に存在する。このミエリンにおけるミトコンドリアの役割についてはあまり分かっていないが、Ca2+シグナルや脂質合成の制御に関わる可能性が示唆されている。 | ||
6. 他オルガネラとの相互作用 | 6. 他オルガネラとの相互作用 | ||
電子顕微鏡を用いた観察により1980年代頃から、ニューロンにおいてミトコンドリアが小胞体と接触していることが報告されてきた<ref name=McGraw1980><pubmed> | 電子顕微鏡を用いた観察により1980年代頃から、ニューロンにおいてミトコンドリアが小胞体と接触していることが報告されてきた<ref name=McGraw1980><pubmed>7372706</pubmed></ref><ref name=Tsukita1976><pubmed>1025229</pubmed></ref><ref name=Tsukita1980><pubmed>6153657</pubmed></ref><ref name=Lindsey1985><pubmed>3878394</pubmed></ref><ref name=Hirokawa1980><pubmed>7003067</pubmed></ref>62-66。3次元電子顕微鏡画像の解析から、ニューロンのすべてのコンパートメントに広範なミトコンドリア–小胞体接触 (Mitochondria-ER contacts; MERCS) が存在することも明らかになっている (図4, 5)。MERCSのニューロンにおける主要な役割の一つは小胞体からミトコンドリアへのCa2+輸送である。上述のようにミトコンドリア内膜に存在するCa2+チャネルMCUの開口には通常、ミトコンドリア表面における10 µM以上のCa2+濃度を必要とする。細胞質のCa2+濃度がMCUの開口に必要なレベルに達するのは、小胞体内に蓄積された高濃度(数百µM)のCa2+が、IP₃受容体(IP₃R)やリアノジン受容体(RyR)を介して放出された際の小胞体近傍のみである。したがって、ミトコンドリアが小胞体と10-30 nmの距離にある接触部位に限局して、ミトコンドリア表面の局所的なCa2+濃度がMCUの活性化閾値を上回るレベルにまで上昇し、ミトコンドリアにCa2+が取り込まれる (図5)。 | ||
7. 神経変性疾患とミトコンドリア | 7. 神経変性疾患とミトコンドリア | ||
7.1 パーキンソン病 (脳科学辞典-Parkinの項参照) | 7.1 パーキンソン病 (脳科学辞典-Parkinの項参照) | ||
パーキンソン病とミトコンドリアの関連が初めて明らかになったのは1980年代初頭からである。オピオイドの一つであるMPTP(1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン)を投与された薬物依存者がパーキンソン様症状を示した。MPTPは酸化されてMPP+となり、ドーパミントランスポーターを通じてドーパミンニューロンに取り込まれ、ミトコンドリアに蓄積して電子伝達系の複合体Ⅰの活性を阻害する (脳科学辞典MPTPの項目参照)。1998年にパーキンソン病の原因遺伝子としてミトコンドリア局在タンパク質であるParkin遺伝子がクローニングされ、機能低下したミトコンドリアが蓄積することでドーパミンニューロンの脱落を引き起こすと考えられている。Parkinのみをノックアウトしたマウスで大きな表現型は見られないが、mtDNAの複製に働くPOLGのDNA複製の校正機能に異常を来した変異体マウスとParkinノックアウトマウスを交配したマウスでは、中脳黒質におけるドーパミンニューロンの細胞死、mtDNAの変異蓄積、ミトコンドリア呼吸鎖の低下が見られる<ref name=Pickrell2015><pubmed> | パーキンソン病とミトコンドリアの関連が初めて明らかになったのは1980年代初頭からである。オピオイドの一つであるMPTP(1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン)を投与された薬物依存者がパーキンソン様症状を示した。MPTPは酸化されてMPP+となり、ドーパミントランスポーターを通じてドーパミンニューロンに取り込まれ、ミトコンドリアに蓄積して電子伝達系の複合体Ⅰの活性を阻害する (脳科学辞典MPTPの項目参照)。1998年にパーキンソン病の原因遺伝子としてミトコンドリア局在タンパク質であるParkin遺伝子がクローニングされ、機能低下したミトコンドリアが蓄積することでドーパミンニューロンの脱落を引き起こすと考えられている。Parkinのみをノックアウトしたマウスで大きな表現型は見られないが、mtDNAの複製に働くPOLGのDNA複製の校正機能に異常を来した変異体マウスとParkinノックアウトマウスを交配したマウスでは、中脳黒質におけるドーパミンニューロンの細胞死、mtDNAの変異蓄積、ミトコンドリア呼吸鎖の低下が見られる<ref name=Pickrell2015><pubmed>25611507</pubmed></ref>67。 | ||
7.2 アルツハイマー病 | 7.2 アルツハイマー病 | ||
アルツハイマー病患者の脳ではグルコース代謝、酸素消費量が低下していることから、ミトコンドリアの機能異常がアルツハイマー病の発症に寄与する可能性が考えられている。また、ミトコンドリア機能異常とアルツハイマー病発症との関連を示すより直接的な証拠として、アルツハイマー病罹患者の死後脳の電子顕微鏡観察から、ミトコンドリアのサイズ低下やクリステ構造の異常が観察されている<ref name=Trimmer2000><pubmed> | アルツハイマー病患者の脳ではグルコース代謝、酸素消費量が低下していることから、ミトコンドリアの機能異常がアルツハイマー病の発症に寄与する可能性が考えられている。また、ミトコンドリア機能異常とアルツハイマー病発症との関連を示すより直接的な証拠として、アルツハイマー病罹患者の死後脳の電子顕微鏡観察から、ミトコンドリアのサイズ低下やクリステ構造の異常が観察されている<ref name=Trimmer2000><pubmed>10716887</pubmed></ref>68。さらに、アルツハイマー病罹患者においてpyruvate dehydrogenaseやketoglutarate dehydrogenase complexeの活性低下が見られることから、ミトコンドリアのATP産生能低下がアルツハイマー病発症につながる可能性が考えられている<ref name=Bhatia2022><pubmed>33998995</pubmed></ref>69。 | ||
7.3 多発性硬化症 (Multiple Sclerosis; MS) (脳科学辞典-多発性硬化症の項参照) | 7.3 多発性硬化症 (Multiple Sclerosis; MS) (脳科学辞典-多発性硬化症の項参照) | ||
多発性硬化症は、中枢神経(脳・脊髄)や視神経で起きる脱髄性の神経変性疾患である。病変部位の周囲に異常活性化したミクログリアを初めとするミエロイド系の細胞が蓄積し、TNF、IL-1β、一酸化窒素やROSを慢性的に放出することで髄鞘の再形成阻害、神経細胞や軸索の障害を引き起こすと考えられている。多発性硬化症の発症機序において、これまで主にオリゴデンドロサイトやニューロンにおけるミトコンドリア機能異常が注目されてきた。一方、近年の研究により、ミクログリアにおいて呼吸鎖複合体を介した電子伝達が逆方向に流れる電子伝達の逆回し(Reverse electron transport; RET) が生じ、Complex ⅡからComplex Ⅰへ電子が逆行することで大量のROSが生成されることが明らかとなっている。これにより、ミクログリアの異常活性化に伴う慢性炎症が多発性硬化症の病態進行に寄与する可能性が示唆されるとともに、ミクログリアにおけるComplex I活性の選択的抑制による新規治療戦略の有望性が提示された<ref name=Peruzzotti-Jametti2024><pubmed> | 多発性硬化症は、中枢神経(脳・脊髄)や視神経で起きる脱髄性の神経変性疾患である。病変部位の周囲に異常活性化したミクログリアを初めとするミエロイド系の細胞が蓄積し、TNF、IL-1β、一酸化窒素やROSを慢性的に放出することで髄鞘の再形成阻害、神経細胞や軸索の障害を引き起こすと考えられている。多発性硬化症の発症機序において、これまで主にオリゴデンドロサイトやニューロンにおけるミトコンドリア機能異常が注目されてきた。一方、近年の研究により、ミクログリアにおいて呼吸鎖複合体を介した電子伝達が逆方向に流れる電子伝達の逆回し(Reverse electron transport; RET) が生じ、Complex ⅡからComplex Ⅰへ電子が逆行することで大量のROSが生成されることが明らかとなっている。これにより、ミクログリアの異常活性化に伴う慢性炎症が多発性硬化症の病態進行に寄与する可能性が示唆されるとともに、ミクログリアにおけるComplex I活性の選択的抑制による新規治療戦略の有望性が提示された<ref name=Peruzzotti-Jametti2024><pubmed>38480879</pubmed></ref>70。 | ||
図1:ミトコンドリアの膜構造 | 図1:ミトコンドリアの膜構造 | ||
ミトコンドリアは外膜 (Outer Mitochondrial Membrane: OMM)、内膜 (Inner Mitochondrial Membrane: IMM)の2つの脂質二重膜からなり、内膜は複雑に入り組んだ膜構造を示す(クリステ構造)。ミトコンドリア内膜は、2分子のリン酸基、4分子の脂肪酸鎖を有するカルジオリピンを多く含む。4分子の脂肪酸鎖を有するカルジオリピンは円錐形状を示し極性頭部を膜の内側に向けた配向を取り、これが曲率の高い複雑なクリステ構造の形成に重要であると考えられている。IMS, Intermembrane space. | ミトコンドリアは外膜 (Outer Mitochondrial Membrane: OMM)、内膜 (Inner Mitochondrial Membrane: IMM)の2つの脂質二重膜からなり、内膜は複雑に入り組んだ膜構造を示す(クリステ構造)。ミトコンドリア内膜は、2分子のリン酸基、4分子の脂肪酸鎖を有するカルジオリピンを多く含む。4分子の脂肪酸鎖を有するカルジオリピンは円錐形状を示し極性頭部を膜の内側に向けた配向を取り、これが曲率の高い複雑なクリステ構造の形成に重要であると考えられている。IMS, Intermembrane space. | ||
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