「グルタミン酸受容体相互作用タンパク質」の版間の差分

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 GRIPは、シナプス後膜においてAMPA受容体の局在や安定化に寄与し、記憶・学習を支える長期増強(LTP)や長期抑圧(LTD)といった可塑性機構に関与する。また、PICK1や他のPDZタンパク質と相互作用しながら、受容体のトラフィッキングや分解、リサイクリングの制御にも関わる。GRIPファミリーは、PDZドメインを介してシナプス受容体複合体を組織化する代表的な足場タンパク質として広く研究されている。
 GRIPは、シナプス後膜においてAMPA受容体の局在や安定化に寄与し、記憶・学習を支える長期増強(LTP)や長期抑圧(LTD)といった可塑性機構に関与する。また、PICK1や他のPDZタンパク質と相互作用しながら、受容体のトラフィッキングや分解、リサイクリングの制御にも関わる。GRIPファミリーは、PDZドメインを介してシナプス受容体複合体を組織化する代表的な足場タンパク質として広く研究されている。
<references group="注釈1" />
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'''図1: GRIP1, GRIP2, ABPの構造'''<br>
GRIP1およびGRIP2はそれぞれ7個のPDZドメインをもち、N末端側から順に番号が付けられる。<br>
ABPはGRIP2遺伝子座由来のスプライシングバリアントの一つであり、N末端領域の一部およびPDZ7ドメインを欠く短縮型として報告されている。
== 構造 ==
== 構造 ==
 GRIP1, GRIP2はいずれも7つのPDZドメインを持つ('''図1''')。これらのドメインを介して他のシナプス構成因子や足場タンパクとの複合体を形成する。現在までのところ、GRIP全長のX線結晶構造は未報告である。一方、PDZドメイン断片(例:PDZ12タンデム)については結晶構造解析の報告があるが、GRIP PDZドメインとGluA2/3 C末端との高解像度X線結晶構造は報告されていない
 GRIP1, GRIP2はいずれも7つのPDZドメインを持つ('''図1''')。これらのドメインを介して他のシナプス構成因子や足場タンパクとの複合体を形成する。現在までのところ、GRIP全長のX線結晶構造は未報告である。一方、PDZドメイン断片(例:PDZ12タンデム)については結晶構造解析の報告があるが、GRIP PDZドメインとGluA2/3 C末端との高解像度X線結晶構造は報告されていない
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=== GRIP2結合タンパク ===
=== GRIP2結合タンパク ===
 GluA2/3<ref name=Dong1999 /> (Dong et al., 1999)、 ephrinB<ref name=Bruckner1999 /> (Brückner et al., 1999) 系タンパク、GRASP-1<ref name=Ye2000><pubmed>10896157</pubmed></ref>(Ye et al., 2000)、<ref name=Stegmuller2003 />NG2(Stegmüller et al., 2003)等との相互作用が報告されており、GRIP1 のホモログとして類似の足場機能を担うと考えられている。ただし、これらのタンパクとの相互作用に関して、GRIP1との機能分担の詳細は明らかにされていない。
 GluA2/3<ref name=Dong1999 /> (Dong et al., 1999)、 ephrinB<ref name=Bruckner1999 /> (Brückner et al., 1999) 系タンパク、GRASP-1<ref name=Ye2000><pubmed>10896157</pubmed></ref>(Ye et al., 2000)、<ref name=Stegmuller2003 />NG2(Stegmüller et al., 2003)等との相互作用が報告されており、GRIP1 のホモログとして類似の足場機能を担うと考えられている。ただし、これらのタンパクとの相互作用に関して、GRIP1との機能分担の詳細は明らかにされていない。
 
'''図2. GRIP1によるAMPA受容体のシナプスへの輸送及びアンカリング制御'''<br>文献<ref name=Bissen2019><pubmed>30937469</pubmed></ref>を参考に再構成。
== 機能 ==
== 機能 ==
=== タンパク質機能 ===
=== タンパク質機能 ===
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* ephrinB2およびephrinB3はGRIP1とPDZ依存的に結合し、AMPA受容体の表面安定化に関与する。ephrinB2は主にスパインに、ephrinB3は樹状突起シャフトに多く分布することから、それぞれの部位でAMPA受容体安定化を担う可能性が示唆されている(e,f) 。<br>
* ephrinB2およびephrinB3はGRIP1とPDZ依存的に結合し、AMPA受容体の表面安定化に関与する。ephrinB2は主にスパインに、ephrinB3は樹状突起シャフトに多く分布することから、それぞれの部位でAMPA受容体安定化を担う可能性が示唆されている(e,f) 。<br>
 文献<ref name=Bruckner1999 /><ref name=Essmann2008><pubmed>19160501</pubmed></ref><ref name=Aoto2007><pubmed>17626212</pubmed></ref> (Brückner et al., 1999; Essmann et al., 2008; Aoto et al., 2007)。
 文献<ref name=Bruckner1999 /><ref name=Essmann2008><pubmed>19160501</pubmed></ref><ref name=Aoto2007><pubmed>17626212</pubmed></ref> (Brückner et al., 1999; Essmann et al., 2008; Aoto et al., 2007)。
 
'''図3. GRIP, PICK1を介した小脳プルキンエ細胞におけるLTD分子機構'''
==== GRIP–PICK1競合によるAMPA受容体の内在化制御とシナプス可塑性 ====
==== GRIP–PICK1競合によるAMPA受容体の内在化制御とシナプス可塑性 ====
 GRIPは同じくPDZドメインをもつPICK1との競合的相互作用により、AMPA受容体の内在化およびリサイクリングへの分子スイッチとして機能する。これによりLTDを代表とするシナプス可塑性機構の制御を担っている<ref name=Chung2000><pubmed>11007883</pubmed></ref><ref name=Perez2001><pubmed>11466413</pubmed></ref><ref name=Lu2005><pubmed>16055064</pubmed></ref><ref name=Steinberg2006><pubmed>16543133</pubmed></ref><ref name=Takamiya2008><pubmed>18509036</pubmed></ref><ref name=Mao2010><pubmed>20956289</pubmed></ref>(Chung et al., 2000; Perez et al., 2001; Lu et al., 2005; Steinberg et al., 2006; Takamiya et al., 2008; Mao et al., 2010 )。小脳プルキンエ細胞におけるGRIPおよびPICK1を介したLTD分子機構を図3に示す。
 GRIPは同じくPDZドメインをもつPICK1との競合的相互作用により、AMPA受容体の内在化およびリサイクリングへの分子スイッチとして機能する。これによりLTDを代表とするシナプス可塑性機構の制御を担っている<ref name=Chung2000><pubmed>11007883</pubmed></ref><ref name=Perez2001><pubmed>11466413</pubmed></ref><ref name=Lu2005><pubmed>16055064</pubmed></ref><ref name=Steinberg2006><pubmed>16543133</pubmed></ref><ref name=Takamiya2008><pubmed>18509036</pubmed></ref><ref name=Mao2010><pubmed>20956289</pubmed></ref>(Chung et al., 2000; Perez et al., 2001; Lu et al., 2005; Steinberg et al., 2006; Takamiya et al., 2008; Mao et al., 2010 )。小脳プルキンエ細胞におけるGRIPおよびPICK1を介したLTD分子機構を図3に示す。
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== 疾患との関わり ==
== 疾患との関わり ==
GRIP1の機能獲得型変異が自閉スペクトラム症(ASD)患者で報告されており、AMPAR輸送異常を介した神経発達障害への関与が示唆されている<ref name=Mejias2011><pubmed>21383172</pubmed></ref>(Mejias et al., 2011)。さらに、GRIP1欠損マウスではFras1の基底膜側への輸送障害により表皮と真皮の接着が維持できず、Frasier症候群様の表現型を示すことが報告されている<ref name=Takamiya2004 />(Takamiya et al., 2004)。ヒトにおいてもGRIP1変異がFrasier症候群の原因となることが示されており、GRIP1はその原因遺伝子の一つとされている。
 GRIP1の機能獲得型変異が自閉スペクトラム症(ASD)患者で報告されており、AMPAR輸送異常を介した神経発達障害への関与が示唆されている<ref name=Mejias2011><pubmed>21383172</pubmed></ref>(Mejias et al., 2011)。さらに、GRIP1欠損マウスではFras1の基底膜側への輸送障害により表皮と真皮の接着が維持できず、Frasier症候群様の表現型を示すことが報告されている<ref name=Takamiya2004 />(Takamiya et al., 2004)。ヒトにおいてもGRIP1変異がFrasier症候群の原因となることが示されており、GRIP1はその原因遺伝子の一つとされている。
   
   
== 参考文献 ==
== 参考文献 ==