「Forebrain embryonic zinc fingerファミリー」の版間の差分

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日比正彦
日比正彦
国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学
国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学
表記法
ヒト:遺伝子 FEZF1/FEZF2、タンパク質 FEZF1/FEZF2
マウス:遺伝子 Fezf1/Fezf2、タンパク質 FEZF1/FEZF2
ゼブラフィッシュ・アフリカツメガエル:遺伝子 fezf1/fezf2、タンパク質 Fezf1/Fezf2
ショウジョウバエ:遺伝子dFezf (earmuff; erm) 、タンパク質 dFezf (Earmuff)
ウニ:遺伝子fez、タンパク質Fez


{{box|text= Fez(Forebrain embryonic zinc finger)ファミリーは、C2H2型ジンクフィンガーを有する転写因子群であり、神経系の発生、神経細胞分化、軸索投射、および神経回路形成に重要な役割を果たす<ref name=Eckler2014><pubmed>24913420</pubmed></ref><ref name=Shimizu2009><pubmed>19222525</pubmed></ref>。脊椎動物では主に Fezf1(Fez)と Fezf2(Fezl、Zfp312) の2つの遺伝子が存在し、前脳形成や大脳皮質ニューロンのサブタイプ決定に関与する。一方、無脊椎動物にも相同遺伝子が存在し、ショウジョウバエでは Earmuff(erm)/dFezf が神経前駆細胞の分化制御や視覚系神経回路の層特異的接続形成に関与することが示されている。Fezファミリーは、前方神経系の形成、神経細胞分化、神経回路形成を制御する進化的に保存された転写因子群として理解されている。}}
{{box|text= Fez(Forebrain embryonic zinc finger)ファミリーは、C2H2型ジンクフィンガーを有する転写因子群であり、神経系の発生、神経細胞分化、軸索投射、および神経回路形成に重要な役割を果たす<ref name=Eckler2014><pubmed>24913420</pubmed></ref><ref name=Shimizu2009><pubmed>19222525</pubmed></ref>。脊椎動物では主に Fezf1(Fez)と Fezf2(Fezl、Zfp312) の2つの遺伝子が存在し、前脳形成や大脳皮質ニューロンのサブタイプ決定に関与する。一方、無脊椎動物にも相同遺伝子が存在し、ショウジョウバエでは Earmuff(erm)/dFezf が神経前駆細胞の分化制御や視覚系神経回路の層特異的接続形成に関与することが示されている。Fezファミリーは、前方神経系の形成、神経細胞分化、神経回路形成を制御する進化的に保存された転写因子群として理解されている。}}
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== Fezファミリーとは ==
== Fezファミリーとは ==
 脊椎動物の前脳発生に関与する遺伝子として同定された転写因子群である。名称は Forebrain embryonic zinc finger(Fez)に由来する。Fezf1(Fez) は、BMPシグナル阻害因子であるNogginの過剰発現によって前方神経組織へと誘導されたアフリカツメガエルのアニマルキャップで発現する遺伝子として最初に同定された<ref name=Matsuo-Takasaki2000><pubmed>10781957</pubmed></ref>。一方、fezf2(fez-like; fezl) は、前方神経組織の拡大を誘導するWntシグナル阻害因子Dkk1をゼブラフィッシュで過剰発現させた際に発現が上昇する遺伝子として同定された<ref name=Hashimoto2000><pubmed>11025224</pubmed></ref>。脊椎動物では Fezf1 と Fezf2 の2遺伝子が存在し、いずれも前脳および大脳皮質の発生過程で重要な役割を担う。
 脊椎動物の前脳発生に関与する遺伝子として同定された転写因子群である。名称は Forebrain embryonic zinc finger(Fez)に由来する。Fezf1(Fez) は、BMPシグナル阻害因子であるNogginの過剰発現によって前方神経組織へと誘導されたアフリカツメガエルのアニマルキャップで発現する遺伝子として最初に同定された<ref name=Matsuo-Takasaki2000><pubmed>10781957</pubmed></ref>。一方、fezf2(fez-like; fezl) は、前方神経組織の拡大を誘導するWntシグナル阻害因子Dkk1をゼブラフィッシュで過剰発現させた際に発現が上昇する遺伝子として同定された<ref name=Hashimoto2000><pubmed>11025224</pubmed></ref>。脊椎動物では Fezf1 と Fezf2 の2遺伝子が存在し、いずれも前脳および大脳皮質の発生過程で重要な役割を担う。
 
{| class="wikitable"
! 生物種 !! 遺伝子表記 !! タンパク質表記 !! UniProt / Gene ID
|-
| ヒト || ''FEZF1'' / ''FEZF2'' || FEZF1 / FEZF2 || FEZF1: Q8WVJ2 / FEZF2: Q6NZU1
|-
| マウス || ''Fezf1'' / ''Fezf2'' || FEZF1 / FEZF2 || Fezf1: Q8C0L8 / Fezf2: Q8K4B0
|-
| ゼブラフィッシュ・アフリカツメガエル || ''fezf1'' / ''fezf2'' || Fezf1 / Fezf2 || Zebrafish Fezf1: Q6NYQ4 / Fezf2: Q6P2R3
|-
| ショウジョウバエ || ''dFezf'' (earmuff; erm) || dFezf (Earmuff) || Erm: Q9VNB5
|-
| ウニ || ''fez'' || Fez || 未定義
|}
 初期の研究では、Fezf遺伝子が前脳領域の形成や神経細胞分化に関与することが示された<ref name=Hirata2006><pubmed>16971467</pubmed></ref><ref name=Levkowitz2003><pubmed>12469125</pubmed></ref>。その後の研究により、Fezf1 が嗅覚神経系の発生や軸索投射<ref name=Eckler2011><pubmed>21452247</pubmed></ref><ref name=Hirata2006><pubmed>16540508</pubmed></ref>、Fezf2 が大脳皮質深層ニューロンの運命決定において中心的役割を果たすことが明らかとなった<ref name=Chen2005><pubmed>16314561</pubmed></ref><ref name=Chen2005><pubmed>16284245</pubmed></ref><ref name=Molyneaux2005><pubmed>16157277</pubmed></ref>。
 初期の研究では、Fezf遺伝子が前脳領域の形成や神経細胞分化に関与することが示された<ref name=Hirata2006><pubmed>16971467</pubmed></ref><ref name=Levkowitz2003><pubmed>12469125</pubmed></ref>。その後の研究により、Fezf1 が嗅覚神経系の発生や軸索投射<ref name=Eckler2011><pubmed>21452247</pubmed></ref><ref name=Hirata2006><pubmed>16540508</pubmed></ref>、Fezf2 が大脳皮質深層ニューロンの運命決定において中心的役割を果たすことが明らかとなった<ref name=Chen2005><pubmed>16314561</pubmed></ref><ref name=Chen2005><pubmed>16284245</pubmed></ref><ref name=Molyneaux2005><pubmed>16157277</pubmed></ref>。