「グルコーストランスポーター」の版間の差分

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[[ファイル:6THA.pdb|サムネイル|'''図1. GLUTの立体構造'''<br>内向き開状態のGLUT1を示す。{{PDB|6THA}}より。]]
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[[ファイル:4ZW9.pdb|サムネイル|'''図2. GLUTの立体構造'''<br><small>D</small>-glucoseと結合した外向き開状態のGLUT3を示す。{{PDB|4ZW9}}より。]]
[[ファイル:4ZW9.pdb|サムネイル|'''図2. GLUTの立体構造'''<br><small>D</small>-glucoseと結合した外向き開状態のGLUT3を示す。{{PDB|4ZW9}}より。]]
[[ファイル:Ohtsuki glucose transporter Fig3.png|サムネイル|'''GLUTのサブファミリー''']]
[[ファイル:Ohtsuki glucose transporter Fig3.png|サムネイル|'''図3. GLUTのサブファミリー''']]
== 構造 ==
== 構造 ==
 グルコーストランスポーターは、細胞膜を貫通する膜輸送タンパク質であり、12本の膜貫通αヘリックスから構成されている。これらの膜貫通領域はN末端側とC末端側にそれぞれ6本ずつ配置され、両末端は細胞質側に存在する('''図1, 2''')。膜貫通領域によって形成される中央の空間がグルコース結合部位および輸送経路として機能し、細胞外側と細胞内側のいずれか一方に開いた状態をとることでグルコースを輸送する<ref name=Deng2015><pubmed>26176916</pubmed></ref><ref name=Deng2014><pubmed>24847886</pubmed></ref>。GLUT1には糖鎖付加型である55kDa型と非糖鎖付加型である45kDa型が存在する<ref name=Kumagai1994><pubmed>8038191</pubmed></ref>。
 グルコーストランスポーターは、細胞膜を貫通する膜輸送タンパク質であり、12本の膜貫通αヘリックスから構成されている。これらの膜貫通領域はN末端側とC末端側にそれぞれ6本ずつ配置され、両末端は細胞質側に存在する('''図1, 2''')。膜貫通領域によって形成される中央の空間がグルコース結合部位および輸送経路として機能し、細胞外側と細胞内側のいずれか一方に開いた状態をとることでグルコースを輸送する<ref name=Deng2015><pubmed>26176916</pubmed></ref><ref name=Deng2014><pubmed>24847886</pubmed></ref>。GLUT1には糖鎖付加型である55kDa型と非糖鎖付加型である45kDa型が存在する<ref name=Kumagai1994><pubmed>8038191</pubmed></ref>。
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=== GLUT4 ===
=== GLUT4 ===
 主に骨格筋や脂肪細胞にインスリン応答性グルコーストランスポーターとして発現している。中枢神経系では特定の神経細胞集団に発現しており、ラット脳では海馬や視床下部の神経細胞や小脳のプルキンエ細胞などで発現が報告されている<ref name="El Messari1998"><pubmed>9741479</pubmed></ref>。細胞内では主に細胞内小胞に局在している。培養神経細胞では、インスリン刺激や神経活動によって細胞膜に移行し、細胞へのグルコース取込みが増加することが報告されている<ref name=Ashrafi2017><pubmed>28111082</pubmed></ref><ref name=Bakirtzi2009><pubmed>19386915</pubmed></ref>。
 主に骨格筋や脂肪細胞にインスリン応答性グルコーストランスポーターとして発現している。中枢神経系では特定の神経細胞集団に発現しており、ラット脳では海馬や視床下部の神経細胞や小脳のプルキンエ細胞などで発現が報告されている<ref name="El Messari1998"><pubmed>9741479</pubmed></ref>。細胞内では主に細胞内小胞に局在している。培養神経細胞では、インスリン刺激や神経活動によって細胞膜に移行し、細胞へのグルコース取込みが増加することが報告されている<ref name=Ashrafi2017><pubmed>28111082</pubmed></ref><ref name=Bakirtzi2009><pubmed>19386915</pubmed></ref>。
[[ファイル:Ohtsuki glucose transporter Fig4.png|サムネイル|'''循環血から神経細胞へのエネルギー供給経路''']]
[[ファイル:Ohtsuki glucose transporter Fig4.png|サムネイル|'''図4. 循環血から神経細胞へのエネルギー供給経路''']]
== 機能 ==
== 機能 ==
 脳内のエネルギー供給については、アストロサイト‐ニューロン乳酸シャトル(ANLS)仮説が提唱されている<ref name=Magistretti2018><pubmed>29515192</pubmed></ref>(図3)。血液脳関門のGLUT1により血液から脳へグルコースが供給される。その後、グルコースはアストロサイトに取り込まれ乳酸へ代謝され、その乳酸が神経細胞に供給される。また、血液脳関門のGLUT1により供給されたグルコースの一部はGLUT3により神経細胞に直接取り込まれる<ref name=Li2025><pubmed>41405816</pubmed></ref>('''図4''')。GLUT3によるグルコースの直接供給は神経細胞の基礎代謝を維持し、ANLSによるエネルギー供給は急激なエネルギー需要増大への対応や局所的な代謝の安定化を担っていると考えられている。
 脳内のエネルギー供給については、アストロサイト‐ニューロン乳酸シャトル(ANLS)仮説が提唱されている<ref name=Magistretti2018><pubmed>29515192</pubmed></ref>(図3)。血液脳関門のGLUT1により血液から脳へグルコースが供給される。その後、グルコースはアストロサイトに取り込まれ乳酸へ代謝され、その乳酸が神経細胞に供給される。また、血液脳関門のGLUT1により供給されたグルコースの一部はGLUT3により神経細胞に直接取り込まれる<ref name=Li2025><pubmed>41405816</pubmed></ref>('''図4''')。GLUT3によるグルコースの直接供給は神経細胞の基礎代謝を維持し、ANLSによるエネルギー供給は急激なエネルギー需要増大への対応や局所的な代謝の安定化を担っていると考えられている。