「Gastrulation brain homeoboxファミリー」の版間の差分
細 →発現制御 |
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ショウジョウバエ胚の脳では、前方から後方にかけて、''otd''、''Pax2/5/8''、''unpg''、そして ''Hox'' がこの順で発現している。''otd'' および ''unpg'' の変異による遺伝子の不活化は、''Pax2/5/8'' および ''Hox'' 遺伝子の脳特異的発現領域の喪失または位置異常を引き起こす。さらに、''otd'' と ''unpg'' はそれぞれの脳特異的発現領域の境界において相互に発現を抑制する(49)。つまり、各脳領域の形成において、''otd'' および ''unpg'' の相互抑制が必要であり、前口動物と後口動物の共通祖先において、CNS の前後軸に沿った領域化機構の基本が既に確立されていた可能性が高い。 | ショウジョウバエ胚の脳では、前方から後方にかけて、''otd''、''Pax2/5/8''、''unpg''、そして ''Hox'' がこの順で発現している。''otd'' および ''unpg'' の変異による遺伝子の不活化は、''Pax2/5/8'' および ''Hox'' 遺伝子の脳特異的発現領域の喪失または位置異常を引き起こす。さらに、''otd'' と ''unpg'' はそれぞれの脳特異的発現領域の境界において相互に発現を抑制する(49)。つまり、各脳領域の形成において、''otd'' および ''unpg'' の相互抑制が必要であり、前口動物と後口動物の共通祖先において、CNS の前後軸に沿った領域化機構の基本が既に確立されていた可能性が高い。 | ||
== | Gbxの初期後方神経板での発現制御の詳細は明らかになっていないが、ゼブラフィッシュgbx1の原腸形成期における神経板後方での発現は、胚盤周縁部(後方)からのWnt8シグナルに依存するとされている<ref name=Rhinn2005><pubmed>15703279</pubmed></ref> <ref name=Rhinn2009><pubmed>19341460</pubmed></ref>。ゼブラフィッシュのgbx2の内耳原基での発現もまた後方化シグナルとされるレチノイン酸で正に制御される<ref name=Kikuta2003><pubmed>14579382</pubmed></ref>。 | ||
体節形成期以降の後脳前端でのマウスGbx2の発現については、ATP依存性ヘリカーゼ(Chd7)がOtx2及びGbx2の転写を制御し、小脳の維持に寄与する<ref name=Yu2013><pubmed>24368733</pubmed></ref>。また、ヒト GBX2の下流にはOTX2結合配列とSOX1結合配列があり、ヒトES細胞から誘導した前方後脳細胞では、これらの配列を介してOTX2とSOX1がGBX2の発現をそれぞれ抑制、活性化するとされた<ref name=Liu2020><pubmed>32905879</pubmed></ref>。ツメガエルではgbx2の発現をxiro1/irx1が後脳において活性化し<ref name=Glavic2002><pubmed>11830569</pubmed></ref>、一方で後脳前端においてZnフィンガー転写因子Sall1が、クロマチン・リモデリング複合体(NuRD)依存的にgbx2の転写を抑制する<ref name=Lauberth2007><pubmed>17895244</pubmed></ref>。ゼブラフィッシュでは、後脳発生において、gbx1とgbx2の発現が各々E2Fファミリー転写因子E2F3とヒストン脱アセチル化酵素HDAC1を介し、Rb1によりエピジェネティクスレベルで抑制される<ref name=Zhao2024><pubmed>38570112</pubmed></ref>。また、ゼブラフィッシュgbx2については、体節形成中期以降において後脳前端(Anterior-most hindbrain, AMH)と視床下部での発現を再現する転写調節cis領域(AMHエンハンサー)が、胚を用いたレポーター解析により計3か所同定されている。これらは機能的に冗長であり、シャドウエンハンサーといえる。その一つであるAMH1にはPax2の結合部位があり、この配列へのPax2の結合が転写制御に必要とされた<ref name=Islam2006><pubmed>17067785</pubmed></ref>。 | |||
視床でのGbx2の発現については、培養系において、遺伝子上流領域のLEF/TCF結合部位を介してTCF7L2/LEF/β-cateninにより活性化されることが示された<ref name=Nagalski2016><pubmed>25963709</pubmed></ref>。また、ヒトとマウスで保存されている長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)の1種(Crnde)がマウスでの視床の発生において、Gbx2 mRNAの発現を正に制御する<ref name=Hu2026><pubmed>41655632</pubmed></ref>。なお、正常個体での意義は不明ながら、喉頭扁平上皮癌細胞(LSCC)においてマイクロRNAのmiR-4497がGBX2の発現抑制により細胞増殖を抑制し、アポトーシスを引き起こすこと、lncRNAの1種であるFEZF1-AS1がmiR-4497のはたらきを抑制し、LSCCの転移と浸潤を促進することが報告された<ref name=Chen2021><pubmed>33550476</pubmed></ref><ref name=Chen2019><pubmed>29843929</pubmed></ref>。 | |||
== 疾患との係わり == | |||
GBX1との関連性が知られる疾患としては、脊髄小脳失調症13型(Spinocerebellar Ataxia 13, SCAR13)と低ホスファターゼ症(Hypophosphatasia)がある<ref name=MalaCardsMalaCards - 16 diseases matching GBX1</pubmed></ref>。また近年、GBX1が発達遅延と焦点性てんかん(Focal Epilepsy)に関連することが報告された<ref name=Zhang2025><pubmed>40519143</pubmed></ref>。GBX2遺伝子との関連性が知られる疾患としては、DiGeorge症候群、てんかん、CHARGE症候群、Opitz-G/BBB症候群などがある<ref name=Calmont2009><pubmed>19700621</pubmed></ref><ref name=MalaCardsMalaCards - 112 diseases matching GBX2</pubmed></ref> <ref name=Yu2013><pubmed>24368733</pubmed></ref>。GBX2は発がんにも関わることが示唆されており、前立腺癌<ref name=Gao1996><pubmed>8977637</pubmed></ref> <ref name=Gao1998><pubmed>9537237</pubmed></ref> <ref name=Tolkach2015><pubmed>26408707</pubmed></ref>、喉頭扁平上皮癌<ref name=Chen2019><pubmed>29843929</pubmed></ref>、膀胱癌<ref name=Xiong2022><pubmed>35672622</pubmed></ref>、肝細胞癌<ref name=Lin2022><pubmed>36222159</pubmed></ref>、食道扁平上皮癌<ref name=Lin2024><pubmed>39832205</pubmed></ref>などへの関連が報告されている。また、肺腺癌においてはAKT/ERK経路の調節を介して細胞増殖、浸潤、遊走を促進することが示されている<ref name=Wang2020><pubmed>31758726</pubmed></ref>。 | |||
== 疾患との係わり == | == 疾患との係わり == | ||
''GBX1'' は SCAR13 や Hypophosphatasia に関連し、''GBX2'' は DiGeorge 症候群やがんと関連する。前立腺癌、喉頭癌、膀胱癌、肝細胞癌などで関与が報告されている<ref name=Wang2020><pubmed>31758726</pubmed></ref>。 | ''GBX1'' は SCAR13 や Hypophosphatasia に関連し、''GBX2'' は DiGeorge 症候群やがんと関連する。前立腺癌、喉頭癌、膀胱癌、肝細胞癌などで関与が報告されている<ref name=Wang2020><pubmed>31758726</pubmed></ref>。 | ||