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== ノーダルとは ==
== ノーダルとは ==
 ノーダルは、原腸陥入に異常を来す変異マウスの原因遺伝子として同定され、初期胚の一過的構造であるノード (胚結節、node) で発現することからその名が付けられた<ref name=Zhou1993><pubmed>8429908</pubmed></ref>。その後、ニワトリ、マウス、アフリカツメガエル胚などの初期体節期において左右非対称に発現することが明らかになった<ref name=Collignon1996><pubmed>8610012</pubmed></ref><ref name=Levin1995><pubmed>7671308</pubmed></ref><ref name=Lowe1996><pubmed>8610013</pubmed></ref>。ノーダル変異マウスの表現型の重要性から、アフリカツメガエルで6種のノーダル関連遺伝子 (Xnr1–6) が、ゼブラフィッシュでは3種のノーダル関連遺伝子 (cyclops,  squint, southpaw) が同定された<ref name=Shen2007><pubmed>17287255</pubmed></ref>。ノーダルは胚発生を制御する重要因子として着目され、シグナル経路や機能の解析が進められた。
 ノーダルは、原腸陥入に異常を来す変異マウスの原因遺伝子として同定され、初期胚の一過的構造であるノード (胚結節、node) で発現することからその名が付けられた<ref name=Zhou1993><pubmed>8429908</pubmed></ref>。その後、ニワトリ、マウス、アフリカツメガエル胚などの初期体節期において左右非対称に発現することが明らかになった<ref name=Collignon1996><pubmed>8610012</pubmed></ref><ref name=Levin1995><pubmed>7671308</pubmed></ref><ref name=Lowe1996><pubmed>8610013</pubmed></ref>。ノーダル変異マウスの表現型の重要性から、アフリカツメガエルで6種のノーダル関連遺伝子 (Xnr1–6) が、ゼブラフィッシュでは3種のノーダル関連遺伝子 (cyclops,  squint, southpaw) が同定された<ref name=Shen2007><pubmed>17287255</pubmed></ref>。ノーダルは胚発生を制御する重要因子として着目され、シグナル経路や機能の解析が進められた。
 
[[ファイル:Meno Nodal Fig1.png|サムネイル|'''図1. ノーダルの一次構造'''<br> C末端側 (図右) に存在するシステイン残基は、システインノット構造の形成 (黒色) とダイマー形成 (褐色) に関与する。FurinやPACE4はRQRRを認識して切断し、C末端側が成熟ドメインとなる。
]]
== 構造 ==
== 構造 ==
 ノーダルはプレプロタンパク質として翻訳され、分泌後にFurinや paired basic amino acid cleaving enzyme 4 (PACE4)などのプロタンパク質変換酵素によって切断を受けることで、C末端側が活性タンパクとして機能する<ref name=Beck2002><pubmed>12447384</pubmed></ref>。C末端側にはTGF-βファミリーに特徴的なシステイン残基が保存されており<ref name=Zhou1993><pubmed>8429908</pubmed></ref>、これらは分子内および分子間のジスルフィド結合を介して、システインノット構造の形成とダイマー形成に関与する (図1)。一方、プロドメインは、ノーダルの活性や組織内での拡散性を制御していると考えられている<ref name=LeGood2005><pubmed>15649361</pubmed></ref>。
 ノーダルはプレプロタンパク質として翻訳され、分泌後にFurinや paired basic amino acid cleaving enzyme 4 (PACE4)などのプロタンパク質変換酵素によって切断を受けることで、C末端側が活性タンパクとして機能する<ref name=Beck2002><pubmed>12447384</pubmed></ref>。C末端側にはTGF-βファミリーに特徴的なシステイン残基が保存されており<ref name=Zhou1993><pubmed>8429908</pubmed></ref>、これらは分子内および分子間のジスルフィド結合を介して、システインノット構造の形成とダイマー形成に関与する ('''図1''')。一方、プロドメインは、ノーダルの活性や組織内での拡散性を制御していると考えられている<ref name=LeGood2005><pubmed>15649361</pubmed></ref>。


== オルソログ ==
== オルソログ ==
 ノーダルは後生動物に高度に保存されており、刺胞動物、螺旋卵割動物 (軟体動物、環形動物など) および後口動物 (脊索動物、半索動物や棘皮動物など) の多くの系統で存在が確認されている<ref name=Grande2014><pubmed>25690967</pubmed></ref><ref name=Namigai2014><pubmed>24510729</pubmed></ref><ref name=Watanabe2014><pubmed>25156256</pubmed></ref>。一方、脱皮動物 (節足動物や線形動物など) では、共通先祖でノーダルが失われたと推察されている<ref name=Grande2014><pubmed>25690967</pubmed></ref>。脊椎動物のモデル生物では、ゼブラフィッシュやアフリカツメガエルにおいて、種固有の全ゲノム重複を経てノーダル関連遺伝子が多重化している。
 ノーダルは後生動物に高度に保存されており、刺胞動物、螺旋卵割動物 (軟体動物、環形動物など) および後口動物 (脊索動物、半索動物や棘皮動物など) の多くの系統で存在が確認されている<ref name=Grande2014><pubmed>25690967</pubmed></ref><ref name=Namigai2014><pubmed>24510729</pubmed></ref><ref name=Watanabe2014><pubmed>25156256</pubmed></ref>。一方、脱皮動物 (節足動物や線形動物など) では、共通先祖でノーダルが失われたと推察されている<ref name=Grande2014><pubmed>25690967</pubmed></ref>。脊椎動物のモデル生物では、ゼブラフィッシュやアフリカツメガエルにおいて、種固有の全ゲノム重複を経てノーダル関連遺伝子が多重化している。
 
[[ファイル:Meno Nodal Fig2.png|サムネイル|'''図2. ノーダルシグナル'''<br> ノーダルシグナルの主要な構成因子を示す模式図。ノーダルはCrypticなどのEGF-CFCファミリーに依存してActivin受容体に結合する。リン酸化Smad2/3は核に移行し、FoxH1などと協調して標的遺伝子 (ノーダル, Lefty2, Pitx2など) の発現を誘導する。これらの遺伝子に描かれた青色楕円は、FoxH1が結合するエンハンサーASEを表している。ノーダルはポジティブフィードバックループとLeftyを介したネガティブフィードバックループを構成する。]]
== ノーダルシグナルとその制御 ==
== ノーダルシグナルとその制御 ==
 ノーダルはActivin受容体 (タイプIIとしてActRIIA/B、タイプIとしてALK4/7) と複合体を形成するが、この複合体形成にはGPIアンカー型膜タンパク質であるEGF-CFCファミリー (Cripto, Cryptic, FRL1, Oepなど) を必要とする<ref name=Shen2007><pubmed>17287255</pubmed></ref>。ノーダルの結合によって活性化されたタイプI受容体はSmad2/3をリン酸化し、これらはSmad4と複合体を形成して核内に移行する。この複合体はFoxH1やEomesなどの転写因子と協調して標的遺伝子の発現を制御する。また、ノーダルはFoxH1を介したポジティブフィードバックループを形成しており、自らの発現を誘導する (図2)<ref name=Norris2002><pubmed>12091315</pubmed></ref><ref name=Saijoh2000><pubmed>10678167</pubmed></ref><ref name=Yamamoto2003><pubmed>12642485</pubmed></ref>。
 ノーダルはActivin受容体 (タイプIIとしてActRIIA/B、タイプIとしてALK4/7) と複合体を形成するが、この複合体形成にはGPIアンカー型膜タンパク質であるEGF-CFCファミリー (Cripto, Cryptic, FRL1, Oepなど) を必要とする<ref name=Shen2007><pubmed>17287255</pubmed></ref>。ノーダルの結合によって活性化されたタイプI受容体はSmad2/3をリン酸化し、これらはSmad4と複合体を形成して核内に移行する。この複合体はFoxH1やEomesなどの転写因子と協調して標的遺伝子の発現を制御する。また、ノーダルはFoxH1を介したポジティブフィードバックループを形成しており、自らの発現を誘導する ('''図2''')<ref name=Norris2002><pubmed>12091315</pubmed></ref><ref name=Saijoh2000><pubmed>10678167</pubmed></ref><ref name=Yamamoto2003><pubmed>12642485</pubmed></ref>。


 ノーダルシグナルは、細胞外のアンタゴニストによって厳密に制御されている (図2)。TGF-β ファミリーのLefty1とLefty2はノーダルのフィードバック阻害因子であり<ref name=Meno1999><pubmed>10518210</pubmed></ref><ref name=Saijoh2000><pubmed>10678167</pubmed></ref><ref name=Yamamoto2003><pubmed>12642485</pubmed></ref>、ノーダルに直接結合する他、ActRIIやEGF-CFCファミリーとの競合的な結合によってノーダルシグナルを抑制するメカニズムが報告されている<ref name=Chen2004><pubmed>15062104</pubmed></ref><ref name=Sakuma2002><pubmed>11952836</pubmed></ref>。また、CerberusファミリーのCerl (Cer1) やCerl2 (Dand5) などはノーダルと結合することでノーダルシグナルを抑制する<ref name=Hashimoto2004><pubmed>15084459</pubmed></ref><ref name=Marques2004><pubmed>15466485</pubmed></ref><ref name=Shen2007><pubmed>17287255</pubmed></ref>。
 ノーダルシグナルは、細胞外のアンタゴニストによって厳密に制御されている (図2)。TGF-β ファミリーのLefty1とLefty2はノーダルのフィードバック阻害因子であり<ref name=Meno1999><pubmed>10518210</pubmed></ref><ref name=Saijoh2000><pubmed>10678167</pubmed></ref><ref name=Yamamoto2003><pubmed>12642485</pubmed></ref>、ノーダルに直接結合する他、ActRIIやEGF-CFCファミリーとの競合的な結合によってノーダルシグナルを抑制するメカニズムが報告されている<ref name=Chen2004><pubmed>15062104</pubmed></ref><ref name=Sakuma2002><pubmed>11952836</pubmed></ref>。また、CerberusファミリーのCerl (Cer1) やCerl2 (Dand5) などはノーダルと結合することでノーダルシグナルを抑制する<ref name=Hashimoto2004><pubmed>15084459</pubmed></ref><ref name=Marques2004><pubmed>15466485</pubmed></ref><ref name=Shen2007><pubmed>17287255</pubmed></ref>。
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=== 前後軸形成 ===
=== 前後軸形成 ===
 着床したマウス胚は、エピブラストおよび隣接した胚体外外胚葉が胚盤胞腔側へ成長し、両者が臓側内胚葉に覆われた円筒胚を形成する。円筒胚の近位は胎盤を形成し、遠位には遠位臓側内胚葉 (distal visceral endoderm: DVE) が出現する。このDVEは将来の前方 (頭側) へ移動して前方臓側内胚葉 (anterior visceral endoderm: AVE) を形成し、その反対側に原条が形成されることで、胚に明確な前後非対称性が確立される<ref name=Arnold2009><pubmed>19129791</pubmed></ref>。ノーダルは、PEEやASEなどのエンハンサーによりエピブラストで発現し、そのシグナルはDVEにおけるLefty1、Cerl、Dkk1の発現を誘導する<ref name=Brennan2001><pubmed>11418863</pubmed></ref>。AVEから分泌されるこれらの因子は、隣接するエピブラストにおけるノーダルポジティブフィードバックループとWntシグナルを抑制し、エピブラストのノーダル発現をAVEと反対側、すなわち胚後方に限局させる<ref name=Perea-Gomez2002><pubmed>12431380</pubmed></ref>。この結果、胚前方には神経外胚葉が、胚後方には原条が形成される。
 着床したマウス胚は、エピブラストおよび隣接した胚体外外胚葉が胚盤胞腔側へ成長し、両者が臓側内胚葉に覆われた円筒胚を形成する。円筒胚の近位は胎盤を形成し、遠位には遠位臓側内胚葉 (distal visceral endoderm: DVE) が出現する。このDVEは将来の前方 (頭側) へ移動して前方臓側内胚葉 (anterior visceral endoderm: AVE) を形成し、その反対側に原条が形成されることで、胚に明確な前後非対称性が確立される<ref name=Arnold2009><pubmed>19129791</pubmed></ref>。ノーダルは、PEEやASEなどのエンハンサーによりエピブラストで発現し、そのシグナルはDVEにおけるLefty1、Cerl、Dkk1の発現を誘導する<ref name=Brennan2001><pubmed>11418863</pubmed></ref>。AVEから分泌されるこれらの因子は、隣接するエピブラストにおけるノーダルポジティブフィードバックループとWntシグナルを抑制し、エピブラストのノーダル発現をAVEと反対側、すなわち胚後方に限局させる<ref name=Perea-Gomez2002><pubmed>12431380</pubmed></ref>。この結果、胚前方には神経外胚葉が、胚後方には原条が形成される。
 
[[ファイル:Meno Nodal Fig3.png|サムネイル|'''図3. マウスにおける左右軸形成'''<br>胚遠位から観察したマウス初期体節期胚の模式図 (図上が前方、下が後方)。左右軸形成は①から④の順に進行する。<br>① 左右オーガナイザーであるノードの腹側に左向きの流れ  (ノーダル flow) が発生する。<br>② ノード周縁部 (クラウン細胞) では、NotchシグナルによってノーダルやCerl2などの左右軸関連遺伝子が発現するが、流れにより左側のCerl2 mRNAが分解される (褐色はCerl2 mRNAを表す)。<br>③ Cerl2は右側でノーダルを強く抑制することにより、左側でのノーダル活性が高くなる (緑色はノードにおけるノーダル活性を表す)。ノードから拡散したノーダルは、近傍の左側側板中胚葉 (lateral plate mesoderm, lpm) に自らの発現を誘導する (紺色はノーダル発現を示す)。<br>④ ノーダルはポジティブフィードバックループによって発現域を拡張するとともに、転写因子Pitx2の発現を誘導する (紺色はノーダルおよびPitx2発現を示す)。これらの左右非対称な発現は、その後の臓器の左右非対称な形態形成を制御する。]]
=== 左右軸形成 ===
=== 左右軸形成 ===
 脊椎動物では、初期体節期にノーダルが左側側板中胚葉で発現する。ノーダルはFoxH1を介して転写因子Pitx2の発現を誘導し (図2)<ref name=Shiratori2001><pubmed>11172719</pubmed></ref>、臓器の左右非対称な形態形成を制御する。脊椎動物以外でも、ノーダルを保有する動物系統ではPitxがノーダルと同側に非対称に発現することが確認されており、進化の過程でPitxはノーダルシグナルと連結することで非対称な形態形成の役割を獲得したと推察されている<ref name=Grande2014><pubmed>25690967</pubmed></ref>。例えば、ノーダル-Pitx発現の左右非対称性は、軟体動物の巻貝では貝殻の巻き方向を決定し<ref name=Grande2009><pubmed>19098895</pubmed></ref>、棘皮動物のウニではプルテウス幼生におけるウニ原基の左右非対称な形成を制御する (右側のノーダルシグナルはウニ原基形成を抑制する) <ref name=Duboc2005><pubmed>15992548</pubmed></ref>。
 脊椎動物では、初期体節期にノーダルが左側側板中胚葉で発現する。ノーダルはFoxH1を介して転写因子Pitx2の発現を誘導し ('''図2''')<ref name=Shiratori2001><pubmed>11172719</pubmed></ref>、臓器の左右非対称な形態形成を制御する。脊椎動物以外でも、ノーダルを保有する動物系統ではPitxがノーダルと同側に非対称に発現することが確認されており、進化の過程でPitxはノーダルシグナルと連結することで非対称な形態形成の役割を獲得したと推察されている<ref name=Grande2014><pubmed>25690967</pubmed></ref>。例えば、ノーダル-Pitx発現の左右非対称性は、軟体動物の巻貝では貝殻の巻き方向を決定し<ref name=Grande2009><pubmed>19098895</pubmed></ref>、棘皮動物のウニではプルテウス幼生におけるウニ原基の左右非対称な形成を制御する (右側のノーダルシグナルはウニ原基形成を抑制する) <ref name=Duboc2005><pubmed>15992548</pubmed></ref>。


 脊椎動物でノーダルを左側の側板中胚葉で発現させる装置が左右オーガナイザー (マウスのノード、ニワトリのヘンゼン結節、アフリカツメガエルの原腸蓋板、ゼブラフィッシュのクッパー胞) である。ニワトリを除くこれらの左右オーガナイザーでは、線毛の回転運動によって左向きの水流が形成される (図3)。この物理現象により、Cerl2などのノーダル阻害因子が右側で優位となり (マウスでは左側のCerl2 mRNAが分解される)<ref name=Marques2004><pubmed>15466485</pubmed></ref><ref name=Nakamura2012><pubmed>23271656</pubmed></ref><ref name=Sampaio2014><pubmed>24930722</pubmed></ref><ref name=Schweickert2010><pubmed>20381352</pubmed></ref>、左側のノーダル活性が右側に比べて相対的に高まる(図3)<ref name=Hamada2014><pubmed>25580264</pubmed></ref>。左右オーガナイザーから拡散したノーダルは、近傍の左側側板中胚葉に自らの発現を誘導する (図3)<ref name=Oki2007><pubmed>17913787</pubmed></ref>。ノーダルのポジティブフィードバックループとLeftyによるネガティブフィードバックループは、チューリングの反応拡散モデルの基本条件を満たしており、左右オーガナイザーにおける僅かなノーダル活性差を側板中胚葉における顕著な左右非対称性へと増幅する<ref name=Hamada2002><pubmed>11836504</pubmed></ref><ref name=Nakamura2006><pubmed>17011489</pubmed></ref>。左側側板中胚葉のノーダル発現域は、拡散とポジティブフィードバックループによって心臓形成領域まで拡張するが (図3)<ref name=Yamamoto2003><pubmed>12642485</pubmed></ref>、Leftyによりその発現域は左側に限局され、最終的にノーダル発現は終息する<ref name=Meno1998><pubmed>9708731</pubmed></ref><ref name=Meno2001><pubmed>11703930</pubmed></ref>。
 脊椎動物でノーダルを左側の側板中胚葉で発現させる装置が左右オーガナイザー (マウスのノード、ニワトリのヘンゼン結節、アフリカツメガエルの原腸蓋板、ゼブラフィッシュのクッパー胞) である。ニワトリを除くこれらの左右オーガナイザーでは、線毛の回転運動によって左向きの水流が形成される ('''図3''')。この物理現象により、Cerl2などのノーダル阻害因子が右側で優位となり (マウスでは左側のCerl2 mRNAが分解される)<ref name=Marques2004><pubmed>15466485</pubmed></ref><ref name=Nakamura2012><pubmed>23271656</pubmed></ref><ref name=Sampaio2014><pubmed>24930722</pubmed></ref><ref name=Schweickert2010><pubmed>20381352</pubmed></ref>、左側のノーダル活性が右側に比べて相対的に高まる('''図3''')<ref name=Hamada2014><pubmed>25580264</pubmed></ref>。左右オーガナイザーから拡散したノーダルは、近傍の左側側板中胚葉に自らの発現を誘導する (図3)<ref name=Oki2007><pubmed>17913787</pubmed></ref>。ノーダルのポジティブフィードバックループとLeftyによるネガティブフィードバックループは、チューリングの反応拡散モデルの基本条件を満たしており、左右オーガナイザーにおける僅かなノーダル活性差を側板中胚葉における顕著な左右非対称性へと増幅する<ref name=Hamada2002><pubmed>11836504</pubmed></ref><ref name=Nakamura2006><pubmed>17011489</pubmed></ref>。左側側板中胚葉のノーダル発現域は、拡散とポジティブフィードバックループによって心臓形成領域まで拡張するが (図3)<ref name=Yamamoto2003><pubmed>12642485</pubmed></ref>、Leftyによりその発現域は左側に限局され、最終的にノーダル発現は終息する<ref name=Meno1998><pubmed>9708731</pubmed></ref><ref name=Meno2001><pubmed>11703930</pubmed></ref>。


 左側側板中胚葉でノーダルによって誘導されたPitx2は、その細胞系譜で発現を維持する<ref name=Shiratori2001><pubmed>11172719</pubmed></ref>。マウスでは、このメカニズムにより確立された左右軸情報が、心臓形態形成、刺激伝導系の発生、肺の分葉パターン、腸ループ回転などの非対称な形態形成を制御する<ref name=Franco2017><pubmed>29367545</pubmed></ref><ref name=Hamada2002><pubmed>11836504</pubmed></ref><ref name=Joo2026><pubmed>41734036</pubmed></ref><ref name=Yashiro2007><pubmed>17994097</pubmed></ref>。ゼブラフィッシュでは、左側間脳におけるノーダルシグナルが、副松果体と手綱核の左右非対称な発生を制御している<ref name=Concha2000><pubmed>11144351</pubmed></ref><ref name=Gamse2005><pubmed>16207761</pubmed></ref><ref name=Gobbo2025><pubmed>39906337</pubmed></ref>。
 左側側板中胚葉でノーダルによって誘導されたPitx2は、その細胞系譜で発現を維持する<ref name=Shiratori2001><pubmed>11172719</pubmed></ref>。マウスでは、このメカニズムにより確立された左右軸情報が、心臓形態形成、刺激伝導系の発生、肺の分葉パターン、腸ループ回転などの非対称な形態形成を制御する<ref name=Franco2017><pubmed>29367545</pubmed></ref><ref name=Hamada2002><pubmed>11836504</pubmed></ref><ref name=Joo2026><pubmed>41734036</pubmed></ref><ref name=Yashiro2007><pubmed>17994097</pubmed></ref>。ゼブラフィッシュでは、左側間脳におけるノーダルシグナルが、副松果体と手綱核の左右非対称な発生を制御している<ref name=Concha2000><pubmed>11144351</pubmed></ref><ref name=Gamse2005><pubmed>16207761</pubmed></ref><ref name=Gobbo2025><pubmed>39906337</pubmed></ref>。
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* [[内臓錯位症候群]]
* [[内臓錯位症候群]]
* [[全前脳胞症]]
* [[全前脳胞症]]
== 図1 ノーダルの一次構造 ==
 C末端側 (図右) に存在するシステイン残基は、システインノット構造の形成 (黒色) とダイマー形成 (褐色) に関与する。FurinやPACE4はRQRRを認識して切断し、C末端側が成熟ドメインとなる。
== 図2 ノーダルシグナル ==
 ノーダルシグナルの主要な構成因子を示す模式図。ノーダルはCrypticなどのEGF-CFCファミリーに依存してActivin受容体に結合する。リン酸化Smad2/3は核に移行し、FoxH1などと協調して標的遺伝子 (ノーダル, Lefty2, Pitx2など) の発現を誘導する。これらの遺伝子に描かれた青色楕円は、FoxH1が結合するエンハンサーASEを表している。ノーダルはポジティブフィードバックループとLeftyを介したネガティブフィードバックループを構成する。
== 図3 マウスにおける左右軸形成 ==
 胚遠位から観察したマウス初期体節期胚の模式図 (図上が前方、下が後方)。左右軸形成は①から④の順に進行する。① 左右オーガナイザーであるノードの腹側に左向きの流れ  (ノーダル flow) が発生する。② ノード周縁部 (クラウン細胞) では、NotchシグナルによってノーダルやCerl2などの左右軸関連遺伝子が発現するが、流れにより左側のCerl2 mRNAが分解される (褐色はCerl2 mRNAを表す)。③ Cerl2は右側でノーダルを強く抑制することにより、左側でのノーダル活性が高くなる (緑色はノードにおけるノーダル活性を表す)。ノードから拡散したノーダルは、近傍の左側側板中胚葉 (lateral plate mesoderm, lpm) に自らの発現を誘導する (紺色はノーダル発現を示す)。④ ノーダルはポジティブフィードバックループによって発現域を拡張するとともに、転写因子Pitx2の発現を誘導する (紺色はノーダルおよびPitx2発現を示す)。これらの左右非対称な発現は、その後の臓器の左右非対称な形態形成を制御する。


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
<references />
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