色覚
英語名:color vision 独: 仏:
色覚とは,波長構成の異なる光に対し異なる視覚的感覚を生じる主観的体験.波長選択性の異なる複数種類の光受容器を備える必要があるが,複数の受容器を備えているからといって色覚があるとは限らない.色覚は内観報告による主観検査によってのみ判定されうる.
ヒトの場合,網膜に3種類の錐体(cone)受容器と1種類の悍体(rod)受容器の4種類が存在しうる.このうち,錐体受容器が主に色覚に寄与すると考えられている.また,錐体および悍体受容器に含まれているものと異なる光受容色素をもつ網膜神経節細胞(メラノプシン神経節細胞)の存在が確認されている(文献)が,色覚への寄与は明らかではない. 3種類の錐体が発現および機能している通常型(3色覚 trichromat)と,2種類が機能または発現している2色型(2色覚 dichromat),1種類のみが機能または発現している1色型(1色覚 monochromat)が存在する.1色覚には,悍体のみ(rod monochromat: 錐体を全く持たない)の場合もある.3種類の錐体が網膜に発現しているものの,うち1種類の錐体が生じる信号の寄与が小さい(発現しているが機能不全,もしくは波長選択性が極端に他のものと近い)場合には異常3色型(anomalous trichromat)と呼ばれる.錐体の発現は遺伝的に決まるものと考えられており,X染色体の特定の座位の配列によって錐体の種類が決まる.主に劣性遺伝子を持つX染色体を受け継いだ男性に発現する事が多く,X染色体を2つ持つ女性は劣勢遺伝子のキャリアとなることが多い.ただし女性において,X染色体の組み合わせによっては,稀に4種類の錐体が発現し色覚に寄与する場合(4色覚tetorachromat)がある事が知られている(文献).
現象:
2色覚者では,3色覚者が見分けられる色のうち特定のペアの弁別ができず,異常3色型も同様の傾向が見られる.1色覚は光の強弱のみの知覚しか得られず,色覚を持たない.これらの症状は医学的には色覚異常と呼ばれる.アノマロスコープ(anomaloscope),色覚検査票(石原式仮性同色表:Ishihara’s pseudo isochromatic plates,Farnswars-Munsell’s 100 hue test,等)によって検査され,医学的に判定される.2色覚および異常3色覚者は男性の約5%程度存在すると考えられている(文献).
色覚は,光の波長と1:1の対応関係を持たない.これは環境光の変化に適応する機構を備えているためで,例えば朝−昼−夕の太陽光のスペクトルの変化にもかかわらず物体の色を一定に知覚する機能(色恒常性:color constancy)を持つためである.逆に,色覚は他の感覚情報(触覚など)によって原点を校正する手段を持っていない点が他の視覚感覚と異なる固有の特徴である.
生理学的基盤:
2. 生理学的な側面. 2.1 錐体の多様性(1色覚,2色覚,3色覚(コモンタイプ,変則型),4色覚)動物については言及?
2.2 網膜〜外側膝状体
2.3 初期視覚野(第一次視覚野,第二次,第三次視覚野)
2.4 高次視覚野
5. 参考文献