知的障害
英:Intellectual Disability、Mental retardation(精神遅滞) 知的障害は、精神遅滞とほぼ同義語である。 日本国内では一般的に「精神薄弱」が同義語として、長期間利用されてきたが、1998年の法改正で「知的障害」という用語に統一された。
定義として、精神医学の2種類の診断体系を示す。 DSM-IV-TRによると、 A.明らかな知的機能の遅れ:個別施行による知能検査で、おおよそ70以下のIQ(平均より2標準偏差下が目安)(幼児においては、臨床的判断による) B.同時に、現在の適応機能(すなわち、その文化圏でその年齢に対して期待される基準に適合する有能さ)の欠陥または不全が、以下のうち2つ以上の領域で存在:コミュニケーション、自己管理、家庭生活、社会的/対人的技能、地域社会資源の利用、自律性、発揮される学習能力、仕事、余暇、健康、安全 C.発症は18歳以前である
軽度:IQレベル50~55からおよそ70 中等度:IQレベル35~40から50~55 重度:IQレベル20~25から35~40 最重度:IQレベル20~25以下
ICD-10でも似たような基準であり、発達期に明らかになる全体的な知的機能の水準の遅れ、そしてそのために通常の社会環境での日常的な要求に適応する能力の乏しさで判定される。
知的機能は、知能検査によって測定されるが、全体的な能力の評価に基づいて行うべきである。IQ(Intelligence Quotient:知能指数)は、標準化され、地域の文化的基準が組み込まれ、個別的に施行される知能テストで決めるべきである。また、IQは、およそ5程度の誤差を認めるため、70であれば、65-75くらいと認識しておくとよい。
適応機能は、バインランド適応行動尺度のような標準化された尺度を用いることで測定できる。
疫学
有病率は1%と予想されている。IQが70以下とすると、理論上は2.3%ということになるが、適応行動など他の基準もあるため等が考えられる。また、重度もしくは最重度では、合併症のための死亡率が高く、年齢が上がるにつれて、有病率は低下する。 男女比は、1.5:1で男性に多い。
重症度
1.軽度知的障害 知的障害のおよそ85%を占め、就学までは気づかれにくい。成人期までに、およそ小学校高学年程度の知能を身につける。成人後は、適切な支援を受けて生活し、家族を持つことや、簡単な仕事に就くことは出来る。特異的な原因は特定できないことがしばしばである。
2.中等度知的障害 知的障害のおよそ10%を占める。言語発達や運動発達は遅れるが、殆どが言語を習得し、充分コミュニケーションをとれるようになる。学力は、最終的に小学校2-3年生くらいとなる。成人期には、社会的・職業的支援が必要で、適切な監督下で、難しくない仕事ができる。殆どが器質的原因を同定できる。
3. 重度知的障害 知的障害のおよそ4%を占め、3-6歳の知能に発達する。訓練により、自分の身の周りのことができる。簡単な会話が可能となる。成人期には、決まった行動や、簡単な繰り返しが可能であり、常に監督や保護が必要である。ほぼ、器質的病因がある。
4.最重度知的障害 知的障害のおよそ1-2%であり、3歳未満の知能に相当する。言葉によるコミュニケーションは困難だが、喜怒哀楽の表現が可能で、見慣れた人は覚えている。運動機能の遅れも認め、歩行も困難であることが多い。他の身体障害、てんかん、神経症状などを伴うのも一般的である。常に援助と世話が必要である。