英語名:cross-correlation analysis
相互相関解析とは、二つの時系列信号の類似度を、相互相関関数を用いて評価する方法である。神経科学の分野においては、主に細胞間の機能的結合を推定する目的で、同時計測した二つの神経細胞の活動に対して相互相関解析が行われる。
相互相関関数(相互相関ヒストグラム)
相互相関関数の定義は学問分野、研究者によって異なる。ここでは神経科学の分野でしばしば用いられる定義について述べる。
ある二つの神経細胞の活動(例えば活動電位の発生タイミング)を同時に計測したとする。計測期間を
個のビンに区切り、
番目のビンにおけるある細胞の活動を
で、もう一つの細胞の活動を
で表す。このとき
と
の相互相関関数(相互相関ヒストグラム)
は、次のように定義される。
![{\displaystyle C_{XY}(\tau )=\sum _{t=1}^{T}X(t)\ Y(t+\tau ),}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/8c1a5ca5a3a301bf11d6a541db1c09991983735e)
ここで
は
と
の間の時間差(time-lag)を表す。相互相関関数は、細胞
の活動と細胞
の活動との関係性を反映する。例えば細胞Xと細胞Yが同期して活動していた場合、
の値は
で最大となる。
神経活動はしばしば確率過程としてモデル化される。この場合、相互相関関数の値は複数の統計量(細胞活動の平均、分散、共分散)を反映する。例えば、二つの細胞の活動が独立、つまり共分散が0であっても、両細胞の活動の平均が時間的に同じように変化すると、相互相関関数は時間差0で最大になりうる。実験データから計算した相互相関関数と、二つの細胞の活動が独立だった場合に期待される相互相関関数(帰無仮説)の差を取ることで、二つの細胞の活動が独立かどうかを統計的に検証することができる[1]。この差は相互共分散関数
と呼ばれる。
![{\displaystyle Cov_{XY}(\tau )=\sum _{t=1}^{T}{\bigl \{}X(t)Y(t+\tau )-{\mu }_{X}(t){\mu }_{Y}(t+\tau ){\bigr \}},}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/a22b459131521344c2b8a4707f85a99f02d50d93)
ここで
と
は
番目のビンにおける細胞
と細胞
の活動の平均を表す。関数
のことを相互相関関数と呼ぶ場合もあるので、注意が必要である。
相互相関関数の計算例
相互相関関数の解釈
てすと[1]。
perkel
toyama
留意点
相互相関解析は、機能的結合を間接的に推定する方法であるため、結果の解釈には注意が必要である。
perkel
brody
ken harris
gruen
関連項目
同義語:覚醒中枢(脳幹網様体の解説で)
重要な関連語:室頂核、中位核、歯状核(小脳核の解説で)
参考文献
- ↑ 1.0 1.1
Perkel, D.H., Gerstein, G.L., & Moore, G.P. (1967).
Neuronal spike trains and stochastic point processes. II. Simultaneous spike trains. Biophysical journal, 7(4), 419-40.
[PubMed:4292792]
[PMC]
[WorldCat]
[DOI]
(執筆者:塩崎博史、担当編集委員:藤田一郎)
ある神経細胞の時刻
における活動(例えば活動電位の有無)を
とし、別のある神経細胞の活動を
で表す。
![{\displaystyle C_{XY}(\tau )=\int _{0}^{T}X(t)\ Y(t+\tau )\,dt,}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/c9c86069de85d3987a8e506ee4c882dafa9db83e)
ここで
は神経活動の計測期間、
は
と
の間の時間差(time-lag)を表す。離散時間信号として神経活動を表す場合、相互相関関数
は、