オキシトシン

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オキシトシンは、9個のアミノ酸で構成されるペプチドホルモンであり、視床下部室傍核と視索上核で合成され、下垂体後葉から血中に分泌されて末梢組織にて子宮収縮や射乳に関わるとともに、母性行動やストレス応答など多様な社会性神経機能に関与する。

イントロダクション: オキシトシン(oxytocin)は、ギリシャ語のokytokos(早い(okys)出産(tokos))に由来しており、古典的な生理的作用として子宮収縮による分娩促進作用が知られている。Vincent du Vigneaud らは、オキシトシンの化学構造を明らかにし、さらに初めてペプチドホルモンの生合成に成功した。この業績により、1955年にノーベル化学賞を授与されている。引用エラー: 無効な <ref> タグです。数が多すぎるなどの理由で名前が無効です 長らくはオキシトシンの末梢作用、すなわち子宮収縮や乳汁射出といった生理作用が中心的に研究されてきたが、1980年代以降、中枢神経系におけるオキシトシンの存在と神経調節的な役割が明らかとなり、社会的絆や情動調節に深く関与する「愛情ホルモン」として再評価されている。現在では、自閉スペクトラム症(ASD)、不安障害、うつ病などとの関連が注目されており、神経精神疾患の新たな治療標的として研究が進められている。引用エラー: 無効な <ref> タグです。数が多すぎるなどの理由で名前が無効です[1][2]

構造:  オキシトシンはCys-Tyr-lle-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly-NH2の9個のアミノ酸ペプチドである。分子量は1007.19 g/molである。125残基からなる前駆体として合成され、それが酵素的に切断されることで成熟したオキシトシンが産生される。オキシトシンのカルボキシル末端はアミド化され、これが活性に必要であるが、これはオキシトシンの配列に続くグリシンから由来したもので、ペプチジルグリシンα-アミド化一酸化酵素 (peptidylglycine &α;-amidating monooxygenase)の働きに産生さる。オキシトシンは1,6 番目にシステイン(Cys)をもつためジスルフィド(S-S)結合により環状構造をとり、7〜9番目のアミノ酸が側鎖を形成する。この構造は同じく視床下部で産生されるバソプレシンと非常に類似しており、わずか2つのアミノ酸の違いしかない。引用エラー: 無効な <ref> タグです。数が多すぎるなどの理由で名前が無効です

サブファミリー: オキシトシンは、バソプレシンファミリーに属する。オキシトシンおよびバソプレシンは、それぞれOTR(oxytocin receptor)およびAVPR(vasopressin receptor (V1a, V1b, V2))を介して作用するが、受容体のクロストークも認められ、両者は機能的にも密接に関係している。[3] 進化的には、単一の原始ペプチド遺伝子が重複・分化することで、オキシトシンとバソプレシンの2種のペプチドが分化したと考えられている。

発現: オキシトシンは主に視床下部の室傍核(PVN)および視索上核(SON)大細胞ニューロンで産生され、正中隆起を通る軸索内を下垂体後葉へと運搬される。オキシトシンと同じ前駆体に存在しているニューロフィジンが、オキシトシンの担体タンパク質として細胞内輸送を補助し、この複合体が下垂体後葉に到達した後貯蔵され、神経末端の脱分極によってニューロフィジンと解離し血中に放出され、標的臓器に到達してその生理作用を発揮する。 また、小細胞ニューロンで産生されたオキシトシンは視床下部の外部に軸索を投射し神経伝達物質として働くことや、樹状突起や細胞体から中枢神経系内に放出され(dendritic release)、局所的な神経修飾作用を有することが知られている。[4]

機能: タンパクとしての機能  血漿中半減期は5分以内ときわめて短いとされている。  オキシトシンはオキシトシン受容体(OTR)を介して機能する。オキシトシン受容体は,7回膜貫通型G蛋白共役受容体(G-protein coupled receptor:GPCRs)であり、細胞内シグナル伝達系を活性化することにより生理作用が誘導される。Kimuraらによりアフリカツメガエル卵母細胞を用いた発現系を用いてクローニングされた。[5][6]オキシトシン受容体のGαタンパク質としてGq/11とGi/oが同定されており、低濃度のオキシトシンではGq/11ファミリーが、比較的高濃度ではGi/oファミリーが活性化する。


個体での機能 末梢作用:子宮平滑筋収縮(分娩促進)や乳腺筋上皮細胞収縮(乳汁射出)に関わる。 • 中枢作用:オキシトシンを経鼻的に投与すると人への信頼感が増すことがNature 誌で報告されたことを契機に[1]、オキシトシンが人間関係に深く関わっていることが注目され「愛情ホルモン」「絆ホルモン」と呼ばれることもある。オキシトシン受容体ノックアウトマウスでは分娩には影響が無いものの、授乳や育児行動に影響が出ることから、オキシトシンが母性行動に関係することも報告されている。[7]オキシトシンは、不安行動や社会性行動に関与しストレス緩和引用エラー: 無効な <ref> タグです。数が多すぎるなどの理由で名前が無効です}など、とくに扁桃体、前頭前皮質、視床下部、海馬などの領域に作用することで、情動調節や他者理解に関わる。海馬では特にCA2領域が社会性行動に関与していることが知られているが、スライス標品でオキシトシンを作用させることにより、通常は起こりにくいCA2領域での長期増強現象(LTP)が起こるようになることが知られている[8]。実際にオキシトシン受容体はCA2領域に発現している[9][10]。  室傍核の小細胞ニューロンから脳幹や脊髄に投射されるオキシトシンニューロンが存在し、脊髄後角で疼痛抑制作用を持つことも知られている。[11] また、オキシトシンは摂食抑制ペプチドとして知られていたが、視床下部の弓状核を介して過食性肥満を改善させることが報告されている。[12]

疾患との関わり オキシトシンはさまざまな神経精神疾患との関連が報告されている。 自閉スペクトラム症(ASD):オキシトシン系の機能不全が社会的相互作用障害に寄与する可能性がある。オキシトシン点鼻の臨床試験が行われた。[13] うつ病・不安障害・PTSD:オキシトシンがストレス応答系を抑制し、情動の安定化に寄与することから、PTSDなどへの治療的応用が期待されている。[14] 統合失調症:社会的認知障害との関連が示唆され、 オキシトシン点鼻の臨床研究も報告されている。[15]

関連語: バソプレシン(vasopressin) 視床下部(hypothalamus) 神経内分泌(neuroendocrine)

参考文献

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  2. Striepens, N., Kendrick, K.M., Maier, W., & Hurlemann, R. (2011).
    Prosocial effects of oxytocin and clinical evidence for its therapeutic potential. Frontiers in neuroendocrinology, 32(4), 426-50. [PubMed:21802441] [WorldCat] [DOI]
  3. Schorscher-Petcu, A., Sotocinal, S., Ciura, S., Dupré, A., Ritchie, J., Sorge, R.E., ..., & Mogil, J.S. (2010).
    Oxytocin-induced analgesia and scratching are mediated by the vasopressin-1A receptor in the mouse. The Journal of neuroscience : the official journal of the Society for Neuroscience, 30(24), 8274-84. [PubMed:20554879] [PMC] [WorldCat] [DOI]
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