閉じ込め症候群
英語名:Locked-in syndrome
意識が保たれ開眼していて外界を認識できるが、完全四肢麻痺と球麻痺のため、手足の動きや発話での意思表出能が失われた状態を指す。患者は寝たきりで四肢は全く動かせず、緘黙状態を呈する。「閉じ込め症候群」はPlum and Posner[1]が提唱した名称で、同義語にはpseudocoma、de-efferented state、ventral pontine syndrome、Monte Cristo syndromeなどがある.多くは橋底部の両側性の梗塞で生じるが、その他に、中脳腹側の両側性梗塞、橋の腫瘍、橋出血も原因となる。この場合、随意運動として残るのは垂直眼球運動と瞬目のみである。脳幹の上行性網様体賦活系が保たれていることが意識保持の機序と見なされ、脳波は覚醒状態を示すが、実際の患者では垂直眼球運動と瞬目とで正確な応答を得ることが難しい場合もある。脳幹の局所性病変のみでなく、重症筋無力症、Guillain-Barré症候群、筋萎縮性側索硬化症などでも意識が保たれた四肢麻痺・球麻痺状態を呈し、この状態も一般に閉じ込め症候群と呼ばれる。
参考文献
- ↑ Plum F, Posner JB<brThe Diagnosis of Stupor and Coma.
3rd ed. Philadelphia, Davis, 1980
(執筆者:中野今治 担当編集委員:高橋良輔)