カフェイン

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島添 隆雄
九州大学 大学院薬学府
DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2013年8月19日 原稿完成日:2013年月日
担当編集委員:加藤 忠史(独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)

英語名:caffeine 独:koffein、仏:caféine 

カフェイン
Caffeine molecule
Systematic (IUPAC) name
1,3,7-Trimethyl-1H-purine-2,6(3H,7H)-dione
3,7-Dihydro-1,3,7-trimethyl-1H-purine-2,6-dione
Clinical data
AHFS/Drugs.com monograph
Pregnancy cat. C(US)
Legal status Unscheduled (AU) GSL (UK) OTC (US)
Dependence liability Moderate
Routes Oral, insufflation, enema
Pharmacokinetic data
Bioavailability 99%
Protein binding 17% to 36%
Metabolism demethylation by CYP1A2
Half-life 5 hours
Excretion urine (100%)
Identifiers
ATC code N06BC01
PubChem CID 2519
DrugBank DB00201
ChemSpider 2424 YesY
UNII 3G6A5W338E YesY
KEGG D00528 YesY
ChEBI CHEBI:27732 YesY
ChEMBL CHEMBL113 YesY
Chemical data
Formula C8H10N4O2 
Mol. mass 194.19 g/mol
SMILES eMolecules & PubChem

 カフェインはメチルキサンチン類に属するアルカロイドである。天然に存在するメチルキサンチンとしては、他にテオフィリン、テオブロミンなどがある。コーヒー、紅茶、茶等に含まれるが、カフェインの含有量はコーヒーに最も多い。1819年にドイツのフリードリヒ・ルンゲによってコーヒーから単離された。メチルキサンチン類は、非選択的なホスホジエステラーゼ阻害作用を有し、cAMPを増加させる。  カフェインは、主にCYP1A2により肝で代謝を受け、3種類のジメチルキサンチン(パラキサンチン、テオブロミン、テオフィリン)になる。これらの化合物も、やはりホスホジエステラーゼを非特異的に阻害する。したがって、カフェインはCYP1A2を阻害する薬剤(シメチジン、フルボキサミン、オランザピンなど)との併用では中枢作用が増強されることがある。また、モノアミン酸化酵素でも代謝され、モノアミン酸化酵素阻害薬との併用では頻脈・血圧上昇が見られやすい。

化学構造

 カフェインはメチルキサンチン類に属するアルカロイドである。天然に存在するメチルキサンチンとしては、他にテオフィリン、テオブロミンなどがある。コーヒー、紅茶、茶等に含まれるが、カフェインの含有量はコーヒーに最も多い。1819年にドイツのフリードリヒ・ルンゲによってコーヒーから単離された。

作用機序

 メチルキサンチン類は、非選択的なホスホジエステラーゼ阻害作用を有し、cAMPを増加させる[5]

中枢神経作用

 大脳皮質の感覚受容器、運動中枢に作用。用量増加により延髄の呼吸中枢刺激。延髄の迷走神経中枢刺激。弱いが精神的依存を誘発する。

代謝

 カフェインは、主にCYP1A2により肝で代謝を受け、3種類のジメチルキサンチン(パラキサンチン、テオブロミン、テオフィリン)になる。これらの化合物も、やはりホスホジエステラーゼを非特異的に阻害する。したがって、カフェインはCYP1A2を阻害する薬剤(シメチジン、フルボキサミン、オランザピンなど)との併用では中枢作用が増強されることがある。また、モノアミン酸化酵素でも代謝され、モノアミン酸化酵素阻害薬との併用では頻脈・血圧上昇が見られやすい。

副作用

 カフェインは中枢興奮作用を有するため、過剰摂取の代表的症状としては、不眠を誘発する。カフェインの摂取は、パニック障害を悪化させる可能性があるが、これはアデノシン産生低下に起因する。

ホスホジエステラーゼ

 ホスホジエステラーゼは11のファミリーに分類されている。

ホスホジエステラーゼ1ファミリー

 カルシウムおよびカルモデュリン依存性のホスホジエステラーゼで、さらに1A、1B、1Cに分類される[6]。ホスホジエステラーゼ1Aは、数種の細胞機能において、フィードバックをかけながら調節している。ホスホジエステラーゼ1Bノックアウトマウスは、自発運動量が増加し、記憶・学習能力が低下する[7]

ホスホジエステラーゼ2ファミリー

 ホスホジエステラーゼ2ファミリーは、GAFドメインのひとつに結合しているcGMPによって、アロステリックに刺激される。ホスホジエステラーゼ2の阻害剤は、記憶の獲得と強化を促進すると考えられる[8]

ホスホジエステラーゼ3ファミリー

 ホスホジエステラーゼ3Aと3Bに分類される。ホスホジエステラーゼ3阻害剤には、シロスタゾール、ミルリノン、アムリノンなどが循環器疾患に用いられる薬物が広く知られるが、中枢作用は比較的少ない。

ホスホジエステラーゼ4ファミリー

 PDE4阻害剤であるrolipramなどは、抗うつ効果のみならず、学習・記憶を増強する報告がある[9], [10]。  

ホスホジエステラーゼ5ファミリー

 PDE5は、学習・記憶に関連しているという報告がある[11]

ホスホジエステラーゼ6~8ファミリー

ホスホジエステラーゼ9ファミリー

 PDE9阻害剤であるBAY73-6691が、アルツハイマー病治療に有効である可能性があり、研究が進められている[12]。また、他のPDE9阻害剤が、動物モデルにおける長期増強現象ならびに認知機能の改善効果があることが報告されている(Hendrix, 2005)。

ホスホジエステラーゼ10ファミリー

 PDE10は中枢疾患治療のターゲットになりうる。PDE10阻害剤であるpapavarineは、統合失調症によって誘発される認知機能障害を改善する。その他、長期増強現象、ハンチントン病、にも関与している。

ホスホジエステラーゼ11ファミリー

 最も新しく発見されたホスホジエステラーゼファミリーである。中枢作用についての詳細は、今のところ明らかになっていない。

中枢神経作用

 大脳皮質の感覚受容器、運動中枢に作用。用量増加により延髄の呼吸中枢刺激。延髄の迷走神経中枢刺激。弱いが精神的依存を誘発する。

参考文献

  1. Caffeine, International Occupational Safety and Health Information Centre (CIS)
  2. Caffeine (anhydrous). sigmaaldrich.com
  3. This is the pKa for protonated caffeine, given as a range of values included in Harry G. Brittain, Richard J. Prankerd (2007). Profiles of Drug Substances, Excipients and Related Methodology, volume 33: Critical Compilation of pKa Values for Pharmaceutical Substances. Academic Press. ISBN 0-12-260833-X.
  4. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「ld50」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  5. Weinberg, BA; BK Bealer
    The World of Caffeine. Routledge. ISBN 0-415-92722-6, 2001
  6. Cheung, W.Y. (1970).
    Cyclic nucleotide phosphodiesterase. Advances in biochemical psychopharmacology, 3, 51-65. [PubMed:4331465] [WorldCat]
  7. Reed, T.M., Repaske, D.R., Snyder, G.L., Greengard, P., & Vorhees, C.V. (2002).
    Phosphodiesterase 1B knock-out mice exhibit exaggerated locomotor hyperactivity and DARPP-32 phosphorylation in response to dopamine agonists and display impaired spatial learning. The Journal of neuroscience : the official journal of the Society for Neuroscience, 22(12), 5188-97. [PubMed:12077213] [PMC] [WorldCat]
  8. Rutten, K., Prickaerts, J., Hendrix, M., van der Staay, F.J., Sik, A., & Blokland, A. (2007).
    Time-dependent involvement of cAMP and cGMP in consolidation of object memory: studies using selective phosphodiesterase type 2, 4 and 5 inhibitors. European journal of pharmacology, 558(1-3), 107-12. [PubMed:17207788] [WorldCat] [DOI]
  9. Bian, H., Zhang, J., Wu, P., Varty, L.A., Jia, Y., Mayhood, T., ..., & Wang, P. (2004).
    Differential type 4 cAMP-specific phosphodiesterase (PDE4) expression and functional sensitivity to PDE4 inhibitors among rats, monkeys and humans. Biochemical pharmacology, 68(11), 2229-36. [PubMed:15498513] [WorldCat] [DOI]
  10. Kyoi, T., Kitazawa, S., Tajima, K., Zhang, X., & Ukai, Y. (2004).
    Phosphodiesterase type IV inhibitors prevent ischemia-reperfusion-induced gastric injury in rats. Journal of pharmacological sciences, 95(3), 321-8. [PubMed:15272207] [WorldCat] [DOI]
  11. Prickaerts, J., Sik, A., van der Staay, F.J., de Vente, J., & Blokland, A. (2005).
    Dissociable effects of acetylcholinesterase inhibitors and phosphodiesterase type 5 inhibitors on object recognition memory: acquisition versus consolidation. Psychopharmacology, 177(4), 381-90. [PubMed:15630588] [WorldCat] [DOI]
  12. Wunder, F., Tersteegen, A., Rebmann, A., Erb, C., Fahrig, T., & Hendrix, M. (2005).
    Characterization of the first potent and selective PDE9 inhibitor using a cGMP reporter cell line. Molecular pharmacology, 68(6), 1775-81. [PubMed:16150925] [WorldCat] [DOI]